Netflix映画『聖なる証』(The Wonder)。1862年のアイルランドを舞台に、看護師が何日も食べずに生き続ける信仰心のあつい少女の秘密にせまります!
主演は『ミッドサマー』などで有名なフローレンス・ピュー。
作品情報・キャスト・あらすじ、ぶっちゃけ感想・評価、メッセージやメタ構造の意味を考察、ストーリーネタバレ解説、を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『聖なる証』作品情報・キャストと演技の印象
原題:『The Wonder』
ジャンル:歴史・ヒューマンドラマ・ミステリー
年齢制限:16+(16歳以上)
監督:セバスティアン・レリオ(『グロリアの青春』『ナチュラル・ウーマン』)
脚本:エマ・ドナヒュー/アリス・バーチ/セバスティアン・レリオ
原作:エマ・ドナヒュー「The Wonder」
配給:Netflix
キャスト
フローレンス・ピュー
トム・バーク
キーラ・ロード
ニアフ・アルガー
トビー・ジョーンズ
キーラン・ハインズ
フローレンス・ピュー
©︎Netflix
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』や、ホラー映画『ミッドサマー』、マーベルの『ブラック・ウィドウ』『ホークアイ』のエレーナ役で有名なフローレンス・ピューがアイルランドに派遣された看護師エリザベス・ライトを演じます。
芯が強いながら心のどこかに影のある表情がすばらしく画面に釘づけにされました。
数日前に彼女主演の『ドント・ウォーリー・ダーリン』も公開され、2022年11月にはフローレンス・ピュー祭りです。
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あらすじ
アイルランド飢饉がおさまってから10年後の1862年。
イギリスの看護師エリザベス・ライト(フローレンス・ピュー)はアイルランドのある村に呼ばれた。
仕事は、断食を続けて生き続けるアナ・オドネルという少女を2週間観察してほしいとのことだった。
彼女の存在が奇跡なのかそうでないのか、シスター・マイケルと8時間ごとに交代してアナと一緒に過ごすエリザベス。
アナは4ヶ月前から水しか飲んでいないということだったが、それが嘘のように肉付きもよく元気だった。
エリザベスはアナの母親・ロザリーンや、家族のキティがこっそり食物を与えているのではないかと疑うが…。
ネタバレなし感想・海外評価
キリスト教の狂信だけでなく、人間が生きるうえでどうトラウマと向き合っていくか、第2の人生をどう歩むかにもスポットが当たっており、力強いメッセージが受け取れるのも魅力!
フローレンス・ピューの演技も海外で絶賛されており、映画好きは必見です。
おすすめ度 | 85% |
世界観・映像美 | 95% |
ストーリー | 87% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.1(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 85% 一般の視聴者 70% |
メタスコア(Metacritic) | 70(100点中) |
※以下、Netflix映画『聖なる証』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『聖なる証』ネタバレ感想・評価
ストーリーの起伏は少ないながら、19世紀アイルランドの建物の美しさ、壮大な荒野に終始目を奪われる良作。
フローレンス・ピューのバックに壁のしっくいが芸術的に浮かびあがり、淡い青色や緑色がうねっています。
きしむ廊下やボロボロの建物など、当時のアイルランドを知っているわけではないですが、タイムスリップしたような印象を受けました。
どのシーンもライティングがすばらしく、美術館でフェルメールやレンブラントの絵画を眺めているようです。
狂信がもたらす不穏な空気と人間がどう生きるべきかの普遍的なメッセージがあり、映画としてストーリーの完成度も高いです。
フローレンス・ピューの演技も絶品。今回は『ミッドサマー』みたいに喜怒哀楽を正面に出す感じではないのですが、静けさの中に影と信念をもつ女性を熱演しています。
最近だと『グッド・ナース』で看護師を演じたエディ・レッドメインに匹敵すると思いました。
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考察(ネタバレ)
信仰の狂気からの脱出
©︎Netflix
『聖なる証』がもつメッセージのひとつが狂信からの脱出でした。
科学が浸透していない近代以前は、アイルランドに限らずアナが断食を半強要されたような出来事がたくさんあったと思います。
なにかのきっかけで神に選ばれし子だ!とされ、人生を奪われてしまうわけです。
キリスト教信仰で心が救われる人はたくさんいるでしょう。それは否定できることではありません。
しかしその信仰がまちがったベクトルへ向かってしまうと悲劇が生まれてしまいます。
そんなときにエリザベスのように立ち向かえる人がいるでしょうか。
本作ではエリザベスは罪をとがめられなかったものの、実際は教会権力にたてついたらかげで殺されかねません。
『聖なる証』はいくつもの抽象的なメッセージをはらんでいましたが、個人的には人間は宗教という枠ぐみを超えて誰かを救えると伝えていたのだと感じました。
宗教に真っ向から挑む作品は見応えありますよね。
マーティン・スコセッシの映画『沈黙-サイレンス-』も人間をすごく深く描いていましたし、近年の作品だとAmazonのドラマ『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』でガラドリエルを演じたモーフィッド・クラークが宗教狂いの若い女性を演じる『セイント・モード/狂信』も印象的でした。
メタ構造の意味
冒頭は映画のセットが映され、「これから聖なる証という物語がはじまる」と独白でハッキリと語られます。メタ視点が入るわけです。
そして物語に入ると、ニアフ・アルガー演じるキティ(少女アナの家族)による独白だったことが判明。
キティは母・ロザリーンに比べるとアナとの少し距離があるよに描かれていますが、だからこそ独白にぴったりだったのかもしれません。
そして最後も食事をする場面で撮影セットに戻ります。
1つは、セットだとわかっていてもこの物語をリアルに感じるでしょ!?ということから、人間の信仰心の強さを視聴者に理解させたのだと思います。
2つめの意味は、一連のできごとやテーマは21世紀でもみうけられるということです。
本作の舞台は19世紀のアイルランドでしたが、宗教を超えた倫理観や、最愛の人の喪失からの新しい物語は現代のグローバル社会にも通じるとうったえかけていると感じました。
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