『シン・ウルトラマン』の復習として、映画『シン・ゴジラ』(Shin Godzilla)を観直すと、構造・メッセージ性・コンセプトが非常に優れていることに改めて感動!
ゴジラが何と闘っていたか?、ラストのゴジラ人間の意味、牧悟郎教授の目的、メタ的な考察をまとめました。
(基本全部ネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)
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映画『シン・ゴジラ』作品情報・キャスト・
英題:『Shin Godzilla』
ジャンル:特撮、モンスター、ディザスター
監督: 庵野秀明/樋口真嗣(特技監督)
脚本:庵野秀明
撮影:山田康介
製作:東宝
興行収入:82億円
キャスト
長谷川博己
石原さとみ
竹野内豊
市川実日子
高橋一生
高良健吾
柄本明
國村隼
津田寛治
大杉漣
平泉成
余貴美子
※以下、映画『シン・ゴジラ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『シン・ゴジラ』ネタバレ感想・評価
©︎東宝
世界観 | 92点 |
ストーリー | 85点 |
シネマグの総合点 | 88点 |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家86% 一般74% |
ゴジラ VS 人間ではなく、ゴジラ VS 日本人という有機的なテーマになっていたことでストーリーに引きこむことに成功した傑作でした。
内閣と官僚のやり取りでのじれったさや無駄の多さを描きつつも、ひとりひとりから個性が損なわれておらず、熱意を持った“人間”として描かれています。
日本の社会システムがいわば1つの生物となり、ゴジラに立ち向かっていったかのようです。
ゴジラが第一形態から段々と進化していく点や、ゴジラのモダンかつおぞましい形状など、特撮怪獣作品としての見どころも抜群でした。
それと相まって、特定の人間ではなく社会全体としてゴジラに立ち向かっていくコンセプトを真摯に実現したからこそ、これほどのクオリティに至ったのでしょう。
ゴジラ=牧悟郎教授 目的は再生!
ゴジラは牧悟郎教授
冒頭では牧悟郎教授が海上ボートから忽然と姿を消し、そしてゴジラが出現してトンネル亀裂の災害が起こりました。
はっきりとは言及されてないものの、流れ的に牧悟郎教授がゴジラ誕生を計画したと考えるのが自然でしょう。
牧悟郎はゴジラを作っただけとも考えられますが、姿を消しているのでゴジラになった!のほうがスッキリします。
あと、地を這う形態から二足歩行になり、どんどん人間に近くなるのも、なぜか東京を目指すのも牧悟郎教授の意思が働いていたと解釈できます。
牧悟郎=ゴジラだと仮定しましょう。
牧悟郎の妻は放射線の影響で死亡したと語られていました。東日本大震災の原発事故がモチーフとされているのかもしれません。
そう考えると彼の行動原理がひもとけます。
牧悟郎教授の目的は破壊と再生
牧悟郎がゴジラだとすれば、原子力というパンドラの箱に手を出した人類や、原発事故を引き起こした日本の社会システムを破壊する目的があったのでしょう。
牧悟郎は放射能を無害化する研究をしていました。ゴジラの体から半減期が20日の新たな放射性物質が発見されたことから察するに、研究は成功していたのでしょう。
ただ放射能を無害化する成果だけあっても、社会自体が生まれ変わらなければ悲劇が繰り返されると悟っていたからこそ、ゴジラ化して日本社会と戦う道を選んだのだと思います。
ゴジラで社会システムを破壊し、さらにゴジラ打倒で人々の結束が起これば日本の社会システムは生まれ変わります。
同じく庵野秀明監督作品である映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)でシンジがアディショナル・インパクト起こして世界を作り変えた結末に通底するものがありますね。
ラスト・尻尾のゴジラ人間の正体と意味
『シン・ゴジラ』のラストは尻尾を拡大するとゴジラ人間がたくさん固まっているというもの。ゾクっとしました。
最強の敵を倒してもまだまだ脅威は終わらないというのは、映画『エイリアン』シリーズとも似ています。
このゴジラ人間は、ゴジラが無性生殖して増殖する寸前だった。危ねえ。と示唆しています。
ただなぜ人間の姿なのか?この点をしっかり考える必要があるでしょう。
牧悟郎教授=ゴジラ説にもつながりますが、結論からいうとゴジラ人間は災害・原発の犠牲者のメタファー(暗喩)だと思います。
核廃棄物によって誕生したゴジラを犠牲者の集合体と表現し、人間の業(カルマ)の集合体という意味が込められているようです。
庵野監督らしいコンセプトまで素晴らしい作品ですね。
シン・ゴジラ 構造を考察(ネタバレ)
映画『シン・ゴジラ』を広い視点で見たとき、構造面でも非常に優れた作品だと思いました。
ゴジラとの対決をより有機的に捉えられるよう、どんな性質のバトルだったか考察していきます。
血液 VS 血液
映画『シン・ゴジラ』は血液と血液の戦いだともいえるでしょう。
ヤシオリ作戦はゴジラの血液を凝固させ、原子炉などの機能を停止させるものです。
矢口蘭堂はじめそれに立ち向かう人々はただ人間として描かれていただけでなく、社会を循環し、活性化し、対抗する力を産む血液のようだと感じました。
ゴジラ VS 怪物・日本
©︎東宝
ゴジラ VS 人類というより、ゴジラ VS 日本という側面が強かったですね。
アメリカなどの協力はありつつ、トップ官僚から末端の製造業までフル稼働させ、良い意味で日本の国力を見せつけました。
末端の人間まで正確で素晴らしい仕事をする日本もある意味で怪物といえるでしょう。クオリティの連鎖が膨大なパワーを生み、ゴジラを倒しました。
個人的にはゴジラという怪物を倒すために精鋭たちがなんとかする!のではなく、たくさんの人が協力し合って地道に積み重ねるという点が非常に日本的だと思いました。
主観も入りますが、日本の今の音楽って欧米に比べて音数がめちゃくちゃ多いですし、楽天のホームページトップのデザインもポイントやクーポンなど情報が多く、Amazonと比べると違いが一目瞭然です。
『シン・ゴジラ』でも人間の力を足し算的に結集させています。
『シン・ゴジラ』は日本の強みや実態を浮き彫りにした興味深い映画だと思いました。
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最後のまとめ
映画『シン・ゴジラ』を徹底考察してみて、改めてその素晴らしさを実感できました。
『シン・ウルトラマン』もこの流れを汲んだ完成度の高い映画になるでしょう!
ここまで読んでいただきありがとうございます。『シン・ゴジラ』レビュー終わり!