考察:メッセージ深掘り
1歩進んだポリコレ感
『シニアイヤー』は2000年代初頭のノリノリ世代と、環境問題に関心があるのがクールな2022年の高校生を対比させたある面では多様性・ポリコレ映画です。
ただ本作の場合は、20年後に昏睡状態から目覚めた主人公・ステフが、「イケイケのプロム女王になりたい!」という現代ではちょっと恥ずかしい目標に突き進んでいくのが素晴らしいと思いました。
「他人を蹴落としてチアリーダーになり、プロムの女王になりたい!」
現代で良いとされる多様性の価値観においてはNGな主張です。
しかし一方で、心からそれを望んでいるステフを否定するのは真の多様性といえるでしょうか?
口では多様性と言いつつ、社会が容認する“良い子的な価値観”だけしか認めないのも変ですよね。
プロム女王になりたいというイタい願望が、多様性・ポリコレに対しての問題提起になっており、彼女なりに問題と向き合っていきます。
自分を笑わず、正しく傷つく物語
ステフの“いびつな価値観”をジャネットなど周囲の学生が面白がって受け入れます。
かつての同級生のセスはステフに「イタいからいい加減やめろ」とやんわり説教するのですが、ステフは「自分にはプロム女王しかない」と真剣に言い返すのです。
社会から見てわがままだろうが母が存命のときにアドバイスされた、明るい未来の想像を貫くということでしょう。
この瞬間セスは、ステフのわがままを尊重する意味を悟ったのだと思います。
さらにステフはこの目標がないと壊れてしまうということもヒシヒシと伝わってきました。
プロム女王になるというちょっとおバカな願望は、失われた20年の空白と現在の状況を乗り越えるために必要だったと思えました。
その過程でステフは20年前に本当の友達をないがしろにしてしまっていたことに気づき、セスとマーサに謝罪。
20年越しに等身大の自分から謝罪。感動の流れでしたね!
37歳になっていようが心は17歳。
時間が経っていようが、プロム女王が時代錯誤だろうが、一旦自分の思い通りにやって周囲とぶつかりあったからこそ、本当に大切なものが見つけられたのではないでしょうか?
この普遍的なテーマを、言葉でなく行動で示していたと思います。
全体的にノリが軽いので見落としそうですが、感動や新しい価値観が随所に差し込まれて引き込まれました。
最後のまとめ
映画『シニアイヤー』は、キャッチーなアイデアとキツめの下ネタ、そして多様性の新たなメッセージが加わった秀作でした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix『シニアイヤー』レビュー終わり!
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