Netflix映画『ほの蒼き瞳』(The Pale Blue Eye)。クリスチャン・ベール演じる主人公が暗く冷たい雪景色のなかで心臓が抜き取られた猟奇殺人を捜査するミステリー。助手はハリー・メリング演じる若き日のエドガー・アラン・ポーです!
- 作品情報・キャスト
- ネタバレなしの感想
- 全話視聴した感想・評価(ネタバレあり)
- 全話ネタバレあらすじ解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『ほの蒼き瞳』作品情報・予告
原題:『The Pale Blue Eye』
ジャンル:ミステリー
年齢制限:16+(16歳以上推奨、暴力描写・性的な描写あり)
監督:スコット・クーパー
脚本:スコット・クーパー
原作:ルイス・ベイヤード「陸軍士官学校の死」
撮影:高柳雅暢(タカヤナギ マサノブ)
音楽:ハワード・ショア
撮影監督には『世界にひとつのプレイブック』や『ファーナス/訣別の朝』を担当した高柳雅暢(たかやなぎまさのぶ)さんが参加しています。今や世界的に評価されている方です。
映画『ほの蒼き瞳』キャスト
©︎Netflix
オーガスタス・ランドー|cast クリスチャン・ベール
主人公の元刑事で探偵・ランドーを演じたのはクリスチャン・ベール。
枯れた演技とでもいうのでしょうか。渋いです。渋すぎてずっと見ていられます。
クリスチャン・ベールとスコット・クーパー監督は『ファーナス/訣別の朝 Out of the Furnace』(2013)『荒野の誓い』(2017)でもタッグを組んでおり、本作が3作目です。
『ダークナイト』のバットマンでも有名ですよね。近年は『ソー:ラブ&サンダー』や『アムステルダム』(2022)の演技もすごかったです。
映画『アムステルダム』(Amsterdam) は第一次世界大戦後のアメリカを舞台に、元軍人の医者が巨大な権力に立ち向かうストーリー! CineMag クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ロバート・デ・ニーロなど大スター[…]
エドガー・アラン・ポー|cast ハリー・メリング
若き日のポーを演じるのはハリー・メリング!
『ハリー・ポッター』シリーズのダドリー・ダーズリー役で有名です。
Netflixでは『悪魔はいつもそこに』『オールド・ガード』、ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』などに出演し、個性的な役柄で画面を彩っています。
Netflixオリジナルドラマ『クイーンズギャンビット(原題: The Queen's Gambit)』が面白い!全世界で6200万回以上視聴され、新記録を打ち立てたのも素直にうなづける。 1960年代 アメリカのアン ティークな雰[…]
映画『ほの蒼き瞳』あらすじ
陸軍士官学校でリロイ・フライという候補生の首吊り死体が発見される。
首吊り死体だったが足は地面についていた。
当初は自殺かと思われたが、保管されていた死体の心臓が何者かに抜き取られた。
士官学校のヒッチコック大尉とセアー大佐は、元刑事でさまざまな事件を解決してきたオーガスタス。ランドー(クリスチャン・ベール)に捜査を依頼。
ランドーは死体の頭部に打撲のあとがあり、それが死因だと考える。
検死医のダニエル・マークウィス(トビー・ジョーンズ)は打撲のあとを見落としていたとバツが悪そうにした。
さらにランドーは死体の手には手紙の切れはしが握られているのを発見。
ランドーはその学校の士官候補生のなかに犯人がいると考える。そして士官候補生のエドガー・アラン・ポー(ハリー・メリング)に捜査の助手を依頼した。
2人は背後に黒魔術の儀式があると考えるが…。
ネタバレなし感想・海外評価
前半はかなりたんたんと進むので少し退屈かもしれませんが、ラストにはどんでん返しもあります。
エンタメ色の強いミステリーを期待していると楽しめないかもしれませんが、雪景色をバックに登場人物の悲哀を堪能したい人にはおすすめです。
おすすめ度 | 70% |
ミステリ度 | 80% |
ストーリー | 83% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.6(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 66% 一般の視聴者 77% |
メタスコア(Metacritic) | 56(100点中) |
※以下、映画『ほの蒼き瞳』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ほの蒼き瞳』ネタバレ感想・評価
©︎Netflix
そして彼を包み込む薄暗い雪景色と、士官候補生の蒼き制服。
絵づくりや雰囲気はパーフェクトだったと思います。
ただ、ひたすら淡々と進んでいくので正直途中は眠くなってしまいました。
ミステリーではあるのですが、トリックに重点が置かれているわけではありません(どんでん返しの構造は面白いですが)。
主人公・ランドーと若きポーの交流、お互いの人間性が紡がれていく進行はどちらかといえばヒューマンドラマです。
激しい復讐の炎が雪の中に消えていくような叙情的なテーマも非常に美しかったですが、少し既視感があったのが残念でした。
それもそのはず。クリスチャン・ベールとスコット・クーパー監督は『ファーナス/訣別の朝』でもタッグを組んでいましたし、撮影監督の高柳雅暢も同じチームです。
主演・監督・撮影監督が一緒で、大自然をバックにした復讐の行き着く先を描けば、同じ雰囲気になるのは当然です。
そういった意味で、美しいテーマに意外性が感じられなかったのは個人的にちょっと残念ではあります。
(スコット・クーパー監督作品をはじめて見る人は気にならないでしょうけど。)
どんでん返しラスト
ミステリーでいう叙述トリック(描写をうまく限定して読者・視聴者を騙す手法)を利用して、実はクリスチャン・ベール演じる主人公・ランドーが犯人でした!という結末にはおどろかされました。
ランドーが起こした事件のなかに黒魔術の事件が発生した構図なので、ランドーが黒魔術についてはしっかりと捜査していて、そのぶんコロッと騙されてしまいました。(考察の項目で詳しく解説)
映画『ほの蒼き瞳』ネタバレあらすじ解説
黒魔術の痕跡
ランドーはパッツィという飲み屋の女性と恋愛関係にあった。ランドーの娘・マッティは失踪してしまい、彼は失意のなかで生活していた。
ランドーはエドガー・アラン・ポーに手紙の切れ端を渡す。
ポーは死んだリロイが何者かに呼び出されたと考えるが、詳細はわからない。
ランドーは銅像の下に手紙で場所を書き、ポーを貯氷庫に呼び出した。
ランドーとポーは貯氷庫の地下に魔法陣の痕跡を発見。リロイの心臓で儀式をおこなったと推測した。
リアに恋するポー
ポーは、同じ士官候補生で医者ダニエルの息子アーティマスの家へ。
そこでアーティマスの姉・リアと会い、彼女に激しい恋をする。リアはてんかんをわずらっていた。
ポーは候補生のバリンジャーに「リアに色目を使うな」と言われて殴られる。ランドーがポーを助けた。
まもなく士官候補生のバリンジャーが森の中で遺体で発見される。心臓は抜き取られていた。
ランドーはアーティマスの家で将校の制服(アーティマスの叔父のもの)を見つけた。
アーティマスが将校のフリをしてリロイの死体を監視する候補生を遠ざけ、心臓を抜き取ったと考える。
さらにアーティマスの家には悪名高き黒魔術師である祖先から受け継いだ本があった。
ポーはリアに薬を盛られて動けなくされ、アーティマスによって貯氷庫に運ばれる。彼らの母・ジュリアも儀式を手伝っていた。
リアは黒魔術でてんかんを治したかったのだ。
ダニエル医師も家族の犯罪を知りながら、リアをてんかんの病から救いたい一心で黒魔術を黙認していた。
驚愕のラスト結末
ポーは心臓を抜き取られる直前でランドーに助けられる。
灯りが倒れて建物は火事になり、リアとアーティマスは落ちてきたがれきに潰されて死亡。ランドーは母・ジュリアを助けた。
リアとアーティマスが犯人ということで、事件は解決したかに見えた。
ポーはランドーの家へ行き、リロイの死体がにぎっていた手紙の切れ端の筆跡と、ランドーがポーを呼び出す際に像の下に置いた手紙の筆跡が一致していると指摘。
リロイを殺した犯人はランドーだったのだ。さらに彼はバリンジャーも殺していた。
以前、リロイとバリンジャーたちがランドーの娘・マッティを強姦し、マッティはがけから飛びおりて自殺したのだった。
ランドーは復讐のためにリロイを殺害。
偶然にもリアとアーティマスが黒魔術のために死体から心臓を抜き取り、さらにランドーがその事件を解決する探偵として雇われたのだった。
ランドーはバリンジャーを殺害し、心臓を抜き取ってリアたちの仕業に見せかけた。
ランドーは自分の罪に気づいたポーに経験を伝えたかったと言い、告発するかどうかはゆだねると続けた。
ポーは涙を流しながら証拠となる手紙を燃やす。
ランドーは娘・マッティが飛び降りた崖に立ち、彼女の衣服を風にゆだねて別れを告げた。
映画『ほの蒼き瞳』終わり
映画『ほの蒼き瞳』ネタバレ考察
ポーに手紙を渡した理由
ランドーは復讐を抑えきれなかったいっぽうで元刑事の正義感もあり、自分が犯人だと気づかせるためにポーにわざと手紙を渡したのではないでしょうか?
小屋(貯氷庫)に呼び出したいだけなら手紙でなく口で伝えても、だれかへ伝言を頼むでも良かったはずです。
娘・マッティが強姦されて自殺してしまう悲劇を経験したランドー。
彼が蒼い制服の士官候補生を一様に憎んでいるのか、大佐に「この学校が起こした殺人だ」と凄んでいるシーンがありました。
そんな士官候補生のなかにあって特に個性的で、純真なものを失っていなかったのがポーです。
ポーの存在がなければ、ランドーは士官候補生たちを憎み、さらに世の中全体にまで憎しみを広げていったでしょう。
ランドーはポーの存在に感謝し、捜査のスキルだけでなく正義の心をも委ねたのだと思います。
ミステリーの構造:あら探し
『ほの蒼き瞳』のミステリー部分はどんでん返しのラストもあって面白かったです。
すばらしいのは特殊な入子構造になっている点。
ランドーが死んだ娘のために士官候補生たちを殺した外枠があり、その内枠でリアたちが黒魔術のために死体を利用した別の事件が発生しています。
ユニークなのは、ランドーがリアたちが起こした死体損壊の事件をしっかり捜査している点です。
つまり、自分の犯罪を隠したいから適当に捜査する!ではなく、自分の犯罪を隠したいからこそ真相を究明するという、ある面で逆説的な図式が成立しています。このアイデアはすごいです。
個人的にはミステリーの構成上のあら探しをするのもミステリーの醍醐味だと思うので、気になった点をいくつか書いていきます。
見た人の多くが共感すると思いますが、ランドーが自分が起こした殺人事件の捜査を依頼される点はかなり出来すぎた偶然です。
さらに、ランドーが殺したリロイ・フライの死体からリアとアーティマスの姉弟が黒魔術のために心臓を抜き取るのも超偶然です。
まあユニークなミステリーを作るためにはこれらの偶然は仕方ないと思います。
最後のまとめ
Netflix映画『ほの蒼き瞳』は、心が冷え込むような美しい雪景色と復讐の炎の対比、おもしろいどんでん返しがあった良作でした。
個人的にはこの内容で2時間10分は少し長い気もしましたが、ありがちなエンタメ消費映画ではなく芸術的な側面も持っていた意義深い作品なのは確かです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『ほの蒼き瞳』(The Pale Blue Eye)レビュー終わり!
ミステリー映画・おすすめ記事
映画『ナイブズ・アウト2 グラスオニオン』の考察記事です。モナリザの本当の意味、グラスオニオンをイメージしたストーリー構造、木箱によるラストの暗示などを徹底解説しています! ↓『ナイブズ・アウト2 グラスオニオン』の感想やストーリーあ[…]
2023年公開映画・関連記事
Netflix映画『ホワイト・ノイズ』(White Noise)はアダム・ドライバー主演の不条理コメディ。意味不明な展開が終始つづく奇妙な映画です。 CineMag 世の中の不条理を凝縮させた意欲作。新年そうそう変な映画を見[…]