Netflix映画『ホワイト・ノイズ』(White Noise)はアダム・ドライバー主演の不条理コメディ。意味不明な展開が終始つづく奇妙な映画です。
作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価、意味不明なストーリーを深掘り考察を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓

Netflix映画『ホワイト・ノイズ』作品情報・予告
原題:『White Noise』
ジャンル:不条理コメディ
年齢制限:13+(13歳以上推奨)
監督・脚本:ノア・バームバック
原作:ドン・デリーロの小説「ホワイト・ノイズ」(1993)
制作会社:A24
ノア・バームバックはNetflixで公開されて高い評価を受けた『マリッジ・ストーリー』を監督した人物。
アメリカのポストモダンを牽引する小説家ドン・デリーロの原作小説がもとになっています。
映画『ホワイト・ノイズ』あらすじ
ヒトラー研究家としてカリスマ的な人気を誇るジャック・グラドニーは、4度目の妻・バベット(グレタ・カーウィグ)や連れ子たちと毎日あわただしく生活していた。
そんなある日、列車がトラックと衝突して事故をおこし、有害物質・ナイオデインDが大気中にばらまかれる。
地域は有害な黒い雲でおおわれた。
ジャックはニュースを聞いてものんきに構えていたが、子供たちは騒ぎ出す。
やがてサイレンがなり地域住民の避難司令が出される。
ジャックたちは車に乗り込んで長距離を運転し、キャンプ場まで逃げるが…。
©︎Netflix
登場人物・キャスト『ホワイト・ノイズ』
©︎Netflix
ヒトラー研究家のジャック(主人公)を演じたのはアダム・ドライバー。
いつもわりかし2枚目役で出てくるので、本作でぽっこりおなかでシュールな会話をするアダム・ドライバーは衝撃でした。
本作のノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』、スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』 などに出演。
『ハウス・オブ・グッチ』や『最後の決闘裁判』などリドリー・スコット映画の常連でもあります。スコセッシの映画『沈黙 サイレンス』にも出てましたね。2023年は恐竜と戦うSFアクション映画『65』で主演を務めました。
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ジャックの妻・バベット役には女優としても監督としても才能を発揮しているグレタ・ガーウィグ。死ぬのが怖いという哲学的な悩みを持ち、変な行動に出てしまうバベットを完璧に演じていました。
グレタ・ガーウィグは『レディ・バード』や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』など世界的に評価の高い作品を監督しています。
ジャックの大学教授の同僚マレー役にはドン・チードル。「映画のカークラッシュはアメリカの楽観主義の一部だ」というカークラッシュの研究者でエルヴィス・プレスリーの研究にも手を出そうとしている変人マレーのシュールな雰囲気がたまりません。
ドン・チードルは『ホテル・ルワンダ』『オーシャンズ11』などに出演。最近はマーベル『アベンジャーズ』シリーズのウォーマシン役で有名ですね。
ネタバレなし感想・海外評価
ストーリーは論理的に展開せず、セリフも噛み合わない…いわゆる不条理劇です。
ぽっこりお腹のアダム・ドライバーの演技が楽しめることは間違いありません。
不条理劇が好きな人なら楽しめるでしょうけど、個人的にはぜんぜんのれませんでした。
海外では批評家の評価はなかなか高いものの、一般視聴者からの点数はかなり低いです。
おすすめ度 | 30% |
世界観 | 90% |
ストーリー | 評価不能 |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.9(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 63% 一般の視聴者 38% |
メタスコア(Metacritic) | 66(100点中) |
※以下、Netflix映画『ホワイト・ノイズ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ホワイト・ノイズ』ネタバレ感想・評価
興味深いけど、おもしろくはない作品。
哲学的なセリフが投げかけられたかと思いきや、それに対する相手の返答がトンチンカンなのが笑えます。
会話がまったく噛み合っていないこともあれば、意外と真理を突いているなどバランスが絶妙で、ストーリーに推進力がしっかりありました。
マレー教授(ドン・チードル)がジャック(アダム・ドライバー)に「デジャブの症状は出た?」と2回繰り返すシーンが最高です。
ジャックに有害物質の症状が出ているのか、ただ2回繰り返しただけなのかわからないシュールさがたまりません。
スーパーマーケットでジャックとマレーが死について語るシーンや、最後の意味不明なフラッシュモブもおもしろかったです。
ただ、2時間ずっとハイテンポな会話が繰り返されて途中からセリフを解釈する集中力が切れ、眠くなりました。
コロナや80年代ディザスタームービーを意識したような有害物質による住民の避難生活が中盤までのメインでしたが、そのテーマだけで引っ張ったほうが見やすかった気もします。
隔離生活が突然終わり、中年夫婦の危機まで入ってくるとめちゃくちゃな作品がさらにめちゃくちゃに。
クセのあるジャックの子供たちにスポットが当たっていないのも不満です
不条理な会話は没入感があってこそ作品として成立すると思います。
質の高い不条理劇ではあるのですが、個人的には本作に不条理な世界に没頭させるプロットのミラクルまでは感じませんでした。
映画『ホワイト・ノイズ』考察(ネタバレ)
そもそも会話も展開も不条理な作品を真面目に考察すること自体がナンセンスだ!という視点もありますが、個人的に感じたメッセージや解釈を3つ書いておきます。
ホワイトノイズの意味
そもそもホワイトノイズとはすべての周波数が同じくらいの強さで出力された雑音のこと。
ラジオやテレビがうまくチューニングされないときの「ザー」という音などの総称で、雑音でありながら他の不快な音をかき消してくれる効果があります。
赤ちゃんが寝ているときにホワイトノイズを流すと他の音で起きることを防ぎ、安眠や集中力を保つ説まであります。
ホワイトノイズの本来の意味を映画に置き換えると、人間の日常は無意味な出来事(ホワイトノイズ)であふれていて、解決すべき本質的な問題(不快な音)にたどり着けないと伝えているようです。
たとえば主人公・ジャックが妻・バベットにダイラーというドラッグについて問い詰めるシーン。
妻・バベットが薬の被験者になるために研究者と寝ていたというノイズのような事実が判明し、妻が何の症状で苦しんでいたか?という大事な問題は会話で先送りされます。
そもそもバベットは死ぬことが怖いという何やら哲学的な恐怖をもち、薬で恐怖を取り除こうと考えたわけです。
しかしバベットの死ぬのが怖い問題は、ジャックの嫉妬と恐怖にかき消されてしまいます。
つまり本質的な問題よりも、その周囲に気が散っているわけです。
人間が必死に取り組んでいる問題は、人間以外の存在=例えば宇宙人の視点で見ればくだらないことなのかもしれません。
思考の不条理
スーパーマーケットでジャックとマレー教授(ドン・チードル)が会話する中盤(ディザスター後)のシーン。
同僚の巨漢男性が海で死んだ話になり、ジャックは「死とはただの音のようなものかもしれない」と思考をめぐらせるのですが、その直後に巨漢男性が海でサーフィンをしているちょっと笑える映像を思い浮かべていました。
人間の思考は複雑だとよく言いますが、案外ジャックみたいな感じなのかも。
実際には複雑というより不条理劇のように意味不明な展開が脳内で繰り広げられているといったほうが近いのかもしれません。
人間はそんな思考の不条理を抑圧し、他人との会話ではなるべく出さないように生活しています。
その抑圧を取っ払ったのが本作『ホワイト・ノイズ』なのかもしれません。
ミスター・グレーの正体
ジャックの妻・バベットは死についての恐怖を取り除くためにミスター・グレーの薬の実験に被験者として参加します。
その話のまえに不倫相手であるミスター・グレーは序盤でジャックの夢に出てきました。
スーパーマーケットでもすれ違っています。ジャックとマレーが死について語っているときです。
ミスター・グレーは死についての想念を具現化した存在なのかもしれません。
(簡単にいうとジャックが死をどう考えているかヴィジュアル化したもの)
そう考えるとジャック夫妻が序盤で、「あなたがいない世界なんて考えられない。あなたより早く死にたい」との会話から、ミスター・グレーを殺すまでの出来事がつながります。
バベットの浮気も、彼女が自分の思考を死という考えで満たしてしまった比喩なのかもしれません。
最後のまとめ
映画『ホワイト・ノイズ』は、不条理劇から抽象的なメッセージがいくつも浮かび上がってくる興味深い作品でしたが、個人的には楽しめませんでした。
まあ見る人を思いっきり選ぶ映画ですが、こんな不条理劇っぽい作品が現代に配信されたことは多様性の観点から意義はあると思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix映画『ホワイト・ノイズ』レビュー終わり!