映画『バズ・ライトイヤー』(Lightyear)はピクサーによるワクワクのSF映像美に、多様性キャラや蛇足展開を詰め込み過ぎた残念な作品でした。
ぶっちゃけ感想・評価、ピクサーの弱点・多様性の問題点考察を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
酷評多めです。本作を好きだった人にはすいません。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『バズ・ライトイヤー』作品情報・キャスト・あらすじ
原題:『Lightyear』
ジャンル:CGアニメ・SFファンタジー・アクション
監督:アンガス・マクレーン
脚本:ピート・ドクター
制作:ピクサー・アニメーション・スタジオ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
登場キャラ・キャスト
バズ・ライトイヤー(銀河を探索する宇宙レンジャー)|CV クリス・エヴァンス/吹き替え 鈴木亮平
イジー・ホーソーン(バズの元相棒の孫)|CV キキ・パーマー/吹き替え 今田美桜
ソックス(ロボット猫、バズの相棒)|CV ピーター・ソーン/吹き替え 山内健司(かまいたち)
モー・モリソン|CV タイカ・ワイティティ/吹き替え 三木眞一郎
ダービー・スティール|CV デール・ソウルズ/吹き替え 磯辺万沙子
あらすじ
スペースレンジャーのバズ・ライトイヤーは冷凍睡眠から覚め、相棒のアイーシャと一緒に惑星の探索をする。
しかしその惑星には巨大な虫や、意思を持つ捕食植物がおり、バズたちは命からがら宇宙船に逃げ帰った。
しかしバズは離陸の操縦で宇宙船にダメージを与えてしまい、たくさんいる乗組員たちはこの惑星で暮らすことを余儀なくされた。
1年後、バズはこの惑星から抜け出すためにハイパースピードに入る実験をするため宇宙空間を飛ぶ。
しかしバズは超高速で移動したため4分間の飛行で惑星の4年が経過していた。
バズの心のケアをするためにソックスという猫型ロボットが支給された。
バズは任務を繰り返しながら、老いていく相棒・アイーシャを見て悲しくなる。
ネタバレなし感想・見どころ・海外評価
『トイ・ストーリー』のバズ・ライトイヤーのスピンオフ作品として期待していました。
映像のクオリティは非常に高いものの、駆け足すぎてストーリーにのめり込めませんでした。
海外レビューサイトIMDbでも評価が10点中5.3点と、ピクサー作の中ではかなり低いです。
2023年にはピクサー次作『マイ・エレメント』が公開されましたが、そちらのほうがクオリティは断然高いと思いました。
ピクサー最新作『マイエレメント』(Elemental)。極上の映像美によるエレメント・シティを舞台に、火の女性と水の男の恋愛から人生の本質が垣間見えました。 シネマグ いや〜期待以上のクオリティと感動!やっぱピクサーはすげえ[…]
おすすめ度 | 47% |
映像 | 90% |
ストーリー | 45% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.3(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 75% 一般の視聴者 85% |
※以下、『バズ・ライトイヤー』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『バズ・ライトイヤー』ネタバレ感想・酷評
詰め込みすぎでは?
ストーリーやメッセージ性を楽しめたのはバズが実験任務のために1日で4年を取り、みんなが老けていってしまう前半だけ。
ザーグのロボ部隊に襲われ、緊張感のないピンチをバズやイジーらメンバーが失敗しつつ切り抜けていきます。
ワンパターンの連続です。
それぞれのシークエンスが短く、編集でカットしまくったなあ…という印象。
これほど展開を詰め込むなら、上映時間は105分ではなく2時間半は必要でしょう。
ピクサーの制作陣がいろんな名案を採用したのはいいものの「子供向けに時間短くしなきゃ…」と気づいて尺を削りまくり、そして出来上がったのが本作!という感じ。
破裂しそうな缶詰みたいに詰め込み過ぎです。
各シーンの完成度は高いものの、ストーリー全体として見るとSFアクションシーンのダイジェスト映像みたいな没入感のない作品になってしまっています。
物語にまったく推進力がありません。
多様性キャラがノイズ
まず、バズの相棒アリーシャがアジア系の女性と同性婚した設定と女性同士のキスシーンが中国やイスラム諸国で問題になっていました。
これに関しては近年ディズニー映画の通常運行というか、必要性こそないもののそこまで気になりませんでした。
しかし大きな問題はアリーシャの孫・イジー。
主人公バズ視点でイジーを見ると、
- 元相棒の孫
- 軍人としての部下
- 宇宙恐怖症のゆとり
物語内でのバズとの関係性の変化やイジー自身の成長譚として、考えなければいけない要素が多過ぎて混乱します。
イジーの物語上の役割は、バズが克服すべきアリーシャの喪失と、なんでも1人でこなしてしまう性格を、一緒に冒険して昇華すること。
ここに宇宙恐怖症のゆとりというイジー自身の強い個性も入ってくるので、行動原理がかなり複雑に見えて感情移入しずらかったです。
他のキャラについても、不器用で失敗ばかりのモー・モリソンは中年でノースキルから転職を目指すような現代社会を反映させたキャラ。
犯罪歴のある老人ダービー・スティールも、シニアからの再出発というテーマを想起させます。
説教くさすぎません?
物語上そのキャラ設定にする必然性はないですし、キャラの性格がSFアドベンチャージャンルとマッチする訳でも無し。
各キャラクターの多様性要素がノイズになってストーリーに没頭できません。
不要な設定が物語の邪魔をしているようで、完全に本末転倒です。
2023年のディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』もポリコレを意識し過ぎて不評でしたね。
SF設定の説明不足
相対性理論?によってバズがハイパースピードに近づく任務を決行する度に、周りのみんなが老けるウラシマ効果の説明まではまだ良かったと思います。
バズとザーグ(未来のジジイバズ)の2人が存在している理由は、先にハイパースピード突入に成功した未来のバズが、過去を改変するためにクリスタルを取りに現在にきたからでしょう。
(このとき未来のバズが生きてきた世界と、現在の世界線が分岐・パラレルワールド化したのでしょう。)
SFでよくある設定なのでわかるだろ!ってことでしょうけど、作品上のSFルールが提示されてないのが気になりました。
そもそも未来のバズの元にはクリスタルの安定に成功したソックスもいますし、未来の超科学力もあるので過去にクリスタルを取りに戻る以外の選択肢もありそう…という疑問もわきます。
子供向け?大人向け?
本作『バズ・ライトイヤー』は、『トイストーリー1』(1995)でアンディが家に帰ってくる前に見た大好きな映画という位置付けです。
にしては、ウラシマ効果からして子供向けとは思えません。
バズが2人なのも、子供からすれば意味不明だと思います。
ストーリー全体はバズとイジーたちの冒険・成長譚というシンプルで子供向けの内容ですが、細かいSF設定は大人向け。
どの層をターゲットにしているのかわからないです。
バズ・ライトイヤー考察
見えてきたピクサーの弱点
ピクサーの制作手法は、とにかくチーム全員でアイデアを出し合って練りまくる集団発想法(ブレインストーミング)です。
今までの作品はそれが上手くいっていたのに、本作では要素の詰め込みで逆効果になってたと思います。
個人的な推測になりますが、脚本と修正に時間をかけすぎて、製作側としては各要素が当たり前になり、観客がどこを疑問に思うかの判断が難しくなってしまったのかもしれません。
創作ではよくある問題で、作っている側は設定を完全に理解しているので「説明なくてもわかるやろ」と思い込んでしまうんですね。
本来であれば詰め込みすぎもチーム内で指摘されるべき問題ですが、コロナでリモート分業が進んで上手くコミニケーションが取れなかったのかもしれません。
あとは映画でも漫画でもコンテンツ全般にいえることですが、誰もが面白いと思う完成度の高いアイデアを出し合って骨組みを構築しても、実際に出来上がった作品が面白くなるとは限りません。
不完全性が機能していないからだと思います。
例えば高級香水には、麝香(じゃこう)など動物の体内から取られたそれ自体は臭い分泌液成分が含まれています。
薔薇の香りにも、スカトールやインドールなどオナラと同じ成分が含まれています。
ピクサーの集団での制作手法だと良いアイデアばかりになり、上記のような「一見マイナスだけど必要不可欠な要素」が入りにくくなるのではないでしょうか。
要は、雑味がなさすぎて面白くないということです。
ピクサーでそこまで含めてコントロールできる監督といえば、やはりピート・ドクターでしょう。
ピート・ドクターは本作『バズ・ライトイヤー』の脚本を務めており、その時点で「ええ?本当にピート・ドクターが書いたのコレ?」と疑問が湧きましたが、彼が監督も務めていたらもっと違う物語になったのかもしれません。
未来のバズ全否定の是非
ここまでキャラクターに教科書的な多様性を付与するなら、ジジイバズの「過去に戻してすべてをなかったことにする」を否定する説得力のある理由を提示すべきだったと思います。
「イジーなど、すでにこの惑星が故郷になっている人々の生活をなかったことにしたくない」だと、当たり前すぎる理由プラス他のコンテンツでもよくあるパターンですね。
おまけ:動画レビュー
最後のまとめ
ピクサー映画『バズ・ライトイヤー』は、個人的には期待をかなり下回った残念な作品でしたが、ピクサーなら今後上手く軌道修正できるでしょう。
個人的には、大人向け路線のほうが現在のピクサーにあっているような気がしました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
『バズ・ライトイヤー』レビュー終わり!
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