映画『LAMB/ラム』ネタバレ考察:驚愕のラストや羊の意味!あらすじ解説

  • 2023年1月29日

ホラー映画『LAMB/ラム』は北欧の牧場で羊から生まれた“あるもの”を夫婦が育てるファンタジーホラー。

シネマグ
美しい宗教画を見ているような静かな作品ですが、新種の恐怖がまちがいなく存在しています。
  • 作品情報・キャスト
  • ネタバレなしの感想
  • ぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
  • 物語の意味を考察

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『LAMB/ラム』作品情報・予告

日本公開:2022年(海外では2021年に公開)
制作国:アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作
上映時間:106分
原題:『Dýrið』
ジャンル:ホラー・サスペンス・ファンタジー・ヒューマンドラマ
年齢制限:R15(15歳以上対象)
監督: ヴァルディマル・ヨハンソン
脚本: ショーン/ヴァルディマル・ヨハンソン
撮影:イーライ・アレンソン
音楽:ソーラリン・グドナソン

第74回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で「オリジナリティ賞」。

シッチェス・カタロニア国際映画祭において最優秀作品賞・主演女優賞(ノオミ・ラパス)が受賞。

すごく奇怪な映画ではありますが、世界的な評価は非常に高く、実際におもしろかったです。

映画『LAMB/ラム』あらすじ

映画『LAMB/ラム』ノオミ・ラパスと子供の羊人間

マリアと夫のイングヴァルは山間にある牧場で羊を飼って暮らしていた。

マリアたちには幼い娘・アダが死んでしまった悲しい過去があった。

ある日、羊から得体のしれない何かが生まれる。マリアはそれをアダと名付け、大事に育てていた。

そんな中、夫・イングヴァルの弟・ペートゥルがやってきて、しばらくのあいだ一緒に暮らすことになる。

ノオミ・ラパス

スウェーデン出身の世界的なスター、ノオミ・ラパス。

『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009)のヒットで名前が知られ、その後リドリー・スコット監督の『プロメテウス』にも出演。

それらの話題作もいいですが、個人的にはトム・ハーディと共演している『クライム・ヒート』『チャイルド44 森に消えた子供たち』などの儚い感じの演技がとても好きです。

アクションもヒューマンドラマも両方いける俳優ですね。

最近だとNetflixの『ブラック・クラブ』にも出演していました。

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Netflix映画『ブラック・クラブ』

ネタバレなし感想・海外評価

ジャンルはホラーですが怖いシーンはほとんどなく、北欧の美しい山にある牧場で暮らす主人公たちがセリフもほとんどないまま淡々と描かれます。

ですが、羊から生まれてきた“それ”を淡々と育てる流れや、“それ”の正体がわかるシーンに背筋がゾッとしました。

感想を語る犬
完全に見る人を選ぶ映画ですが、斬新な作品が見たい人には強くオススメします。

同じくA24が配給している傑作ホラー『ミッドサマー』に雰囲気が似ていますが、エンタメ性よりは叙情性や芸術性を重視した不思議な作品に仕上がっています。

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映画『ミッドサマー』
おすすめ度 80%
世界観 95%
ストーリー 75%
IMDb(海外レビューサイト) 6.3(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 86%
一般の視聴者 61%
メタスコア(Metacritic) 68(100点中)

※以下、『LAMB/ラム』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『LAMB/ラム』ネタバレ感想・評価

『LAMB/ラム』の評価は86点。
シネマグ
ひとことでいうと、ノオミ・ラパス様が主演の北欧神話です。

ノオミ・ラパスは聖母(役名もマリア)でありながら狂気の母でもあります。

この両義的なキャラクターは非常に人間味があり、魅力的です。

顔と片手が羊の子供を育て、その親の羊人間に夫を殺される…。

ストーリーの意味を考えるというより、雪がかる美しい北欧の景色をふくめて芸術を体感する映画といったほうが近い気がします(次の項目で考察は一応していますが)。

羊人間がギリシア神話に出てくる神・ヤギの獣人パーンのような存在だと考えても、それは解釈というより神話の中に神が出てた…というだけです。

神話やキリスト教がモチーフとなってると解きほぐすより、この映画自体がひとつの神話だと考えたほうが良い気がします。

不条理さに方向性が示されていないので、監督もこういう解釈だ!というふうには作っていないと感じました。

ジャンルはホラーですが、ジャンプスケアなど怖いシーンは皆無。

羊の出産シーンや、羊の耳にホッチキスで番号をつけるシーンが若干グロテスクなくらいでしょうか。

でも、たんたんと羊と人間のハーフを育てる主人公を見ていると狂気と現実の境目が消失したようで、感じたこともない恐怖がやはり存在するんですよね。

ラストで羊人間がぬっと姿を現す場面はおどろきですが、結末を噛み締めろ!という押し付けがましさもありません。

最近でいえば『MEN 同じ顔の男たち』に通づるものがあると思いました。あとはカンヌの「ある視点」賞系譜だと『ボーダー 二つの世界』にも雰囲気がよく似てますよね。

常軌を逸した表現をしつつ、意味を考えることすらはばかられるような映画という意味で。

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まとめると映画『LAMB/ラム』は誰もが好きになれる作品ではないものの、新しい恐怖の表現に成功したという意味で傑作だと思いました。

映画『LAMB/ラム』考察(ネタバレ)

アダの正体・ラスト結末おさらい

映画『LAMB/ラム』のアダ

まず『LAMB/ラム』の表面上のストーリーと結末をおさらいしましょう。

  1. 羊人間が主人公・マリアと夫イングヴァルが飼っているメスの羊と交尾してアダが生まれた
  2. マリアがメスの羊(アダの母)を殺した
  3. イングヴァルの弟・ペートゥルがやってきて楽しく過ごす
  4. 羊人間がイングヴァルを撃ち殺し、マリアは絶望

アダの正体は羊人間と雌羊の子供です。

羊人間が羊と人間のハーフだとするとアダはクォーターですね。

羊人間がメス羊と交尾するシーンは描かれていないですが、飼っている羊の群れが得体の知れない何かに怯えているような描写はあったので、そのときに羊人間がやってきたのでしょう。

そのほかに、ペートゥルはマリアにかなりなれなれしかったので、2人は過去に恋愛関係・肉体関係があったのだと思います。

(マリアは手を出そうとしてくるペートゥルを拒否しながらも、ペートゥルが若い頃に組んでいたバンドのミュージックビデオでノリノリに踊ってましたし。)

流れで読み解けるのはこの辺までで、あとは自分で抽象的な意味を考えるか、意味なんかもういいやとあきらめるかするかしないといけません。

個人的にはこのペートゥルという人物が物語を読み解く鍵だと思います。

羊人間はペートゥルの邪悪さ

映画『LAMB/ラム』の羊人間、人間と羊のハーフ

ひとつの解釈ですが羊人間はペートゥルの邪悪な部分のメタファーだと思いました。

ペートゥルがマリアを好きだとすれば、兄であり夫であるイングヴァルを射殺する理由があるからです。

ただペートゥルはそこまで悪人でもないので実行できません。

そこで邪悪な羊人間が代わりに登場というわけです。

また、マリアがアダの母であるメス羊を撃ち殺したときにちょうどペートゥルがやってきました。

ペートゥルの悪い部分が羊の獣人として具現化したというシンプルな関係ではないにしろ、マリアと夫イングヴァルの幸せを壊す象徴だと考えることはできます。

シネマグ
あえて意味を考えるのであれば『LAMB/ラム』は人間関係の裏に潜む闇がどんな場所にも存在すると描いているのでしょう。

最後のまとめ

映画『LAMB/ラム』は、ノオミ・ラパスの演技力と羊人間を育てる狂気、それらが美しい北欧の景色で包み込まれたシュールホラーの傑作でした。

最近は北欧の作品で面白いものがどんどん日本に入ってきている気がします。

欧米の作品と比較して不思議な雰囲気のものが多く、自分の心に新たな感覚が湧き起こるようで面白いです。

これからも北欧のコンテンツに注目したいと思いました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『LAMB/ラム』レビュー終わり!