映画『ノック 終末の訪問者』(ノック アト ザ キャビン)は、森のキャビン(小屋)で休暇中の家族が、ムキムキのデイヴ・バウティスタたちに究極の選択を突きつけられるサスペンススリラー!
作品情報・キャスト
ネタバレなしの感想
視聴したぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
聖書 ヨハネの黙示録から考察:7回のノック、7つのラッパと天使、バッタの意味
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末・エンドロール解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
映画『ノック 終末の訪問者』作品情報・予告
制作国:アメリカ
上映時間:1時間40分
原題:『Knock at the Cabin』
ジャンル:サスペンス・スリラー・世界の終末
年齢制限:G(何歳でもOK,人が死ぬシーンはあり)
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン/マイケル・シャーマン/スティーヴ・デズモンド
原作:ポール・G・トレンブレイの小説「終末の訪問者」
撮影:ジェアリン・ブラシュケ
音楽:ハーディス・ステファンスドッティル
M・ナイト・シャマラン
映画好きな人でM・ナイト・シャマラン監督を知らない人はいないでしょう。ブルース・ウィルス主演の『シックスセンス』(1999)で最高のどんでん返しを見せ、「シャマランといえばどんでん返し」の印象が強いですね。
シャマラニストと呼ばれる熱狂的な信者もいます。
『サイン』や『ヴィレッジ』などの良作を生み出したいっぽう、『レディ・イン・ザ・ウォーター』など世界的に大コケ・大酷評の作品などもある振り幅の広い監督です。
前作『Oldオールド』(2021)はまずまずといったところでした。本作『ノック 終末の訪問者』では、お家芸・どんでん返しを逆手に取ったある意味で斬新なオチが楽しめます(考察の項目で詳しく解説)。
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『ノック 終末の訪問者』キャスト
デイヴ・バウティスタ
デイヴ・バウティスタは元プロレスラーで、世界ヘビー級王者の俳優。映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックス役でおなじみですね。あとは映画『大脱出』シリーズにシルヴェスター・スタローンの相棒役で出てます。
近年はドゥニ・ヴィルヌーヴのSF『DUNE 砂の惑星』(2021)、ゾンビ映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』(2021)、サスペンス・コメディ『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』(2022)に出演するなど活躍の幅をどんどん広げています。
2023年は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の公開もされました。
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その他のキャスト
- アンドリュー役:ジョナサン・グロフ(『アナと雪の女王』クリストフの声優、『マトリックス レザレクションズ』)
- エリック役:ベン・オルドリッジ
- 養女・ウェン役:クリステン・クイ
- エイドリアン役:アビー・クイン
- レドモンド役:ルパート・グリント(『ハリーポッター』シリーズのロン役で有名)
- サブリナ役:ニキ・アムカ=バード
- TV通販の司会者:M・ナイト・シャマラン
映画『ノック 終末の訪問者』あらすじ
ゲイカップルのアンドリューとエリック、そして養女のウェンは静かな湖畔の森のキャビン(山小屋)で休暇を過ごしていた。
森でバッタを取って観察するウェンのところに大男・レナード(デイヴ・バウティスタ)がやってくる。
レナードはウェンと一緒にバッタを取った。レナードの仲間のサブリナ、レドモンド、エイドリアンもやってくる。
ウェンはレナードたちがよからぬことをたくらんでいると察知して家に逃げ込み、アンドリューとエリックにドアを閉めるように言った。
レナードがドアをノックし「協力してアポカリプス(世界の終末、人類が滅びる大災害)を防ごう」と語る。レナードたちは農具を改造した武器を持っていた。
アンドリューとエリックはもちろんレナードたちのことを信用できず、ドアを開けなかった。しかし携帯は圏外で、固定電話の線も切られていて警察に電話できない。
レナードたちは窓を割って侵入し、アンドリューたちをロープで縛って拘束。そして「家族3人のなかですすんで犠牲になる者を選ばないと人類は滅亡する」と語るのだった…。
ネタバレなし感想・海外評価
ただ、ほとんどずっと山小屋の中というロケーションはやや退屈。ワンシュチュエーションでマンネリ化し、ところどころ集中力が切れます。予算がおりなかったのでしょうか?
クオリティとしては悪くはないですが、M・ナイト・シャマラン監督作品でいえば『シックス・センス』『サイン』『ヴィレッジ』『スプリット』のような爽快感・カタルシスはないです。
海外レビューサイトの評価は良くもなく悪くもなくという感じですね。どちらかといえば、やや肯定的な意見が多いようです。
おすすめ度 | 70% |
世界観 | 62% |
ストーリー | 65% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.1(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 67% 一般の視聴者 64% |
メタスコア(Metacritic) | 63(100点中) |
※以下、『ノック終末の訪問者』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ノック 終末の訪問者』ネタバレ感想・評価
結局、デイヴ・バウティスタ演じるレナードたちが言っていた世界終末が本当だった!というインパクトがあるようで微妙なオチ。M・ナイト・シャマラン監督でいえば『サイン』2002に通底するラストです。
クリス・ヘムズワースが出ていた映画『キャビン』(2012)も似たようなオチなので、その作品がなければもう少し意外性を感じたかもしれませんね。
終盤は動きがあっておもしろかったのですが、序盤から中盤にかけては小屋の中で淡々と進んでいく感じが少しキツかったです。正直いって眠くなりました。
特に序盤はずっとデイヴ・バウティスタのドアップのワンパターンでやや退屈。
ムキムキのバウティスタが画面からはみ出てるんじゃないかと思いました(笑)。
序盤は登場人物のアップを多用し、終盤はやや離れたショットが増えていったので、人間がだんだん存在を俯瞰し、神の真理に目覚めていく!というメッセージがあるのかもしれません。
他には家族愛によるヒューマンドラマ要素が感動的で、そこに少し救われた感じはありますね。
ゲイカップルというのも昨今のハリウッド多様性事情を反映した設定ではありますが、血のつながっていない養子への愛が強く浮かび上がってきたという意味では成功だったと思います。
血のつながりだけが家族じゃない、男女夫婦だけが家族じゃないという前向きなメッセージが感じとれました。
キリスト教の黙示録を映像化して究極のトロッコ問題の提示するコンセプトも良かったと思います(原作小説のよさもあると思いますが)。
トロッコ問題とはNHKで放送されて話題になった『ハーバード白熱教室』のマイケル・サンデル政治哲学教授とかがよく話題にする倫理のテーマ。
簡単に説明すると「あなたはトロッコの切り替えレバーを握っていて前方に5人いて、ひいてしまいそうだ。線路を切り替えればその5人は助かるが、べつの3人がいる線路に突っ込むことになる。さあどうする?」というもの。
この問題を人類全員の命 VS 家族1人の命に置き換えたのが本作です。
こんな重大な問題にだれも答えなんか出したくないですよね。それを突きつけた点で本作の心理的な残酷さは計り知れません。
問題を考える過程で美しい家族愛が浮かびあがり、アンドリューがエリックを殺す結末も痛切なものになりました。
ただ、みんながM・ナイト・シャマランに求めるものがあったか!?と問われると素直にうなづけません。
二転三転する展開やエンタメ性、映像的な恐ろしさがもっとあっても良かったと思いました。意外性が足りなさすぎです。
舞台がほとんど山小屋のワンシュチューションだったこともそうですが、予算が足りなくていろんなことができなかったのか?と勘ぐってしまいます。
考察の項目でもやりますが、今回はあえてひねりの効いたどんでん返しをしていないこともあって、ストーリーの構成もシンプルにしたのかもしれませんね。
感想をまとめると『ノック 終末の訪問者』は悪くもないけど良くもなし…「中庸(ちゅうよう)」という言葉がぴったりの作品になりました。
『ノック 終末の訪問者』考察(ネタバレ)
序盤でネタバレ、アンチどんでん返し
本作でおもしろかったのはデイヴ・バウティスタ演じるレナードが最初から「家族の中から犠牲を選ばないと人類が滅亡する」というオチをネタバレしており、それが大きなひねりも見せずにそのままラストになるという点。
本当に人類が滅亡しそうだったというのはおどろきではありますが、サスペンスでは普通は視聴者が予想外できない出来事をつけ加えます。
最初に宣言しない突拍子もないことが事実だったオチになるパターンは珍しくはないですが、もっと二転三転させたり、予想不可な出来事を入れ込むことがほとんどです。
M・ナイト・シャマラン監督には観客の予想をあえて超えようとしないアンチどんでん返しのコンセプトがあったのではないでしょうか。
ここまでくるともはや大喜利みたいですが、いつもどんでん返しを仕掛けてくるM・ナイト・シャマランがどんでん返しをしなければ、それはある意味でどんでん返です。
ヨハネの黙示録:7回のノック、7つのラッパを吹く天使
エンドロール後でノックの音が7回聞こえました(最初のデイヴ・バウティスタのノックは数え忘れました)。
本作『ノック 終末の訪問者』のストーリー自体がキリスト教の聖書・ヨハネの黙示録と最後の審判をモチーフにしています。
7という数字は聖書によく出てきますが、7回のノックは映画の内容からしてヨハネの黙示録の7つのラッパを吹く7人の天使たちを示唆しているのでしょう。
内容は下記の通りです↓
七人の天使がラッパ(士気を上げる音)を吹く(8章6節-11章19節)
第一のラッパ:地上の三分の一、木々の三分の一、すべての青草が焼ける (8:6-7)
第二のラッパ:海の三分の一が血になり、海の生物の三分の一が死ぬ (8:8-9)
第三のラッパ:にがよもぎという星が落ちて、川の三分の一が苦くなり、人が死ぬ (8:10-11)
第四のラッパ:太陽、月、星の三分の一が暗くなる(8:12-13)
第五のラッパ:いなごが額に神の刻印がない人を5ヶ月苦しめる(9:1-12)
第六のラッパ:四人の天使が人間の三分の一を殺した。生き残った人間は相変わらず悪霊、金、銀、銅、石の偶像を拝んだ(9:13-21)
天使に渡された小さな巻物を食べた。腹には苦いが、口には甘い(10:1-11)
二人の証人が殺されるが生き返る(11:1-14)
第七のラッパ:この世の国はわれらの主、メシアのものとなった。天の神殿が開かれ、契約の箱が見える。引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハネの黙示録
映画内の「ヨハネの黙示録の四騎士」も黙示録の6章に出てきます。
「四人の天使が人間の三分の一を殺した…」は、レナードたち4人がやってきて「3人家族のうち1人が死ななければならない」と言った内容と似てますね。
星が落ちるのは飛行機のことでしょうか。
イナゴもわざわいをもたらすものとして出てきます。冒頭で少女・ウェンが取ったバッタはイナゴを示唆しているのでしょう。
だからウェンがバッタのビンのフタを開けるときに、デイヴ・バウティスタが「刺激しないようにそっと開けて」と言ったのです。このセリフには「災いがなるべく大きなものにならないように」という願いが込められていたのでしょう。
あとはなぜノックなのか?というのは下記部分からだと思います。
見よ、わたしは戸口に立って、たたいている。だれかわたしの声を聞いて戸を開ける者があれば、わたしは中に入ってその者と共に食事をし、彼もまた、わたしと共に食事をするであろう。(ヨハネの黙示録3章20節の)
『ノック 終末の訪問者』のストーリーはヨハネの黙示録に沿った内容なんですね。
ジェニファー・ローレンスとハビエル・バルデムの『マザー!』(2017)も聖書をそのまんま残酷映像として解釈した作品でしたが、似たコンセプトですね。
映画『ノック 終末の訪問者』ネタバレあらすじ解説
人類滅亡かカルト宗教か!?
レナードたちは暴力を振るったことを謝る。しかし縛られたアンドリューとエリックは当然激怒する。エリックは殴られた脳震盪(のうしんとう)が完全におさまっていない。
アンドリューは娘のウェンに抱きしめられながら、「カルト宗教の勧誘ならもっといいやり方がある」と言った。しかしレナードやサブリナは「カルト宗教ではない」と返す。
レナードたちはみな人類が津波、疫病、飛行機の墜落などで死に絶えるヴィジョンを何度も見たらしい。レナードたちも終末の選択のために選ばれた普通の人間だと語る。
レナードは教師、サブリナは看護師、エイドリアンはコックで子持ち、レドモンドはガス会社に勤めていると、それぞれ素性を話した。
“時間”になるが、レナードの言葉を信じていないアンドリューは、「家族のだれかを犠牲にするなら他の人類が滅亡したほうがマシだ!」と叫ぶ。
レドモンドが「よく見ておけ」と言って白いマスクをかぶる。レナードたちが農具で彼を殺害した。アンドリューたちは唖然とする。
レナードがテレビをつけるとニュース速報で4時間前に大地震が起き、さらに他の地域でも地震が起きて15m級の巨大津波が押し寄せている映像があった。レナードは「君たちが犠牲を選択せず、レドモンドが死んだことで厄災が降りかかった」と説明した。
世界希望の大災害は続く
アンドリューは「映像で俺たちをだまそうとしているだけだ!」と信じようとしない。しかしエリックは、レドモンドが殺害される直前に鏡の中の光に人の影を見ていた。
ウェンは隙をついて逃げ出すがレナードに捕まってしまう。
アンドリューは、レドモンドが以前自分をバーで殴った人物だと思い出した。
翌日になり、エイドリアンが「次は私の番。息子がいるから彼の命を助けてほしい」と言い残してレナードとサブリナに農具で殺される。
テレビでは窒死率の高い疫病が世界で爆発的に広まったとニュースが入った。
レナードたちは説得を続けるが、アンドリューは家族から犠牲者を選ぶことを拒否する。
アンドリューとエリックはロープをゆるめて脱出。エリックがレナードをひきつけている間にアンドリューは車に銃を取りに行き、サブリナを撃つ。サブリナは死亡。
テレビでは世界中で700以上の旅客機が墜落して、世界規模の大惨事が起こっているという速報が入った。
アンドリューはレナードをバスルームに監禁するが、銃を奪われて再び不利な状況になってしまう。
ラスト結末
アンドリューは「レドモンドが俺を殴って重傷を負わせて刑務所に入った腹いせに復讐しにきたんだろ!?」と言う。レナードは首を横に振った。
さらに時間がたち、レナードは「俺が死んでから少ししか選択の時間はない」と言って外のイスで自ら首を切って死亡。
アンドリューとエリックは「レナードたちはヨハネの黙示録の四騎士だ」と考える
空は荒れ、たくさんの雷が森に落ちた。
エリックはレナードの言葉を信じ、俺を殺せと言う。アンドリューは泣きながらエリックを射殺した。
アンドリューはウェンと一緒に逃げ、レナードたちが乗ってきた車を見つけて乗り込む。そこに身分証があり、レナードたちは身分も素性も偽っいなかったことがわかる。
車で近くの店へ行くと、津波の生存者が「急に水位が低くなっていった」と状況を語っていた。
アンドリューとウェンは車に乗り込み、エリックも大好きだった曲を流した。彼らは世界を救ったのだ。
エンドロール後
真っ暗な中、誰かがドアを7回ノックをする。
映画『ノック 終末の訪問者』終わり!
最後のまとめ
映画『ノック 終末の訪問者』(Knock at the Cabin)は、聖書のヨハネの黙示録を題材にした原作小説をM・ナイト・シャマラン流にアレンジしたなんともいえない作品でした。
キリスト教の新約聖書になじみがある人ならまた受け取り方がちがってくるのかもしれませんね。
M・ナイト・シャマラン監督には次はもっとエンタメ性の高いサスペンスを期待したいです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。レビュー終わり!
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