Netflix韓国SF映画『JUNG_E/ジョンイ』(정이)。『新感染ファイナル・エクスプレス』や『地獄が呼んでいる』のヨン・サンホ監督・脚本による新感覚SFアンドロイド映画です。
- 作品情報・キャスト
- ネタバレなしの感想
- ぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
- 物語のネタバレあらすじ・ラスト結末解説
- メッセージ深掘り考察
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
Netflix韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』作品情報・予告
韓国語タイトル:『정이 』英題:『JUNG_E』
ジャンル:近未来SF・アクション・ディストピア・ヒューマンドラマ
年齢制限:13+(13歳以上推奨。暴力描写あり)
監督・脚本:ヨン・サンホ
配信:Netflixオリジナル
ヨン・サンホ監督
コン・ユ主演のゾンビ映画『新感染ファイナル・エクスプレス』で一斉を風靡(ふうび)したヨン・サンホ監督。
2021年に配信されたNetflixダークファンタジー『地獄が呼んでいる』は全世界週間ランキング1位を記録しました。
個人的にはとてもわかりやすい設定に重厚なテーマを込めるのが得意な人物だと思ってます。
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韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』キャスト
ユン・ソヒョン|cast カン・スヨン
©︎Netflix
カン・スヨンさんのアンドロイドになってしまった母を見つめる瞳が非常に印象深かったです。
映画『シバジ』『ハラギャティ 波羅羯諦』、ドラマ『女人天下』などで有名な国民的なカン・スヨンさんは、2022年5月に自宅で脳出血で亡くなり、本作が遺作となってしまいました。
ご冥福をお祈りいたします。
ユン・ジョンイ|cast キム・ヒョンジュ
©︎Netflix
キム・ヒョンジュはヨン・サンホ監督の『地獄が呼んでいる』の弁護士役で好きになりました。
キム・ヒョンジュさんは本作と同時期にNetflixで配信されている『車輪』で主演を務めており過去に秘密を持つけなげな政治家の妻を演じています。役の幅がとても広いですね。
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所長|cast リュ・ギョンス
©︎Netflix
『梨泰院クラス』でブレイクしたリュ・ギョンス。今作では愛嬌(あいきょう)のある変人を好演しています。
ヨン・サンホ監督の『地獄が呼んでいる』つながりですね。
韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』あらすじ
©︎Netflix
気候変動により陸地の大部分が水没した地球。
人類は地球と月の間に宇宙シェルターをいくつも作り、全人口の何割かはシェルターに移り住んでいた。
しかし3つのシェルターが独立してアドリアン自治国を名乗り、地球の連合軍と戦争になった。戦争は40年も続いてしまう。
研究者のユン・ソヒョン(カン・スヨン)は戦争を終わらせるために、35年前に伝説的な傭兵だった母・ジョンイの脳複製データを作って高性能な戦闘ロボットを作ろうとしていた。
ソヒョンは戦闘シミュレーションで母(実際は脳データを移植したサイボーグ)が傷つくのを見ながらデータを集めている。
所長(リュ・ギョンス)はくだらないユーモアを口にしながら、研究の成果をあげようと職員たちにげきを飛ばしていた。
ある日、重大な秘密と大きなトラブルが起き、研究室はパニックにおちいる…。
ネタバレなし感想・海外評価『JUNG_E/ジョンイ』
『ターミネーター』のような戦闘アクションがメインかと思いきや、『ブレードランナー』のような倫理観を揺さぶってくる作品です。
ヨン・サンホ監督の『新感染ファイナル・エクスプレス』のような、過激なアクションの連続を期待している人にとっては肩透かし感があるかもしれません。
いっぽうで人間とAIロボットはどう違うのか、ロボットに人権はあるのか?という哲学的・倫理的な問題を考える人にとっては深い洞察が得られる素晴らしい作品です。
ただ、海外レビューサイトでは批評家・一般視聴者ともに低評価を押されてます…。
おすすめ度 | 82% |
SFの世界観やアイデア | 87% |
ストーリー | 86% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.5(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 46% 一般の視聴者 55% |
※以下、Netflix韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
Netflix韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』ネタバレ感想・評価
期待していたようなSFアクションではありませんでしたが、脳のデータを移植されたロボットについての倫理観を問いかける唯一無二の作品でした。
伝説的な傭兵だった母のAIロボットが過激なバトルを繰り広げる話しか!?と思いきや全然違ってびっくり。ただこれはこれで全然アリだと思いました。
ラストでは脳データから情緒的な領域まで消去されて見かけも完全にロボットの母・ジョンイが、成長した娘・ソヒョンに“幸運のほほすりすり”をします。
愛はデータになっても消えないという非常に感動的な幕引きでした。
作られたロボットに人権があるのかというテーマはリドリー・スコット監督の傑作SF『ブレード・ランナー』に近いです。
雨が降りネオンが光るサイバーパンクな近未来都市という本作の舞台からもブレード・ランナーが想起されます。
(人間だと思っていた人物がロボットだった…という展開は大ヒットしたHBOドラマ『ウエストワールド』にもテイストが似てますね。)
『ブレード・ランナー』などの作品と比較して、本作は母と娘の愛情からロボットの権利を問いかけている視点がユニークだと思います。
母の愛はデータ上消去できないと明確に伝えているわけです。
あとは倫理問題として衝撃的だったのが、ロボットの痛みや、性的消費にスポットを当てている点。
脳のデータはほぼ完全に複製されており、JUNG_E/ジョンイは肉体はアンドロイドですが人間と同じように痛みを感じます。ロボだからといって好き勝手に実験してもいいのでしょうか?
さらに娘のソヒョンが母・ジョンイのアンドロイドを性的に利用している部下を見つけます。この展開は個人的にショッキングでした。
AIロボが性的に消費される設定自体は、手塚治虫の漫画「火の鳥」など何十年もまえからすでにあります。
ただ本作では、主人公の母が生前そのままの姿のアンドロイドで性的に利用されおり脳のデータも母そのものです。
例えば自分の大切な人が死んでからそんな扱いを受けたら絶対に嫌ですよね。
視聴者の倫理への固定観念を完全に壊しにかかる鋭利な表現だと思いました。故人の尊厳もへったくれもありません。
戦闘シミュレーションやラストの戦いをのぞいて派手な展開は少ないですが、ロボットの人間性を通じて逆に人間の本質への問いかけがたくさんある良作だったと思いました。
『JUNG_E/ジョンイ』の物語をエピソードゼロとして、続編やドラマ化も期待できそうな気もします。
韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』ネタバレあらすじ解説
伝説の傭兵・ジョンイの過去
新しい部下・ジュギョンは傭兵ジョンイの熱烈なファンだという。
ジョンイは30年前に正義のために戦う女性傭兵として国民的な人気を博し、今なおその人気はおとろえない。
ソヒョンは、母・ジョンイが私の病気の治療代を稼ぐために傭兵になったと話す。
ソヒョンは10代前半で肺がんを患い、手術直前で戦闘地域に行く母・ジョンイを見送った。それが最後の別れになったのだ。
母が幸運のほほすりすりをしてくれた思い出が今も鮮明に残っている。
ジョンイは35年前にアドリアン自治国の戦闘ロボットを倒して燃料棒を爆発させるというミッションに失敗して植物状態になり、脳だけは今も生かされている状態だった。
ソヒョンは自分のために母の人生を犠牲にしてしまったと後悔していた。
ジョンイの母が脳データを会社に提供する代わりに金銭を融資してもらうCタイプの契約をしたため、ジョンイのデータを使ってのアンドロイド実験が可能になったのだ。
脳のデータに人権はあるのか
ソヒョンは昔の肺がんが転位し、余命3カ月だと医師から聞かされる。その医師もロボットだった。
研究室でわめき立てる所長も実は会長の脳データを複製して作ったロボットで、所長本人はそのことに気づいていなかった。
所長はアンドロイドのソヒョンの脚を撃った状態で戦闘実験をスタートさせる。
ソヒョンの脳内の苦痛領域が大きく反応し、戦闘ロボットにやられて戦意喪失したかと思ったが、未知の領域が反応して戦闘力が大幅にアップした。
ある日、会長が地球の連合軍とアドリアン自治国の戦争終結が水面下で決定したとソヒョンに告げる。
戦闘ロボは世の中に必要なくなるため、研究は近日中に中止されることになった。
ソヒョンは母・ジョンイの脳データを部下のジュギョンが勝手に取得したことに気づき、彼の部屋へ。
部屋にあったのは裸のジョンイのアンドロイドだった。ジュギョンは性的な目的で母を使ったのだ。
問い詰められたジュギョンは、本社が今も人気のあるジョンイの性玩具・性アンドロイドを商品化しようとしていると話す。
ジョンイのデータは権利のない契約のため、商品化が可能なのだ。
ソヒョンはジョンイのアンドロイドと面談する。
ミッションに失敗して救出されたとウソの情報を伝えると、ジョンイは「娘の手術は成功したか?」と心配した。
ジョンイは35年前のミッションでソヒョンからもらった小さな人形を落としてしまったこと気がかりで任務地で似た人形に気を取られてしまい、結果任務に失敗した経緯があったのだ。
母の愛を知ったソヒョンは泣きさけぶ。
ラスト結末
何かがプツンと切れたソヒョンは、ジョンイのアンドロイドの管理者設定を消去し、未確認領域を削除。
ジョンイを起動させてすべてを話し、実験中に逃亡させた。
ジョンイは戦闘ロボットに追われるが、ソヒョンがジョンイの脳を戦闘ロボットに移植して研究施設から脱出。
列車に逃げ込むと、待ち構えていた所長がソヒョンを撃ち、ジョンイに襲いかかる。
所長は自分もロボだと気づいて笑い、ジョンイと戦いを繰り広げた。
ジョンイは所長が乗っている車両を落下させることに成功。地面に落下した車両は爆発した。
ソヒョンはジョンイに逃げてと言う。ジョンイはソヒョンのほほに幸運のスリスリをした。
ジョンイは列車から逃げて走り、山の崖のうえから日の出を眺めていた。
Netflix韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』終わり!
映画『JUNG_E/ジョンイ』考察(ネタバレ)
黄色く光る未知の領域の意味
戦闘シミュレーション中にソヒョンの脳データで黄色く光った未知の領域が発生しました。
未知の領域が何なのかは見た人それぞれが考えなさいよということだと思います。
私は未知の領域=母性だと思いました。
戦闘力がアップすることで、娘を守りたいというジョンイの母性の強さを表現したのでしょう。
AIロボットが浮き彫りにする人間性
本作では人間らしさはどこで消えるのか!?が大きなテーマでした。
- ジョンイ本人は植物状態で脳はデータ化されているが完璧ではない
- ソヒョンがジョンイの脳データの未知の領域の情報を消去
- ラストでは外見までジョンイでなくなってしまう
果たしてこのアンドロイドはジョンイだといえるのでしょうか。
人間性をどんどん排除していくことで、最後に何が残るか描いています。
そして最後に残ったのが娘・ソヒョンへの愛だったのでしょう。
データ化して消去しようが、幸運のほおすりすりなど、愛と呼べる何かは消すことができない。
この事実がある以上はジョンイを人間だと認めるべきだと伝えているようです。
最後のまとめ
Netflix韓国映画『JUNG_E/ジョンイ』は、派手なSFアクション大作ではなかったですが、脳のデータを移植したAIロボットを通して人間とは何かを教えてくれるようなオリジナリティあふれる良作でした。
だれもが好きになる作品かはわからないですが、一部の人には突き刺さる意義深い作品だったと思います。
ヨン・サンホ監督の感性はさすがというべきでしょう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『JUNG_E/ジョンイ』レビュー終わり!
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