ディズニープラス/Disney+で2023年9月13日に配信されたアニメ『火の鳥 エデンの宙』の感想・正直な評価レビューをネタバレありで徹底解説!
原作との違い比較と、ストーリーの深掘り考察もしています!
『火の鳥 エデンの宙』作品情報・予告
キャラクターデザイン:西田達三
脚本:真野勝成|木ノ花咲
原作:手塚治虫「火の鳥 望郷編」
音楽:村松崇継
主題歌:LIBERA「永遠の絆」
2023年11月3日に公開される『火の鳥 エデンの花』は『エデンの宙』とラスト結末が違う構成です。
制作はSTUDIO4℃です。『海獣の子供』や『鉄コン筋クリート』で有名で、新海誠監督の『天気の子』や、宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』でも作画協力を務めています。
キャスト・CV
ロミ役|宮沢りえ
コム役|吉田帆乃華
牧村役|浅沼晋太郎
ズダーバン役|イッセー尾形
ジョージ役|窪塚洋介
カイン役|木村良平
『火の鳥 エデンの宙』あらすじ
ロミとジョージは禁断の恋愛をして地球から逃亡。辺境の惑星・エデン17を購入してそこで暮らすことになる。
しかし、エデン17の水脈はほとんど枯れていた。
ジョージは採掘機で水源を探すが、なかなか見つからない。作物も育たない。このままでは2人とも死んでしまう。
そんな中、ロミが妊娠した。そしてジョージはやっと水源を見つけるのだが…(中略)。
時は流れ、千と数百年後にコールドスリープ(冷凍睡眠)から目覚めたロミは、エデン17にすばらしい文明が築かれているのを目の当たりにする。
ロミは女王となり幸せに暮らすが、地球への望郷が日々募っていった。
ロミは少年コムの力を借りて、宇宙船(岩船)で地球へと向かうのだが…。
『火の鳥 エデンの宙』ネタバレ感想・評価レビュー
良い点
原作漫画を読んだときの胸を切り裂くほどの哀愁がよみがえりました。
観終わったあと放心状態になるパワーがストーリーに宿っています。
手塚治虫の原作『火の鳥 望郷編』とはコンセプトや設定が違ってビックリしたシーンもあるのですが、全体的には満足のいくクオリティでした。
人間の望郷、欲と業、子孫を繁栄させる本能や文明の儚さをダイレクトに表現できていたと思います。
『火の鳥』をしっかり理解したスタッフたちが作ったアニメだと思いました。
微妙な点
いっぽうで、本作は原作漫画を読んで内容を知っている人向けになっている気もしました。
突然ムーピーが出てきてカインと結婚する展開は、原作を知らないと意味不明に映るかもしれません。
ムーピーってなんやねん!ってなりそう。
また、声優はプロを起用したほうが良かった気がします。
主人公・ロミを演じた宮沢りえさんはまだしも、窪塚洋介さんのジョージは棒読みで違和感が大きかったです。
火の鳥 エデンの宙 考察(ネタバレ)
手塚治虫の原作『火の鳥 望郷編』との違い比較
『エデンの宙』では、ロミが息子・カインが成人するまでコールドスリープをしようと決断しますが、地震の影響で計器が狂って13年のはずが1300年後に目覚めることになります。
カインはその間に火の鳥が送ったムーピーと結ばれ、子孫を残し、カインが死んだ後にエデンの国が栄えるという改変です。
ロミとカインの近親相姦は『火の鳥 望郷編』においては非常に大きなポイントでした。倫理的タブーを突きつけて生命の真理を浮き彫りにしているからです。この点が変更されていることに違和感を覚える原作ファンは多いでしょう。
私もこの改変にはびっくりしました。倫理的タブーから人間の本質を見つめることこそ火の鳥の意義だと思ってましたから。
しかし、本作はコムと息子のカインが重なるコンセプトだとわかり(カインとムーピーの子孫であるコムが、カインとロミの「一緒に地球へ行く」という約束を果たす)納得できました。
単に2023年に近親相姦のコンテンツを配信するのははばかられる!ということではなく、コムとカインを同一視させ、ロミと息子の時を超えた絆を描いた作品になっていたわけです。
手塚治虫先生が生きていたらなんと言うかはわかりませんが(笑)、私はこのコンセプトに感動しました。
人間は子孫を残すためにどこまで禁忌を犯せるのか!という原作の本質的な部分は薄れましたが、代わりに母と子の絆が時空を越えるという美しいメッセージが浮かび、心に刺さりました。
そして、ラストも原作と大きく異なります。
角川文庫の『火の鳥 望郷編』ではロミとコムが地球にやってきたあと、コムは牧村に撃たれて湖で花になり、ロミも死亡します。死亡したロミを牧村がエデンに送る最後です。
しかし本作『火の鳥 エデンの宙』ではロミもコムも死なずに、エデン17へ帰還。ズダーバンによって滅ぼされた自国を目の当たりにするという結末に変更されています。
ロミにとっては地球だけでなくエデン17も望郷の対象になるという深いメッセージがありました。
いっぽうで、ロミは自分が築き上げたエデン国の滅亡を目の当たりにして絶望する救いがなさすぎる結末にも映ります。
救いはチヒロ(AIロボット)からもらった種もみだけ。ロミとコムがその後どうなるのかわからないので消化不良です。
この種もみは、また作物を育てればいいという希望の象徴なのでしょう。
しかし、ロミも寿命がもうすぐ尽きてしまうので、エデンがまた繁栄するのはむつかしいと思います。
映画『火の鳥 エデンの花』では、また違う結末が用意されいるようです。エデンの花では原作通りロミが地球で死ぬラストを迎えるのかもしれませんね。
もしくはまったく想像つかないようなラストになるのかも!
個人的には原作とも違う予想外かつ壮大な結末を期待したいです。
女性が母になる過程を宇宙規模で描く
ロミとジョージが地球から逃亡し、惑星エデン17で子孫を繁栄させる物語は、女性が実家からはなれて家族を作り、母になる過程を宇宙規模で描いているように見えました。
エデンから地球に帰る展開は、自分の子孫を持った後で、また幼い子供の頃に戻りたい、もう1度だけ母の子供に戻りたいという願いが込められているようです。
人間の普遍的な欲求を表現しているようでもあります。
ロミはズダーバンの施術で若返っているので、単に地球へ戻ってきただけでなく、タイムバックしているようにも捉えられます。
ロミは幼少期への郷愁から地球という過去をおとずれ、改めてエデン17で母になることを肯定したようです。
いやあ、すごく深い物語ですね。
最後のまとめ
『火の鳥 エデンの宙』は手塚治虫の原作漫画からコンセプトを変更しつつも、悟りを開けるような壮大なストーリーに仕上がっていました。
劇場公開の『火の鳥 エデンの花』も楽しみですね。ラストはどう変わっているのでしょうか。
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