映画『銀河鉄道の父』ネタバレ感想:父の愛に涙!ラスト解説!あらすじ結末考察と評価レビュー

  • 2023年6月1日

映画『銀河鉄道の父』。作家・宮沢賢治を支えた父・政次郎は息子にどんな思いを描いていたのか? 役所広司、菅田将暉、森七菜さんが家族の絆とその大切さを痛感させてくれます。

シネマグ
この家族なしでは宮沢賢治は誕生しなかったであろう!そう感じさせてくれる感動作。

作品情報・キャスト

ネタバレなしの感想

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

ストーリー考察

物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓

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映画『銀河鉄道の父』作品情報・予告

公開:2023/05/05
制作国日本
上映時間:2時間8分
ジャンルヒューマンドラマ
年齢制限:G(年齢制限なし)
監督:成島出(『八日目の蝉』『いのちの停車場』)
脚本:坂口理子(『かぐや姫の物語』『僕が愛したすべての君へ』)
原作:門井慶喜の小説「銀河鉄道の父」
主題歌:いきものがかりの「STAR」

映画『銀河鉄道の父』キャスト

父・政次郎|cast 役所広司

父・政次郎|cast 役所広司

質屋を営む宮沢家の当主。病弱な賢治が心配でたまらない。

役所広司さんが演じる父親…悪いわけないじゃないですか。あたたかい眼差しが印象的。こんな父親いたら最高です。

成島出監督とは最近だと映画『ファミリア』(2023)でもタッグを組んでましたね。2023年には福島第一原発の事故を描いたNetflix『The Days ザデイズ』でも主演を務めました。

役所広司 出演作:『タンポポ』『SAYURI』『峠 最後のサムライ』

宮沢賢治|cast 菅田将暉

宮沢賢治|cast 菅田将暉

宮沢家の長男。幼い頃は病気がちだった。質屋を継いでほしい父に反抗する。

演技力に定評のある菅田将暉さんが愚直で変人な宮沢賢治を好演していました。

↓菅田将暉 出演作品↓

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妹・トシ|cast 森七菜

妹・トシ|cast 森七菜

森七菜さんは独特の透明感が魅力だと勝手に思ってますが、今回は透明感だけでなくすごく芯が強い女性を演じていてすごいと思いました。

2023年はNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』の演技もすばらしかったです。

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新海誠監督のアニメ映画『天気の子』(2019)のヒロイン・陽菜役の声優も務めています。

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その他キャスト

役名 キャスト(出演作)
宮沢喜助(賢治の祖父。政次郎の父)

宮沢喜助を演じる田中泯

田中泯(『たそがれ清兵衛』『るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編』『HOKUSAI 北斎』)
宮沢イチ(賢治の母。政次郎の妻)

宮沢イチを演じる坂井真紀

坂井真紀(『ロストケア』,ドラマ『ゲゲゲの女房』)
宮沢清六(賢治の弟)

宮沢清六を演じる豊田裕大

豊田裕大(『妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-』)

『銀河鉄道の父』あらすじ

宮沢賢治の父・政次郎(役所広司)は、長男の誕生を聞いて帰りの汽車のなかでいても立ってもいられなかった。

政次郎は父の宮沢喜助(田中泯)から「賢治と名付けた」と聞いて顔をぐちゃぐちゃにしてよろこんだ。

幼少期の賢治は病気がちだった。政次郎は赤痢で入院した賢治を必死に看病する。しかし逆に自分が腸を壊して入院してしまった。

それからしばらくたち、賢治(菅田将暉)は中学校を卒業して戻ってきた。しかし成績はあまりかんばしくない。

政次郎は賢治に質屋を継ぐように言うが、頑固者の賢治は「質屋ではなくもっと世の中の役に立ちたい」と言って聞かない。

そんな賢治を妹のトシ(森七菜)は優しく見守る。トシと賢治はアンデルセンなどの文学が大好きだということで心を通わせていた。

賢治は「農民たちの役に立ちたいので盛岡農林高校に進学したい」と言う。

父・政次郎は反対したが、トシが「新時代を見据えた父親になるんでしょ?」と政次郎を説得。

賢治は晴れて進学するが、その後も人造宝石の商売の話や、日蓮宗にハマったりと、父の思い通りにはならなかった…。

ネタバレなし感想・海外評価

タイトルの通り、宮沢賢治と父の絆の物語で、小説家・宮沢賢治をメインにした作品ではありません。妹・トシとの絆も描かれます。

シネマグ
自由奔放で思い込んだら他人の意見を聞けない賢治を支える父・政次郎の愛情の深さがヒシヒシと伝わってくるのです。

宮沢賢治というと私は文章表現が奇抜で美しい天才をイメージしますが、この天才はこの家族なしには誕生し得なかったと思わされます。

フィクションですが史実に基づいている部分も多く宮沢賢治の小説や文章は、家族と一緒に生み出されたのだと感極まりました。

ストーリーの起伏が若干とぼしくエンタメ性が高い作品かと言われれば違います。

人によって好みは分かれるでしょうけど、世界最高の父と息子の絆を目の当たりにしたい人はぜひ視聴してみてください

おすすめ度 65%
父と息子の愛情 95%
ストーリー 70%
IMDb(海外レビューサイト)※随時更新 (10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新 批評家 %
一般の視聴者 %
メタスコア(Metacritic)※随時更新 (100点中)

※以下、『銀河鉄道の父』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『銀河鉄道の父』ネタバレ感想・評価

良い点

邦画『銀河鉄道の父』の評価は80点。

父・政次郎が息子・賢治にどれくらい深い愛をそそいでいたか伝わってきました。

父・政次郎や妹・トシが賢治のことを理解してくれたからこそ、歴史に名を刻む小説家が誕生したのだとわかります。

賢治の小説を「真剣に読んで理解したい、1番の読者になってやりたい」という政次郎の心意気には感涙です。

シネマグ
子供にとって親が自分を理解しようと必死な姿を見せてくれる以上に幸せなことってあるでしょうか
感想を語る犬
賢治の一生が幸福に満ちたものだったかはわかりませんが、幸せな息子だったことは確かです。

感動的で泣けるシーンも多く、私の斜め向かいの人は上映中にずっと泣いてました。

個人的にグッときた場面をいくつか紹介。

まずは田中泯演じる祖父・喜助が、賢治の世話を焼きすぎる父・政次郎に言った「お前は父でありすぎる」というセリフです。

原作小説の言葉選びの良さもあるでしょうけど、近年の邦画に足りない「考えさせられるセリフ」でした。抽象絵画のように心ににじむ言葉でした。

全部わかりやすい言葉で説明するのでなく、観客に考えさせる言葉が今の邦画界には欠けている気がします。

森七菜さん演じるトシが「きれいに死ね」と言って認知症・喜助をビンタしてから抱きしめるシーンも痛烈でした。

祖父をビンタするとは現代でも倫理的に許されないでしょう。それをこの時代にやったのかという衝撃が1点。倫理を超えて祖父の尊厳を守りたいという痛切な気持ちが伝わってきたのがもう1点です。

このビンタを受けた祖父・喜助は、政次郎を見て「息子が生まれる」と口にします。

祖父・喜助にとっても息子・政次郎が生まれた瞬間が人生で1番幸せだったのかと気づかされて感動的でした。

トシのビンタから喜助の発言の一連の流れは映画として完璧だったと思います。人間の本質や人生を凝縮して映像化したようなすばらしいシーンでした。

それにしても喜助を演じた田中泯さん、舞踊を極めているだけあってやっぱり立ち姿とか表情とか最高ですね。『たそがれ清兵衛』での演技に匹敵するかと思うくらいでした。

政次郎はじめ家族で、病気のトシを山の別宅から自宅にリアカーで運ぶシーンは雪が降っていて狂気的。すごく美しい絵でした。

あとはすごい細かいところを言うと、宮沢賢治がセロを弾いてみんなが合唱するシーンで賢治のセロの音程が少しずれていた気がするので、小説「セロ弾きのゴーシュ」の「糸が合わない!」にかけているのかな?とも思いました。

狙ってやっているとしたらディティールへのこだわりがすごいですね。

悪い点

本作に悪い点というほど致命的なダメ出しはないですが、あえて述べるなら↓

  1. 物語のパワーや起伏に乏しいこと
  2. メインのテーマが定まりきっていないこと

が挙げられます。

まず物語の大半が、変わり者の賢治がとっぴな行動や言動で父・政次郎を悩ませるというワンパターンな展開でした。

賢治が「人造宝石を作りたい!」「日蓮宗に人生をささげたい!」などすごいことを言い出して政次郎と口論。

結局は政次郎が折れて息子・賢治を遠目に見守るという流れです。

あとはトシと賢治の結核が続きます。

似たパターンが続くうえに、宮沢賢治を少しでも知っていればトシが死ぬことも賢治が死ぬこともわかっているので意外性もありません。

悪い言い方をすれば、再現VTR的な印象を受けてしまいました。

あとは後半はともかく、中盤までは父・政次郎の物語なのか、賢治の物語なのかどちらがメインかわかりにくかったです。

好みにもよりますが、主人公は政次郎なのでもう少し彼にスポットを当てても良かったと思いました。

さらに政次郎と賢治だけでなく、賢治とトシの絆も強く描かれているので、全体的に家族の物語でもあるんですよね。家族の物語だとすると、坂井真紀演じる母・宮沢イチをないがしろにしすぎではないか?という疑問もわいてしまいます。

あと細かい点をいえば、映画の描写に宮沢賢治の小説っぽさはないです。

宮沢賢治の小説の映像化でも自伝映画でもないので、小説っぽさがないのは仕方ないかもしれません。

ただ宮沢賢治の小説に感動したことがある人は、その雰囲気を期待したのでは?

強いていえば、賢治とトシが草むらに寝っ転がって本について語っているシーンが宮沢賢治っぽかったです。

『銀河鉄道の父』考察(ネタバレ)

本作を見て、小説「銀河鉄道の夜」にはジョバンニの父親が出てこない理由がわかった気がします。

ジョバンニの父親がいつまでも帰ってこないのは、賢治が父・政次郎のようになれなかったことの負い目が反映されているのだと思いました。

そして親友・カムパネルラは妹・トシと重なります。

史実として宮沢賢治は妹の死でとても大きなショックを受けたようなので、妹にどこまでもついて行きたいという思いが『銀河鉄道の夜』を書かせたのではないでしょうか。

これらの解釈が正しいかは分かりませんが、『銀河鉄道の父』を見て小説「銀河鉄道の夜」についての私なりの解釈は少し変わりました。

映画『銀河鉄道の父』ネタバレあらすじ解説

賢治の暴走

賢治の祖父・喜助は認知症が進行し、暴れるようになっていた。トシが喜助の頬をピシャリと叩き、「きれいに死ね」と言って抱きしめる

喜助は立ち上がり「息子が生まれたんだ」と言う。政次郎が喜助の前にたち涙を流した

まもなく喜助は死亡した。政次郎や賢治たちは火葬場で喜助を見送る。

農林学校へ通っている賢治は夏休みに帰ってきて、「人造宝石を作る商売をしたい。金を二三百円出資してくれ」と言った。

まったく上手くいくと思えない提案に政次郎は困り果てた。

やがて賢治は農林学校を辞めると言い出す。賢治は「自分ができることの限界を感じた。日蓮宗の教えをまっとうするしか人の役に立つ道はない」と言い張った。

賢治は地元の浄土宗の儀式で日蓮宗のお経を大声で唱えて太鼓を打ち、近所から「気が狂った」と言われた。

妹・トシの病気

賢治は家を出ていく。しかし日蓮宗の団体に入れもせず、アパートでもんもんと過ごしていた。

ある日、賢治にトシが結核にかかったと電報が届く。

賢治はおどろき、「いつか物語を書いて!」と言っていた妹のために「風の又三郎」を書き上げた

賢治は原稿用紙を持って妹・トシがいる山の別荘へ行った。そして風の又三郎を読み聞かせる。

トシはおもしろいと言い、涙を流して喜んだ

賢治は毎日献身的にトシの看病をする。賢治は結核にニコチンがいいと誰かに聞かされ、妹にタバコを吸わせた。

毎日賢治が書く新しい物語を聞いたトシは一時期回復するが、ある日容体が急変。

トシは自宅に連れてこられ、闘病を続ける。しかし家族が見守るなか、死亡した

賢治はトシの葬式でお経を唱える。父・政次郎はそれを止めなかった。

ラスト結末

賢治はトシと過ごした山の別荘で1人で小説を書きながら過ごすことにする。

批評家にも認められて「春と修羅」を自費出版するが、まったく売れなかった。政次郎が本屋でたくさん買い占めた。

賢治は私塾・羅須地人協会を開き、農林学校で得た知識を農民たちに教えたりもしていた。たまにセロを弾き、みんなで合唱した。

父・政次郎は自由奔放に生きる賢治をあたたかく見守っていたが、賢治がタバコを吸っていると聞いておどろいて部屋へ行った。

賢治は原稿用紙に血を吐いていた。結核にかかってしまったのだ

政次郎は「俺がお前の1番の読者になる。まだ終わりじゃない」と言う。

賢治は「銀河鉄道の夜」などたくさんの名作を書くが、寝たきりの状態になった。

政次郎は力を込めて「雨ニモマケズ」の詩を朗読する。賢治はそれを聞いて安心したように自宅で息をひきとった

数年後、政次郎は宮沢賢治全集が出版されているのを見て顔をほころばせた。

銀河鉄道には賢治とトシが乗っていた。政次郎も向かいの席に座る

映画『銀河鉄道の父』終わり。

最後のまとめ

シネマグ
映画『銀河鉄道の父』は、天才・宮沢賢治を生んだ家族の絆、父の愛情を描いた良作でした。

ただ映画的にはもう少し物語に起伏があったほうが見応えがあったと思います。

暗いシーンが多く、明るい面だけでなく小説家・宮沢賢治の暗い部分も浮き彫りにした作品でしたね。

感動的なシーンもたくさんありましたが、若干冗長なせいか映画館でイビキも聞こえてきました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『銀河鉄道の父』レビュー終わり!

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