グロカルト映画イレイザーヘッド/ネタバレ考察!赤ちゃんスパイク正体解説,感想評価,ラスト意味,あらすじ伏線,キャスト

  • 2024年4月7日

グロカルト イレイザーヘッドの赤ちゃん=スパイク君

グロカルトの金字塔的映画『イレイザーヘッド』を観賞!

いや〜この映画ほどいろんな意味で衝撃的な作品はない!!

何気なく観てしまうと、「グロいし、意味がよく分かんね〜!」で終わってしまうのですが、

デヴィッド・リンチは映画にしっかりテーマやメッセージを詰め込むタイプなので、この映画にも隠された意味がたくさん詰まっているのだ!

デヴィッド・リンチ作品が大好き!カルト映画大好き!そういう人向きのマニア指定映画です!

※以後ネタバレになりますので、まだ本作を観てない人は注意してください!

『イレイザーヘッド』あらすじと予告動画

工業地帯で印刷工員として働く髪型の特徴的なヘンリー・スペンサー(ジャック・ナンス)は、恋人メアリーに呼ばれ彼女の実家へ。

そこでメアリーの母親から、メアリーと性交渉はあったか質問を受け、さらに話を聞くと、小さくて変てこりん(奇形)の赤ちゃんが生まれていることが発覚。

ヘンリーは仕方なくメアリーと結婚し、奇形の赤ん坊と3名でボロアパートを舞台に奇妙な新生活が始まる。

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映画『イレイザーヘッド』見どころ!

奇形の赤ちゃんスパイク!

奇形の赤ん坊!は本作で一番インパクトがある登場人物です。

手足がなく体は包帯で巻かれていてとってもグロいのですが、鳴き声や表情など、どこか赤ちゃんらしい可愛げもあります。

すごく不思議な存在!劇中では明かされないのですが、実はこの赤ちゃんには名前があるので後半で教えます。

惑星が何を表しているか?

クレーターのある惑星がところどころ出てくるのですが、それが一体何を意味しているのか?

惑星以外にも、”皮膚病っぽい男性”、”長細くウネウネした生き物”、”ディナーのチキン”など、それぞれ何の比喩なのか意識してみると、この映画を理解でき、満足度が約5倍に!

映画『イレイザーヘッド』深掘り解説!

イレイザーヘッドとは?

「 イレイザーヘッドって何んだろう?ヘンリーの髪型のこと?」

イレイザーヘッドとは、鉛筆についている消しゴムのことです。それがヘンリーの髪型の元になっているかは定かではないですが。

ヘンリーの幻覚で、子供が持ってきたヘンリーの生首についてある男が「合格だ!」と言い、鉛筆で紙に何か書いてすぐ消しゴムで消し、消しカスを「フッ!」吹き飛ばすシーンがあります。

人間の頭は所詮 イレイザーヘッドのような消耗品で、すり減らされて細かなゴミクズになるようなものだ!ということを示しているのかもしれません。

最初の惑星、細いウネウネしたものは?

クレーターのある惑星は 卵子、細くてウネウネしているものは 精子を表しています。

冒頭は受精を表現しているのです。

工場でレバーを引く皮膚病っぽい人は?

冒頭で工場でレバーを引き、中盤でも少し出てくる皮膚病っぽい男性は、受精についてタイミングやどの 精子が受精するかなどを決めているのだと思われます。

受精なんて、例えるならそういった劣悪環境での流れ作業のようなものだ!という皮肉的な意味合いを持ちます。

ラジエーターガール

ラジエーター(暖房器具)の間にみえる劇場で歌う女の子は明らかなヘンリーの幻覚です。

ラジエーターの中に小劇場があるというリンチ監督の発想は卓抜ですね。

”何か”が踏み潰される描写

途中で ラジエーターの女の子に踏み潰されるウネウネした生物も恐らく 精子でしょう。

ただ、形状からへその緒とも取れます。 精子だとすれば受精に対して、臍の緒だとすれば中絶に対してそれぞれ後悔と嫌悪感がヘンリーの頭の中で暴走しているのだと思います。

事件の目撃は願望?

ヘンリーは自分の部屋の窓から、通りで男女の揉め事が起こっているのを目撃します。

これは妻のメアリーを殺したい、憎んでいるという願望だとおもいます。

あるいは既に妻を殺していて、それに起因した幻覚を見ているのかもしれません。

スパイク君の笑い声

ヘンリーが浮気相手が別の男と一緒に部屋に入ったのを目撃し絶望しているとき、スパイク君はゲラゲラと笑ます。

大人の男性が人間として生まれたばかりの胎児に笑われるというのは、なんとも強烈な皮肉です!

映画『イレイザーヘッド』隠れたテーマ考察

親になることへの不安

イレイザーヘッドのテーマについては、当時リンチが若くして恋人が妊娠してしまい、親になることへの不安が投影された映画だという説が多いです。

確かに、親になることへの不安、親になった場合の心境などの内面をグロテスクに表現しているというのはありますが、それだけでしょうか?僕は イレイザーヘッドにもっと深い隠れたテーマがあると考えます!

中絶!

イレイザーヘッドのテーマ!それは中絶に対する嫌悪感です!

親になることを拒否する心理に対しての嫌悪感を示しているのでしょう。そうとしか思えない描写がいくつかあります。

メアリー家でディナーにチキンが出てきたときに、父親がヘンリーに切り分けてとお願いすると、チキンの股の間から血?みたいな物がドロドロ流れ出てきます。

これは中絶の真実や重みを男側も知るべきだ!ということではないでしょうか?

また、スパイク君(奇形児)は未熟児や奇形でなく、まだ生まれておらず不完全な胎児だとも考えられませんか?

ヘンリーは最後にハサミでスパイク君を殺してしまいますが、これも中絶の実際を表しているともいえます。

親になることは本来人間として正しいことなのに、それを嫌がったり、あまつさえ中絶してしまうこともある。

それに対してのアンチテーゼが イレイザーヘッドの真のテーマだと思います。

赤ん坊・スパイク君の正体を考察/牛の胎児?

このグロテスクな奇形児の赤ちゃんには名前があります。

それは『スパイク』!と言っても作中では名前に触れず、撮影時の呼び名だそうです。

スパイク君は非常にグロテスクでありますが、どこか無垢な可愛らしさも持っている不思議な存在。

撮影には牛の胎児を使ったという噂や、ウサギの皮を剥いで使ったとの噂もありますが、リンチ監督は真実について語らないので定かではないです。

牛の胎児を撮影に使うって倫理的にアウトっぽいですよね。。

でも、1977年当時にあんなスムーズな動きができるロボを用意するのは難しそうですもんね…。

断定はできないですが、形状から推察するにやっぱり牛か何かの胎児でしょう!!

カラーだとグロすぎるので白黒

1977年前後の主流は既に白黒でなくカラーですが、この映画をカラーで作るとグロ過ぎるということで白黒フィルムになったそうです!

素敵な配慮をありがとう!きっとカラーだとトラウマから立ち直れなかったと思います(笑)。

映画『イレイザーヘッド』のトリビア

監督の実生活が反映されており、完成まで4年

工業地帯が舞台というのも監督の実生活に起因するものだそうです。

デヴィッド・リンチ監督は フィラデルフィアの劣悪環境に住んでいたこともあり、その地域の風景や騒音から多くのインスパイアを得ていたようです。

若くして子供ができてしまったのも本当で、お金もなかったので昼は普通に働いて、夜は映画の撮影という生活を4年続けて完成させたのが イレイザーヘッドなのです!

このときに娘は”しっかり”と生まれており、それがその後カルト映画監督として活躍する ジェニファー・リンチ!

奥さんは イレイザーヘッドの製作中に逃げてしまったようで(笑)、公開前に離婚しています。

ラジエイターガールの歌「In Heaven」

イレイザーヘッドの劇中音楽は一部のマニアには人気があります。

ここでは映画の中で一番印象的なラジエイターガールが歌う「In Heaven」をお送りします(笑)

「Everything is fine in heaven(天国ではすべていい感じ〜」と歌うほっぺにコブが付いた彼女。。狂っているとしかいいようがない!!

映画として奇妙なトコロ!

ストーリーに直接関係はしないですが、リンチ監督による奇妙なシーンを取りあげてみました!

冒頭はノイズ音楽

冒頭はずっとノイズが鳴っており、しかも10分以上誰も言葉を発しません。

引き出しに水が

ヘンリーの部屋の引き出しの入れ物に水が張ってあり、ヘンリーはそこに何か(コインかな)をポチョンと落します。

湿気になるので引き出しに水物を入れるって絶対あり得ないですよね。監督の秀逸な発想だそ思います。

メアリーのパパがチキンみたいな歩き方

メアリーのパパは配管工か何かの職業で、「職業柄こんな歩き方になってしまったよ」といい、チキンみたいな歩き方をヘンリーにみせます。

これは女性が中絶するときの体勢を示しているのでしょうか?  定かではないですが、明らかにおかしいシーン!

メアリーやママがいきなり発作!

ヘンリーが訪ねて行った時、メアリーやそのママがいきなり発作を起こします。

無責任なヘンリーに対する嫌悪感なんだと思いますが、意味不明なタイミングで発作がおきます。

メアリー家でのディナーは1時半?

ヘンリーがメアリーの実家に呼ばれて夕食をとるシーンで、時計は1時半前を指しています。遅すぎませんw?

メアリーのママがいきなり抱きつく

ヘンリーにメアリーと性交渉したかどうか聞くママ、質問しときながらいきなりヘンリーに抱きついて首筋にキスをし、メアリーにたしなめられます。意味がわかりませんw

映画『イレイザーヘッド』ネタバレあらすじ解説

ヘンリーの不器用な子育てと浮気

棚の上でずっと泣いていた奇形児に耐えかねた妻メアリーは実家に帰ってしまいます。

ヘンリーは困惑しながら不器用な子育てをはじめます。そして妻がいないのをいいことに、魅力的な隣人と浮気をしてしまうヘンリー。

ラジエーター劇場の登場

ヘンリーは様々なストレスから、 ラジエーターの間から見える不思議な”劇場”を発見。

そこで歌って踊るほっぺにコブ付きの女性が、細長いウネウネした生き物を足で踏み潰しています。

そして自分の首が取れ、奇形児のものとすげ代わり、自分の首は子供に拾われ大人たちに評価してもらう幻覚を見ます。

ヘンリーの狂気はスパイクに向けられた

浮気相手の隣人が他の男性と部屋に入るのを目撃したヘンリー。それを知ってか知らずか奇形児は笑い声をあげます。

ヘンリーはハサミを持ち出し、奇形児の包帯を切断。中には内臓が剥き出し状態で詰まってました。

さらにヘンリーはハサミでその内臓を突き刺すと奇形児は膨張して首が伸び死亡。ヘンリーの頭も部屋のコンセントもスパークしてフィナーレ(死亡)!

映画『 イレイザーヘッド』キャスト・作品情報

公開年/制作国 1977年・アメリカ
監督・脚本 デヴィッド・リンチ
脚本
キャスト ジャック・ナンス
音楽 アラン・R・スプレット
主題歌 『 In Heaven』
ピーター・アイヴァース

変てこりんな髪型の主人公ヘンリーを演じるのはジャック・ナンス! 初期のリンチ作品の常連で、非常に個性的な俳優であります。ドラマ『 ツイン・ピークス』への出演でも有名です。

音響・音楽を担当しているアラン・R・スプレットは、ノイズを効果的に用いた手法で デヴィッド・リンチ監督に大きな影響を与えており、初期リンチ作品の重要人物です。

この映画はノイズ的な音楽が流れている場面が多いですが、それが逆に引き込まれるということで サウンド面でも話題になり、 ピーター・アイヴァースの変てこポップソング『In Heaven』なども加えたサントラも人気らしいです!

最後に感想まとめ

一見、意味不明な怪作『 イレイザーヘッド』も、さまざまな観点から紐解いていくことで、 デヴィッド・リンチ監督が伝えたかったこと、作品の意味やテーマが浮かびあがあってきましたね。

親になることへの 心理的反発や中絶、それに対する嫌悪感をこれでもかというグロテスクな描写でシニカルに表現した イレイザーヘッドはやはり傑作と呼ぶに相応しいでしょう!

映画イレイザー・ヘッドの関連記事↓

映画『 イレイザーヘッド』以外にも、 デヴィッド・リンチ監督は名作をあらすじネタバレありで解説した記事がたくさんありますのでご覧ください。

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