マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロのコンビで送る映画『ケープ・フィアー』(恐怖の岬)。
終始緊張感MAXで、度を越したサイコスリラー映画になっている。
そんな『ケープ・フィアー』の感想や名ゼリフ、そして葬られたラストについて語る。
映画『ケープ・フィアー』ネタバレ感想・評価/知識を得た野獣は手に負えない
『ケープ・フィアー』の率直な感想は、「ここまで生々しい暴力を描くか普通?」というものだった。
ケイディ(ロバート・デ・ニーロ)が、サムの不倫相手ローリー(イリーナ・ダグラス)を襲ってベッドの上で腕を折り、顔の肉を噛みちぎるシーンなんか怖すぎるし、終盤に舟の上で燃やされて火傷したケイディの顔なんか本当に恐ろしい。
マーティン・スコセッシ監督といえば暴力描写で有名だが、『ケープ・フィアー』では食あたりを起こすほどそれを堪能できる。
刺青からも狂気が滲み出ている。
(My time is at hand/意味:俺の時間は俺の手に)
(VENGEANCE IS MINE(新約聖書)/意味:復讐は俺の手に)
冷静に思ったのが、ケイディみたいな野獣のようなヤツが教養を身につけると本当に手に負えないということ。
教養がある人は、一般的に考えるといい人のようなイメージを持ってしまうが、『ケープ・フィアー』ではその固定観念が根本からひっくり返されている。
『13日の金曜日』シリーズのジェイソンとかは怖いけどハッキリいって頭は悪そうなので、こちらが頭を使えばなんとかなりそうな感じはある。
しかし、『ケープ・フィアー』のケイディは暴力的な上に、こちらの考えを読んで行動してくるので、タチが悪い。
教養を身につけた悪人として共通点があるのはダーク・ナイトのジョーカーとかかなあ。哲学的思考を身につけた敵が現れたら・・やっぱり勝てそうにない・・・
タクシー・ドライバーの名ゼリフに似せたシーン解説
『ケープ・フィアー』同じくマーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロの名作『タクシー・ドライバー(1976)』の名ゼリフを真似たセリフが出てくる。
それはケイディ(ロバート・デ・ニーロ)が探偵のクロードに言ったセリフ「You threaten me?」訳すと「おまえまさか、俺を脅してんのか?」というもの。
『タクシー・ドライバー(1976)』の「You talking to me?」「俺に話しかけてんのか?」という映画好きなら誰もが真似したくなるセリフがあるが、使い飽きた人は「You threaten me?」を使ってみよう!きっと、一段上の映画マニアとして認知されることだろう。
下記動画の再生38秒後のシーンで実際に使ってます。
映画『ケープ・フィアー』暴力のカタルシス解説
マーティン・スコセッシが監督する映画の特徴として、緊張感のあるシーンを積み重ね、それを暴力のカタルシスで解放するというものがある。
今作でも、サムがケイディにブチ切れ、石で彼の頭を殴るシーンで最高のイケナイ・カタルシスを得られた。
倫理で考えれば、そんな暴力的な場面でカタルシスを得るのは人として間違っている気もするが、きれいごとで済まない部分がスコセッシ映画の魅力なのだ。
映画『ケープ・フィアー』真のラスト考察
『ケープ・フィアー』では、暴行魔のケイディ(ロバート・デ・ニーロ)が弁護士のサム(ニック・ノルティ)に「旧約聖書のヨブ記を読んでおけ」と言うくだりがある。
そこから家で私立探偵クロードの殺害と、恐怖の岬でのラストの血みどろの暴力劇に突入していくのだ。
この流れを考えると、ラストの結末は本当は違うものが用意されていたのではないか?と考えられる。
すなわち、娘のダニエルが波にのまれて死亡しているという最悪のラストだ。
「ヨブ記」とは、サタンによってヨブという善良な男性ヨブの子供たちが死んでしまうという物語である。
それをラストに反映させるなら、サムの妻は助かっていたが、ダニエルは見つからないというストーリーになるだろう。
そのラストを採用していれば『ケープ・フィアー』は『ミスト』並みの後味が悪い胸糞映画として伝説になっていたことだろう。
スコセッシ監督も当然このストーリーは考えていたと思うが、あまりに救いようがないため、やめたのだと思う。
これらは筆者の個人的な推測だが、ヨブ記の内容を踏まえて『ケープ・フィアー』のラストを観てみると気持ちをわかっていただけると思う。
あなたは映画とこちらの結末どちらがお気に召しただろうか?
ダニエルが死んでいた方がよかったと考えたあなたは立派なケイディの後継者だ!
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