ネタバレ考察『アバター2』キリの父親はだれ?子が親を救う逆転の物語、WoW壮大なメッセージ

  • 2022年12月24日

映画『アバター2:ウェイ・オブ・ウォーター』のネット上の評価、SNS、海外の批評家の意見などを見ていると「映像はすごいけど内容は薄い。ストーリーは既視感バリバリでつまらない」といったものが散見されます。

そこで本記事では内容についてのガッカリ感を払拭(ふっしょく)するために、メッセージ性などを深掘り考察してみました。

映像を楽しむ映画なので仕方ない面もありますがストーリーは確かに薄味です。

しかし展開や設定から考察すると、物語の深さはある映画だとわかります。

(↓『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の感想・ストーリーあらすじ解説は下記記事へ↓)

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映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
※ネタバレありなので、まだ『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を見てない人は注意してください。

映画『アバター2』考察(ネタバレ)

子供が親を救う物語

本作のストーリーは、ジェイクとロアク、クオリッチ大佐とスパイダーという2つの父子が軸になっています。

ジェイクとクオリッチは軍人であり、2人とも自分の息子に「イエス、サー」と言わせています。

2つの親子の対比関係はあきらかです。

ただ家族を守る強い父親とそれを越えようとする子供の成長というステレオタイプではないと思います。

シネマグ
ポイントは親が子供に救われる物語だということ。

現代社会では、体が大きくて経験も経済力もある大人が子供を守るのはあたりまえです。

でも親が子供に教えられることはあります。

本作では子供=ロアクとスパイダーが、父親=ジェイクとクオリッチ大佐の命を救うと明確に描き、親が子供に教えられるというよりもさらに強い子供も親を守れるという力強いテーマが宿っているようです。

常に身の危険があるような自然のなかで暮らしていれば、子供がとっさに親のピンチを救うこともあるでしょう。

親は子供を守る、子供は親に守られる。このワンパターンの関係ではないのです。

家族の機能を再定義しているともいえます。

現代社会は親が子を教育するという一方通行ですが、本来は親と子供がもっと柔軟に教えあったり助け合ったりするのが自然なのかもしれません。

より広い視点でみれば、親世代の過ちを子供と一緒に改善できるというポジティブなメッセージがあると思いました。

例えばグローバルな環境問題に人類が一丸となってどう取り組むのか?

具体的な解答ではなくとも、取り組む姿勢に関しては学べる部分がありました。

白人が先住民族に憧れる構図

惑星パンドラに取り残されたクオリッチの息子・スパイダーは、ラボの人間たちと一緒にいるよりも先住民と過ごすことを好みます。

かつて文化人類学・哲学者のレヴィ=ストロースは著書『野生の思考』などで、「未開の部族も彼らなりの知恵と膨大な知識があり、構造的にみて優れた部分がある。西洋文化と比較して優劣をつけるのはナンセンスだ」と近代の哲学者たちを痛烈批判しました。

シネマグ
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では、白人のスパイダーが先住民族に憧れていると描写することで、西洋批判をより強烈にやっているといえます。

さらに今作では身体的にもオマティカヤ族やメトケイナ族など先住民のほうが、白人=征服民より身体能力の面で圧倒的に優れている事実もセットです。

ケヴィン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)や、最近だとレオナルド・ディカプリオの『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)など、うがった見方をすれば「白人の中にも先住民を大切にするヒーローがいたんだぜ!」という映画(白人酋長モノ)はたくさんあり、前作『アバター』も広い枠ではこのくくりです。

先住民を守る白人という従来のコンテンツから、先住民に憧れ、先住民に守られるという一歩進んだ視点を入れ込んだのが本作『ウェイ・オブ・ウォーター』なのだと思いました。

逆転のコンセプト:脱構築

本作ではクジラ型の巨大魚・タルカンが知性を持っており、味方を守るためであっても絶対に争いをしてはならないというルールがあります。

ある面でタルカンという生物は争いばかりしている人間より進んだ存在として描かれているわけです。

子供が親を救うこと、白人が先住民に認められたがることも含め、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』には逆転のコンセプトがあるのでしょう。

より正確にいうと可逆性や双方向といった言葉が近いかもしれません。

  1. 親は子供より優れている
  2. 人類はパンドラの先住民より優れている
  3. 人間は魚より賢い

「これらは全部固定観念だよ、固定観念に縛られて生きるな!」というジェームズ・キャメロンの声が聞こえてくるようです。(少なくとも捕鯨反対のシンプルなメッセージだけではないでしょう)

このように二項対立の優劣の前提を崩すことを哲学の概念では脱構築といいます。

シネマグ
まあ細かい用語はさておき、真の平和はステレオタイプからは得られないと伝えているのでしょう。
先住民の美しい暮らしぶりを注意深くとらえると、既存の価値転換がおこなわれていることがわかります。
まとめると『アバター2』は惑星パンドラの先住民族の生活を体験させることで、視聴者の人生の視点を広げる有意義な作品だといえるでしょう。
ストーリーが展開する部分ではなく、むしろ展開しない生活描写に本質があります。
(その点を踏まえなければ、「前時代的なつまらないプロット」になってしまいます)

キリの父親はだれ?

前作『アバター』でシガニー・ウィーバーが演じたグレースはラボで休眠状態ながら、キリを身ごもって出産しました。

なのでキリの母はグレースですが、父親は誰かわかっていません。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のラストでも結局父親は誰かわからずじまいで、次作のアバター3で判明するのでしょう。

でも気になりますよね。

確定はできませんが登場した人間は限られているので、可能性としてはクオリッチ大佐がありそうな気がします。

シネマグ
クオリッチが父親なら、キリとスパイダーが非常に仲が良いのも説明がつきます。兄と妹の関係なわけです。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の序盤をみると、キリとスパイダーは先住民と人類で恋愛関係になるのかな?とも思いその可能性も捨てきれませんが、異母兄妹の説もあるかも…。

あとはメッセージから考えるのであれば、父親が誰であってもコミュニティで受け入れて幸せに暮らせるという理想社会を伝えているようでもあります。

父親がだれかは重要じゃないということです。

この考えをさらに発展させると、キリはエイワの化身で、そもそも父親はいないのかもしれません。

キリがエイワ(惑星パンドラの生物を結ぶ神経ネットワーク)との結びつきが異常に強いことから、エイワと一体化したグレイスが、エイワから命をもらってキリを生んだとも考えられます。

だとすればキリに魚の群れをあやつる能力があったり、イルにすぐ乗れたりする説明もつきます。

グレイスからキリへと命を転生させて生き延びる存在なのかもしれません。

本作でもキリは主人公級の扱いでしたが、次作アバター3では主人公になるのでは?

アバター5までの制作が予定されているので、キリが3作目、4作目のキーパーソンになりそうです。

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