Netflix映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』ネタバレあらすじ感想!黒人賛歌の西部劇考察・報復の荒野評価・ラストの意味や伏線解説

  • 2023年1月22日

Netflixで配信された映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール報復の荒野』を観ました!血が飛び散るガンアクションがスタイリッシュで見応え抜群!

ストーリーはシンプルながら、ブラック・ミュージックと銃殺のコラボレーションが非常にエンタメ的で楽しめる異色の西部劇です。

タランティーノ監督の『ジャンゴ 繫がれざる者』に通じるカタルシスがありました。

ちなみにザ・ハーダー・ゼイ・フォールは英語のことわざ「The bigger they are the harder they fall(大きくなった権力は激しく倒れる)」が由来と思われます。

(そのほかに、The Harder They Fallだけだと「倒れない!」的なニュアンスもあります。)

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ハンフリー・ボガート主演の映画『殴られる男(The Harder They Fall)』(1956)も同じタイトルですね。こちらから取ったのかも。
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』の評価 アンケート結果

映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』キャスト・作品情報

公開・制作国・上映時間:2021/10/22劇場・2021/11/03Netflix・アメリカ・139分
原題:『The Harder They Fall』
監督:ジェイムズ・サミュエル
脚本: ジェイムズ・サミュエル/ボアズ・イェーキン
原案:『The Life and Adventures of Nat Love: A True History of Slavery Days』
主演:ジョナサン・メジャース/ナット・ラブ役
出演:イドリス・エルバ/バック役
出演:レジーナ・キング/トルーディ役
出演:ザジー・ビーツ/メアリー役
出演:デルロイ・リンドー/保安官役
出演:ラキース・スタンフィールド/ビル役
プロデューサーはHIPHOP界の重鎮ジェイ・Zなこともあり、ブラックミュージック全開の西部劇です。
主人公のナット・ラブというガンマンは歴史に実在する人物で、本作は彼が書いた自伝『The Life and Adventures of Nat Love: A True History of Slavery Days』をモチーフに作られたフィクションです。
主人公ナット・ラブ役のジョナサン・メジャースは、映画『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』やティズニープラスの『ロキ』で知られている俳優。Netflixで2023年に公開された実話をもとにしたパイロットの戦争映画『ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン』でも主演を務めています。
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『ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン』
ヴィラン/ルーファス役の俳優イドリス・エルバは『スーサイドスクワッド2極悪党集結』(2021)でも活躍してましたね。体格いいし迫力がすごい!

ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ

あらすじ:無法者から金を奪う賞金首のガンマン/ナット・ラブは、幼い頃に自分の両親を殺した極悪非道のルーファス・バックが刑務所から世に解き放たれたと知り、かつての仲間たちと復讐のため立ち上がる…。

ストーリーはシンプルな西部劇の復讐譚です。

1番の見どころは銃撃戦・アクションシーンなので、何も考えずに見られるアクション映画が好きな人は楽しめると思います。流行りの韓ドラ・イカゲームのようにキャッチーで終始痛快です。

ただストーリーを重視する人には向かないでしょう。

個人的には好きな作品で、海外レビューサイトの評価もわりと高いです。

おすすめ度 80%
西部劇の独特な世界観 85%
ガンアクション 95%
ストーリー 65%
IMDb(海外レビューサイト) 5.7(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト 89%(100%中)

※以下、映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』ネタバレ感想・評価

列車で解放されたヴィランルーファス・バックとその仲間たち

 

『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』の評価は85点。
ストーリーは緻密ではなくツッコミどころ満載ですがそこは問題でなくスタイリッシュなガンアクションが冴えまくっている映画です。
スリリングな沈黙、血の飛び散り方など秀逸で迫力がものすごく、グロくて過激なガンバトルを見るだけでも価値があります。
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特にラストの15分ほど続く、敵味方入り乱れた撃ち合いは圧巻。街(セット)全体を使っての、人が無慈悲に死んでいく迫力満点の銃撃戦が堪能できます!
主人公のナット・ラブは普通でしたが、それ以外のイドリス・エルバが演じた敵役バックや、味方のカフィー、ジムなどみんな個性的で好感が持てたのも良かったです。
ちなみにラストシーンで立っていた手袋・黒コートの人物は顔は見えませんでしたがバックの仲間の女性ガンマンのトルーディ・スミスでしょう。
劇中で手袋をしているのは彼女だけですし、帽子の形やコートの色もトルーディと一緒です。
映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』パート2があるとすれば、トルーディとナットたちの対決になるのかもしれません。

考察:ザ・ハーダー・ゼイ・フォール

黒人賛歌:ブラックミュージック最高

映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』は主要な登場キャラ全員が黒人だったのが非常に斬新でした(白人はモブキャラ)。

そして劇中歌もウエスタン寄りのものに加えて、ゴスペル・ブルース・R&B・ファンク・HIPHOPなどのいわゆる黒人音楽が多用されています。

ジェイ・Zがプロデュースしているのも大きいですね。(ジェイ・Zによる挿入歌↓)

ブラックミュージック好きにはたまりません。

ラストのメアリーとトルーディのキャットファイト中にゴリゴリのファンクが流れる演出なんかは特に最高でしたね。

エンタメ性抜群のガンアクションを楽しむ映画ですが、ブラックミュージックを全面に押し出した黒人讃歌になっているとも思いました。

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黒人の歴史も含めてブラックの全てを肯定しているようなエネルギーが感じられましたね。

もうマイノリティだけで映画作るよ

メアリーにナイフを向けるトルーディ

『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』は西部劇の時代には差別されている黒人だけの物語にしていたのが印象的で、支配階級の白人を倒すというステレオタイプの映画ではありません。

一方で、しっかりと白人に対する不満・憎しみもサラッと描かれており、ヴィランのルーファス・バックが町で金を集めようとしているのも、町が白人によって金で買い叩かれそうなのを防ぐためです。

本作は、あえて白人を出さずに黒人の差別問題を突きつけている意味でとても画期的

ハリウッドなど世界的に映画制作でマイノリティ人種を登場させる多様性が叫ばれていますが、本作のストーリーだけでなくキャスティングまで視点を広げてみると、その思想が尖った最先端の形態といえるのではないでしょうか。

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「もうマイノリティだけで映画作っちゃおうぜ!」という感じですね。「主要キャラが全員黒人の映画を見て斬新だと感じたあなたは、これまでの白人至上主義に気づいたはずだ!」という逆説的なメッセージになっている気がします。

十字架が追ってくる

ナット・ラブの両親を殺したルーファス・バックですが、彼はなぜそのときにナットのひたいに十字傷をつけたのでしょうか。

深読みすると、悪に染まってしまった自分を十字架を背負ったナット・ラブに止めて欲しかったのだと思います。

十字架はキリスト教で“救済の象徴”ですが、悲しい過去のせいで悪に染まったルーファス・バック自身も心の奥底で負の連鎖を止めたかったのでしょう。

だからこそ、ナット・ラブに殺されるときに涙を流したのだと思います。

また十字架は、ナット・ラブが暴力で負の連鎖を止めても人の道に戻れるようにという願いもあるのでしょう。

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黒人同士は「ブラザー!」と呼び合ったりしますが、本作では主人公と敵を文字通り義兄弟にすることでルーツを同じにする者同士争うなというメッセージを伝えていたようにも感じられますね。

被差別人種・貧困層同士で争ったら富裕層の意のままだという社会風刺のテーマが垣間見えます。

ザ・ハーダー・ゼイ・フォールの伏線

金の指輪

中盤でヴィランのルーファス・バックが、捕らえた主人公ナット・ラブが持っていた指輪を奪いしみじみ眺めていましたが、これは2人が兄弟だったというオチの伏線になっていました。

鏡の前の自分の方が速い

個人的にかなり好きだった挙動不審な女ガンマンのカフィー。

彼女は早撃ちが自慢のジムに「鏡の前でもっと早く抜く人物を見た」(自分のこと)と言っていました。これが伏線的というかラストに繋がるセリフでしたね。

カフィーは終盤で敵のチェロキー・ビルを早撃ちで負かし、「ジムの方がお前より早かった」と仲間への敬意を口にします。

何を考えているかよくわからない目をひん剥いた表情が特徴的なカフィーでしたが、早撃ちにプライドを持っており、ジムを尊敬していたと分かったことで、彼女の内面が一気にあふれてきた印象です。

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