映画『ノースマン 導かれし復讐者』(The Northman)。父を殺されたヴァイキング国の王子が復讐に心を燃やすダークかつ重厚なストーリー。
- 作品情報・キャスト
- ネタバレなしの感想
- ぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
- オルガと巫女の関係を考察
- 物語ネタバレあらすじ・ラスト解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『ノースマン 導かれし復讐者』作品情報・予告
原題:『The Northman』
ジャンル:歴史・アクション・復讐劇
年齢制限:PG12(グロテスクな暴力シーンあり)
監督:ロバート・エガース
脚本:ロバート・エガース/ショーン
原作:「アムレートの伝説」スカンディナヴィアに伝わる物語
ロバート・エガース監督
『ウィッチ』(2015)『ライトハウス』(2019)で批評家から絶賛された若手の鬼才です。
現実か妄想かわからない境目を、不条理かつ強烈な映像で描くことを得意としています。
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本作『ノースマン 導かれし復讐者』がモチーフにしたのは「アムレートの伝説」(ハムレットの元ネタ)です。
当時の風習や倫理観をリアルに再現して「アムレートの伝説」を現代によみがえらせたような作品となりました。
『ノースマン 導かれし復讐者』キャスト
アムレート|cast アレクサンダー・スカルスガルド
アムレートは父を殺された復讐を誓う戦士。
アレクサンダー・スカルスガルドは最近だと『ゴジラvsコング』(2021)で主演を務めてましたね。
本作では筋肉ムキムキすぎてアレクサンダー・スカルスガルドだとわからないくらいでした。役作りが凄まじすぎます。
オルガ|cast アニャ・テイラー=ジョイ
オルガは奴隷にされてしまったまじない師。
アニャ・テイラー=ジョイは本作でも相変わらずの美しさでした。本作では濡れ場やドギツイ場面もあり、役者魂を見せつけた印象。
近年だと『ザ・メニュー』(2022)が素晴らしかったですし、『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)も話題になりました。完全にトップスターですね。
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ちなみにアニャ・テイラー=ジョイの映画初主演作がロバート・エガース監督の『ウィッチ』です。
アニャ・テイラー=ジョイ出演作:Netflix『クイーンズギャンビット』『アムステルダム』
その他のキャスト
ホーヴェンディル王|cast イーサン・ホーク 最近はダニエル・クレイグ主演の『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』にまさかの荷物運び役でカメオ出演してましたね。
グートルン王妃|cast ニコール・キッドマン
フィヨルニル|cast クレス・バング
巫女(シャーマン)|cast ビョーク
映画『ノースマン 導かれし復讐者』あらすじ
西暦900年代。
ヴァイキングの王・ホーヴェンディル(イーサン・ホーク)が戦争を終えて自らが統治する町に帰ってくる。
王子・アムレートは大喜びだった。妻のグートルン王妃(ニコール・キッドマン)が出迎える。
ホーヴェンディルは宴を開くが、弟のフィヨルニル(クレス・バング)は遅れてやってきた。
ホーヴェンディルはアムレートを神殿へ案内し、ヘイミル(ウィレム・デフォー)の指示のもとオオカミの遠吠えのマネをさせて陶酔状態になる儀式を行う。アムレートを一人前の男にするためだ。
アムレートは儀式の中で父ホーヴェンディルの腹の傷口から、先祖たちが枝先に引っかかった戦士の樹の幻想を見る。
翌日、ホーヴェンディルがアムレートと歩いていると弟フィヨルニルとその部下に襲われた。
ホーヴェンディルは斬首され、アムレートも兵士に追われた。
アムレートは兵士の鼻をナイフで切断して逃走。
母・グートルンがとらわれたのを横目で見ながら、フィヨルニルへの復讐と母の救出を誓って大洋に向かって舟をこいだ。
数年後、ヴァイキングの戦士としてたくましく成長したアムレートは、フィヨルニルへの復讐を果たすため、奴隷としてアイスランドへ渡る…。
ネタバレなし感想・海外評価
いわゆるエンターテイメント大作でも痛快復讐劇でもなく、重すぎるメッセージが根底にただよう作品です。
北欧を舞台にした映像は非常に美しく没入感がありますが、剣でバチバチやるアクション映画が見たい人には向かないでしょう。
抽象的かつ深淵な何かにふれたい人におすすめです。
おすすめ度 | 80% |
世界観 | 90% |
ストーリー | 86% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.1(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 89% 一般の視聴者 64% |
メタスコア(Metacritic) | 82点(100点中) |
※以下、映画『ノースマン 導かれし復讐者』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ノースマン 導かれし復讐者』ネタバレ感想・評価
神話とリアリズムを融合させた怪作です。
北欧ヴァイキングの復讐物語を描きつつ、復讐は何もうまないという普遍的なメッセージを斬新かつリアルな視点で切り取っていると思いました。
全体的な雰囲気は神話や英雄譚であり、尊敬する父王を殺された主人公が、叔父に復讐するというわりとよくあるパターンです。(ディズニーの『ライオン・キング』もそうですよね。)
ただ、表面上は英雄の物語っぽくても中身はまったく違います。
本作の主人公・アムレートは英雄ではありません。復讐のために自分が味わったような悲劇を生み出す愚かな歯車です。
序盤で、アムレートが所属する戦闘集団は村を襲います。
男たちは殺され、女子供は奴隷になる運命。フィヨルニルがしたこととまったく同じ悲劇を繰り返しているのです。
そんなアムレートは、ビョーク演じる両目のない魔女が「復讐か肉親か選択するときがくる」と予言を受けました。
この予言は、アムレートが愛するオルガを船に残してフィヨルニルを殺しにいく決意をしたシーンとリンクします(オルガと魔女の関係は考察の項目で詳しく)。
母が父王殺しの首謀者だったため自らの手で殺し、その息子をも斬殺するアムレートを見ると、一般的な感覚からすれば選択を誤ったとしか思えません。
復讐をあきらめて、最愛の女性・オルガや生まれてくる子どもたちと一緒に暮らしてほしかった後悔のような思いがわいてきます。
これらの流れをグロテスクかつ狂気的に描いたことで、復讐が何も生み出さないことが身に染みて伝わってきました。
『ノースマン 導かれし復讐者』考察(ネタバレ)
オルガと巫女の関係が怖い
ビョーク演じる両目のない巫女は、オルガの未来なのではないかと思いました。
アムレートを失ったオルガは女性1人で生きていけるのでしょうか?
生活できたとしても、またアムレートが所属していた戦闘集団に襲われてしまうこともあるでしょう。
未来からきた巫女は、今度こそアムレートに家族を選択させたかったのではないでしょうか。
巫女が言った雌キツネを追えという言葉も、オルガについていけという意味だったのだと思います。
巫女がオルガだとすれば、アムレートが復讐を決断して死んだせいで彼女自身もいずれ両目をくり抜かれる悲惨な運命をたどることになります。
もしくはオルガは双子を産む運命なので、両目をくり抜かれたとは双子が死んでしまったことの暗喩でしょうか。
最悪な悲劇ですね。
キリスト教以前の世界
※映画『ウィッチ』『ライトハウス』のネタバレを少し含みます。
数々の意味深なモチーフを作品に入れ込むロバート・エガース監督ですが『ウィッチ』『ライトハウス』から通じるものとして、キリスト教以前の価値観を良し悪し抜きで描きたいのかなと思いました。
『ウィッチ』も少女が魔女になってしまう話ですし、『ライトハウス』にも人魚が出てきます。
本作『ノースマン 導かれし復讐者』でも北欧のシャーマン文化・ヴァイキング文化がリアリティたっぷりに描かれていました。
西洋文化の背景にはキリスト教の価値観があり、それから逃れることはできません。
ロバート・エガース監督はあえてキリスト教以外の神話などを入れ込むことで、人間の根源的な部分を違う視点からよりヴィヴィッドに描いているのではないでしょうか。そんなコンセプトを感じました。
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