Netflix映画『ザ・キッチン』近未来のロンドンを舞台に、貧困街で暮らす主人公が少年と出会い、絆を深めて行きます。
俳優のダニエル・カルーヤが監督を務めました。
作品情報・キャスト
あらすじ
ネタバレなしの感想
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
視聴後の感想・評価・考察(ネタバレあり)
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『ザ・キッチン』作品情報・キャスト
制作国:イギリス
上映時間:1時間48分
原題:『The Kitchen』
ジャンル:SF・ヒューマンドラマ
年齢制限:16歳以上
監督:キブウェ・タパレス/ダニエル・カルーヤ
脚本:ダニエル・カルーヤ/ジョー・ムルタ
キャスト:ケイン・ロビンソン(ラッパーのカノ)、ジェダイア・パナーマン、ホープ・イクポクJr、イアン・ライト
ジョーダン・ピール監督の『ゲットアウト』や『NOPE』で有名な俳優ダニエル・カルーヤがキブウェ・タパレス共同で監督を務め、カルーヤが脚本も書いています。
Netflix映画『ザ・キッチン』あらすじ
舞台は近未来のロンドン。
格差社会が広がり、主人公・イジーのような黒人の貧困層はザ・キッチンと呼ばれる団地に“法的には不法占拠”という形で暮らしていた。
イジーは葬儀屋で働きながら、ザ・キッチンを出てもっといい部屋で暮らそうと計画している。
そんなある日、葬儀屋でトニ・スタークという女性の葬儀が行われた。トニはイジーの昔の知り合いだった。
葬式に参加しているのはスタッフの他、トニの息子・ベンジーだけだ。
トニの遺体は小さな木となり、どこかに植えられるという1番安いプランだった。
葬式が終わると、ベンジーはイジーに話しかけてくる。イジーが葬式をながめていたことに気づいていたのだ。
ベンジーはイジーを父親だと考えているらしい。
イジーは仕方なく身寄りのないベンジーをザ・キッチンへ連れて帰り、同じボロ部屋に住まわせる。
ベンジーは富裕層から略奪するステイプルズ率いるギャンググループとも仲良くなり、イジーとの間で揺れる。
ベンジーはルビーという女の子とも仲良くなった。
そんな中、ザ・キッチンに武装した警官たちがやってきて、不法侵入者たちに襲いかかる。
映画『ザ・キッチン』ネタバレなし感想・海外評価
SFヒューマンドラマというくくりですが、SFらしい要素は歯を磨く鏡がディスプレイになっていたり、部屋のデザインが未来的だったりと一部のみ。
実質的には親子の関係性や黒人文化・差別の問題についてじっくり描くヒューマンドラマなので、SF映画だと思って視聴すると肩透かしを喰らうでしょう。
父と子の絆や、格差社会をしっかり見つめるための作品だと感じました。
海外では批評家が高い評価をつけているいっぽう、一般視聴者の評価はそこまでです。
おすすめ度 | 50% |
世界観 | 45% |
ストーリー | 40% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.2(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 84% 一般の視聴者 54% |
メタスコア(Metacritic) | 67(100点中) |
※以下、Netflix映画『ザ・キッチン』のストーリーネタバレありなので注意してください!
Netflix映画『ザ・キッチン』ネタバレあらすじ・ラスト解説
イジーはベンジーを地下のダンスホールやスケートリンクに連れて行き、楽しいときを過ごす。
後日、ベンジーは近所の少女・ルビーとキスしようとしていた。それを見たイジーが止める。
イジーはついに憧れの住まい、ブエナ・ビダの保証金を貯めた。
ベンジーと住むために2人暮らし用の住まいにしたかったが、葛藤の末にあきらめた。
イジーはベンジーのもとを去り、ブエナ・ビダで暮らす。
ある日ザ・キッチンに武装警察たちが大勢やってきて、ルビーの母親を連れ去った。
警察の襲撃で、いつもザ・キッチンでラジオのDJをしているキッチナー卿が死亡。
イジーの葬儀屋にはキッチナー卿の葬儀のために大勢が集まった。
ベンジーはステイプルズたちに連れられて富裕層の自宅に侵入する。
部屋にいる自分達と同じ黒人の親子を脅して強奪をするステイプルズを見たベンジーは、恐ろしくなって逃げ出した。
ベンジーは母と暮らした家にやってきた。そこへ考え直したイジーがやってくる。
ベンジーはイジーに怒りをぶつけ、涙を流したが和解。
2人はザ・キッチンへ戻った。
ベンジーはイジーが持ってきた母の木を植えかえる。
そこへまた警察の機動隊がやってきた。イジーとベンジーは部屋にこもる。
イジーはベンジーから「父親なの?」と聞かれ、うなづいた。
イジーは「父親になってほしいか?」と聞き返すと、ベンジーは「少しずつでいい」と答える。
機動隊がイジーたちの部屋のドアを破壊した。
映画『ザ・キッチン』終わり
映画『ザ・キッチン』ネタバレ感想・評価・考察レビュー
ダニエル・カルーヤの私小説:父と子の切ない関係
ひとことで言うなら「ダニエル・カルーヤの私小説」です。
ダニエル・カルーヤはウガンダからロンドンへ移住した母に団地で育てられ、ウガンダ在住の父親とはイギリスの滞在ビザの規制のせいでほとんど会うことができなかったようです。
本作と完全に重なりますね。
本作のザ・キッチンはダニエル・カルーヤが育った場所そのものでもあり、カルーヤの父親が住んでいたウガンダを表現しているようでもあります。
ロンドンの一般的な居住区とザ・キッチンの関係が、イギリスとウガンダの関係とイコールになっているわけです。
ダニエル・カルーヤは幼い頃になかなか会えなかった父親について、「ザ・キッチンのような環境にいてなかなか抜け出せないんだ…」と自分を納得させていたとしても不思議はありません。
ラストでは主人公・イジーは息子のベンジーからの問いかけに対して、自分が父親だと認めるようにうなづきます。
イジーは「父親になってほしいか?」とまた聞くと、ベンジーは「少しずつでいい」と答えました。
ダニエル・カルーヤもなかなか会えない父親と少しずつ関係性を築いていったのかもしれません。そう考えると胸が熱くなります。
一番感動したのがスケートするベンジーをイジーが瞳を潤ませて見つめるシーン。「やっぱり親子なんだな。でもどうしていいかわからないんだな」と胸が熱くなりました。
また本作では黒人文化がフューチャーされていたのも大きなポイント。
ザ・キッチンの地下はディスコパーティー状態で、大音量で音楽がかかり、みんな踊っています。
Candy(Cameoというバンドの楽曲)での集団でのダンスも黒人の文化でよくある光景のようです。
ローラースケートについては、黒人が差別されていた時代は週一回しかスケートリンクを使わせてもらえなかったり、差別主義者・KKKによるスケート上での襲撃事件があったりなど、黒人の連帯感を示す象徴でもあります。
微妙だった点
父と子の関係性を黒人文化を絡めながらじっくり描いているのはわかるのですが、映画としての見どころに欠けていた気がします。
すごく簡単にまとめてしまうと、主人公が息子と急に再開して葛藤するのみの映画で、物語に大きな振り幅がなかったです。
格差が広がりすぎた近未来のディストピアという設定だと思うのですが、設定の細かい部分があやふやなのが非常に気になりました。
まずテクノロジーがどれくらいの水準なのかよくわかりません。
ドローンや宙に映し出されるモニターなどはやや近未来的ですが、それ以外は現代とほとんど一緒で、SF要素がなくても同じな気がしました。
葬儀屋で死者が木になるプランもよくわかりません。
死者を木にするなんらかのテクノロジーが働いているのか?もしくはただ遺灰を土にかけただけなのか?
またザ・キッチン以外に住む人々がどんな暮らしなのかもサラッと見せたほうが良かったと思いました。
主人公のイジーが暮らしたいと思ったブエナ・ビダはどこにあるのか?など細かい部分も気になりました。
最後のまとめ
Netflix映画『ザ・キッチン』は、近未来のロンドンを舞台に父子の関係性を構築する素晴らしいコンセプトと黒人差別反対のメッセージがあったいっぽう、薄味すぎてそこまでの満足感が得られない作品でした。
周辺人物をもっと魅力的に描くなどすれば全然違う印象になったと思います。全体的にあっさりしすぎの薄味なのがもったいないです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『ザ・キッチン』(2024)レビュー終わり!
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