映画『ブラックフォン』ネタバレ感想・ラスト考察,元ネタ殺人ピエロ,虐待の負の連鎖

  • 2024年8月14日

サスペンスホラー映画『ブラックフォン』(The Black Phone)。

シネマグ
監禁部屋でなる黒電話…そして強烈なメッセージ性。好きでした!

物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

徹底考察:グラバーの動機や過去・元ネタの連続殺人鬼、弟・マックスの謎、なぜ黒電話が?

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

映画『ブラックフォン』作品情報・予告

公開:2022年6月24日 時間:107分
制作国:アメリカ
原題:『The Black Phone』
ジャンル:サスペンス・ホラー
監督:スコット・デリクソン
脚本:スコット・デリクソン
C・ロバート・カーギル

原作:ジョー・ヒルの短編「黒電話」
制作:ブラムハウス・プロダクションズ
出演:メイソン・テムズ|イーサン・ホーク(『終わらない週末』)

あらすじやネタバレ少なめの解説はこちら

※以下、サスペンスホラー『ブラックフォン』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『ブラックフォン』ネタバレ・ラスト結末

少年たちの失踪事件と地下室

街では少年たちが何人も行方不明になっていた。フィニーと野球をしたブルース・ヤマダや、友人でいじめっ子から守ってくれたロビンもいなくなった。

誘拐犯はグラバーと呼ばれていた。フィニーの妹・グウェンは亡き母に似て霊感があり、グラバーが黒い風船を持っている夢を見る。

フィニーとグウェンの父・テレンスは神経質な男で、グウェンが言うことを聞かないとベルトで虐待した。2人は父を恐れていた。父はグウェンに「精神を病んで自殺した母親と同じように夢に真実があると思うな。夢はただの夢だ」と言った。

ある日、フィニーの前に、アブラカダブラと書かれたバンに乗った男性が現れる。男性はマジシャンのバイトをしているらしい。

男性はフィニーにガスを嗅がせてバンの中へ連れ込んだ。彼は誘拐犯グラバーだったのだ

フィニーが目覚めると地下室だった。マスクを被ったグラバーがベッドにいるフィニーを見つめてたわいのない話をし、上階へ去っていく。

黒電話からのメッセージ

ベッドのそばの壁に黒電話があった。線の切れているにもかかわらず電話がかかってくる。なんと以前誘拐されたブルース(幽霊)からだった

フィニーはブルースの言う通り、地面を掘ってみる。しかし脱出はできない。

グラバーはフィニーに食事を与えた。そして地下の扉をロックし忘れて上階へ行く。

フィニーはドアを開けて階段を登ろうとするが、今度は前に誘拐されたビリー(幽霊)から電話がかかってきて「ロックのし忘れはグラバーが仕掛けた罠で上に行ったら危害を加えられる」と聞かされる。

警察がマックスという男性の家にやってくる。マックスは独自で誘拐事件の捜査をする変人だった。警察は呆れて去っていくが、フィニーはマックスの家の地下にいた。マックスは一緒に住んでいる兄が少年たちを誘拐している犯人だと気づいていなかった。地下室の存在も知らない。

フィニーはグリフィン少年(幽霊)から電話を受ける。グラバーは上階でずっとフィニーを待ち構えていて疲れて今寝ているらしい。

フィニーは1階に登り、グラバーの横をすり抜け、グリフィンから聞いたロックの番号でチェーンを開けて外に脱出する。しかし車で追ってきたグラバーに捕まってしまった。

今度はヴァンス(幽霊)から電話がかかってくる。その頃、霊能力がある妹・グウェンは夢でヴァンスが誘拐された時の映像を見て、フィニーがどこにいるか悟った

フィニーはトイレの反対側の壁を削れば冷蔵庫に出られると教えてくれる。フィニーは冷蔵庫までは出たが、冷蔵庫の扉がロックされていたため外に出ることができず絶望した。

ラスト結末

今度はロビンから電話がかかってきた。ロビンは、「黒電話の受話器でグラバーをやっつけろ」と指示する。

フィニーの地下室にマックスがやってくる。マックスは助けてやると言うが、後ろからやってきたグラバーに斧で殺される

グラバーはよくも俺に弟を殺させたなと言ってフィニーに向かってくる。フィニーは掘っていた床にグラバーを落とし、何度も殴り、受話器のコードでしめ殺した。

いっぽう、グウェンから連絡を受けた警察がある家の家宅捜索をする。その家は無人だったが、地下に誘拐された5人の少年たち(ブルース、ビリー、グリフィン、ヴァンス、ロビン)の遺体があった。

フィニーが地下室から出て家の扉を開ける。その家は、死体があった家の道向かいだった。実はグラバーは家を2つ所有していたのだった。

父親がフィニーを抱きしめる。最悪の誘拐殺人事件が解決した。

映画『ブラックフォン』終わり

『ブラックフォン』考察

グラバーは虐待を受けていた

本作の大きなテーマが児童虐待。誘拐殺人犯のグラバーはもちろん、フィニーとグウェンの父・テレンスも虐待を繰り返していた。

するとやはり、挙動や言動がおかしい犯人のグラバー自身も虐待を受けていたと考えるのが自然だ

グラバーは黒電話についてフィニーに「子供の頃から鳴らない」と言った。グラバーは子供の頃からここに住んでいて、父親に地下室に閉じ込められる虐待を受けていた過去の示唆だろう。

不条理な真実として、虐待の被害者が加害者に回るケースがあるそう。子供の頃に親からDVを受けると精神・情緒が正常に発達せず、他人に対して攻撃的になってしまうことがあるようだ。

特に男子の場合、DVを振るう父を行動モデルに設定してしまい、自分が成長したときに家族を虐待してしまう悲しいケースがあるらしい。

グラバーの場合は少年期の虐待のトラウマが少年への殺人衝動にまでなってしまった。彼の過去については映画で明らかにならなかったが、重いバックストーリーがあるのだろう。

グラバーというキャラクターが明らかに1970年代にかけて33人の少年を乱暴して殺したジョン・ゲイシー(キラー・クラウン/殺人ピエロ)をモデルにしており、ジョン・ゲイシー自身が父親から過度な虐待を受けていた事実もある。

犯人の弟・マックスは虐待でおかしくなった

本作で1番意味不明だったのはグラバーの弟・マックス。行方不明になった少年を探すために家の中で情報を集め、ドラッ○でハイになる。無職で兄の家に泊まっているというが、真偽は不明。

なぜマックスは取り憑かれたように少年の失踪事件を独自調査しているのかというと、やはり彼もまたグラバーと同じように父から虐待を受けていたのだと思う。そのトラウマが暴走する正義感となって、変なテンションで失踪事件の調査をしていたのだろう。

マックスはけっこうイカれてる感じのキャラなので、無職で今だけこの家に住んでいるのも真実ではなく、兄のグラバーが半分介護しているような状態なのかもしれない。

グラバーが仮面を剥がされてパニックになった理由

グラバーはフィニーに殴られ、仮面を外されるとパニックになった。

おそらく虐待による二重人格・多重人格で、仮面がはがれると本来の自分に戻って自分がしでかしていることにパニックになってしまうのだろう。

グラバーがフィニーに「他の少年たちを殺したのは俺じゃない。他の誰かだ」と序盤で語っていたが、これも彼の中では他の人格がやっているから俺じゃないという意味なのだろう。もしかすると他の人格に気づいていないのかもしれない。

グラバーはフィニーに、「ヤツに気づかれてしまう」と言っていたが、ヤツとは弟・マックスのことでなく、自分の別人格のことなのかも。

多重人格でない場合は、仮面をかぶるとかつて自分を虐待した父親が憑依したようになる可能性も捨てきれない。

なぜ黒電話が地下室に?なぜ家が2つ?

黒電話はグラバーが子供の頃からあったらしい。そしてその頃はすでに使えなかったようだ。

何の目的かは明示されなかったが、ひとつとしてグラバーの父が同じように少年を拉致していた犯罪者だった可能せもある。

家を2つ所有していたのはグラバーが死体を埋めるように買ったのかもしれないが、犯罪者だった父親の代から2つ使っていたのかもしれない。もういっぽうの家の地下からは誘拐された5人以外の死体も出てくるかも。

『ブラックフォン』ネタバレ感想・評価

『ブラックフォン』の評価は86点。

シリアスな誘拐殺人のサスペンスかと思いきや、幽霊や夢で事件を解決するなど超常現象が出てくるホラーでもあったわけですが、多くは語られなかったものの虐待の負の連鎖というメッセージ性が感じられたのがグッド

イーサン・ホークの演技力なのか、なぜか殺人犯・グラバーにも悲惨な過去があったんだろうなと思わせられる不思議。

説明をしすぎない、引き算に成功した映画だと思った(ジョー・ヒル(スティーヴン・キングの息子で小説家)の原作が短編なせいもあると思うが)。

フィニーがなんとか自分の力でグラバーを倒して脱出するストーリーは、大人からの虐待を子供が自力で解決する意味合いがある。現実では子供たちは無力かもしれないが、フィクションの中では何かを起こすことができる。そんな誰に向けられたともない希望が込められたいた

恐怖よりメッセージやテーマ性に優れた作品だったと感じた。

主人公・フィニーが黒電話で殺された少年たちから生存の手がかりを受け取るシーンも、本当に霊がいたとも解釈できるし、フィニーの生存本能が開花して想像力で解決の方向にすすんだとも取れる。その微妙なバランス感覚がまた良かった。

続編『ブラックフォン2』について

すでに続編のブラックフォン2が決定。2025年6月27日に全米で公開されるスケジュールだ。

主人公・フィニー役のメイソン・テムズや、グラバー役のイーサン・ホークなど、ブラックフォン1の出演者たちが続投する。

てっきりイーサン・ホーク主演でグラバーの前日譚を描くのかと思っていたが、フィニーたちも出てくるとは。

グラバーはフィニーに殺されたので、実は生きていましたパターンでない限り、グラバーの過去と、フィニーのその後を描くのだろう。

もしかすると、フィニーがグラバーの影響で暴力に走る負の連鎖を描くのかもしれない。とりあえずめちゃ楽しみ!

ここまで読んでいただきありがとうございます。サスペンスホラー映画『ブラックフォン』レビュー終わり!

ブラムハウス制作のホラー映画レビュー

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