邦画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』山下智久演じる目が見えなくなった漫画と、新木優子演じる聴覚障害を持つ女性の切ないラブストーリー!
作品情報・キャスト
あらすじ
ネタバレなしの感想
視聴してのぶっちゃけ感想・酷評の理由・ラスト評価(ネタバレあり)
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』作品情報・予告
制作国:日本
上映時間:132分
ジャンル:ラブロマンス
監督:イ・ジェハン(『私の頭の中の消しゴム』(2004))
脚本:イ・ジェハン
原作:NASTY CAT 「見えなくても聞こえなくても愛してる」ピッコマ
キャスト
役名 | キャスト |
泉本真治(目が見えない漫画家) | 山下智久(Netflix『今際の国のアリス2』) |
相田響(ひびき/聴覚に障害を持つ女性) | 新木優子(『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』Netflix『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』) |
中村沙織(真治のアシスタント) | 山本舞香(『カラダ探し』) |
植村大輔(大手製薬会社の社長) | 高杉真宙 |
多恵(真治の祖母) | 夏木マリ |
平山(真治の担当編集) | 菅原大吉 |
遠山恵(植村の秘書) | 山口紗弥加 |
菅原哲也(真治の漫画のファン) | 深水元基 |
映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』あらすじ
連載中の漫画「ONLY FOR YOU」が映画化されることになった泉本真治(山下智久)。しかし編集者の平山から「映画化の条件としてもっと読者に受けるように悲劇を入れろ」と反強制的に言われて悩む。
アシスタントの中村沙織(山本舞香)は真治の漫画を信じて献身的にサポートしていた。
しかしある日、真治は急性の緑内障を発症し、ほとんど何も見えなくなってしまう。
漫画が描けなくなった真治は絶望する。
いっぽう、真治の漫画を生き甲斐にしている聴覚障害者の相田響(新木優子)は漫画の突然の休載を知りショックを受けた。響はSNSで真治の自宅を調べてなぜ休載したのか理由を聞くことにした。
響は真治のアパートの部屋のインターホンを押す。真治が出てきた。しゃべれない響は画用紙に用件を書くが、目が見えない真治にはそれが読めない。
真治はしゃべらない訪問者に扉を閉ざす。
響は仕方なくアパートから去るが、ベランダで今にも飛び降りそうな真治を見て急いで部屋に戻った。
響はその日から真治の世話をするようになり、2人は恋に落ちていくのだが…。
ネタバレなし感想・海外評価
出会った瞬間はお互い意思疎通ができないのですが(しゃべっても伝わらないし、書いても見えないので)、手に文字を書いたりスマホで文章を音声変換したりすることで2人だけのコミュニケーションの方法を見つけていく過程は興味深いです。
ただ、個人的には演出やストーリー面で気になる点が多すぎました。
WEBマンガが原作なので仕方ない面もありますが、ご都合主義も多いです。
海外レビューサイトIMDbでは10点中7.3点と高評価です。細かい点を気にしなければ楽しめるかもしれませんね…。
おすすめ度 | 40% |
ストーリー | 32% |
IMDb(海外レビューサイト)※随時更新 | (10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新 | 批評家 % 一般の視聴者 % |
メタスコア(Metacritic)※随時更新 | (100点中) |
※以下、『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』ネタバレ感想・評価・つまらない?
演出のひどい点
あんまりひどいことは言いたくないですが、脚本・演出ともにかなり微妙。近年の邦画の悪い部分を凝縮したような演技過剰なわりに味気ない作品でした。
さらに聴覚障害者の描きかたについてもすごく引っかかるところがありました。
まず演出についてですが、山Pや新木優子さんら日本の俳優と韓国のイ・ジェハン監督との間でそもそもディスコミュニケーションがあったと思わざるをえません。
こういう系の映画って泣かせようとしておおげさな演出になり、逆にひいてしまうパターンが多いですよね。
本作はおおげさなだけでなく、演出意図と演技がマッチしていないダブルパンチでした。
韓国の映画やドラマもよく見ますけど、韓国人は日本と比較して感情を表に出す国民性なんですよね。逆に日本は感情を抑えることが多いです。イ・ジェハン監督ら制作陣もその辺はもちろんわかっていると思います。
しかしどの感情を抑えてどの感情を爆発させるかのチョイスが全体的に上手くいってない・ハマってないと感じました。結果、リアリティにいちじるしく欠ける演出に見えました。
山Pが視力を失って「何で俺なんだ!」と叫んで物を投げるシーンも、声に出しちゃう過剰演出+動き自体の違和感が目につきます。
あとは新木優子さん演じる聴覚障害者のヒロインですが、施設にいるときは人生に悩んで不眠症みたいな感じだったのに、ビルの清掃のバイトを始めるとすごいルンルンでプリティーな感じが画面いっぱいに広がって、ちょっと引いてしまいました。
序盤で駆け足で恋して同棲して、聴覚障害の悩みが全部解消されたかのような描き方をされてしまい、ヒロインの成長譚がスポイルされていたイメージ。
また、好みの問題もありますが聴覚障害者のヒロインが美人で性格もすごく良くて、一途でという描き方はどうなのでしょう。
私は障害を持っているわけではないので偉そうなことは言えませんが、障害を持っている人を美しく描きすぎることは違うかたちの差別な気もします。
障害があろうとなかろうと、心に良い面もあれば悪い面もあるのが本当でしょう。聖女のような描きかたはリアリティに欠けます。
ベッドシーンもなし。人間味を断捨離してしまったような印象でした。
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映画なので欠点のないヒロインになってしまうのはある程度は仕方ないかもしれません。ただ今作の新木優子さんは「完璧な聖女!」みたいな感じで人間味がありませんでした。
原作漫画がそういうキャラ設定なら仕方ないかもしれませんが、原作と実写を完全に一致させる必要はありませんよね。
日本で実写化するならもっとリアリティのあるキャラに変更すべきだったでしょう。
さらに本作で1番ひっかかったのが、ヒロインが主人公の病気を聞かされる際に手話に独白が入るシーン。
話せないから手話をしていて、その手話に感情が込められているはずなのに、聞こえていないはずの声でしゃべっちゃう…。
手話のシーンであれば、手話による感情表現を際立たせるべきです。
極端な言い方をすれば、手話に声をかぶせる演出は手話より声の方がすぐれていて感情が伝わりやすいとされているようで違和感がすごかったです。
演出に差別的な意図はなかったにしろ、結果的に声という情報を足して手話の存在感を薄めてしまいました。
視覚障害の人に届けるために音声ありの手話にしたのでしょうか?(だとしたら最初からその演出でやるべきですよね。)
いずれにせよ疑問点だらけのシーンでした。
そういった点でも手話で感情表現ができること、手話が美しいことを教えてくれた『コーダ あいのうた』とは真逆のスタイルですね。
聴覚障害と視覚障害のコミュニケーションが花を咲かせる美しいコンセプトだったはずが、さまざまなディスコミュニケーションを生んでいたと思います。
脚本・ストーリー展開の違和感
漫画の設定もあるので、ある程度薄っぺらいのは仕方ないかもしれません。それでも「これはないでしょ…」という展開が多かったです。
山P演じる漫画家・真治が目が見えなくなるのが急すぎるのは尺の問題で仕方ないとしても、真治と響が出会ってから熱い恋愛関係になるまでの過程はもう少しじっくり描くべきだったと思います。
響が真治の自殺を止めて、気づいたら同棲している駆け足感がすごかったです。
また有名企業の社長がヒロイン・響にゾッコンな設定にはもう少し現実味がほしかった…。少女漫画の設定をディティールなしの状態で突きつけられている感じでした。
終盤で社長がヒロイン・響を呼び出して「昔施設で会って好きだった」と告白するシーンがあるのですが、施設で会っていた件は序盤でチラッとでも触れるべきだったと思います。
最後のほうにそのシーンを持ってこられても「でしょうね」という感じでした。別にどんでん返しにもならないことを取っておく意味がわかりませんでした。
あとストーリーで1番引っかかったのは、山本舞香さん演じるアシスタントの沙織も真治を好きだったはずなのに、沙織と響の衝突がなかった点。
沙織が真治に好意があるのは序盤でわかるのに、真治と響がアツアツになる過程で沙織の葛藤が描かれないのは違和感でした。というか2人の会話のシーンすらなし。
最後までなんの対立もなく、沙織がすべて察して響に道をゆずります。そこに人間ドラマはありません。
キャスティングが微妙
キャスティングについても、主演の山下智久さんがイケメン、ヒロイン新木優子さんが超美人なのは仕方ないとしましょう。
しかし漫画家のアシスタント・沙織(山本舞香)まで美人なのはどうなの?と思いました。この辺もリアリティを削ぎます。
山本舞香さんはちょっとギャル系なこともあり、合っていなかったような気がします。
驚愕のラスト…
脳に腫瘍のあった真治(山P)が最後にベンチで死に、そこへ響がやってきて泣きます。かと思いきや真治は生きていて海外で手術を受けて視力も回復していた(杖を使っていない)ラスト。エンディングは2人の結婚式です。
こういうラストのパターンは、「実は真治は死んでいて響の願いが映像化されているのでは?」とも勘ぐってしまいますが、死をにおわせる描写も特になかったので生きているのでしょう。
すごくご都合主義に感じましたし、「見えなくても聞こえなくても愛している」なのに、最後は見えて終わるんですね。コンセプトとしても違和感を感じました。
最後のまとめ
邦画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』は、違和感のある演出・細部を描かない人間ドラマ・ご都合主義的なラストが組み合わさった残念な作品でした。
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