映画『レジェンド&バタフライ』(THE LEGEND & BUTTERFLY)。織田信長の生きざまを妻の濃姫を通して美しく描いた超大作!
レジェンドは織田信長、バタフライは帰蝶の名を持つ濃姫(のうひめ)をあらわしています。
主演の木村拓哉さんと綾瀬はるかさんの演技もおみごと!
作品情報・人物相関図・キャスト
ネタバレなしの感想ぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
メッセージや蝶の意味を深掘り考察
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから観る方の参考になるように作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『レジェンド&バタフライ』作品情報・予告
上映時間:168分
英題:『THE LEGEND & BUTTERFLY』
ジャンル:歴史・恋愛・ヒューマンドラマ
年齢制限:PG12(12歳以下は保護者の指導が必要)
監督:大友啓史(実写『るろうに剣心』シリーズ『億男』『3月のライオン』)
脚本:古沢良太(『リーガル・ハイ』『コンフィデンスマンJP』)
原作:なし。映画オリジナル。ノベライズ小説はあり。
撮影:芦澤明子
音楽:佐藤直紀
正直、大友啓史監督の実写『るろうに剣心』シリーズは苦手だったので本作がつまらなかったらどうしようという不安はありましたが、いらぬ心配でした。
『レジェンド&バタフライ』相関図
『レジェンド&バタフライ』キャスト
木村拓哉|織田信長役
©︎「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
もう50歳前なのに若いころの信長を演じても違和感なしのイケメン。
序盤はオハコの月9っぽい演技を見せつけますが、終盤からラストにかけての狂気の演技は圧巻で見入ってしまいました。さすがです。
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綾瀬はるか|濃姫(のうひめ)役
©︎「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
別名・帰蝶(きちょう)。
綾瀬はるかさんは気の強い女性・濃姫役にピッタリでハマり役でした。
そういえば綾瀬はるかさんは『本能寺ホテル』(2017)でも織田信長と会ってましたね。
ちなみに、綾瀬はるかさん出演の前作『はい、泳げません』(2022)はとてもいい映画でした。
その他キャスト
福富平太郎貞家(ふくずみへいたろうさだいえ/濃姫の家来)|cast 伊藤英明(『KAPPEI カッペイ』)
明智光秀(信長の家臣)|cast 宮沢氷魚(『グッバイクルエルワールド』)
各務野(かがみの/濃姫の世話係。筆頭侍女)|cast 中谷美紀
斎藤道三(さいとうどうさん/濃姫の父)|cast 北大路欣也
森蘭丸(もりらんまる/信長の世話係・小姓)|cast 市川染五郎
木下藤吉郎(きのしたとうきちろう/のちの豊臣秀吉|cast 音尾琢真
徳川家康|cast 斎藤工(『シン・ウルトラマン』)
滝川一益(たきがわかずます)|cast 増田修一朗
丹羽長秀(にわながひで/信長の家臣)|cast 橋本じゅん
柴田勝家(しばたかついえ/信長の家臣)|cast 池内万作
林秀貞(はやしひでさだ/信長の家老)|cast 本田大輔
織田信秀(おだのぶひで/信長の父)|cast 本田博太郎
生駒吉乃(いこまきつの/織田信長の側室(正妻ではない妻))|cast 見上愛
平手政秀(ひらてまさひで)|cast 尾美としのり
佐久間信盛(さくまのぶもり/織田の武将)|cast 浜田学
森可成(もりよしなり/織田家の武人)|cast 武田幸三
前田犬千代 (まえだいぬちよ/のちの前田利家|cast 和田正人
池田勝三郎 (いけだかつさぶろう/信長の家来。のちの恒興(つねおき)|cast 高橋努
長谷川橋介(はせがわきょうすけ。小姓)|cast レイニ
蜂屋頼隆(はちやよりたか/黒母衣衆)|cast 野中隆光
すみ(濃姫の家来)|cast 森田想
映画『レジェンド&バタフライ』あらすじ
若き信長のもとに濃姫が嫁いでくる。濃姫の父・斎藤道三と信長の父・信秀による政略婚だった。
新婚初夜、信長は緊張しながらも濃姫に肩をもめと偉そうに接した。
気性の荒い濃姫は信長に対して、酒ものめずに偉そうにしている子供だと怒った。
信長は濃姫を斬ろうとするが、濃姫に投げられて押さえこまれてしまう。
濃姫は過去に2度の結婚歴があるが、夫は2人とも変死を遂げていた。
信長の部下は、濃姫が信長を殺すつもりだから近づかないほうがいいと言うが…。
ネタバレなし感想・海外評価
序盤は結構つまんないというか、思ったよりもコメディすぎて退屈でしたが中盤から後半にかけてシリアスさもメッセージ性もグッと強まり、ラストでは超感動!
濃姫の視線をまじえながら、信長がなぜあんなに残虐なことをしたのか、彼に人間性はあるのか?などを描いており、非常に美しいテーマが浮かび上がってきます。
とにかく新しい信長像と切ない物語に圧倒されっぱなしでした。
おすすめ度 | 94% |
世界観 | 84% |
ストーリー | 90% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.4(10点中) |
※以下、映画『レジェンド&バタフライ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『レジェンド&バタフライ』ネタバレ感想・評価
駄作かと思いきや傑作!
信長と濃姫の意地っぱり同士の純愛と悲劇が美しく光った傑作でした。
濃姫のために変わり、壊れ、心を取り戻した信長はとても魅力的で、人間味がありました。
ぶっちゃけ序盤はかなりコメディ色が強くキムタク主演の月9ドラマか?という感じで入り込めなかったんです。
信長も濃姫にボコられるほど弱すぎだし、取り巻きにチヤホヤされているだけで人間的な魅力も皆無。
中谷美紀演じる濃姫の侍女が「尾張はおわりよ〜」とダジャレをかましたときは、もしかして駄作になるかもしれないと覚悟していましたが、こういうテイストは最初だけでした。
中盤からシリアスさがどんどん増していきます。
濃姫からいろいろとアドバイスを受けて桶狭間の戦いで勝利した信長が、だんだんと頭角をあらわしていくのです。
しかし濃姫が天下統一をうながし、信長は人間から冷酷な魔王に変わってしまいます。
つまり信長を変えたのも濃姫ですが、信長の心を壊すきっかけとなったのも濃姫なんですよね。
このあたりが非常に感慨深いです。
明智光秀が信長を裏切るのも、魔王だったころのように冷酷ではなくなったからという理由が興味深い。
そして演技面では、信長が死ぬ間際に本能寺の天守閣で刀を振るシーンは圧巻でした。
いろいろ言われていますがやっぱり木村拓哉さんの演技というか凄みはさすがだと思いました。
個人的に唯一の不満点は、合戦が見られなかったことです。
信長と濃姫の30年間を描いた映画なので合戦やアクションがメインでないのはわかりますが、1回くらいはあってもよかったと思いました。
演出や構成のうまさ
- 序盤のコメディテイストから急激にシリアスな流れになる構成
- 信長は生きていて濃姫とオランダへ行ったラストにするつもりか?と思わせての夢オチ
観客の気持ちをおおきくミスリードする構成や演出も『レジェンド&バタフライ』の完成度に貢献していたと思います。
製作陣はもちろん計算しているのでしょうけど、演技やテイストの振り幅が大きかったことが功を奏していたと思いました。
コメディシーンが信長が残虐になった後半であの頃はよかった的なノスタルジーとして機能しており、作品に奥行きが感じられたのです。
ただこの序盤のおバカなコメディが人によっては受け付けなくて退屈に感じたという人もネットのレビューで多く見受けられました。
頼りない信長のキャラクターや心情の劇的な変化がストーリーに貢献していると感じられなかった場合は、つまらないという評価になるのかもしれませんね。(人それぞれなので、その見方がダメなわけではないです)
あとは斎藤工さんが特殊メイクで演じた徳川家康のシーンもスパイスが効いていました。
明智光秀が信長に自分を殴らせる芝居をしたのを徳川家康だけが気づいており、家康の眼識(がんしき)の鋭さを表現するとともに信長の没落までが予見されているのです。
ちなみに明智光秀が食事の席でミスって信長にボコボコにされた逸話が実際あるようで、史実をうまく盛り込んでいると思いました。
つまらないと言われる理由
個人的にはすばらしい出来だと感じた『レジェンド&バタフライ』ですが、一般の視聴者は賛否両論の状態。
時代劇なのかラブストーリーなのかアクションなのか、見るがわからしたらわかりにくいのです。
大衆受けという観点でいえばわかりにくさは弱点といえます。
時代劇とすると、言動が時代背景から逸脱した現代的なものが多すぎでした。
いくら濃姫の気が強いとしても、あそこまで信長をコケにして許されるのは不自然です。
合戦のシーンもほとんどないので(最後の本能寺以外)、アクションでもない気がします。
また信長の人物像を濃姫の側からとらえなおした新解釈のラブストーリーといえなくもないですが、恋愛だけがメインでもありません。
関係を通して人間の本質のようなものがえぐりだされる物語です。
つまり時代劇、ラブストーリー、アクション、コメディのどれでもくくることができない映画なのです。
ではいろんな要素を混ぜた映画なのかというと、そう言うにはオリジナリティが強すぎます。
『レジェンド&バタフライ』考察(ネタバレ)
胡蝶の夢ラスト
『レジェンド&バタフライ』のストーリーを大きな視点で捉えるなら、信長がみた胡蝶の夢となるでしょう。
濃姫は、魔王とおそれられた信長に愛や安らぎという夢を見せた存在=胡蝶です。
言い換えれば、世に知られている魔王ではなく、濃姫を追い求めていた自分こそが本来の自分だというメッセージです。
なのでラストの信長の夢オチが中国の有名な逸話・胡蝶の夢になぞらえられているように思えてなりませんでした。
(※胡蝶の夢とは古代中国の思想家・荘子の逸話:蝶になった夢から目が覚め、今の自分は蝶が見ている夢ではないかと考えた話)
濃姫の別名・帰蝶は、父・道三が蝶が好きだったからつけられたようですが、もともと胡蝶を帰蝶と間違えて書いてしまった説もあります。
胡蝶の夢的な解釈からいうと、信長も天下統一も濃姫の夢だと考えることができます。
数多の戦いと屍(しかばね)が夢だったら、濃姫と異国へ旅たった方が現実だったらという願いが強く伝わってきました。
儚(はかな)いメッセージが心に刺さります。
蝶のような信長の成長
蝶は帰蝶の異名を持つ濃姫をあらわしていますが、信長の成長もまた蝶のようでした。
最初は何もできない青虫だったのが、濃姫のアドバイスで頭角を表します。
普通であれば、序盤の信長をもう少し人間力があるように描いてもよかったと思います。
序盤の信長にまったく魅力がないのは、こういった劇的な変化が本作のコンセプトのひとつだからだと思いました。
そしてサナギからかえった信長は蝶でなく魔王になってしまいました。
しかしふたたび蝶が帰り、信長は心を取り戻したのです。
蝶が血を吸っていた意味
信長が戦で死体のやまを横切っているとき、死体の血を飲んでいたアオスジアゲハ蝶が、信長の肩にとまりました。
信長の肩にとまったのは、濃姫が信長を愛している表現だとわかります。しかしなぜ蝶は血を飲んでいたのでしょうか?
本作では信長の心の移り変わりにスポットが当たっていましたが、濃姫についても同じなのだと思いました。
つまり心がすさんでいた濃姫が信長に会って変わったという表現です。
濃姫は信長と結婚する前に結婚相手を2人暗殺したとほのめかされていました。
つまり血を飲むような人物だったわけです。しかし信長に会ってじょじょに変わりました。
本作は信長だけでなく濃姫の心情変化の表現も巧みだったと思います。
映画『レジェンド&バタフライ』ネタバレあらすじ解説
信長の躍進
信長と濃姫はしばらくは仲が悪いままだった。
ある日、鷹狩りに行くという信長を濃姫が笑う。自分なら鷹を使わないで弓で野鳥を射止められるというのだ。
信長は怒り、2人はどっちが大きな鳥をとれるか勝負をすることに。
信長は弓の腕がよくなく外しまくるが、濃姫は何羽もキジを射止めた。
信長は逆転しようとシカを追うが、あやまって崖から落ちそうになる。
それを見つけた濃姫が信長を助けた。
濃姫は、いつか海の向こうへ行ってみたいと言う。
濃姫の父・道三が息子の謀反で討ち取られる。濃姫はかたきをうちに行ってくれと言うが、信長は今下手に出すと一族の存続が危うくなると言った。
しばらくたち、信長がいる尾張は今川義元に攻められそうになっていた。
信長は軍の会議をひらくが、どうしていいかわからず何も決められない。
濃姫は侍女から逃げるように言われたが、信長のところへ行き、今川義元は絶対に勝てると思っているのが弱点だとさとした。
濃姫の言葉で奇襲作戦を思いついた信長は今川軍に歴史的な勝利をあげる。
さらに濃姫の地元・岐阜の土地も取り返し、岐阜城から周囲を眺める。
信長は京都へ攻め入るのに加勢をしてくれと他の大名から依頼を受けた。
信長や家臣はこれ以上戦いの場を広げると織田家に敵が増えすぎるのでやめようと考えた。
しかし濃姫が亡き父の天下統一の夢を果たしてくれと言い、信長に戦のアドバイスをする。
信長はまた劇的な戦法を思いつき京都を占拠した。
京都へ行くとたくさんの貢ぎ物を受けた。信長や家臣は濃姫の厚化粧に笑い転げる。
信長と濃姫はこっそり京都の街中へ出かける。信長は濃姫にカエルの置物を買ってあげた。
信長はスリに会い、貧民街へ。
濃姫が子供に暴行しようとしている男を斬り殺してしまったため大乱闘になり、2人は命からがら逃げ出す。そして小屋の中で愛し合った。
第六天魔王と化した信長
信長は戦いに明け暮れ、じょじょに人間味を失っていった。
信長は比叡山延暦寺を焼き討ちにして僧侶たちを皆殺し。さらに「我人にあらず」と言い、女性や子供まで全員殺す決断をした。
序盤ではひょうひょうとしていたキムタクですが、完全に別人です。
家臣は濃姫に信長に皆殺しを思いとどまるように説得してくれと頼む。
濃姫は信長に皆殺しをやめるように言うが信長は聞かず、女性と子供の処刑まで決行された。
まもなく濃姫はみごもるが死産となる。
信長はついに天下統一あと一歩のところまでたどり着いた。
しかし信長の蛮行についていけなくなった濃姫は離縁をつきつけ、信長のもとを離れた。
ラスト結末:本能寺の変
信長と濃姫が離縁してから7年後。
信長は貞家から濃姫が病気だと聞かされていてもたってもいられなくなる。
信長は病気で寝ている濃姫をたずね、戻ってきてくれと頼んだ。2人はお互いにずっと想い続けていたのだ。濃姫は了承した。
信長は濃姫を新たに建設した巨大な安土城へ連れて行く。
濃姫は、こんな格好ばかりの城をつくるのは子供だと笑った。
信長は病気で寝ている濃姫の回復を願うようになり、しだいに優しい心を取り戻す。
そんな信長を不安に思っていたのが家臣の明智光秀だった。
光秀は、「かつて魔王とおそれられた頃に戻ってもらわないと部下にもしめしがつかない、天下統一も果たせないと言い、徳川家康の来城の際に自分がミスをしたことにして殴りまくってくれ」と言う。
信長はその通りにしたが、光秀を扇子で殴りながら瞳をうるませてしまった。
徳川家康だけが明智光秀と信長が茶番をうったと見抜いていた。
信長は最後の戦に行くと言って寝ている濃姫に南蛮の楽器を渡し、弾けるようになっておけとほほ笑む。
濃姫は信長が無事に帰ってこれるようにカエルの置物を渡した。
信長は遠征先の本能寺で明智光秀の軍勢に襲われる。光秀は憧れていた強い信長はもうおらず、天下統一も果たせないと考えたのだ。
信長は光秀の軍勢と必死に戦った。しかし小姓の蘭丸など部下たちがつぎつぎに死んでいく。本能寺に火がつけられた。
信長は天守へ登る。カエルの置物を見て絶対に生きて帰ると誓い、床下の抜け穴から逃げ出した。
安土城へ帰った信長は濃姫を連れ出し、南蛮行きの船に乗る。
嵐の中でもお互いに助け合い、タイタニックのように船首に立って笑い合った。2人は異国の土地を見た。濃姫は赤ちゃんを身ごもっている。
信長は本能寺の天守閣の中で目を覚ます。すべて夢だったのだ。
信長は濃姫を思いながら刀で自害した。
ときを同じくして濃姫も病気で死んでいた。信長からもらった南蛮の楽器をだいていた。
映画『レジェンド&バタフライ』終わり!
最後のまとめ
邦画『レジェンド&バタフライ』は、木村拓哉さんの魂の演技と、濃姫の視点での新しい信長がシンクロした傑作でした。
歴史に忠実な時代劇かはわかりませんが、信長の人間味を切れ味鋭く表現したすばらしい作品だったと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『レジェンド&バタフライ』レビュー終わり!