Netflix台湾ホラー映画『呪詛』。超面白いオススメのフォークホラー。台湾史上1番怖いホラーと言われ本国で大ヒット。実話をモチーフにした超ハイクオリティな傑作でした!
めちゃくちゃ怖かったです(正直なめてました。ごめんなさい)。
作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価、ラストの意味・大黒仏母の正体・元ネタ考察、娘・ドゥオドゥオの結末解釈、
基になった実話、恐怖構造の徹底解説、を知りたい人向けに徹底レビュー!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『呪詛』作品情報・キャスト
台湾語タイトル:『咒(呪いの意味)』/英題:『Incantation(呪文の意味)』
ジャンル:ホラー
監督:ケビン・コー
脚本:ケビン・コー/チャン・ジャウェイ
めっちゃくちゃ面白いホラーなのに、Netflix JapanではYoutubeで日本語字幕予告を公開当日にしかアップしてませんでした。
Netflixオリジナルではない台湾映画を配信するからだとしても、事前にもっと大々的に宣伝・告知すべき作品ですよこれ!
呪詛の登場キャラ・キャスト
リー・ルオナン(母)|cast ツァイ・ガンユエン
シエ・チーミン(里親)|cast ガオ・インシュアン
あらすじ
リー・ルオナンは6年前にとある村落でタブーを犯してしまったと視聴者に告白。娘への呪いを解くために協力してほしいと画面に向かって呼びかける。
ルオナンは里子に出していた娘・ドゥオドゥオを里親のチーミンから引き取って一緒に暮らすことに。
しかし、ドゥオドゥオの身辺で超常現象がいくどとなく巻き起こる。
ルオナンは呪いを解くためにチーミンと村へ向かうが、数々の驚愕の事実が待ち受けているのだった…。
ネタバレなし感想・海外評価
モキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)、フォークホラー(田舎の部落で起こる恐怖)、ファウンド・フッテージ(発見された恐怖映像)などさまざまな要素が高次元で融合しています。
正直、近年超高い評価を受けているアリ・アスター監督の『ミッドサマー』(2019)や『ヘレディタリー』(2018)よりも面白いと思いました。
ホラー好きは絶対に見るべき!完成度が非常に高い超オススメ作です。
逆にいうと怖い・虫・グロいが苦手な人は精神衛生上視聴を控えたほうが無難。
ファミリーでの視聴も子供にトラウマを植え付けかねないのでやめましょう!
さらに本作にはホラーとして最高に面白い以外にも、絶対に見てほしい理由があります。
ぜひNetflixで本作を視聴してからまたこの記事に戻ってきてください。
絶対に見てほしい理由は次の項目で語ります…。
おすすめ度 | 97% |
恐怖度 | 95% |
ストーリー | 92% |
IMDb(海外レビューサイト) | 7.5(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 75% 一般の視聴者 58% |
※以下、ホラー映画『呪詛』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『呪詛』ネタバレ感想・評価
- 娘を呪いから解くために観客を巻き込むコンセプト
- POV(主観撮影)を上手に使った恐怖映像
- どんでん返しが連続する完成度の高いプロット
- 台湾の田舎村を舞台にしたワクワク感
ホラー映画として何もかもが最高レベルでした。
Netflix視聴途中でパソコンの画面がいきなり緑色になって消えたり、コーヒーを入れた魔法瓶が何かの鳴き声のように「キュッキュキュッキュ」と1時間ほど音を立ててました。
本当の話です。肩もなんかすごく痛いし…。
でも、「この呪いは視聴する人が多ければ多いほど弱まる」と劇中で言っていたので、たくさんの人が観てくれたおかげで私への災難がこの程度で済んだのかもしれないですね。
Netflixで何万人もの人が視聴すれば私にかかる呪いも薄まることでしょう。
面白い以外の見てほしい理由というのはコレです。本当すいません。
冒頭の主人公による視聴者への語りや、観覧車の絵が逆方向に回るように見える実験含めて「あなたの認識次第で本作の呪いは本物になる!」というメッセージ性、現実にまで影響するかのようなリアリティがとにかく素晴らしい。主観映像系は韓国の『コンジアム』も有名ですが、臨場感あって怖いですよね。
膨大な数の人を巻き込む構造から、人間という生物の怖さ・醜悪さまでありありと浮かび上がってきます。
内容と怖さに大満足しつつ、余韻のせいで見終わったあとにトイレに行くのが怖かったです。
映画『呪詛』の考察と解説(ネタバレ)
観客を〇〇するコンセプトが凄い
最初から怪しいですよ〜。
「ビデオを撮影しているのは娘を呪いから解くため。符号を覚えて一緒に呪文を唱えてほしい…」
主人公の女性・ルオナンは私たち視聴者にそう呼びかけます。
衝撃の恐怖ラスト!
ホラーとしてラストのどんでん返しも素晴らしかったです。
主人公・ルオナンが「嘘をついてました。ごめんなさい」と視聴者に向かって謝るくだりがあり、そこは「お前が俺たちに呪いを分けようとしていたのは気づいていたぜ!」って感じで予想通りでした。
しかし、ルオナンが6年前にすでに雲南の和尚に会っており、村で遭遇した呪いの意味を知っていてみんなに広めていたというラストには底しれぬ恐怖を覚えました。
(ビデオ映像にチラッと映ったルオナンが妊婦だったことから、6年前に和尚から呪いについて聞かされていたと判明)
ルオナンは自分や娘に優しくしてくれた里親のチーミンやおばさん(口に熱いガラスを突っ込んで死亡)、協力してくれた呪術師夫婦、精神科医たちにも最初から呪いを分けて殺すつもりで接していたとわかるからです。
すべての行動が娘・ドゥオドゥオへの呪いを薄めるためだったんですね。
娘を救うためにその他大勢を犠牲にしてもいい(視聴者含めw)。
彼女の考え方は仏教の鬼子母神(自分の子供を養うために人間の子供を食べて力をつけていた)のようです。
6年前からルオナン自身への呪いもまったく解けていなかったのでしょう。
彼女は鬼子母神のように行動し、最後には頭を打ちつけて衝撃的な死亡を迎えました!
大黒仏母の正体と意味
劇中で密教の呪いの根源として描かれた大黒仏母ですが、村落の天井に描かれていた大黒仏母の絵画を見る限りヒンドゥー教の神カーリー・マー(黒き母/シヴァ神の妻)のようです。
手が何本もあって、左手に生首を持っているイメージが一致します。
ヒンドゥー教のカーリーは、仏教では鬼子母神となります。
先ほど考察したように、本作『呪詛』は子供を救うために鬼になる母親・鬼子母神がテーマなのでしょう。
(ちなみに仏教の大黒天が、ヒンドゥー教ではシヴァ神を指すようです。)
劇中の大黒仏母の天井絵は顔が血で覆われていました。
またラストでルオナンが大黒仏母の像の顔の布を剥ぎ取ると、ブツブツが内側にある巨大な空洞があるというグロすぎの結末。
ルオナンは自ら、石に頭を何度も打ちつけて死んでいきます。
呪いを受けたものが自ら顔を壁に打ちつけて死んでいくのは、大黒仏母の姿形になって死ぬという意味があるのです。
頭突きは大黒仏母との一体化の行為にも見えますね。
娘ドゥオドゥオは助かってない?
ドゥオドゥオは物語の最後で元気になっています。
しかし「おうちはお城から遠い」「お城に行くバスがない」「お城が泡になって消えた」と意味不明なことを言っています。
「お城」とは何でしょう?
大黒仏母につながる何かを指しているのかもしれませんが、確定はできません。
ただ問題はこの言葉でなく、誰かがドゥオドゥオをホームビデオで撮影していることでしょう…。
つまり呪いは解けておらず、呪いの拡散も終わっていないのだと思います。
ドゥオドゥオは、お腹の中にいながら村の儀式で大黒仏母に捧げられてしまった存在です。
- 大黒仏母に操られている
- 大黒仏母と一体化している
これらの可能性が考えられます。
狂気ですね…。
ケビン・コー監督は続編を製作中らしいです。
呪われているドゥオドゥオの物語になりそうですね。
実話がもと
なんと『呪詛』は実話を基にした作品。
基になった事件は2005年に台湾・高雄市で、ある家族がそれぞれ異なる神々に取り憑かれて呪いあい、長女が死亡した事件です。
家族でお互いに「悪霊が取り憑いている!」と殴り合い、排泄物などを食べさせたとのこと…。怖すぎですね。
長女の死亡を受けるも家族は悪霊が死んだだけだと主張し、精神鑑定も正常。無罪になったそうです。
いろいろと狂っています。
ケビン・コー監督がインスパイアを受けたのもうなづける凄惨な事件ですね。
祈りは呪いに
本作は冒頭で主人公のルオナンが「意志で世界は変わる」と言い、観覧車の動くイラストを見せて「右向きに回っているとも左向きに回っているとも認識できる」と視聴者に説明します。
さまざまな解釈ができると思いますが、個人的に祈りは逆行すると呪いになる!というメッセージが本作の根底にあると感じました。
認識次第で世界が変わるという冒頭のメッセージは、裏を返せば人は認識次第で最悪な結末を迎え得るということ。
広い視点で見ると『呪詛』は娘に生き延びてほしいという強すぎて現実を歪め、祈りを呪いに変えてしまった母親の物語といえるでしょう。
子供を大切に思う気持ちがマイナスに作用してしまうのは、毒親など現実の社会問題にも通底します。
もう1つ本作でいわれた認識について大事なことは、『呪詛』という映画の呪いは認識次第で本物になるということ。
10代の裸の少女の謎
半身不随で動けないドゥオドゥオがなぜか夜中に街をうろつき、裸で倒れている身体中にびっしりお経が書かれた10代の少女を発見します。
この少女は6年前にチェン氏宗族の村にいた女の子です。
(ルオナンが病院で彼女の左耳がないのを確認しています。)
推測になりますが、
- ルオナンのせいで呪いが暴走して村が滅びた際に、女の子は逃げ出した
- 隠れて暮らしていたものの、大黒仏母の呪いがドゥオドゥオを操り、女の子を見つけ出した
という経緯だと思います。
ルオナンは彼女の右耳を切り落として大黒仏母にお供えしました。耳にはお経が書かれていなかったからでしょう(耳なし芳一みたいですね)。
映画『呪詛』から本作で学んだこと
哲学や心理学で常に問いの中心にある人間の認識の問題を冒頭で提示し、思考実験のていを取り、いわば催眠術のように視聴者を作品の中へ引き摺り込む。
視聴者が“祈り”を唱えさせられたのは主人公の娘を救うためだったはずが、視聴者自身がその呪いを被るための“呪文”だったとわかる。
善意ではなく悪意に加担していたとわかり、その恐怖と裏切りから映画『呪詛』自体に視聴者の現実が覆われてしまうかのようです。
ラストシーンも大黒仏母の顔のブツブツ空洞がアップになって、吸い込まれ・覆われていくようでした。映像も恐怖の概念にリンクしているんですね。
全体からみて特定の個人を救う→全員で呪いをシェアするという構造上のベクトル転換が完璧に機能しています。
今後のホラー映画で現実とリンクする本作のメタ構造が流行りそうですね。
自分がこの呪いに関わってしまったかも…と1/100でも思ってしまうだけで、臨場感がぜんぜん違います。
視聴者参加型のコンテンツは失敗するとシラケますが、ホラーは呪文などがあるので手法を適用させやすいのでしょう。
ただ一方で、見てる側の認識を変えるというコンセプトは決して大袈裟でなく危険です。
プラシーボ効果「まったく関係のない薬を与えられた被験者も症状が改善する」などの実験結果もたくさんあります。
ようは、人間の認識=思い込みの力は、想像以上に強力なのです。
特に10代の感性が鋭敏な若者たちが本作のような作品にのめり込みすぎては、いい影響だけがあるとは思えません。
広義の意味では『呪詛』というコンテンツ自体が禁忌(タブー)の範疇に入るでしょう。
『幽遊白書』のビデオテープ黒の章(人間の残忍な罪が記録されており、仙水が人類を滅ぼうと思った)みたいですね。
正直、視聴禁止コンテンツ!にするほどのレベルではないですが、セーフとアウトのライン上にある作品だとは思いました。
良い方面に還元すると、台湾ホラー『呪詛』は「映像は見る人の思考を再構築できる」という学びを再認識させてくれた強力な作品でした。
最後のまとめ
Netflixホラー『呪詛』は、最高の恐怖とおぞましいメッセージを視聴者に伝えた傑作でした。
怖い・面白いだけでなく、メタ的なコンセプトまで優れている!
台湾ホラーすごいですね。これから他の台湾映画もあさってみたいと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。台湾映画『呪詛』レビュー終わり!