Netflix配信のスウェーデン映画『JJ+E』(ジェイジェイプラスイー)は、貧困層の少年と金持ちの女の子の恋を通して、美しい街を断絶する格差を描いた社会派恋愛モノ。
美しい街の景観の中で、彼らは負の連鎖を止められるのか?
全体的に詩を読んでいるような作品で、ラストがかなり印象的でした。
ぶっちゃけ感想や評価、ラストや格差テーマの考察、ネタバレあらすじ解説をしています!
Netflix映画『JJ+E』キャスト・作品情報
公開・制作国:2021/09/08・Netflix・スウェーデン
原題:Vinterviken
監督:アレクシス・アルムストロム
脚本:ドゥンヤ・ヴィヨヴィチ
原題のVintervikenとは、スウェーデンのストックホルムの湖の湾の名称で、ここが本作の舞台です。
ヨンヨン(JJ)/ムスタファ・アーラブ
ヨンヨン(John John)は、街の貧困層(おそらく移民系)が集まる集合アパートで暮らす少年。
荒くれ者の親友スルゴはすぐ下に住んでいて、いつも窓から会話します。
演劇に興味があり、倍率の高い演劇学校に入学。(格差是正措置を使った可能性あり)
母の恋人パトリックはヘロイン中毒者で、暴力もふるってくるため悩んでいます。
エリザベス(E)/エルサ・オーン
※以下、映画『JJ+E』のストーリーネタバレありなので注意してください。
『JJ+E』ネタバレ感想・評価
『JJ+E』の評価は80点。
ストーリー自体はロミオとジュリエットの現代版的な“格差によって許されない恋”で、面白みをそこまで感じませんでしたが、スウェーデンの街や高級邸宅など、映像が魅せる美しさによって退屈しませんでした。
同じ北欧だとポーランド映画『プライムタイム』(2021)のようにゴリゴリの社会派っていう感じというよりは、美しいシーンと恋愛も楽しめた印象です。
ヒロインのエリザベスが暮らす邸宅は庭にプール付きで内装も夢のようにオシャレで、いつかこんな家に住んでみたいという欲求を掻き立てられます。
この映画の魅力はラストでしょう。ラストで主人公の少年・ヨンヨンが逮捕されてしまいますが、金持ち少女・エリザベスはその場面を見て、現実にうちひしがれたように立ち尽くします。
そしてなんと、エリザベスも彼を追って逮捕されるのです。そして2人はキス。この結末が非常に印象深かったですね。
格差社会の問題解決にはなっていなくても、2人の若者が問題を乗り越えて明るい未来を築いていこうというポジティブなエネルギーが感じられました。
ラストは鮮烈な悲劇か?と思っていた矢先だったので、ほっこりもしました。
映画としては可もなく不可もなくといった感じはありますが、社会問題を美しくまとめあげた点は素晴らしかったと思います。
考察:2人の未来はどうなる?ヤコブ先生
ヨンヨンとエリザベスが逮捕されて終わる結末ですが、この先はどうなるのでしょう。
エリザベスは警察車両の前に飛び出て逮捕されるくらいなので、ヨンヨンと添い遂げるのかもしれません。
また、ラストの手前で演劇学校の先生・ヤコブが、ヨンヨンが盗んだことを知っても警察に届けず、「会って説得をしたい」と言っていました。
なので、ヤコブ先生の力もあって、ヨンヨンはまた学校に通えるのではないでしょうか。
ヤコブは旧約聖書に登場するヘブライ人の族長で、イスラエル人の始祖といわれる人物です。
その名を受け継いで男性名でヤコブは結構多いですが、このヤコブ先生は、格差のない民族の父になろうとしているのかもしれませんね。
ヤコブ先生の考えがさらに若い世代にも受け継がれ、貧困や差別が少なくなることを願わずにはいられません。
金持ちの武器が貧困層へ
映画『JJ+E』では主人公・ヨンヨンたちが育つ環境など、格差社会の問題をわかりやすく提示していました。
1番印象に残ったのが、親友スルゴがエリザベスの父フランクから盗んだ銃が、最後にヨンヨンの手に渡る流れです。
金持ちの銃で、貧困層の争いが勃発すると象徴しているようでした。
大国や軍事企業がアフリカや中東に武器を渡す構造に似ていますね。
本作では結果的にヨンヨンは思いとどまったので、争いの負の連鎖が止まったという解釈ができます。
『JJ+E』ネタバレあらすじ解説
貧困層の集合アパートに住む少年ヨンヨン(JJ)は、階下に住む親友スルゴと湖の湾(Vinterviken)に泳ぎに出かけます。
スルゴは停めてあったモーターボートを勝手に操縦し、ヨンヨンをのせて対岸へ。2人は金持ちが住む高級住宅街を眺めていました。
ある少女が水面に飛び込み、その上から男の子が飛び込んで体がぶつかります。少女は浮かび上がってきません。ヨンヨンは湖に飛び込んで彼女を助けました。
その少女・パトリシアは助かり、ヨンヨンは父・フランクからお礼を言われて家に連れて行かれます。その家でヨンヨンは、パトリシアの姉・エリザベスと出会って好きになりました。
後日、スルゴはエリザベスたちが祖母の家に泊まりに行くと言っていたことを思いだし、家に侵入して盗みを働くことに。ヨンヨンも仕方なくついていきますが、出かけていたエリザベスたちが帰ってきたのでみんなは急いで裏側から逃げました。
ヨンヨンは倍率の高い演劇学校に合格し、はじめて登校します。するとエリザベスもそこに入学していました。
エリザベスは数ヶ月前に母を失ったようで、まだ落ち込んでいて周りと打ち解けません。ヨンヨンはエリザベスに積極的に話しかけ、2人は仲良くなり、エリザベスの家のプールでキスをします。
後日、ヨンヨンはスルゴが盗んだ高級時計を身につけてエリザベスと林の中のパーティーに参加します。しかし帰り道に2人組に金品を奪われ、ヨンヨンが時計を渡すのを渋ったため、エリザベスが殴られました。
2人組は去ります。彼女の父・フランクがやってきて、ヨンヨンに二度と娘に近づくなと言います。
ヨンヨンはエリザベスを好きで諦めきれず、裏口から彼女の部屋に入り先日の件を謝罪しました。そして2人は男女の関係に。
一方、スルゴは本物のギャングに脅されて殴られ、盗んだ時計をすぐ金に変えなくてはならなくなります。スルゴは、ヨンヨンが時計の1つを奪われていたと知り唖然としました。ヨンヨンは仕方なく演劇学校に忍び込み、高価な音響を機材を盗んで金に変えます。
ヨンヨンは家に戻り、母の恋人パトリックがもう片方の高級時計を勝手に取ったことに怒り、口論がはじまりました。
スルゴとヨンヨンは、ほとぼりが冷めるまで友人のところに滞在することに。ヨンヨンはエリザベスに別れの電話を入れました。
父・フランクはエリザベスに、ヨンヨンたちが自宅に侵入したカメラの映像を見せます。
そんな折、スルゴが痴話喧嘩で知り合いに銃で撃たれてヨンヨンの目の前で即死。
ヨンヨンは落ち込みます。
友人のキバに止められましたが、スルゴのズボンに入っていたエリザベスの家から奪った銃を持って、スルゴを撃った人物のところへ行きました。銃で彼を脅し警察を呼びます。2人とも逮捕されました。
キバに連れられたエリザベスは、逮捕されるヨンヨンを見て唖然としますが、走り去る車の前に原付に乗ってわざとおどり出て、彼女も逮捕されます。
ヨンヨンとエリザベスは警察車両の中でキスをしました。
Netflix映画『JJ+E』終わり。
最後のまとめ
映画『JJ+E』は、少年少女のピュアな視点から住む場所でこんなにも生活レベルが違うとショッキングに描いた社会派恋愛モノの佳作でした。
福祉の手厚さで知られ平等主義のイメージがあるスウェーデンですが、実際にはヨンヨンやスルゴが暮らす移民スラムっぽい集合住宅があり、格差の問題がまだあるのでしょう。
映画はフィクションですが、スウェーデンの文化に触れて、それについて考えるきっかけになりました。
Netflix『JJ+E』レビュー終わり!
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