映画『非常宣言』ネタバレ感想:ラストは死亡?徹底考察!評価,あらすじ解説,キャスト

  • 2023年11月11日

韓国映画『非常宣言』(비상선언)。ソン・ガンホとイ・ビョンホンが飛行機での未曾有のバイオテロを食い止めるために奮闘します!

シネマグ
たんたんとした序盤から、アクションがすごい中盤、そして超感動のラストが待ち受ける傑作!コロナ問題で愚策を繰り返す中国政府にこの映画を見せてやりたいです!
  • 作品情報・キャスト
  • ネタバレなしの感想
  • 全話視聴した感想・評価(ネタバレあり)
  • 終盤・ラストシーン深掘り考察
  • 全話ネタバレあらすじ解説

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『非常宣言』作品情報・予告

日本公開・制作国・上映時間:2023/01/06・韓国・2時間27分
韓国語タイトル:『비상선언』英題『Emergency Declaration』
ジャンル:サスペンス・アクション・ヒューマンドラマ
年齢制限:G(年齢制限なし)
監督・脚本:ハン・ジェリム(『優雅な世界』『ザ・キング』『観相師』)
美術:イ・モクウォン

年齢制限なしですが、けっこう血が流れるシーンが多いので苦手な人は注意してください。

映画『非常宣言』キャスト

ク・イノ刑事|cast ソン・ガンホ

ク・イノ刑事を演じる俳優ソン・ガンホ

バイオテロを解決しようとする熱血刑事。

今回のソン・ガンホは役どころも演技も最高でした。不器用ながら共感と感動を誘う登場人物を熱演しています。

ソン・ガンホは『殺人の追憶』やアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト半地下の家族』などポン・ジュノ監督の名作に多数出演。

是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(2022)にも出演し、カンヌで最優秀男優賞に輝きました。

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パク・ジェヒョク|cast イ・ビョンホン

パク・ジェヒョクのキャスト イ・ビョンホン

ジェヒョクは飛行機の乗客で、過去に葛藤を抱える男性。娘と一緒に乗っている。

誰もが認める韓流スター/イ・ビョンホン。本作のラストの感動は彼しか引き出せなかったと思います。

最近はNetflix『イカゲーム』にも出てましたね。

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その他のキャスト

キム・スッキ国土交通省大臣|cast チョン・ドヨン

ヒョンス副操縦士|cast キム・ナムギル:最近だとAmazonプライムの妖怪退治ドラマ『アイランド』の主演ですね。

リュ・ジンソク|cast イム・シワン

ヒジン(CA)|cast キム・ソジン

パク・テス|cast パク・ヘジュン

映画『非常宣言』あらすじ

映画『非常宣言』

ク・イノ(ソン・ガンホ)刑事はハワイへ旅行へ行く妻を見送った。

空港ではジェヒョク(イ・ビョンホン)が娘を連れてハワイ行きの飛行機・KI501便に搭乗しようとしていた。

カウンターでは、トイレでジェヒョクの娘に怪しい行動を見られた男性リュ・ジンソクがハワイ行きのチケットを購入。

飛行機は飛び立った。

ク・イノ刑事は、きのう投稿されたという飛行機テロ予告の動画を捜査することに。

マンションの子供たちが、動画は隣人の男性にそっくりだとク・イノに話す。

ク・イノがその男の部屋に入ると、“最悪なもの”があった。

飛行機ではバイオテロが発生しようとしている…。

ネタバレなし感想・海外評価

シネマグ
見応えはすごいですが、サスペンスアクションというよりヒューマンドラマの要素が強い作品。

未知のウィルスが飛行機内で蔓延し、乗客の命を救うか、それとも犠牲にするかというトロッコ問題が物語の核です。

急に機体が回転して女性の髪の毛が逆立つシーンや、飛行機の操縦シーンなど手に汗握るスリリングかつ上質なアクションもたくさん。

上映時間が2時間27分と非常に長く、序盤から中盤まではちょっとだれます。

ただラストの展開やメッセージ性は本当にすばらしいので見る価値は十分です。

おすすめ度 85%
メッセージ性 96%
ストーリー 78%
IMDb(海外レビューサイト) 6.9(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 64%
一般の視聴者 80%
メタスコア(Metacritic) 70(100点中)

※以下、韓国映画『非常宣言』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『非常宣言』ネタバレ感想・評価

感動の人間ドラマ!

韓国映画『非常宣言』の評価は88点。
シネマグ
コロナ問題の正解をヒューマンドラマで描いた傑作です。
途中まではイマイチでしたが、中盤以降からだんだんと盛り上がってきてラストは超感動しました。
  • 未曾有の殺人ウィルスを乗せた飛行機を韓国に着陸させるか?
  • 着陸させてさらに感染が広がったらどうするのか?
ギリギリの決断を攻めておりメッセージ性が非常に高くて見応えバツグンでした。
韓国の国民のために自分たちの命を犠牲にする「着陸しない」を選択した乗客たちが地上の家族に電話するシーンは涙なしでは見られません。
韓国政府は着陸拒否を決断。しかしソン・ガンホが自らウィルスの人体実験をして血だらけで悶えながらワクチンの効果を実証します。
1人の男の正義が大臣や官僚たちに伝染し、戻ってこいと飛行機の乗客へメッセージを送るながれがとても美しかったです。
地上からのメッセージで乗客のスマホがいくつもピカピカと光っていくシーンはまさに希望の映像化でした。
シネマグ
ウィルスの伝染に、善意の伝染が勝った!と伝えているようです。
そして、イ・ビョンホンが過去の葛藤を乗り越えて飛行機を不時着させるクライマックスは感極まりました。(映画館ではみんな泣いてました。)
ラストの着陸シーンのまえにいったん未来の話がさしこまれ、「墜落したのか?それとも助かったのか?どっちなんだー!」と見ている側が宙ぶらりん状態にされる編集もすごく効果的。
感想を語る犬
臨場感とスリルがありすぎて、暗い映画館内の階段にそった赤いライトが飛行機の滑走路に見えました。
その宙ぶらりん状態で差し込まれたカットは、自らウィルスを打ち後遺症で動けなくなっているソン・ガンホのもとにイ・ビョンホンが会いにきて、生存者がパーティーしているものでした。
考察の項目でも詳しくやりますが、着陸失敗したのか?というミスリードになっていると同時に本当に失敗して全員死んでいるようにも解釈でき、メッセージが神々しくなった印象です。

残念な点

『非常宣言』の海外の評価はまあまあ高いのですが、“すごい高評価”とまではいっていません。

個人的には前半にもっとのめり込む何かがあれば、さらに良い作品になっていたと思います。

飛行機に乗っているイ・ビョンホンと、地上で事件を捜査するソン・ガンホの2人だけでなく、さまざまな人物にスポットが当たる群像劇で、シーンの切り替わりが多かったのが没入感が削がれる原因だったと思いました。

前半はパンデミック映画『コンテイジョン』のような感じでドライな群像劇にして後半一気に盛り上げる意図があったのかもしれません。

わりとたんたんと状況説明的なシーンが続き、感情移入する場面が少なかったので中だるみがありました。

(まあ、最高のラストによって帳消しになるくらいの小さな不満ですが。)

あとはハワイから韓国まで8時間もあるにもかかわらずその間ウィルスで死ぬ人が少ないなど、ウィルス自体はご都合主義でした。

飛行機の燃料もギリギリ韓国に着いたレベルなのに、管制塔の人たちが遠くの飛行場に誘導する意味もわかりません。

普通に考えて、遠くの飛行場へ行くという選択肢が成立するのは燃料があればの話ですよね…。

まあウィルスの性質や細かい点にリアリティを求めるタイプの映画ではないといえばそうです。

細かい点は気にしない人が勝ちでしょう。

国がリスクをとって飛行機の人たちを救うか、それとも見殺しにするかのトロッコ問題によって人間ドラマを浮き彫りにするコンセプトなので、ディティールのあら探しをするのは野暮な気がします。

映画『非常宣言』考察(ネタバレ)

死んでる?意味深なラストシーン

ラスト付近で犠牲者たちがソン・ガンホのアパートのそばに集まって健闘をたたえ会うシーンに違和感を感じました。

画面に向かってソン・ガンホより左側にいるKI501便の乗客だった人たちのほとんどが白い服を着ています。

さらにキャビンアテンダント(CA)たちが制服姿です。

CAがホームパーティーに制服でくるのは不自然な気もします。

全体に光の輪(ゴースト)が映り込んでおり、天国のような雰囲気です。

「KI501便」の乗客たちはみんな死んでいる!と決めつけたいわけではありません。

ただそのようなニュアンスをただよわせることによってもし仮に着陸が失敗していても、後悔するものは誰もいなかっただろうと伝えているのだと思います。

(もしくはワクチンが効かずにみんな死亡した場合でもいいです。)

観客たちの死をほんの少し匂わせることによって、どんなに悲惨な結果であっても、ソン・ガンホ演じるク・イノの自己犠牲や、イビョンホン演じるパイロットの決死の奮闘は無駄ではないと伝わってきます。

裏を返せば生死という結果がどうでも良くなるほど、刑事もパイロットも地上の人たちも想いを交わし合ったということです。

現実社会の政治・会社・コロナなどさまざまなレベルの問題についても、「あなたが選んだんだから私は結果を受け入れるよ」というフェーズまで持っていき、そこではじめて選択するのが正しい決断だと思いました。

そのレベルまでいけば「正しい道が見つかる」ではなく、「ともに歩む全員が責任を持って正しい道にする」に変化させられるでしょう。

スッキ大臣たちはク・イノ刑事が助かったからワクチンの効果があると安直な判断をしたわけではなく、彼の行動を正解にしたいから効果ありと断定したのでしょう。

決断のむつかしい問題において、正解は結果でなく過程にあるのです。

そんなメッセージを本作で教えられた気がします。

パンデミック社会の向かう先、その一つの正解が映像で表現されていました。

映画『非常宣言』ネタバレあらすじ解説

パニックになる機内

リュ・ジンソクはトイレに入り、脇の下の縫い目をほどいてカプセルを取り出してウィルスの粉を散布した。

ジンソクはトイレのまえにいたジェヒョクの娘に「全員死ぬ」とささやいた。

トイレにやってきたビジネスクラスの男性がその粉を触ってしまう。

しばらくすると男性の皮膚がみずぼうそうのようになり、眼球が破裂して血を吐いて死亡。機内は騒然となる。

チーフCAのヒジンが地上に連絡して危機を伝えた。

ジェヒョクがジンソクが殺人犯だと訴え、副操縦士のヒョンス(キム・ナムギル)がジンソクを取り押さえる。


いっぽうク・イノ刑事は、リュ・ジンソクの部屋で血だらけの男性の遺体を発見。

鑑識はウィルスが死因だと判定する。部屋にはマウスでウィルスの実験をしたビデオが大量にあった。

ク・イノはリュ・ジンソクがバイオテロを起こそうとしている飛行機は、妻が乗っているハワイ行きの便だと知ってがく然。

リュ・ジンソクが以前勤めていた製薬会社からの密告で、彼に協力者がいると判明。

ク・イノは協力者のアパートへ行くと、部屋から男が飛び出しバイクで逃走。

ク・イノは車で追いかけ、カーチェイスが繰り広げられる。

しかし他の車が衝突して事故を起こしてしまった。

結局、協力者かと思われた男はリュ・ジンソクにだまされてウィルスを彼に送っただけで、計画については知らなかった。


地上では国土交通大臣 キム・スッキや、危機管理センターのパク・テスが、リュ・ジンソクと電話で会話して交渉を試みる。

しかし自分も最初から死ぬつもりのジンソクは交渉にまったく応じない。

ジンソクは血を吐いて死亡した。

そんな中、CAが1人死亡。飛行機が傾き、乗客たちがパニックになる。

感染したCAから料理を運ばれた操縦士がウィルスで死亡したのだ。

ヒョンスが急いで操縦席に戻る。元パイロットのジェヒョクも操縦を手伝った。

ジェヒョクはかつて優秀なパイロットだった。

しかし機体トラブルがあった際に管制塔の指示に従わずに不時着し、その機内に乗っていたCA・ヒョンスの妻が機内の火事で死んでしまったのだ。

その事故で責任を感じたジェヒョクは辞職したのだった。

乗客と刑事の決断

乗客たちのなかで、感染して肌に発疹ができている者と、感染していない者で席をわけるこぜりあいが起きた。

ハワイが近くなり、ヒョンスは飛行機を着陸させようとする。

しかしアメリカ政府に拒否された。乗客たちが未知のウィルスに感染しているからだ。

地上で指揮を取るスッキらは、仕方なく飛行機に韓国に引き返すよう指示

ヒョンスは苦渋の表情で飛行機を旋回させ、ハワイに着陸できないと知った乗客たちは絶望した。


ク・イノはジンソクの元同僚から製薬会社に中東から輸入されたウィルス・SC-1とワクチンがあると聞き出した。

ジンソクはSC-1を改良して潜伏期間を短くし、それを使ってバイオテロを起こしたのだ。

ク・イノは製薬会社に殴り込む。

大臣のスッキも到着し、製薬会社の重役はワクチンを提供することを承諾した。


飛行機は日本の成田空港へ近づく。

しかし日本政府は「ウィルスSC-1はジンソクによって変異させられたため、ワクチンがきくかわからない」と会見。着陸拒否を表明した。

自衛隊の戦闘機がKI501便を包囲し、威嚇射撃をしてくる。

ヒョンスは仕方なく着陸をあきらめ、進路を韓国に取った。

感染していたヒョンスは倒れ、ジェヒョクが操縦をかわる。

しかし韓国の国民の間でも「飛行機を着陸させるな!」と空港付近でデモが起こっていた。

ク・イノは研究室に突入して研究員を銃で脅し、自分にウィルスをうたせる。

発症後にワクチンをうたせて効果を証明するつもりだった。

スッキが研究室に到着するとク・イノが血だらけでもだえ苦しんでいる。ワクチンをうったが効かないようだ。

韓国政府は、KI501便の着陸を拒否を決定しようとする。

ク・イノの妻やジェヒョクの娘たちは自分たちが着陸して、もしパンデミックが起こったらたくさんの命が失われると考える。

乗客たちは、着陸しないことを選択した。

ク・イノの妻は娘に電話で別れを告げる。他の乗客も地上の家族と電話で泣きながら最後の会話をした。

ジェヒョクは乗客の決定を地上に伝える。

ラスト結末

スッキのまえでク・イノの脈が回復。ワクチンには効果があるのだ

スッキは着陸許可を訴える。反対していた危機管理担当のパク・ヘスたちも賛成した。

しかし地上から飛行機へ電話しようとするが繋がらない。

地上の家族が機内へメッセージを送った。ジェヒョクは着陸の体制に入る。

管制塔の判断に反き、ジェヒョクは旋回して近くの空港の滑走路へ。

過去と同じく自分の判断を信じてみるつもりだった。

しかし速度が出過ぎており、滑走路を超えて大惨事を起こしてしまう可能性があった。


数カ月後。

飛行機テロの対策について責任究明の会議が開かれている。

スッキ大臣は着陸許可を独断した責任をとって辞任していた。

ク・イノのアパートの外ではKI501便の生存者が集まって食事会をひらいている。

ク・イノは一命を取り留めていたが、ウィルスを大量に打ったせいで意識不明の車椅子状態だ。

ジェヒョクがやってきてク・イノにお礼を言う

ジェヒョクはあのとき着陸を成功させ、乗客たちはワクチンで助かっていたのだ。

映画『非常宣言』終わり

最後のまとめ

『非常宣言』は、手に汗握る飛行機内アクションと、コロナ禍の社会の過ち・さまざまな決断を凝縮させたキレ味抜群のテーマが高い次元で交わった傑作でした。

本作を見ると閉塞感のある社会にかすかな希望が失われていないことを実感できます。

シネマグ
現実にも影響を与えるような力強い作品でした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。韓国映画『非常宣言』レビュー終わり!