オカルトマニア・雨穴さんの大人気小説『変な家』を読み終わりました。ネタバレありのストーリー解説と考察!読了後の感想や評価を正直にレビューしていきます!
間宮祥太朗と佐藤二朗さんのW主演で映画化もされ、2024年3月15日(金)に公開が予定されている本作。
映画版『変な家』の感想レビューや考察は下記記事へ↓
実写映画『変な家』についてストーリーのネタバレあらすじ・ラスト結末の解説&徹底考察をしてみました。 シネマグ 喜江が裏でやっていたこと、ラストの怖すぎる意味、最後の窓の新解釈、隣のおばさんの正体などを解説していきます! […]
『変な家』ネタバレあらすじ解説・ラスト結末
変な間取りとその関係者
筆者(雨穴)と不動産業の栗原は、2階の中央部分に窓のない子供部屋がある変な間取りの家(東京)を見て、家の中で子供が請負の殺人を犯していたと仮説を立てる。
その近郊で左手のない男性・宮江の死体が見つかっていた。
筆者のブログをみた柚希という女性が、死んだ宮江の妻だったと連絡をしてきた。筆者と宮江の妻は会って意見を交換する。
柚希の調べで埼玉にも変な間取りの家があるとわかる。そこに住んでいた3人家族・片淵家が東京につくって移り住んだ家こそが変な間取りの家だった。
実は柚希は片淵家の人間だった。「最初から素性をばらすと警戒されて話を聞いてもらえないから身分を偽った」という。
東京と埼玉の変な間取りの家に住んでいたのは柚希の姉・綾乃の夫婦らしい。
綾乃は柚希が小さい頃に急にいなくなり、両親に聞いても理由を教えてもらえなかった。柚希はどうしてもその理由を知りたかったのだ。
筆者は、柚希が母・喜江と久しぶりに再会を果たすところに立ち会った。
喜江は娘・綾乃(柚希の姉)の旦那から受け取った手紙を見せてくれる。そしてことの経緯を説明し出した…。
すべての真相が明らかに!
柚希の祖父・片淵重治の家には秘密があった。
数十年前、片淵家では柚希の曽祖父にあたる当主・宗一郎が妹・千鶴と近親相姦し、千鶴が妊娠。
宗一郎の正妻・潮(うしお)が精神を病んで自殺に追い込まれたという過去があった。刃物の傷により、潮の死体の左手首は皮膚一枚で繋がっていた状態らしい。
宗一郎と千鶴の関係が明るみになり、宗一郎がまとめる本家は清吉が率いる分家に財産や事業を吸収されて没落。
その後、宗一郎と妹・千鶴のあいだに双子(麻太と左手首のない桃太/ももた)が産まれた。
宗一郎は左手がないことに驚愕する。呪術師の蘭鏡は「妻・潮の呪いだから供養せねばならない」と言った。
供養の方法は「左手のない子供が生まれたら暗い部屋に閉じ込めて育ろ。その子が10歳〜13歳になるまで毎年1人、清吉の後継者を殺させて左手を切り取り、潮の仏壇に備えろ」というものだった。
左手のない子供の兄弟は、後見人となって儀式(殺人)をサポートしなければならない。
その後、数十年して柚希の伯父夫婦の2人目の子供・桃弥に左手がないことがわかる。左手供養を信奉している祖父・重治によって、桃弥は儀式のために育てられることとなった。
柚希の父は、妻・喜江が分家の清吉の血を引いていて左手供養で殺される側の人間だったと知り、左手供養の儀式が行われないように桃弥の兄で後見人になるはずの洋一(ようちゃん)を殺害。(柚希の父はのちに事故で死亡)
祖父・重治は左手供養の儀式に洗脳されていたため、柚希の姉・綾乃を桃弥の後見人にしようと無理矢理引き取る。そして綾乃に儀式のための教育を施した。
その後、綾乃は慶太という男性と結婚。綾乃と慶太は、桃弥が10歳になれば殺人儀式をサポートしなければならない。
綾乃の夫・慶太は左手供養の儀式を桃弥にさせたくなかった。そこで死体を見つけて左手を切り取って重治に渡し、「儀式が完了した」と嘘をついた。
しかしそれが重治にばれてしまう。
慶太は重治と監視者の清次を殺害して警察に捕まった。妻・綾乃、実子の浩人、そして養子の桃弥の幸せを願っての行動だった。
すべての真相を知った筆者。
しかし栗原は気づく。「数十年前に左手供養を行なったはずの桃太は10歳、11歳、12歳、13歳で4人の分家の人間を殺しているはず。喜江が申告した人数と合わない。
あと1人については、分家の血筋=喜江の祖母の兄弟が桃太に殺されたのでは?
その怨みとして、これまでの話とは逆に分家が本家の血脈を殺す儀式が現在まで続いているのかもしれない。
喜江は本家の血筋を絶やすために片淵家に嫁ぎ、内部抗争を誘ったのではないか!?」
栗原が怖い仮説を語り、物語は終了。
小説『変な家』考察・解説(ネタバレ)
なぜ変な家がつくられた?
変な家は子供部屋に窓がないなどの特徴がありました。
(柚希の姉・綾乃とその夫・慶太が「桃弥と一緒に本家から出て他の場所に家を建てたい」と主張し許可される→祖父・重治が設計に口を出した模様)
埼玉の家の三角部屋は、綾乃と慶太が授かった実子・浩人を育てるために増設された場所です。
綾乃も慶太も桃弥を大切に育てていましたが、実子の浩人と接して何かトラブルになることを避けたかったので、三角部屋を増設してそこで浩人を育てていたようです。
左手供養の儀式が始まった理由!
儀式は、片淵家分家の清吉の第二夫人・志津子とその妹・美也子の策略で始まりました。
- 清吉には妻が多く第二夫人の志津子は自分の子供を跡取りにしたいがために、第一夫人の子供らを殺害したかった
- そこで妹・美也子が呪術師(蘭鏡)のフリをして本家の宗一郎たち「潮の呪いだ」と吹き込み、後継者争いのライバルである子供たちを始末させるよう仕向けた
すべては喜江と柚希の嘘!
私の仮説ですが、そもそも片淵家の左手供養の話はすべて喜江の証言のみなので、喜江が柚希と協力して変な家の秘密を隠蔽した可能性もあると思いました。
『変な家』感想評価レビュー(ネタバレあり)
良かった点
ストーリーには強引さがありましたが、部屋の間取りを見てあれこれ想像をしながら話を展開させていく手法そのものがある種の発明であり、それを作品にしただけでも作者の雨穴さんのセンスに脱帽です。
変な間取りの家から請け負い殺人を連想させ、家に住んでいた片淵一族の左手供養の宗教にまで発展するストーリーも個人的には楽しめました。
最後に柚希の母親・喜江が片淵一族の分家の血筋であり、本家の血脈を潰すためにすべてを仕組んでいたかのような余韻の残るラストもグッド!
ダメな点、ひどい点
まず主人公の筆者・雨穴と設計士の栗原さんが間取りについて会話が展開され、「2階の中心の不自然な位置に子供部屋があり、窓がない。1階には謎のスペースがある…」などとそれぞれの推測・考察を語る→たくさんの可能性がある中から、「前に住んでいた夫婦が監禁している子供に殺人をさせている」と仮説が立てられました。
仮説自体がぶっ飛んでいることに加えて、その他の可能性が一瞬にして切り捨てられていることに違和感を覚えました。
物語にある程度の論理性を求める方は、かなり引っかかったはずです。
フォローするなら、主人公の筆者も設計士の栗原さん「これは私の妄想ですが…」的なことを言っていて全編が妄想の物語だと示されており、緻密な推理小説ではないとリアリティラインが引かれているので、読んでいる側は「これは推理小説ではなく、妄想ワクワク小説だ!」と頭を切り替えなくてはいけません。
その辺で大人になれないとキツイ作品だと思いました。