映画『フェイブルマンズ』ネタバレ感想・驚きのラストシーン考察と評価,思ってたのと違う…

  • 2024年1月4日

映画『フェイブルマンズ』スティーヴン・スピルバーグ監督の半自伝的な内容で、少年からハリウッドへ入るまでの成長と家族の葛藤を繊細かつ大胆なタッチで描いた良作!

シネマグ
完成度はすごく高いですが、予想の3倍くらいシリアスな内容でした。

作品情報・キャスト

ネタバレなしの感想

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

ストーリー考察

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『フェイブルマンズ』作品情報・キャスト

日本公開:2023/03/03
制作国:アメリカ
上映時間:2時間31分
原題:『The Fabelmans』
ジャンル:ヒューマンドラマ・青春・家族の物語
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:スティーヴン・スピルバーグ/トニー・クシュナー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
キャスト
ガブリエル・ラベル|サミー役
ミシェル・ウィリアムズ|母役
ポール・ダノ|父役
セス・ローゲン|ベニー役
ジュリア・バターズ|レギー役
ジャド・ハーシュ|ボリス役

スティーヴン・スピルバーグ監督と脚本のトニー・クシュナーは『ミュンヘン』『リンカーン』『ウエストサイドストーリー』でもタッグを組んでいます。

撮影監督のヤヌス・カミンスキーもスピルバーグ組の常連。

『E.T.』『ジョーズ』など超大御所作曲家ジョン・ウィリアムズの音楽もすばらしかったです。

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映画『フェイブルマンズ』あらすじ

映画『フェイブルマンズ』ミシェル・ウィリアムズ

©︎ユニバーサル・ピクチャーズ

1950年代。ユダヤ系の裕福な家庭で育つサミーは、巨大スクリーンで映画『地上最大のショウ』をみて、車と機関車の激突の場面に、高揚とも恐怖ともとれないほどの大きな衝撃を受けた。

サミーは機関車の模型を買ってもらい、それを走らせて車のオモチャと激突する映像を撮影。

サミーはそれ以来、映画の撮影に取り憑かれていく。しかし順風だと思っていた家族にある秘密が露呈され…。

ネタバレなし感想・海外評価

シネマグ
すごく完成度の高い濃密なヒューマンドラマで、登場人物の表情や感情など見ていて飽きません。

主人公や母親の心の動きがありありと伝わってきます。

ただ、キラッキラのスティーヴン・スピルバーグ監督の成功物語!ではありません。

フェイブルマンズという複数形からもわかる通り、メインは家族の物語です。

予告編とも雰囲気がかなり違い、エンターテイメント的な痛快劇を期待すると肩透かしを喰らうと思います。

海外での評価はかなり高いですが、ストーリーの起伏が少ない作品が苦手な人には不向きでしょう。

おすすめ度 82%
世界観 90%
ストーリー 78%
IMDb(海外レビューサイト) 7.6(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) 批評家 92%
一般の視聴者 83%
メタスコア(Metacritic) 84(100点中)

※以下、映画『フェイブルマンズ』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『フェイブルマンズ』ネタバレ感想・評価

演技・演出すべてが完璧!

映画を撮影する主人公・サミー

©︎ユニバーサル・ピクチャーズ

スティーヴン・スピルバーグの最新作『フェイブルマンズ』の評価は85点。

映画制作に熱中する少年・サミーとその家族・フェイブルマンズを描いた2時間半。ストーリーに大きな起伏はないのですが、演技や演出のレベルが高すぎてずっと見ていられました

『シンドラーのリスト』くらいもっと長くてもいいレベルです。ラストのデヴィッド・リンチ オチも最高!

映画的なおおきな事件はないのですが、愛にあふれる家族と映画づくりに熱中するサミー、その裏で淡々と進行していた母の不倫による家族模様がヴィヴィッドに、そして切なくあぶり出されます。

特にミシェル・ウィリアムズの演技がすごかったです。『ヴェノム』シリーズのヒロイン役など、これまでのミシェル・ウィリアムズの雰囲気とぜんぜん違って少しふくよかでいかにも母親らしいと思っていたら、不倫をしていたという女らしい一面を鋭く見せつけてきます。

シネマグ
幸せな母を感じさせる前半、満たされない女を演じる後半で表情がぜんぜん違って引き込まれました。

父役のポール・ダノも、個性的で優しすぎる父親役がハマっていました。雰囲気からしてバッチリ。『THE BATMAN ザ・バットマン』のリドラー役も印象的でしたが、本当にいい俳優ですよね。

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青年・サミーを演じたガブリエル・ラベルも、スピルバーグ監督が小さい頃ってこんな感じだろうなとイメージにぴったりでした。

気になる点としては半自伝的な作品なので仕方ないのですが、スピルバーグの幼少期が高価な機関車のオモチャやカメラなどを買い与えられ、何不自由なく描かれていて、いかにも金持ち坊ちゃん

嫌な見方をすれば、やはり金持ちだから成功したのか?と感じてしまいます。

シリアス過ぎん?

スピルバーグの少年期から青年期をエモーショナルに描き出していた本作にダメな点などないのですが、個人的な感想としてはシリアスすぎると感じました。

自分も仲良くしている父親の親友・ベニーが母と不倫している展開がリアリティたっぷりに描かれるので、人によっては見るのがかなりつらい内容だったのでは?

個人的にはスピルバーグの夢や映画という芸術以上に家族崩壊の辛さがヒシヒシと伝わってきて、見ていて苦しかったです。

前作『ウエストサイドストーリー』もそうでしたけど、夢の裏にあるリアルの描きかたが半端ないために、心が引き裂かれそうになるんですよね。

スピルバーグおなじみのキラキラしたケレン味たっぷりな演出はありつつ、すさまじいリアリズムで心をえぐられるので複雑な感情になります。

映画についての映画という側面はありつつも、少年が家族から旅立つ切ないヒューマンドラマの趣きが強いように感じました。予告の内容と印象はだいぶ違います。

そういうコンセプトなのでしょうけど、見終わったあとのダメージが結構大きいです。(私が変に繊細なだけかもしれませんが。)

衝撃のラスト:デヴィッド・リンチ

ジョン・フォードを演じるデヴィッド・リンチ

©︎ユニバーサル・ピクチャーズ

問題はラスト(良い意味で)。

ジョン・フォード監督にふんしたデヴィッド・リンチが顔面口紅まみれで部屋に入ってきたときから、雰囲気がガラッと変わります。

マッチが黒く折れ曲がるまで長い時間をかけて葉巻に火を付けるシーンからして只者じゃありません。マッチの折れ曲がり具合が絶妙で、アート的です。

しゃべったらやっぱりデヴィッド・リンチでした。独特の間は、リンチの十八番ですね。

デヴィッド・リンチが「水平線の位置は上でも下でもいいが、真ん中だと死ぬほど退屈だ!さっさと俺の部屋から出ていけ!」と叫んだ名セリフのあと、サミー外を軽快に歩き、カメラのアングルがアドバイス通りに直される!

サミーが名監督に会って衝撃を受け、これから希望と芸術に向かって突き進むとわかる完璧なラストでした。

完璧すぎる流れなのですが、自分がデヴィッド・リンチ好きすぎるせいもあってか、彼が最後に持っていった感が強く残ります。

スピルバーグの自伝的作品で、デヴィッド・リンチのすごさが異様に際立った感がありました。

ラストのストーリー上の感動と同時に、「デヴィッド・リンチの映画見てえ、新作つくらねえかな…」という余分な思いがまぎれ混んでしまったのです。

リンチを好きな人はわかると思いますが、ラストの部屋のシーンは完全にデヴィッド・リンチ作品で、何が悪いわけでもないんですけど、ちょっと複雑な気持ちになりました。

感想を語る犬
うまい寿司食ってて最後にクセのあるトリュフを投げつけられた感じですね。

フェイブルマンズ考察(ネタバレ)

現実と芸術、そして母

主人公・サミーは親戚で映画製作にたずさわるボリスから芸術の狂気を伝えられます。

ボリスはミシェル・ウィリアムズ演じるサミーの母にもピアニストとして才能があったが夢をあきらめさせられた、と言いました。

シネマグ
サミーの母は芸術を、ポール・ダノ演じる夫は現実を表しているのです。

そして母が選んだベニーは、芸術への未練をあらわしているのではないでしょうか。

芸術的な母にとって、頭脳明晰でどんどん出世していく夫は、現実です。

いっぽうでベニーは自分があきらめられなかった夢のようです。

両親の離婚が決まり、芸術的な母が家族を分断させます。

しかし父はサミーを見捨てませんでした。

父は、母がその親にされたような「芸術か絶縁か選べ」という酷な選択をサミーにさせなかったのです。

サミーにとって父はお堅い現実であると同時に、映画という芸術と家族をつなぎ止める希望だったのだと思います。

サミーとローガンの衝突の意味

ユダヤ人のサミーは高校で、スポーツマンでイケメンのローガンにいじめられます。

しかし卒業パーティーでサミーが撮影したビーチの動画を見たローガンは涙を流し、サミーに詰め寄ります。

本作随一の名シーンだと思いました。

大スクリーン一杯に映ったローガンは、誇りサミーをいじめた罪悪感本来の自分とかけ離れているある種の恐怖など、さまざまな感情が混在している状態だったのでしょう。

だから怖い態度で詰め寄り、でも殴りかかってくる同級生チャドからサミーを助けて涙を流すという、いっけん矛盾とも取れる行動に出たのです。

サミーに感謝したいだけなら、ローガンは謝っていたと思います。

しかしサミーが操る映像の魔力に気づいたローガンは、恐れる気持ちまでも同時に抱いたのでしょう

感想を語る犬
映画の力を素晴らしい視点で表現した名シーンでした。

反対にサミーは、映像の中でならローガンの存在を意のままに操れると示したのです(自分で意図してはいなかったと思いますが)。

幼い頃に汽車を映像におさめて恐怖を克服したように、ローガンを映像に収めて恐怖を克服する意味もあったのでしょう。

最後のまとめ

スティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的映画『フェイブルマンズ』は、少年の成長と映画という夢、そして家族の崩壊がゆるやかに描かれた良作でした。

淡々とヒューマンドラマが2時間半も続くので賛否わかれると思いますが、ミシェル・ウィリアムズ演じる母の表情や、少年サミーの葛藤によりまったく飽きないハイクオリティな作品だったと思います。

感想を語る犬
スピルバーグ監督にはまだまだ映画を撮り続けてほしいですね。願わくばエンタメに振り切った会心の一作を期待したいです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『フェイブルマンズ』(The Fabelmans)レビュー終わり!

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