ジェフ・ブリッジスとティム・ロビンス出演の傑作サスペンス映画『隣人は静かに笑う』。
ラスト結末やストーリーの本当の意味。ショッキングな冒頭の真実などをネタバレありで徹底考察!
制作国:アメリカ
上映時間:1時間57分
原題:『Arlington Road』
ジャンル:サスペンス・テロリズム
監督:マーク・ペリントン
脚本:アーレン・クルーガー
原作:なし、映画オリジナル
撮影:ボビー・ブコウスキー
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
キャスト↓
ジェフ・ブリッジス
ティム・ロビンス
ホープ・デイヴィス
ジョーン・キューザック
映画『隣人は静かに笑う』あらすじ
大学でテロの歴史を教えているマイケル・ファラデー(ジェフ・ブリッジス)は、数年前にFBIの妻を亡くしています。誤情報をもとにした作戦で死亡したのです。
ある日マイケルは家の前で、向かいの家の少年・ブレディが血だらけで倒れるのを目撃します。
ブレディは片手に大やけどを負っていました。
マイケルはブレディをすぐに病院へ連れて行きます。
ブレディの両親、設計技師のオリヴァー・ラング(ティム・ロビンス)と妻・シェリル(ジョーン・キューザック)は、ファラデーに感謝しました。
オリヴァーの話によると、ブレディは近所の不良少年にそそのかされて公園で強力な花火の着火役となり、怪我を負ってしまったそうです。
そこからマイケルとオリヴァーの家族付き合いが始まります。
マイケルの息子・グラントとブレディは親友になりました。
マイケルは恋人・ブルック(ホープ・デイヴィス)と一緒にオリヴァーの家に招かれます。そこである違和感を感じるのでした。
マイケルはオリヴァーを疑い、徹底的に調べます。すると彼の過去にある秘密が隠されていると判明…。
果たして隣人・オリヴァーは何者なのか!?
映画『隣人は静かに笑う』考察ネタバレ
ラスト結末の意味:全てが仕組まれていた
オリヴァー(ティム・ロビンス)の正体はテロリストでした。
マイケル(ジェフ・ブリッジス)は、オリヴァーに息子を拉致されてしまいます。
息子が乗ったバンを見つけて車で尾行すると、バンはFBIの本部へ入りました。
マイケルはFBIの本部に車で突っ込み、FBIの職員・ウィットに止められながらバンの扉を開けます。しかし息子はいません。
結論をいうとオリヴァーは最初からマイケルを監視し、利用しようとして近づいたのです。
マイケルはオリヴァーを監視しているつもりが逆にずっと監視されており、FBI本部に車で突入するように誘導されていたわけですね。
ショッキングな冒頭の真相:血だらけの子供
冒頭ではオリヴァーの息子・ブレディが左手が血だらけの状態で、道で倒れるのをマイケルが見つけます。
よく見ると左手の親指と人差し指がちぎれている非常にショッキングな場面。
テロリストのオリヴァーが最初からマイケルを利用しようとしていたとすると、ブレディの事故もオリヴァーが仕組んだことなのでしょう。
不気味でショッキングな冒頭が、物語全体から見つめると胸糞な出来事へと変貌します。
ミイラ取りがミイラになる
物語として興味深いのはミイラ取りがミイラになる構造です。
大学でテロリズムの歴史を教えているマイケルが、最後には爆死してテロリスト認定されてしまいます。
オリヴァーはマイケルのテロに詳しい特性と、FBIの妻が上層部の誤情報がもとで死んでしまった過去を調べ上げ、FBIでテロを起こす犯人に仕立てあげるのに完璧だと考えたのでしょう。
息子の事件のあとでマイケルと仲良くなり、「モールの設計図を書いている」など、相手が気づく嘘をわざと並べて疑わせて、泥沼にはめていったわけです。
よく見るとマイケルの生徒の中にもオリヴァーの仲間(テロリストの一員)がいて、マイケルについて「FBIを憎んでいて少し行き過ぎた授業だった」とテレビのニュースでコメントしているんですよね。
テロリズムを講義する教授・マイケル。テロリストたちのやり口を知っているつもりが、その自信ごと絡め取られてしまったような皮肉なラストでした。
2つのミスリード
映画『隣人は静かに笑う』は2つのミスリードが優れていました。
まずは、信頼できない語り手という手法。
後半に行くにつれて、主人公・マイケル自身が精神的に参っているような描かれ方がなされます。
息子が隣人オリヴァーになついていることに嫉妬する描写があるなど、彼の言い分がどんどん信頼できなくなります。
マイケルは隣人のオリヴァーを疑い、そのことを恋人のブルックに話します。しかし「あなたがおかしい。憶測で隣人のプライバシーを侵害するな」と言われてしまいます。
FBIウィットも「オリヴァーがテロリストである可能性はゼロだ」と言われました。
疑っているのはマイケルだけ。
畳みかけるようなミスリードに、観客はマイケルは強迫観念で動いているだけでは?と勘違いさせられ、その結果ラストがより予想できないものになりました。
2つ目のミスリードは「疑いが晴れたものは犯人ではない!」です。
中盤で、マイケルはオリヴァーが16歳の頃に地元で爆弾騒ぎを犯した過去を知ります。
しかしその後、マイケルはオリヴァー本人から「農地の水を政府に取られて父が自殺し、当時まだ子供だった自分が怒りに任せて行動してしまっただけ」と釈明を受けます。
この時点で視聴者も、「オリヴァーは怪しいと見せかけられているだけの人物なのか」と勘違いをします。
2つのミスリードが相乗効果を起こし、『隣人は静かに笑う』のラストは予想できない素晴らしいものとなりました。
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