『アリスとテレスのまぼろし工場』ネタバレ評価・ラスト考察,あらすじ解説レビュー,神作

  • 2023年12月16日

アニメ映画『アリスとテレスのまぼろし工場』。時間が冬のまま止まってしまった町で暮らす少年が謎の少女と出会い世界の謎を解き明かす感動作!

シネマグ
2023年No.1レベルの神アニメ!これは絶対見て欲しい傑作でした。大人が楽しめる、斬新で狂おしいジュブナイル涙ポロポロです。みんなに見てほしい!

作品情報・キャスト声優CV

あらすじ

視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)

ラストの解釈・ストーリーの意味を考察:エレクトラコンプレックス、「アリスとテレス」の本当の意味!

物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説

これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『アリスとテレスのまぼろし工場』作品情報・予告

公開
制作国:日本
上映時間:111分
ジャンル:ファンタジー・ジュブナイル・恋愛
年齢制限:G(制限なし)
監督・脚本・原作:岡田麿里
制作:MAPPA|新見伏製鐵保存会
音楽:横山克
全世界興行収入:中島みゆき「心音」

岡田麿里監督は『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018)で有名です。

呪術廻戦』や『チェンソーマン』を手がけるMAPPAが制作を務めます!

『アリスとテレスのまぼろし工場』キャスト・CV

菊入正宗|CV 榎木淳弥

菊入正宗

睦実|CV 上田麗奈

睦実

五実|CV 久野美咲

五実|CV 久野美咲

菊入時宗(正宗の叔父)|CV 林遣都

菊入昭宗(正宗の父)|CV 瀬戸康史

笹倉大輔|CV 八代拓

新田篤史|CV 畠中祐

仙波康成|CV 小林大紀

園部裕子|CV 齋藤彩夏

原陽菜|CV 河瀬茉希

佐上衛|CV 佐藤せつじ

『アリスとテレスのまぼろし工場』あらすじ

『アリスとテレスのまぼろし工場』

中学3年の正宗が友達と家で勉強をしていた夜、製鉄所が大爆発を起こした。

それはエメラルド色にヒビ割れ、狼の形をした煙がそのヒビを塞いでいく。

その大事故のあとから、正宗たちの町・見伏はある年の冬に季節が閉じ込められた。

海流も変になりトンネルも塞がれて、誰もこの町から出ることはできない。

それからというもの、見伏では「感情などの変化は町を破壊する」といわれるようになった。

ある日、正宗はクラスメイトの睦実に連れられて製鉄所の五号炉へ。

そこにいたのは頭が幼児で体は小学校高学年くらいの少女・五実だった。

五実がこの製鉄所から外に出ると、この世界も壊れてしまうらしい。

正宗は睦実と距離を縮めながら、時間が止まってしまった街・見伏の謎を解き明かす。

ネタバレなし感想・海外評価

14歳の少年・少女のジュブナイル・ファンタジーですが、内容は抽象的でどちらかというと大人向けです。

大人が思春期の頃の感情に戻り、人生において大切な何かを思い出すようなステキな作品でした。

ラストの感動とカタルシスもものすごくて、映画館では涙をすする音がそこかしこで聞こえました。

シネマグ
個人的には時間を作ってでも絶対見てほしい傑作!どの世代が見ても感動すると思います。

2023年は『アリスとテレスのまぼろし工場』が大ヒットして日本を席巻するのでは!?

おすすめ度 90%
世界観 90%
ストーリー 94%
IMDb(海外レビューサイト)※随時更新 (10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)※随時更新 批評家 %
一般の視聴者 %
メタスコア(Metacritic)※随時更新 (100点中)

※以下、『アリスとテレスのまぼろし工場』のストーリーネタバレありなので注意してください!

『アリスとテレスのまぼろし工場』ネタバレ感想・評価

『アリスとテレスのまぼろし工場』の五実

アニメ映画『アリスとテレスのまぼろし工場』の評価は92点。今年ベスト級の神作でした。
シネマグ
みずみずしく生々しいジュブナイル哲学的なテーマが高いレベルで融合!ラストは感動して涙が止まりませんでした。

 

あとは岡田麿里監督による思春期の少年少女の描き方がバツグンに上手いと思いました。話はファンタジーなのに、思春期の感情のリアリティはものすごいんですよ。心が中学校の頃に戻ったような気さえしました。

ジュブナイルなのにキスシーンとかは妙にエ○いんですよ。

五実が実は父親である正宗をペロペロ舐めるシーンには近親相姦的なタブー感が漂っており、大人向けの危険なテーマを扱っているとわかります。

アニメーションも美しすぎますし、キャラクターデザインも秀逸です。さすがMAPPAですね。

映像と抽象的なストーリー、メッセージ性はアートの領域です。

10代のヴィヴィッドな恋愛、そして娘の母親ばなれと親子の愛という、一見すると一緒に描くのがむつかしいテーマを組み合わせて唯一無二のメッセージを紡ぎ出しているのがすごい。

ストーリーを表面上だけ見てもすごく感動するのですが、哲学や心理学の面で深い洞察があるのもすばらしいと思いました。

睦実が五実に「あなたの未来は希望に彩られているけど、正宗だけは渡さない」というセリフが心に刺さりましたね。

シネマグ
エレクトラコンプレックス(女児が父親を独占するために母親を憎む感情)をこんな感動的な物語に仕上げるとは!

母子の問題であるエレクトラコンプレックスを10代の恋愛の問題と同時に解決しています。頭おかしいレベルのコンセプトのすごさです。

「近親相○的な気持ち悪さがある」という意見もありますが、気持ち悪さでなく親子の問題についてひとつの解答を提示しているので別に良いと思います。

フィクションにどれだけ倫理観を求めるのかの疑問が湧きます。手塚治虫の傑作マンガ『火の鳥』なんか倫理的タブーのオンパレードです。

睦実が五実を現実に送り届けて正宗のところに戻ってくるラストでは、感動して涙がこぼれ落ちました。2人が生きる現実ではない世界も、ある意味ではリアルなのかもしれません。2人にとって、この世界は現実そのものなのでしょう。

感想を語る犬
どの世代が見ても心に刺さる内容になっています。大ヒットしてほしいですね。

『アリスとテレスのまぼろし工場』ネタバレあらすじ解説

謎の少女・五実

何日過ごしてもずっと変化のない見伏の町で暮らす正宗、笹倉、新田、仙波の4人組は、痛みを求めて失神ゲームをするようになっていた。

正宗はクラスメイトの睦実のことが気になっていた。しかし好きという感情だけでなく憎しみの感情も併せ持っていた。

睦実は屋上でスカートをめくって正宗にパンツを見せる。正宗は感情をどう表現していいかわからず怒りをぶちまけた。

ある日、正宗たちは塞がれたトンネルで肝試しをすることに。正宗は園部とペアを組むことになった。トンネルの奥で、正宗は園部から好きだと告白される。

正宗が園部を好きだと知ってショックを受けた園部の体にヒビが入った。空から狼の形をした煙が現れ、園部を消し去る。

住民の会議が開かれ、睦実の義父・佐上衛は「心が動揺したら体にヒビが入って存在が消される」と言った。煙は神機狼(しんきろう)と言うらしい。

佐上は製鉄所の職員でありながら、見伏神社の社家(奉祀をする一族)でもあった。

佐上は「なるべく変化を起こさないでこの町を壊さないようにしよう」と住民に呼びかける。

製鉄所は爆発事故のあと、従業員たちの手をかりずにひとりでに稼働していた。従業員たちは点検をするだけだった。

ある日、正宗の父が製鉄所の勤務後に消えた。

睦実は正宗を爆発のあった製鉄所に連れて行く。そこには頭の発達は幼児くらいで体は小学校高学年くらいの少女・五実がいた。

五実は製鉄所で発見されたあと、「神の妻となる五実を製鉄所から出してはならない」という佐上衛の命令で製鉄所で育てられているという。

五実は最初は幼児の姿だったが、体だけどんどん成長したようだ。この世界の住人は成長しないので、五実は他の世界から来たことになる。

時が止まったこの世界には臭いはなかったが、五実は臭かった。

睦実は五実の世話を手伝ってほしいと言う。正宗はそれから製鉄所にこっそり通って五実の世話をするようになった。

この世界は現実じゃない?

五実は正宗になつくが、睦実のことはどこか警戒しているようでもあった。

五実は製鉄所の中庭にある廃電車の上に乗る、すると空にヒビが入り、現実世界が見えた。現実は夏だった。

正宗はこの世界が現実ではないと悟る。

ある日、五実は正宗に抱きついて顔をベロベロ舐める。正宗は複雑な感情にさいなまれた。それを見た睦実は激怒して五実を引き離した。

夜、正宗は空間の裂け目から現実世界で初老の自分が睦実と暮らしているのを見る。2人とも表情が暗かった。

町の人たちはこの世界が現実ではないと知り、五実の存在にも気づく。この世界がどうなってもいい人と、この世界を維持することに固執する人に別れた。

正宗は睦実に好きだと告白。睦実は「現実世界で私と一緒になったからってこの世界でも私を手に入れられると思わないで」と言うが、衝動が抑えきれない。二人は雪の上で激しいキスを交わした。

その様子を五実が見ていた。五実は「自分だけ仲間はずれ」と泣き出す。

睦実は五実が製鉄所で発見されたとき菊入さきと持ち物に書かれていたと話した。

五実は正宗と睦実の娘だったのだ。

正宗は失踪した父の日記を読む。五実は製鉄所にある電車の中にいたらしい。

ラスト結末

正宗は五実を電車で現実世界に返したいと思う。

正宗と睦実、佐上によって神の妻の儀式をさせられそうな五実を車に乗せる。

五実はこの世界に残りたいと言った。

現実世界が空間の裂け目から透けてみえる。正宗は五実を現実世界の列車に乗せた。

列車が走る。正宗は列車からふり落とされるが睦実は残った。

睦実は「あなたには希望の世界が待っているけど正宗の気持ちだけは渡さない」と五実に言う。

睦実は列車から飛び降りた。正宗が受け止める。

睦実は痛みを感じるようになり、正宗と笑い合った。

数年後

成長した五実は1人で見伏の製鉄所にやってきた。ありがとうという書き置きや、母が自分を風呂に入れている絵があった。

「私はこの場所で初めて失恋をした」

五実はそう思った。

『アリスとテレスのまぼろし工場』考察

ストーリーの意味:エレクトラコンプレックスと希望の世界

本作は抽象的な内容だったので、ストーリーの余白を自分で考察する必要があります。

いろいろな解釈があると思いますが、私は本作を「エレクトラコンプレックス×希望の世界」だと思いました。

エレクトラコンプレックスとは、女児が成長していく段階で父親を独占したいがために母親を憎むようになる心理過程のこと。

心理学者・ユングが提唱したものです。

(フロイトが提唱した有名な学説:男児による父殺し=エディプス・コンプレックス(母を独占したくて父を憎む)の逆バージョンです。)

五実が正宗になつくのは父を独占したい欲望を表現していると捉えられます。

五実が正宗といちゃついているのを見た睦実が激怒していましたが、これは彼女が母親だからです。

終盤の列車で睦実が五実に「未来には希望が待っているけど、正宗の気持ちだけは渡さない」とハッキリ言っていたことからも、岡田麿里監督がエレクトラコンプレックスを意識していることがわかります。

また、劇中のセリフで「哲学者アリストテレスは『希望は、目覚めている人間が見るている夢だ』と言っている」がありました。

時間が冬から動かない見伏という町は、娘が失踪してしまった現実世界の正宗と睦実の希望の世界なのかもしれません。

2人は10代のまま、最愛の娘と出会います。

そして現実を見ないように、神機狼(狼の形をした煙)でヒビを塞ぎ、永遠にこの世界にとどまり続けたいと願うのです。

しかし、正宗と睦実はそれではダメだと決意します。

エレクトラコンプレックスと娘を想う親の愛がクロスした唯一無二のコンセプトだと思いました。

また、“まぼろしの世界”は見伏という町や製鉄所それ自体の意志で保存されたとも考えられます。

無生物と人間の結びつき・絆を表現している側面もあると思いました。

(わざわざアリスとテレスという哲学者をもじったタイトルなので哲学から深読みすると、カントが唱えた物自体という概念から、物体と人間の関わりを描く新しい唯物論、考えている世界はすべて存在するとする新実在論などからの影響を受けていそうな気がします。)

あとは、逆パターンで父を欲する娘・五実の希望の世界と考えることもできますね。

さらに「誰か1人の世界」ではなく、「みんなの希望が集まって生まれた世界」と主体を捉え直すことも可能だと思います。

正宗と睦実の娘が生きていたらという希望、父を欲する五実、製鉄所の意志などがクロスする瞬間があの冬なのです。

みんなその時間から動きたくないと願っていたのではないでしょうか。

シネマグ
「人生の歯車を戻せるならもう1度あの時期に戻りたい。」そんな世界に五実が自ら望んで迷い込み、現実へ帰還する話だと思いました。

ラストの解釈

五実は最後に列車に乗って現実世界に戻ります。

ラストも解釈はさまざまにできますが、私は五実が女児から少女に生まれなおした瞬間だと考えています。

心理学者のユングやフロイト的な解釈では、トンネルは女性、産道などの意味を持つからです。

トンネルを超えるときに赤ちゃんの泣き声も聞こえましたし、RE:Birth(再誕生)の意味が込められていることは確かでしょう。

五実は神隠しにあう前に戻るのか、それとも神隠しにあってかなり年月が経った劇中の現実に戻るのか。

どちらか定かではないですが、個人的には神隠しに会う前のタイムラインに戻ってほしいと思いました。

成長した五実は製鉄所にやってきて当時のことを覚えているふうでした。

五実は幼い頃に本当に神隠しにあってタイムスリップして過去にきたのかもしれませんし、五実の脳内の世界だったのかもしれません。

両親との思い出の場所をたずね、父から拒否されたことを思い出したのかもしれません。

解釈はいろいろできますが重要なのは娘・五実が両親の真実の愛を知り、父を欲することをあきらめる普遍的なメッセージでしょう。

タイトル「アリスとテレス」の本当の意味

タイトル『アリスとテレスのまぼろし工場』のアリスとテレスの意味は何でしょうか?

単にアリストテレスをもじって、「希望は目覚めている人間が見るている夢だ」とコンセプトを伝えたかったのでしょうか。

個人的にはこのタイトルは世界の多様性を表現していると思いました。

「アリスとテレス」と「アリストテレス」は音としては一緒ですが、意味は異なります。

まぼろし工場は、現実とも夢とも捉えられます。

本作の解釈自体に多様性があるのです。そして多様なモノの見方それぞれを、そのまま許容しても良いのではないでしょうか。

「アリストテレス」を「アリスとテレス」と勘違いしてしまうことも、だれかにとっては1つのまぎれもない現実で、価値のある解釈なのです。

そんな優しいメッセージが込められていると思いました。

『君の名は。』を内側から描く

『アリスとテレスのまぼろし工場』は、新海誠監督の『君の名は。』を内側から描いたような作品だと思いました。

隕石で消滅した『糸守町(いともりまち)』。その住民たちが現実とは別の空間で生き続けているとしたら、見伏町みたいな生活になるのでしょう。

そう考えるとちょっとしたホラーの側面もありますね。

事実、正宗たちは季節が止まった町で数十年おなじ生活を続けています。ある意味では生き地獄です。

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『君の名は。』

最後のまとめ

アニメ邦画『アリスとテレスのまぼろし工場』は、心理学や哲学の深い思想から、少年少女のヴィヴィッドな恋愛、親の愛をクロスオーバーさせた傑作でした。

岡田麿里監督の感性が本当にすばらしいですね。新海誠監督より好きかもしれません。

次回作も楽しみに待っています。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『アリスとテレスのまぼろし工場』レビュー終わり!

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