ディズニー100周年記念映画『ウィッシュ』(Wish)。17歳のアーシャが人々の願いを救い出すために奮闘します!
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
制作国:アメリカ
上映時間:95分
原題:『Wish』
ジャンル:ファンタジー
年齢制限:G年齢制限ナシ
監督:クリス・バック/ファウン・ヴィーラスンソーン
脚本:ジェニファー・リー/アリソン・ムーア
原作:なし、映画オリジナル
主題歌:アリアナ・デボーズ「More For Us」
日本版の主題歌:生田絵梨花「ウィッシュ~この願い~」
音楽:デヴィッド・メッツガー
製作費:2億ドル(約280億円)
クリス・バック監督と脚本のジェニファー・リーは『アナと雪の女王』をヒットさせたことで知られています。
ディズニー100周年記念作品として、ミッキーなどこれまでのキャラクターが勢揃いする『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』も同時上映されます!
これまでのディズニーキャラクターがディズニースタジオで記念写真を撮る内容の、ほっこりする数分の短編です。
登場キャラ・CV 日本語吹き替え声優
ヒロイン・アーシャ(星に願う17歳の少女)|cv アリアナ・デボーズ|吹き替え・生田絵梨花
マグニフィコ王(ロサス王国の王。人々の願いを自分のものにするヴィラン)|cv クリス・パイン|吹き替え・福山雅治
バレンティノ(アーシャのペットのヤギ)|cv アラン・テュディック|吹き替え・山寺宏一
サビーノ(アーシャの祖父で100歳)|cv ヴィクター・ガーバー|吹き替え・鹿賀丈史
サキーナ(アーシャの母親)|cv ナターシャ・ロスウェル
アマヤ王妃(マグニフィコ王の妻)|cv アンジェリーク・カブラル|吹き替え・檀れい
ダリア(アーシャの友達。障害を抱えている)|cv ジェニファー久御山|吹き替え・大平あひる
サイモン(アーシャの友達)|cv エヴァン・ピーターズ|吹き替え・落合福嗣
ガーボ(アーシャの友達)|cv ハーヴィー・ギレン|吹き替え・蒼井翔太
サフィ(アーシャの友達)|cv ラミー・ユセフ|吹き替え・岡本信彦
ハル(アーシャの友達)|cv ニコ・ヴァーガス|吹き替え・青野紗穂
バジーマ(アーシャの友達)|cv デラ・サバ|吹き替え・竹達彩奈
ダリオ(アーシャの友達)|cv ジョン・ルドニツスキー|吹き替え・宮里駿
映画『ウィッシュ』あらすじ
魔法使いのマグニフィコ王が統治するロサス王国は、人々が平和にする完璧な国だった。
美味しい料理と歌とダンスでにぎわうロサス。他の国を追われて移住してくる人も後をたたない。
ロサスでは18歳になった者は、マグニフィコ王に願いを差し出す決まりがあった。
願いを差し出せば願いを忘れ、心が軽やかになる。
マグニフィコ王はその願いを保管・管理し、イベントがあれば特定の人物の願いを叶えてやった。
17歳のアーシャは、マグニフィコ王の弟子になるためにお城に面接へ行く。
アーシャはお城で祖父の願いの玉を見つけ「100歳になる祖父・サビーノの願いを叶えてほしい」と頼んだ。
しかしマグニフィコ王はサビーノの願いが音楽で人々を一体化させることだと知り、危険思想だと言う。
ロサス国にとって危険な願いは叶えないらしい。
アーシャは「願いを叶えないなら祖父に返してほしい」と頼むが、マグニフィコは断った。
アーシャはマグニフィコ王から祖父やみんなの願いを救い出すために立ち上がる。
ネタバレなし感想・見どころ
3DCGによるアニメーションが本当に美しくて、どの場面もうっとりします。
歌もいいですね。心がワクワクドキドキするようなすばらしい楽曲が詰まっています。
ただ、おりこう過ぎるストーリーは賛否分かれると思います。毒がなさすぎて誰のためにもならないような物語です。
※以下、ディズニー100周年映画『ウィッシュ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
ディズニー『ウィッシュ』ネタバレ感想・評価
良かった点:アニメーションがすごい!
3DCGでありながら、きめ細やかな質感のアニメーションは本当に美しかったです。
アーシャの家の食器の一つ一つまでが手で触れられるようで、感動しました。
吹き替えで見ましたが、歌も良かったです。珠玉の楽曲の数々に胸が躍りました。
これまでのオマージュというか、ディスニーらしいシーンの詰め合わせとしても楽しめます。
既視感は拭えないかもしれませんが、ディズニー作品が好きな人は過去作のオマージュシーンでテンションが上がるでしょう!
ひどい点:漂白された物語
マグニフィコ王がみんなの願いを集めて管理し、アーシャたちがそれを取り返すコンセプト自体はいいと思いました。
みんないい人ばかりで人間味がなく、言葉を選ばずにいえば気持ち悪いストーリーでした。
ヒロインのアーシャ自体が出来杉くんみたいなヤツなんですよね。
アーシャのキャラが薄いせいで、ストーリー自体が物足りないものになっています。
ディズニーは、なぜ出来杉くんが主人公にしてはいけないのか、ドラえもんを見て勉強した方がいいです。
スターが森にやってきた時は、ウサギやリスたちが「みんな一緒!みんな星の一部、みんな輝くスター!」とアーシャに向かって歌い、種族を超えたポリコレ教育をします。
さらに中盤では野生のネズミまで「私は清潔よ」とか言い出しちゃいます。この言葉にこの映画の気色悪い部分が凝縮されている気がしました。
そして最後は、みんなの願いを吸収するマグニフィコ王をどうやって倒すのかと思ったら、みんなで映画の主題歌を合唱して光り輝き出して勝利!という、絶句の結末でした。
奥歯がガタガタ浮きそうになりましたね。
ディズニー100周年記念作品だから手と手を取り合う結末にしたい!そんな企業としての意図がミエミエで恥ずかしかったです。
終始「はい!ここで泣いてください!ホラっ早く泣けよ!」と指示されている感じ。泣けませんって。
全体から「人間の感情はコントロールできる!物語は合理的に作ればなんとかなる!」というエゴやおごりのようなものが感じられました。
多様性や願いの正当性を謳っていながら、実際はエゴやおごりで塗り固められた物語。そんな物語が面白いわけはありません。
最近の作品でいえば『ミラベルと魔法だらけの家』のほうがまだ全然良かったと思います。
『ストレンジワールド』もひどかったですが、ストーリー面に関していえば本作もかなりひどかったです。
ディズニーはこれからどこへ向かうのでしょう。会社として現在のポリコレの追求が正しいか考え直したほうがいいです。
考察の項目で詳しく書きますが、ディズニーが今やっているポリコレの方向性は、社会にも悪影響を及ぼすと思います。
ディズニー ウィッシュ 爆死まっしぐら!興行収入と海外評価
本国アメリカでは11月に公開されており、AI(人工知能)が考えたようなつまらない作品だと酷評されています。
アメリカでは最初の5日間の興行収入が予想を大きく下回る3170万ドル(日本円で47億円)ほど。
製作費が約280億円と考えると赤字が膨らみそうな数字ですね。
ちなみに収益は配給する映画館と折半になるため、今後日本など各国の収益を合わせて製作費の倍の560億円ほど稼がないと赤字ということになります。ヤバいですね。
そりゃコケるのもわかりますよ。こんな人間味がなくてつまらないストーリーを考えつくのはAIか出来杉くんくらいです。
野ネズミすら清潔を良しとするおかしな価値観。多様性とは真逆です。
もはやディズニーは夢を見させるというより、白人プリンセスを作ってきた贖罪に観客を付き合わせている状況。アメリカの人も飽き飽きしているのでしょう。
キレイな者しか存在できない世界をつくりあげたようで、子供の教育上も良くないと思います。
海外レビューサイトでも特に批評家から酷評されています。
2022年に公開されてポリコレ+つまらなすぎて爆死した『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』は、損害が200億円以上でした。その作品を上回ってしまうのか!?
海外のレビューサイトロッテントマトズでは批評家支持率が40%台で、過去18年のディズニー作品の中で1番低いです。ストレンジワールドが72%ですから、それよりも低い数値…。
批評家のレビューをまとめると、「多くの過去作からのオマージュが楽しめるが、それはストーリーを本物にすることはできない」など辛辣な結果に。
海外の大手メディアの記事を読んでみても「ディズニーは脚本を失った…」「感情がない」「個性がない」など散々な評価でした。
CineMagの点数 | 48点 |
世界観・映像美 | 96点 |
ストーリー | 28点 |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.9(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 48% 一般の視聴者 81% |
メタスコア(Metacritic) | 47(100点中) |
映画『ウィッシュ』考察:ディズニーとポリコレの功罪
夢から現実へシフト、教育の道具
ポリコレが悪いわけではありません。しかし、ストーリーの面白さの前にポリコレが見えてしまうのは作品にとって致命的です。
ディズニー映画はもはや子供たちに夢を見せるものではなく、こうあるべきだという現実を教育する道具になっています。
こっそり夢から現実へとシフトしているわけです。
不健全なメッセージ
そもそも『ウィッシュ』においては、ポリコレ的なメッセージが果たして人間社会にとって健全なのか?その点も甚だ疑問でした。
ディズニーが『ウィッシュ』で作り上げたのは、倫理的に完璧な人しか住めない世界です。
映画に出てくる人々の願いは、空を飛びたいとか、家族で幸せに暮らしたいとか人畜無害なものばかり。
アーシャを筆頭に、マグニフィコ王以外は倫理的にほぼ完璧な登場人物しか出ていません。
(サイモンについても、裏切りと密告がストーリーを推進するための装置として使われただけに見えます。)
アーシャの友だち達はクセのある人物ばっかりでしたが、みんなが持っているのは性格的な個性や欠点であり、人として悪い部分は一切ありません。
最初から優しい人たちしか住んでいない偽りだらけの世界に見えます。
マグニフィコ王が言っていた、「危険な願いは叶えない」に対するアンサーや対策は何も語られず、みんなの願いは美しいという結論にすり替えられます。
ディズニーは論点ずらしのプロですね。(祖父の夢は結局みんなの前でギターを弾きたいだけだったの?)
理想論で構築された最初から倫理的に完璧な世界。そこで展開されるストーリーに学びがあるわけがありません。実際の人間の感情との乖離が大きすぎます。
これまでアメリカが行ってきた差別の代償としてディズニーがポリコレを優先しなければならないと考えるのはわかります。
また、本作の誰にも迷惑をかけない美しい願いとポリコレをかけ合わせるのはけっこう危険な思想だとも思いました。
王妃のところに伝言にくるネズミは「私は清潔なネズミ」と言っています。野良のくせに清潔なネズミなんて一体どこにいるのでしょうか?
動物からも動物性や野生性をはぎとっているようで、考え方によってはけっこう危険な思想だと思いました。
『ウィッシュ』を見た子供たちは、自分の中にある負の感情や人に言えない気持ち、動物的な衝動を押し殺さなければならないと思うかもしれません。それは健全な社会なのでしょうか?
強い言葉で言えば、非常に抑圧的な映画です。
ポリコレは社会の現状や人間性を反映しつつバランスよくやるのが条件だと思います。
現時点でディズニーが目指しているのは、差別撤廃を超えて利己的な願望や嫉妬の感情が許されない世界に見えます。
ヴィランと同じことをするディズニー
ディズニーが『ウィッシュ』でやったクリーンな願いやクリーンな登場人物しか見せないことは、マグニフィコ王が民衆の願いを管理してコントロールする構造と変わりません。
アーシャの亡くなった父親は哲学者だったようですが、彼が生きていたら人間から動物性を奪い取るようなディズニーのやり方に疑問を呈するはずです。
映画『ウィッシュ』ネタバレあらすじ・ラスト解説
アーシャはお城から祖父・サビーノの願いを盗み出します。
その願いの玉を祖父に渡すと、その玉は祖父の胸の中に吸収されていきました。
祖父は音楽をやる夢を思い出し、活気を取り戻します。
アーシャを追ってマグニフィコ王が家にやってきました。
アーシャは子ヤギのバレンティノと一緒に森に逃げます。
アーシャはすべての願いが人々のもとに帰るよう星に願いました。
すると空が輝き、小さなスターが降ってきました。
スターは不思議な魔法でバレンティノや他の動物・植物がしゃべれるようにしました。
アーシャは驚きます。
動物たちは「みんな同じ。みんな星から生まれた星のかけら」とアーシャに向かって歌いました。
翌日、街では昨晩の夜の輝きについてウワサになり、みんなが胸をおどらせています。
しかしマグニフィコ王は、「昨日の空の輝きやスターについて知っていることを報告しろ」と、スターを取り締まることを決めました。
マグニフィコ王は民衆の心の中で起こりつつある変化を恐れ、禁断の書を手にします。
そして人々の願いの玉を砕いて自分の力にする術を身につけました。
アーシャは街に戻り、友達のダリアたちにスターのことを打ち明け、「王から人々の願いを救い出さなくてはならない」と言いました。
しかし友達の1人のサイモンが王にアーシャたちのことを密告。サイモンはすでに18歳で王に願いをとられており、自分の心から何かが喪失した不安もあって、王に頼ってしまったのです。
アーシャやダリアたちはロサス国で危険な存在だとされ、指名手配されます。
アーシャは祖父や母を離れ小島に移動させました。
アーシャやダリアたちは団結し、革命を決意します。アマヤ王妃も夫・マグニフィコ王の悪い心に気づき、アーシャたちに協力してくれることに。
アーシャは森でマグニフィコ王を誘き寄せます。
その間にダリアたちがお城の天井を開放して願いたちを外に出し、スターがみんなのもとに返す作戦でした。
アーシャはマグニフィコ王から逃げますが、その人物はマグニフィコに変装したサイモンでした。
本物のマグニフィコ王は、お城に来たスターを生け捕りにしてしまいます。
アーシャが城に戻ると、スターを杖に封印したマグニフィコ王は強大な力を手にして、「逆らうものは許さない」と叫んでしました。
アーシャは城の上にいるマグニフィコ王につかみかかりますが、何度も倒されます。
アーシャは「この願い」を歌いました。城の下に集まっているダリアたち民衆もみんなで歌い出し、大合唱になりました。
みんなの胸が輝き、その光が集まってマグニフィコ王を杖に封印します。アーシャたちの勝利です。
後日、スターは他の場所に行くことになりました。別れを惜しむアーシャに魔法の杖をプレゼント。
アーシャは魔法使いを目指すのでした。
祖父は「星に願いを」を作曲しました。
ディズニー映画『ウィッシュ(Wish)』終わり
最後のまとめ
ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』は、最高のアニメーションと行き過ぎたポリコレ、クリーンすぎるストーリーを掛け合わせた非常に微妙な作品でした。
海外で大コケするのもうなづけます。
映像がめちゃくちゃキレイなんだから、ストーリーに変にメッセージ性を詰め込もうとしなくても良かったと思います。
昨年の『ストレンジワールド』も大爆死したディズニー。本作の評判もなかなか悪いですが、このまま間違ったポリコレを極めて会社が倒れないか心配です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『ウィッシュ』(Wish)レビュー終わり!
(記事の画像権利元:https://www.disney.co.jp/movie/wish)
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