映画好きは同じような悩みを抱える。
作品に対し「こんな感じのパターン前にも観たことあるネ。」というものだ。
気のせいと気づかぬフリをしてきたが、繰り返す日々が続いていきそうなGLAYの真似をしたくなるよく分からない衝動にかられ、
それが「何かしら要因があるので追求すべきだ。」というメッセージであると勝手に受け取った。
もし仮にこの”謎”が解ければ、驚きと感動を楽しめる傑作を探しやすくなるだろう!
ストーリーの問題ではニャい?
それから考察を兼ね半年かけ新旧ジャンル問わず100本ほどの洋画を鑑賞した。
「ストーリーが似ている作品が多いせいではないか」ということを意識しながら観たが、特に物語の内容が似通っている作品が多くあるというわけではない。
少なくとも、検証のために観たそれぞれの映画には、新しいアイデアやオリジナルのストーリーがあった。どうやら、話自体が似ているという単純な問題ではにゃい。
ストーリーが違い、俳優も監督も違う。では、何をもって同じような映画だと感じるのであろうか?わからにゃい。
ならば発想を転換させ、反対方向から考察することにしよう。猫言葉はここで終わりにする。
100本観た中で特に印象に残る映画を挙げてみる
同じような映画の反対は、印象に残る映画だ。そこで鑑賞した100本の映画の中で特に印象が強かったものを挙げ、共通点を探すことにした。
思い浮かんだのは『ビフォア・サンライズ』『サスペリアパート2』『マッドマックス怒りのデスロード』この3だ。時代もジャンルも製作国も見事にばらけてくれた。
3つの映画を簡単に説明する。『ビフォア・サンライズ』は1995年のイーサン・ホーク主演の恋愛映画で、列車で出会った男女が、ウィーンの街を散策しながら朝まで会話するというもの。二人の会話だけという変わった意欲作だが、男女の恋愛が凝縮されたような、とても美しい雰囲気が漂う。
『サスペリアパート2』は1978年のイタリア映画で、狂気系サスペンス。連続殺人犯人に迫る話だが、盛り上がるシーンでイタリアのプログレロックバンド(ゴブリン)の音楽が流れる。サスペンスではスリルのあるシーンで、オーケストラによる不協和音を流すのがセオリーだが、ゴブリンはドッキドキの恐怖シーンで疾走感溢れるビート刻みまくりの演奏を聴かせてくれる。
『マッドマックス怒りのデスロード』は2015年のオーストラリア映画で、主人公マックスたちが危険な砦から車で逃亡し、追ってきた敵と戦いながら、意表を突いて引き返しボスを倒すという物語。道中のカーアクションと、独自の世界観は見もの。
この3つの共通点は、
- ハリウッドのみで製作されていない。
- 一般的なセオリーを多少無視している
私はその瞬間気づいた。セオリーを無視した作品ほど印象に残りやすいのではないか?
とすると、近年印象に残らない映画が多い理由は、セオリー通りでパターン化した作りだからだといえる。でもまあ、ここまでは世間でもよく言われている事だし、たいした結論ではないな〜。もう少し深く考えてみることにした。
やっぱあった!脚本の公式はネコを救え!?
セオリー通りでパターン化されたものが多ければ、視聴者は日々のルーティンを行うかのごとく映画を観てしまい、結果記憶に残らない。
もしかしたら映画のジャンル問わず、似たような公式で製作されているのではないか?とふと考えついた。
この疑問ついて調べるとブレイクスナイダーという脚本家の『save the catの法則』という本にぶち当たった。
なんでもハリウッドでは、脚本の公式を書いたこの本がだいぶ流行ったらしい。
みんなこの本を読んでストーリーを考えたので同じような映画が多く生まれたという可能性はある。
さて、答えらしきものは出たが、せっかくなのでこの『save the catの法則』の内容や、ハリウッドに与えた影響をさらに追求してみよう。
『save the catの法則』の内容とは?
まず、『save the catの法則』がどんな本かというと、
ストーリーを細かく分割し、時間毎にどんな場面になるのが好ましいか解説したもの。
簡単にいうと、
登場人物の心理状態や環境が、次のシーンでどう変われば面白くなるかがわかる!
よくありそうだが、使えそうな公式ではないか!!
映画が時系列でどのような展開になればいいのか『save the catの法則』に従えば、
- オープニング
- 解決すべき問題がみえる
- 変わるきっかけが起こる
- 変化への恐れを抱く
- 決意し行動する
- 前半部の努力が報われる最高なとき
- 選択を誤る
- すべて失う
- 絶望
- 再チャレンジ
- エンディング
となっている。この流れを読んだだけで、「何か観たことある気がする〜」という意識高い系ババアのセリフが聞こえてきそうだ。(注)※実際に聞こえたババアは病院に行ってください。
映画において、この流れが観客の心を掴めるといわれているのだ。
確かに変化に富んでおり、引き込まれそうではある。実際はさらに細分化されており、ヒット作を作りたいときはこの法則に沿って分刻みでシーンを考えるよう。
的確に用いれば、完成度が上がることは間違いないだろう!
【2400円程と割とお高いSAVE THE CATの法則】
でも、『save the catの法則』のおかげで…
さて、この『save the catの法則』は映画界にどのような影響をもたらしているのか!?
何本もこのメソッドで作られた映画を観ていけば
「ここまで主人公は上手くいっているけど、そろそろ選択を誤ってすべてを失う場面になる。」と、
鑑賞中に予想できるようになるだろう。
作品のジャンル問わず、「◯分経ったし、そろそろ中盤の泣ける場面だ!」と体が覚えてしまっている恐れがあるのだ。
これは喜劇なのか悲劇なのか?水戸黄門的なお約束を期待する視聴者にとっては吉!予想を裏切られる展開に快感を覚えるドMにとっては凶である。
ちなみに『save the catの法則』にピッタリ当てはまっていると僕が感じる作品は、キーラナイトレイとマークラファロ主演の「はじまりのうた(2013年)」
この映画決して悪くないんだけど、主人公に問題が見え、変わるきっかけが起こり、変化を恐れ、、、、報われるがすべて振り出しに戻って、、と法則に沿過ぎて展開が読めすぎたため、全く印象に残らなかった。
一方、『save the catの法則』に沿って作られた映画は非常に観やすく、ヒットもしやすいという実績がしっかりあるようで、商業主義の映画業界において、すぐになくなることはないだろう。
猫は悪くない!諸悪の根源を探せ
『save the catの法則』を書いたブレイクスナイダーさんが悪いのか?
いや、彼は「こんな風に書いたら完成度の高いストーリーができますよ〜」と教えてくれた、ただの気のいいおっさんかもしれない。(本が飛ぶように売れて金はたんまりだろうが。)
では誰が悪いのか?ここまできたら諸悪の根源をあぶり出そう!
僕が考える問題点は2つ!
1 みんな同じ公式を採用するな!
頭脳明晰なコナン君みたいなメガネをかけたきみはきっとこう感じているだろう。
「昔からストーリーなんてある程度パターンが決まっている!」
「脚本の公式なんてあって当然じゃん!」
確かに事実。さかのぼれば2000年以上前の昔話にも今と同じストーリー展開はある。脚本の公式や物語のお約束は、いにしえより人類が引き継いできた普遍的なもの。
悪いのは、映画の製作現場で、同じような脚本術が根底にあり、それを軸に作業を進めてしまうことだ。
それぞれの現場が全く同じ方法でなくとも、似たノウハウを使えば似たような映画がたくさんできるのは至極当然。『save the catの法則』が一大ブームを巻き起こした影響は大きい。
納得できないあなたは置き換えてくれるとわかりやすい。林家木久蔵の影響を受けた芸人ばかりだったらTV画面が黄色くなるだろう。
2 製作会社にイチャモンつけられる
映画を作るためには金が湯水のようにかかる。そこで出資会社や、まとめて取り仕切る製作会社が必要なわけだが、これらの会社は映画がヒットしないと運営自体が危うくなるので、当然製作に介入してくる。
金出しているのでクチも出すのは当然かもしれないが、介入する割合が大きく、バランスが崩れたのがハリウッドや日本の映画会だ。
彼らにとって映画は確率論的なビジネスであり、収益は死活問題。ヒット作のパターンに沿わなければ編集段階でイチャモンをつけたり、そもそも企画段階で通らない。
その証拠になるかは不明だが、僕が大好きな変態デヴィッドリンチ監督でさえ、もはやハリウッドでは出資してくれる会社がなく、芸術的理解の深いフランスの会社に助けを求めたりしている。
根本的な問題は”お金を出す側”と”作る側”のパワーバランスが崩れたことなのである。これを解決する為には、
ビジネスを考えずに映画を作るための、財力と権力と人脈とその他なんやかんやが必要だ!
このブログを読んでるお金持ち諸君!映画界の未来を救うのはキミだ!
でもまあその前に環境問題や少子化についても色々考えて大人の決断をしような!
パターン化していない映画を探す2つの方法
さて、似たような映画ばかり作られないための解決はお金持ちに託すとして、同じような映画ばっかりで飽きている人のために、save the catの法則に当てはまらない映画を探す方法を2つ紹介する。
その1 ハリウッド映画以外を観る
1つ目は単純にハリウッド以外で制作された映画を観ることだ。日本で観ることができる洋画はハリウッドのものが圧倒的に多いが、フランス、スペイン、ロシア、イタリア、インド、アイルランド等、米制作以外の作品も探せば数限りなくある。
この際、各国の映画を観て勝手にお国柄でも検証してみたらどうだろうか?Fラン大学の卒論のテーマとしては悪くない。
しかし、何作品か見ていくとわかるが、普段ハリウッド映画を見慣れている人にとっては解決感がなさすぎたり、国柄や独特のユーモアが反映され過ぎてたりしていて、面白さを感じることができないことが多い!!
個人的にはカンヌでも賞をとった「羊村の兄弟」などその典型だろう。
ボリウッド(インド)くらいで手を打った方が懸命かもしれない。。。
その2 2005年以前の映画を観る
2つ目の方法は、2005年以前の映画を観るということ。
『SAVE THE CATの法則』という本が最初に出版されたのが2005年なので、それ以前に作られた映画はこのシートに沿ったものが少ないといえるだろう。
いろんなパターンの映画が作られることを祈り
倦怠期のような映画鑑賞をしている人は手始めにイタリアの鬼才ダリオ・アルジェントの「サスペリアパート2」でも観てみるといい!
サスペンスなのに勢いで押し切っており、この先これほど個性的な作品が現れるだろうかと感心させてくれる。そして「サスペンスでドラムがビートを刻むのも悪くない」と周囲に話しかける痛い大人になれるゾ!最後はサスペリアに使われたゴブリンの名曲でもお別れ!
『save the catの法則』で作られた映画も悪くないし、完成度が高いことも事実だが、個性的で面白い映画がたくさん作られるようになると、観る側にとっては嬉しいな。
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