映画『沈黙のパレード』ネタバレ考察ラスト感想・相関図,真犯人がつまらん,あらすじ伏線解説(ガリレオ)

  • 2022年12月11日

映画『沈黙のパレード』(ガリレオ3)は、殺人事件の関係者が“沈黙”に翻弄される!人情味や切なさ溢れるサスペンス大作

東野圭吾の小説を原作とした、大人気『ガリレオ』シリーズの『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』に続く劇場版第3弾がついに公開されました!

CineMag
『容疑者Xの献身』に対する美しいアンサーソング!しかし個人的には微妙な点・疑問点も多々あり…。そんな作品。

作品情報・キャスト相関図と演技の印象・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価:良い点とダメな点考察:『容疑者Xの献身』へのアンサーストーリーネタバレあらすじ解説を徹底レビュー!

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)

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映画『沈黙のパレード』作品情報・予告・キャスト

公開・制作国・上映時間:2022/09/16・日本・130分
ジャンルサスペンス・ヒューマンドラマ
監督西谷弘
脚本:福田靖
原作:東野圭吾 小説「沈黙のパレード」
主題歌:KOH+「ヒトツボシ」

あらすじ(ネタバレなし)

3年前、当時高校生で歌手になる夢を追っていた並木佐織が行方不明に。

そして現在。佐織が住んでいた東京から遠く離れた静岡で頭蓋骨が陥没した遺体が見つかり、鑑定の結果本人だと判明。

容疑者の蓮沼は15年前にも女児殺害で起訴されたが、完黙(黙秘を貫く)して有罪を免れた人物だ。刑事の草薙は蓮沼の関与を知って驚愕した。

今回も黙秘を続けて釈放された蓮沼は、あろうことか死亡した佐織の家族が経営する居酒屋「なみきや」に現れた。

佐織の父・祐太郎は包丁を握りしめるが周囲に止められる。

しかし後日、菊野市が開催するパレードの最中に蓮沼が部屋で遺体で発見された

祐太郎が経営する居酒屋・なみきやの常連だった湯川学は、内海薫からアドバイスを求められ…。

キャスト相関図・演技の印象

映画『沈黙のパレード』キャスト相関図

©︎「沈黙のパレード」製作委員会

福山雅治と柴咲コウのコンビは相変わらず華がありました。柴咲コウさんは実写『ホリック xxxHOLiC』でも主演を務めていましたが、やっぱり美しいですね。

今回は北村一輝さん演じる刑事・草薙が過去の十字架を背負う役で大きくスポットが当たっており、湯川学と草薙のセリフ外の心情・駆け引きが見応え抜群

シネマグ
冷静な男 VS 熱い男の対比が印象的でした。

死んだ佐織の父・祐太郎を演じた飯尾和樹さん(ずん)もハマり役だったと思います。哀愁漂う感じがたまりません。お笑い芸人としても好きですが役者としても好きになりました。

その他も個性派・実力派揃いで、演技面では見応えありました!キャスティングは完璧だったと思います。

ネタバレなし感想

映画『容疑者Xの献身』(2008)と対比させてみると、素晴らしいメッセージが浮かび上がってきます。

いっぽうで、この作品単体でみると関係者が多すぎてやや複雑

面白いことは面白いですが、感情移入を誰にしていいのか途中で混乱してしまいました。

関係者が多いことに加えて大きなツッコミどころ(あとで書きますが)もあり、物語への没入感が削がれてしまうのです。

感動させようというケレン味も結構強く、その点も好みが分かれると思います。

レビューサイトの評価も悪くないですが、「展開がひどい」や「モヤモヤ」という感想が多いのも事実。

とはいえキャスト陣の演技は素晴らしいので劇場で見る価値はあります。

おすすめ度 75%
サスペンスの完成度 65%
ストーリー 74%
Filmarks 3.7(5点中)

※以下、映画『沈黙のパレード』のストーリーネタバレありなので注意してください!

映画『沈黙のパレード』ネタバレ感想・評価

邦画『沈黙のパレード』の評価は72点。演出や演技などクオリティは高いものの没入感はありませんでした。

過去のことがあっても真実を追求しようとする湯川過去の十字架を背負い居酒屋の常連さんたちの罪を追求したくない草薙

『容疑者Xの献身』の湯川 VS 石神のような人情味あふれる対比構造に加え、『容疑者Xの献身』へのアンサーソング的な“真実を知ることで救われるものもある”というメッセージがとても美しかったです。

物語の流れで見ていきましょう。

オープニングでは、佐織が祭りで歌う様子を居酒屋の常連さんたちがみんなで目を潤ませながら見つめ、そこから行方不明→3年後に死体で発見。容疑者の蓮沼が沈黙して無罪になり、店に現れる!

ここまでの序盤の流れは完璧だったと思います。切なすぎるプラス胸糞すぎな展開に心を鷲掴みにされました。

しかしそれ以降は作り込み感が強すぎるというか…。

完黙していた容疑者・蓮沼が殺害されたまでは良いのですが、居酒屋の常連さんたちがみんな共犯というちょっとありそうにない展開に。

そこから常連さんたちは容疑をかけられつつも、みんな沈黙していくわけです。

コンセプトは素晴らしいですが、前半の人情味あふれる雰囲気と比較すると謎解き要素が急に強まってしまい、加えて関係者が非常に多くて複雑なため感情移入が削がれてしまいました。

そこから、湯川が「液体窒素が蓮沼が寝ていた部屋に注がれた」と推理。

そして死亡した佐織を娘のように可愛がっていた居酒屋の常連の戸島、佐織の彼氏の高垣、麻耶の関与があっさり暴かれます。必死に隠す様子もありません。

常連たちはもっと悪あがきがしてもよかったのでは

感想を語る犬
特に、佐織の彼氏だった高垣には、もう少し沈黙して欲しかった…。
そして、蓮村を陥れる計画の発案者は佐織の父・並木祐太郎かと思いきや、15年前の事件で蓮村のせいで身内を亡くした増村だったところから物語がさらに複雑化。
複雑というのは意味不明でわかりずらいというより、感情移入しなければならない人物が多すぎるという意味です。
主人公・湯川はもちろん、15年前に蓮沼を有罪にできなかった草薙、佐織の父の並木祐太郎と商店街のみんなと見てるこっちはいっぱいいっぱいだったのに、さらに増村まで追加されます…。
まあ感情移入する対象が多いだけなら何回も見ればいいだけなのですが、ここから事件は急展開!
佐織の歌手デビューを手伝っていたプロデューサーの新倉が「急なトラブルで蓮沼のところに行けなかった並木祐太郎の代わりに蓮沼のところへ行って部屋に窒素を投入し、佐織を殺したと自供したのを聞いて、気づいていたら蓮村が死んでいた」と自供します。
睡眠薬プラス窒息によるパニックで蓮沼がまともにしゃべれるわけがないと少し考えたらわかり、新倉が何かを隠していることがバレバレ。
そして真相をまとめると↓↓
  1. 3年前、新倉の妻・留美が公園で佐織から「妊娠したから音楽を辞める」と言われて口論になって押し倒してしまい、佐織が死んだと思ってパニックに。
  2. それを偶然見ていた蓮沼が留美を脅すことを計画。静岡の実家に佐織の遺体を運んで3年待った
  3. 公園や髪飾りに血痕がないことから、実際には蓮沼が佐織にトドメを刺していたと判明

というかなりトリッキーな流れになります。

まず、各展開へのツッコミ以前に大きな問題が発生しています。
佐織を実の娘のように可愛がっていた居酒屋の常連たちに後半にスポットがほとんど当たっていないことです。新倉夫妻以外は出番がぐっと減ってしまいます。
ストーリー全体で見ると終盤に新倉夫妻に時間が割かれたため、常連たちの葛藤や心の傷が各々どのように癒えたかは、非常にざっくりしか提示されていなかったです
人情モノ・ヒューマンドラマとして、関係者が多すぎたデメリットに見えました。
もちろん人情モノでなくサスペンス映画としてみれば、後半一気に舵が切り変わるのもいいかもしれません。
蓮沼が死体遺棄の時効の3年間だけ待って留美を脅し始めたというのも、よく考えられていると思いましたし意外性もあります。
ただ、よくよく考えてみると留美が佐織を突き飛ばしたときに佐織は気絶していただけだったわけですよね。
留美がパニックになったのはわかりますが、どう考えても絶対に救急車を呼ぶべきでした。
もちろん一番悪いのは佐織を殺害した蓮沼ですが、留美の行動がちょんぼすぎてラストの感動が薄まってしまいました。
湯川の「真実は悲劇だけでない」という信念が草薙に伝わり、新倉直紀の沈黙を破り、留美が佐織を殺したわけではないと十字架が外れる流れは素晴らしかったと思います。
ただ、留美がパニックになろうが救急車さえ呼んでいれば佐織は死んでいなかった…と考えると複雑です。
両親や居酒屋の常連さん目線で考えると、直接的な原因を作った留美の行動を許せるわけがありません。
感想を語る犬
留美の行動が残念すぎて感動が少し薄まってしまいました。
留美の心情的にも、自分が直接殺していないことはわかっても、自分が原因で佐織が死んだことには変わりありません。完全な救いにはならないような気もしました。
さらにここまでストーリーが複雑に作り込まれると、佐織の死が物語を進める一種の装置であるように見えてしまい、冷静になってしまいます。
あとは佐織にしても、「妊娠して歌手やめます」って理由としてどうよ!?ってのは正直ありました。
娘と思って支援していた新倉夫妻はもちろん、商店街の戸島さんや麻耶さんからするとやり切れなさが残ります
産むにしても産まないにしても、あの親や常連さんたちなら佐織を支えてあげられたと思うと無念です。(怒りはするでしょうけど)。
『沈黙のパレード』は容疑者や関係者がみな沈黙するコンセプトは素晴らしいと思いますが、ヒューマンドラマとしてもサスペンスとしても、すごく満足できたとはいえない中途半端感が残る作品だと思いました。
(原作小説の物語が反映されているので単純に映画制作側だけの問題ではないのですが)

考察(ネタバレ)

沈黙は容疑者Xへのアンサー

『沈黙のパレード』にはひとつの大きな命題があります。

沈黙し、真実に到達しなければ、誰も傷つかない」というものです。

この命題について、居酒屋の常連たちはもちろん警察の草薙も正しいと感じています。

その中で、真実を追及しようとしているのは湯川ただ1人です。

シネマグ
勝手にペラペラ喋る湯川 VS それ以外の全員という構図ですね。

ここに本作のメッセージが込められていると思いました。

本作では、他の人物たちが過去の悲劇から消極的な“沈黙”を選択したのに対し、湯川は真実を追及するという信念を貫き通して結果オーライという形に。

今作では湯川も「あのときと同じことは繰り返したくない」と言っており、真実の追及で誰かがさらに不幸になったらどうしようという葛藤はあったでしょう。

それでも真実を追及すべき物理学者の信念を優先させました。

『容疑者Xの献身』の場合は、言ってしまえば湯川が追及しすぎなきゃ良かった感があるわけです。ただ見方によっては、罪がバレなかったとしても、彼らが幸せになったとは限りません。

今作では真実を追及することで救われるものがあると明確に示し、『容疑者Xの献身』へのアンサーとしていました。

事件の伏線

『沈黙のパレード』は伏線も優れていました。

蓮沼が初めて居酒屋に来たときの留美の表情。

事件当日に居酒屋で腹痛を起こした女性客。

死んだ佐織のバレッタ(髪飾り)に血痕がついておらず、それを大事に持っていた留美の殺人容疑が晴れるなどなど。

これらが伏線としてだけでなく、佐織の父・祐太郎が蓮沼を直接殺さずに済んだり、留美の佐織に対する自責の念が伝わってきたりなど、ストーリーに深みを与える面でもしっかり機能していたのが素晴らしいです。

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