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Netflix映画『The Hand of God』

Netflix映画『The Hand of God 神の手が触れた日』ネタバレ感想:考察 神の手の意味・評価・解説

Netflix映画『The Hand of God 神の手が触れた日』は青年が抱える心の葛藤と周囲の人々との交流を、美しいナポリの風景をバックに描いたヒューマンドラマ。

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パオロ・ソレンティーノ監督による自叙伝的な内容で、登場人物たちの何気ない日常がいく編もの詩のように紡がれていきます

本作はヴェネツィア国際映画祭で審査員大賞&マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞するなど各方面で評価されました。

感想・評価“神の手”の意味考察ネタバレあらすじ解説を知りたい人向けに記事をまとめました。

(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです)

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映画『The Hand of God』キャスト・作品情報

公開・制作国・上映時間:2021/12/15・Netflixイタリア・130分
原題:È stata la mano di Dio
監督:パオロ・ソレンティーノ
脚本:パオロ・ソレンティーノ
撮影:ダリア・ダントニオ
主演:フィリッポ・スコッティ
出演:トニ・セルヴィッロ

パオロ・ソレンティーノ監督は映画『グレート・ビューティー追憶のローマ』やショーン・ペン主演の『きっと ここが帰る場所』で有名です。本作はパオロ監督の出身地イタリア・ナポリが舞台となっています。

パオロ・ソレンティーノ監督

ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ

Netflix映画『The Hand of God』の主人公ファビエットと父母

あらすじ:1986年のイタリア・ナポリ。高校生ファビエットは家族や大勢の親戚に囲まれて賑やかに暮らしていました。ある日、母マリアの妹・パトリツィアから夫フランコに殴られたと連絡が入り、家族3人スクーターで彼女の家に向かいますが…

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エンタメ系の映画とは一線を画する作風で、主人公と登場人物のナポリでの日常と葛藤がやや断片的に展開されます。

その場面場面が美しく、詩を読んでいるような感覚になるのが特徴。海外大手レビューサイトの評価もかなり高いですね。

イタリアの青年の人生の一部を垣間見るような素敵な体験ができる一方、明確なストーリーを求める人には不向きでしょう。

おすすめ度70%
世界観87%
リアルな人間模様86%
IMDb(海外レビューサイト)7.8(10点中)
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)批評家82% 一般95%

※以下、映画『The Hand of God』のストーリーネタバレありなので注意してください!

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映画『The Hand of God』ネタバレ感想・評価

Netflix映画『The Hand of God』ボートシーン

映画『The Hand of God』の評価は82点。
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青年ファビエットのほろ苦い青春、個性あふれる家族や親戚、隣人とのデフォルメされていない人生の1ページが、リアリティたっぷりに切り取られていました!

監督パオロ・ソレンティーノ自身が住んでいた地域を舞台にしており、実体験も多分に混ざっているのでしょう。

ただ映像トーンにしても演出にしても、過去を再構築してノスタルジーを味わう後ろ向きなタイプの映画ではありません。

パオロ監督は自分のためでなく、あくまで視聴者に向けて強烈なメッセージを提示しています。

1980年代当時のイタリア・ナポリの人々の感性や生き様をそのまま突きつけられているようで、カルチャーショックが心地よいです。

それと同時に、自由な時代に自由な気質で生きていたイタリア人ほど幸せな人種はいないのではという気分にさせられます。

親戚が集まると、革命主義の偏屈屋の叔父、頭のおかしい美人の叔母、みんなの席に座らない大叔母、その子供の犯罪者の叔父、などなど、個性の豊かな面々に圧倒されると共に、人間の複雑さ・矛盾を抱える度量や美徳が浮かび上がってくるのです。

ファビエットもタバコの密輸業者から衝動的にボートでカプリ島に連れていってもらったりと、豊かな社会勉強をします。そしてその人物が刑務所に収監されてしまったことで、現実の厳しさや儚さを学んでいるようでした。

グローバル化やネットでの情報共有が進み、ポリティカルコレクトネスが重要視されている現代とはまさに“時代が違う”という感じですね。

過去の方が良かったと一概に言えませんが、少なくとも1986年のナポリでは規範より本当の人間らしさとは何か?という物差しで社会が回っている気がします。

閑話休題。『The Hand of God』はユーモラスも秀逸で、まるまる太った叔母が連れてきた70歳の婚約者が、病気で声帯がないのか電気喉頭(喉に当てて声を出す装置)を使っており非常におしゃべりな様子を親戚一同で見守る様子など、笑ってはいけないシーンで笑わせられました。

叔母と電気喉頭を使う婚約者

障害を持っている人を嘲笑の対象として扱うことは、現代では映像の中であっても許されない場合があるでしょう。

しかし一方で、この老婚約者はぞんざいな扱いにめげず自分の障害などないかの如くすぐに親戚に溶け込んでおり、真に多様性のある社会が示されているのも見て取れます。

初対面や上辺の接し方でなく、その後の継続的な行動の方がより大事だというアイロニカルなメッセージですね。

頭のおかしい美人の叔母が突然ボートで真っ裸になって、それを親戚一同で見守るシーンもインパクト抜群です。

主人公ファビエットの妹・ダニエラがどこへ行っても常にトイレに引きこもっていて、1回も出てこないのも面白いですね。ファビエットがローマに旅立ったとわかりトイレから出てくるシーンには感動を覚えました。

映像による美しい詩の数々で構成されているような本作『The Hand of God』のメッセージを言語化するのはいささか陳腐な気がしますが、現代の息苦しい価値観に揺さぶりをかける点で重要な作品だと感じました。

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考察:神の手と古き良きナポリ

映画『The Hand of Godのナポリの街並み

神の手というフレーズと、人間の矛盾・成長を組み合わせたコンセプトがアート的な視点で『The Hand of God』が美しかった最大の理由だと感じました。

『The Hand of God』は神の手という意味で、1986年のワールドカップメキシコ大会のイングランド戦でマラドーナが明らかに手でゴールを入れたのに反則にならなかった件を指します。いわゆる神の手ゴールです。

マラドーナは1984年にSSCナポリに移籍します。

『The Hand of God』は当時のサッカーファンの熱狂をリアルに伝えており、主人公のファビエットもマラドーナの大ファンです。

象徴的なのは、ファビエットの両親が別荘で一酸化炭素中毒で死んだ時、ファビエットはマラドーナの試合を見るために自宅に残っていたシーンでしょう。

親戚のおじさんはファビエットが生き残ったのを“神の手”のおかげだ!と目を丸くして言いました。

そして美しい人間模様を切り取ることによって、さらに抽象的な神の手・神の意志が街の人々みんなに確かに介在していると感じられます。

矛盾を抱えた魅力あふれる人々が生きる当時のナポリの街には、確かに神の手が介在していた。パオロ・ソレンティーノ監督はそう伝えたかったのかもしれません。

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このメタ的なメッセージが、重厚なアウトフレームとして『The Hand of God』を包み込んでいたように思います。
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映画『The Hand of God』ネタバレあらすじ解説

スクーターに乗るファビエットと両親

 

高校生のファビエットは、俳優を目指す兄や、いつもトイレに引きこもっている妹・ダニエラ、銀行の重役の父・サヴェリオや母マリアと暮らしていました。

ある日、母マリアの妹・パトリツィアが夫のフランコに浮気を疑われて殴られたと電話を受け、ファビエットは両親とスクーターで彼女の家へ。

パトリツィアは子供ができないことで悩んでいて精神的に錯乱の傾向があり、胸を出したままベッドに座っていました。ファビエットは凝視してしまいます。

パトリツィアは聖ジェンナーロと偶然出会い、モナシエロ(神聖な修道僧の霊)と出会って子を授かると言われたと話しますが、夫フランコは信用しません。

パトリツィア
パトリツィアがモナシエロと会ったシーン

ファビエットは海沿いでの親戚の集まりに出席。

叔母が70代の婚約者を連れてきます。彼が電気喉頭(喉に当てて機械的な声を出す装置)を使って饒舌に話し始めたので、親戚一同は笑いを堪えていました。

みんなでボートに乗り、海で泳ぎます。正常な判断ができなくなっているパトリツィアは、素っ裸でボートに寝っ転がり、親戚一同でそれを困った表情で見つめます

Netflix映画『The Hand of God』ボートシーン

ファビエットは美しいパトリツィアを好きでした。

そんな中、ナポリチームにマラドーナが移籍することになり、ナポリの街は歓喜で渦巻ます。1986年のワールドカップのマラドーナの神の手ゴールとアルゼンチンのW杯優勝に世間は大興奮し、マラドーナを神の子として崇拝する人も現れました。

ある日、ファビエットの両親が浮気のいざこざと仲直りの後、別荘での一酸化炭素中毒事故で死亡

ファビエットは失意に沈みます。精神病棟に入院中のパトリツィアに会いに行き、映画監督になりたいと夢を伝えました。彼女は微笑みます。

ファビエットはアパートの上の階に住む老齢の夫人に呼ばれ、童貞を捨てました。

ファビエットと男爵夫人

パトリツィアは、夫からDVを受けたあとで子供ができたが、また喧嘩して暴力を受け、流産したと話しました。

タバコの密輸を営む顔馴染みの男性がファビエットを誘って、夜からボートでカプリ島まで連れ出してくれました

しかしその男性は、後日警察に捕まりました。ファビエットは面会に行き、切ない気持ちになります。

ファビエットはユリアという女優の舞台を見にいきます。偶然観覧にきていた映画監督アントニオ・カプアーノが舞台の最中に「私情が入って破綻しているやめろ!」とユリアに叫んでいたのを聞き、ファビエットは衝撃を受けました。

ファビエットはカプアーノ監督を追い、映画を撮りたいと言います。カプアーノは厳しい言葉を浴びせながらも、「映画を撮るならローマにいくよりナポリの街を見つめろ!」とアドバイス。

ファビエットと海で泳ぐカプアーノ監督

海に飛び込むカプアーノ監督に背をむけ、ファビエットは歩き出しました。

さまざまな葛藤に耐えきれなくなったファビエットは、夢を抱いてローマ行きの列車に乗ります。駅のホームでモナシエロを見つけました。

映画『The Hand of God』終わり!

最後のまとめ

パオロ・ソレンティーノ監督の映画『The Hand of God』は、人間が生きるとは何かを断片的な詩のように伝えてくれた良作でした。

巨匠フェデリコ・フェリーニのように、それぞれのシーンに惜しみなく時間を使い、叙情的な映像が楽しめました。

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エンタメ作品全盛の時代ですが、本作のような映画も大切にしていきたいですね。

ここまで読んでいただきありがとうございます。『The Hand of God』レビュー終わり!

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