Netflix映画『少女は、踊る』は2人の美しい女性バレエダンサーが芸術が魅せる夢と狂気に振り回され、衝撃の結末を迎える物語。映像面でもメッセージ性でも優れているおすすめ映画です!
作品情報・キャスト、ぶっちゃけ感想・演出の評価、ラストシーンを劇中劇ジゼルと関連させて考察、ガラスの人形のメタファー解説を知りたい人向けに記事をわかりやすくまとめました。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)
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映画『少女は、踊る』作品情報・キャスト
原題:『Las niñas de cristal』英題:『Dancing on Glass』
ジャンル:ダンス・青春・アート・ヒューマンドラマ
監督:ホタ・リナレス
脚本:ホタ・リナレス/ホルヘ・ナランホ
配給:Netflix
スペイン語タイトル『Las niñas de cristal』は、クリスタルの少女たちという意味です。タイトルがストーリーに大きく関わっています。
登場キャラ・キャスト
主人公イレネとアウロラ ©︎Netflix
イレネ|演 マリア・ペドラサ(『アウェアネス 超能力覚醒』)
アウロラ|演 パウラ・ロサダ
ノルマ(バレエ団指導者)|演 モナ・マルティネス
『少女は、踊る』あらすじ・見どころ・海外評価(ネタバレなし)
©︎Netflix
あらすじ:一流バレエ団に所属するイレネは、自殺した主演女優マリアの代わりにジゼル役をゲットします。イレネは顔にアザのある団員アウロラと仲良くなり、彼女から演舞中に別世界へいく方法を教えてもらいますが…。
エンタメ性はないですが、少女の脆さと芸術の狂気を対比させたコンセプトに優れている作品です。
構図が素晴らしいシーンもたくさんあり、アートを見ている気分にひたれます。
バレエの練習や舞台のシーンも多く、動きの美しさにうっとり。
海外大手レビューサイトの評価はかんばしくないですが、アート系の作品やバレエなどのダンスが好きな人は必見!
おすすめ度 | 85% |
世界観 | 94% |
ストーリー | 85% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.3(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家57% 一般55% |
※以下、『少女は、踊る』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『少女は、踊る』ネタバレ感想・評価
少女たちの情熱×ガラスのような脆さ×バレエの美しさの相乗効果が素晴らしいダンス映画の秀作でした。
ガラスの人形・ジゼルという劇中劇などがメタファーとして本筋のストーリーとしっかり絡み合い、物語を抽象的ながら奥深いものにしています。
主人公イレネと親友アウロラの友情・愛情・夢・狂気入り乱れた関係性もヴィヴィッドに描かれていました。
正直、海外であまり評価されてない理由がわからないです。エンタメ性がないから受けないのでしょうか?だとしたらちょっと残念ですね。
演出:スペイン映画は芸術への理解が深い?
ダリやピカソといった革命的アーティストを生み出したスペインだからか、スペイン映画って構図が美しいショットが多いんですよね。
『少女は、踊る』もバレエという芸術がテーマなのでより一層その傾向が強く、絵画を鑑賞する感じで終始飽きることなく楽しめます。
ラストは15分間「ジゼル」の上演を見せつつ舞台裏でクライマックスが進行していくという、デイミアン・チャゼル監督の『セッション』にも通じる圧巻のクライマックス。
ストーリー展開も凝っていて、まず少女マリアが屋上でジゼルを踊って飛び降り自殺をするオープニングは最高でした。
さらに死んだマリアはバレエでジゼル役を捨てるのが惜しいために、病気の母親を見殺しにしたことも明かされます。サスペンス的なカタルシスがしっかり組み込まれていますね。
終盤ではイレネが指導者ノルマを突き飛ばして殺してしまい、それでも舞台を続け、終わってから2人は屋上の縁で手を取り合います。
ストーリーのまとまりや面白さでいえば『ブラック・スワン』より優れているのではないでしょうか。
ラストシーン考察・劇中劇ジゼル(ネタバレ)
©︎Netflix
ラストは、舞台初日を成功させた主人公イレネと、親友のアウロラが劇場の屋上のふちに立ち、2人だけの想像の世界が展開されて終わります。
普通に考えると、2人は飛び降り自殺をしたのでしょう。劇中でのバレエの演目ジゼルに勝るとも劣らない、悲劇のカタルシスにどっぷり浸れる強烈なラストでした。
バレエのジゼルの作品と対比させると、ストーリーのさらなる本質が浮かび上がってきます。
ジゼルは、少女ジゼルが失恋のショックで死亡し、森で精霊・ウィリとなって、相手のアルブレヒトに別れを告げる物語です。
イレネとアウロラはノルマ殺しの罪を背負って自殺したので、ジゼルの物語だと精霊・ウィリになったのだと思います。
違うところは男性アルブレヒトに追い詰められたのではなく、バレエという芸術に殺されたということです。
クラシックバレエのトップ集団は、ノルマの鬼指導や団員同士のいじめ問題からもわかるように、常人には理解できない過酷な世界なのでしょう。
バレエの表の顔は世界中を魅了する芸術です。しかし裏には想像を絶する狂気をはらんでおり、ガラスのように脆い少女たちを破壊するには充分でした。
アウロラの家に、鏡に囲まれたガラスの少女たちの人形がありますが、このガラス人形たちは悲劇の犠牲者・精霊ウィリであり、バレエという芸術の犠牲者を表しているのだと思います。
劇中劇ジゼルの内容と比較して考えると、頭の中でガラスの少女たちが割れていく抽象的な映像が勝手に組み立てられますね。
華やかなスポットライトの裏側に、たくさんのウィリたち(挫折し、壊れた少女)がいる。そんな二項対立がダイレクトに伝わってきました。
『少女は、踊る』は、視聴者に自分なりの映像を想像させるという意味でも芸術点が非常に高い映画ですね。まさに一度で二度楽しめる映画だと感じました。
最後のまとめ
映画『少女は、踊る』は、バレエの美しさ、少女たちの危うさ、芸術の狂気がシンクロナイズされた良作でした。
エンタメ性があるタイプではないのでヒットはしないかもしれません。
しかし、こういう個性的かつアーティスティックな作品が増えることで、映画界に多様性による豊かさが助長されていくと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix『少女は、踊る』レビュー終わり!
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