映画『サマリタン』ネタバレ感想・スタローンの哀愁がすごい/徹底考察・あらすじ解説

  • 2023年11月5日

『サマリタン』徹底考察(ネタバレ)

ヒーローを失ったヴィラン

シネマグ
本作が提示していたのはヒーローという存在を失ったヴィランがどう落ちぶれてしまったかだと思います。

双子の兄弟で正義のヒーローのサマリタンを突き落として殺して十字架を背負い、スタローンは25年間影を潜め、ごみ収集の仕事をしています。

ヒーローがいるからこそ、ヴィランの存在意義もある。逆も然り。ということを、実際に落ちぶれたヴィランを見せることで突きつけていた点が斬新でした。

電化製品を直すことが唯一の趣味というのも切なすぎですね。

双子の兄弟を殺してしまったこと、ヴィランとしてヒーローを殺してしまったこと。

どうあがいても過去は直せません。

それをわかっていながら、贖罪として電化製品を治していたようにも見えました。

そしてヒーローを失ったヴィランが子供を助けるいい奴になったことで、善悪は誰の心にもあるという宗教・倫理・道徳についての人類がかかえる普遍的な課題を浮き彫りにしていました。

これらのテーマが劇中でセリフで多く説明されちゃっているところに賛否出ると思いますが、メッセージには素晴らしいものがあると思いました。

また、もしかするとネメシスは、サマリタンが正義のヒーローになったので自分は悪の側から街を変えていかなければと考えてヴィランになったのかもしれませんね。

サマリタン活躍の記事をスクラップしていたことからも彼の本音が垣間見えます。

少年サムもジョーがネメシスだったと知ってショックを受けつつ、自分を救ってくれた姿に彼の中にヒーローを見出します。

感想を語る犬
ヒーローかヴィランかは行動で決まる。かつてのヴィランもヒーローになれると表現しているようです。

全体的にいろいろ考えさせられる設定でした。

裏切ったのはサマリタン?

ジョーの回想でサマリタンとネメシスが発電所で死闘を繰り広げたことがわかり、みんなネメシスがサマリタンを誘き寄せたと思ってますが、終盤の乱闘の際にネメシスであるジョーは「罠だった」的なことを言ってます。

もしかすると発電所爆発の罠を仕掛けたのは、ネメシスを倒そうとしたサマリタンだったのかも。

サマリタンはネメシスに勝ちますが、ハンマーを振り下ろしてトドメを刺すことはしませんでした。しかし足場が崩れて炎の中に落ちそうになります。

ネメシス(ジョー)はサマリタンの腕をつかみますが、マスクを取って手を離します。

実はスクラップまで取って陰で応援していたサマリタンが罠を仕掛けたことに失望したのかもしれません。

コインの表裏の表側が汚れしまった…。そう悟ったネメシス(ジョー)の絶望は相当なものだったでしょう。

だから手を離して兄弟を殺し、マスクを2つとも捨てたのだと思います。

感想を語る犬
やはりジョーには元から正義の心があり、あえてヴィラン・ネメシスになったのかもしれないですね。

ヒーローが街を仕切っても意味ない

序盤で少年サムに、「遺伝子に異常のある奴らが街を仕切っても意味ない(サマリタンとネメシスのこと)。民衆が自分たちでやらねば」とサラッと言っていたのも印象深いです。

これはMARVELなどヒーロー映画全般に対しての鋭いアンチテーゼだと思いました。

確かにヒーローが一時的に民衆のシンボルになり、それを中心に街が動くこともあるでしょう。

しかし街に住む多くは一般人です。例えばアベンジャーズのメンバーは一般庶民の感覚をわからないかもしれません。

また、リーダーがいかに優れていても、最終的には民衆ひとりひとりの賢さ・意志の強さで社会が決まるという解釈もできます。

全体通してスタローン演じるネメシスのセリフは本質を射抜く賢者そのものでした。

反則スレスレの仕掛け

  1. 老人がスラム街の少年と触れ合い、自分自身の生き方を見つめ直す
  2. 老人は元最強のヒーロー・サマリタンだが、過去に心の傷を抱え存在を隠していた
  3. 実は老人はヴィラン・ネメシスのほうだった

①と②だけなら面白さはダダ下がりしていたと思います。

③の実はヴィランだったというどんでん返しを加えたことで、ラストのカタルシスと哀愁が凄まじいものになりました。

IMDbサイトを読むとM・ナイト・シャマランの『アンブレイカブル』(2000)やショーン・コネリーの『小説家を見つけたら』(2000)がモチーフになっているようですが、それらとも違う独特の雰囲気があります。

サマリタンとネメシスは双子の兄弟ながらヒーローとヴィランに分かれた設定なので、スタローンがヴィラン・ネメシスだったら面白いな…というのは中盤で頭の中によぎりました。

しかし劇中の回想でスタローンが「ネメシスはあのとき死んだはずだ…」と口にしたことで、やっぱりタイトルもサマリタンだし、スタローンはサマリタンだよなあ。と騙されてしまう仕掛けです。

「ネメシスは死んだはず」という反則スレスレのセリフですが、ネメシスとして生きることをやめたという意味で言っていたのでしょう。

「少年サムを助けていたのはヴィラン・ネメシスだった」という驚愕の事実が会話中でなく大乱闘の最中にわかることでカタルシスの相乗効果が起こっていた点も見逃せません。

最後のまとめ

映画『サマリタン』は、ヒーローを失ったヴィランの苦悩を色濃く描き出すコンセプトに優れた作品でしたが、完成度が高いとまではいえず勿体なさが残りました。

感想を語る犬
まあアクションを頑張る元気なシルヴェスター・スタローンが見れただけでも大満足なのですが。

とりあえずスタローン主演次作は『エクスペンダブルズ4』こちらも超楽しみです!

ここまで読んでいただきありがとうございます。『サマリタン』レビュー終わり!

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