シリーズ第4作目となる映画『マトリックス レザレクションズ』。原点回帰のシンプルなデジャヴストーリーのようで、難解な多重構造メッセージもあり、続編として賛否がわかれそうです!
レザレクションズシリーズ1の続編ではなく、時系列的にも4作目のマトリクス4という位置付け。好みがわかれるでしょうけどアクションもリアル路線で秀逸でした。
私的には伝説のSF映画の18年ぶりの続編となる挑戦的な本作を肯定したいです。ツイッターとかだと「ダメな同窓会っぽい」という評価も多いですが、そういうメッセージではないと思います。
ラスト結末のテーマ考察、メタ・ループ構造のイラスト解釈、デジャヴからの脱却、新事実や伏線、ストーリーネタバレあらすじ解説を知りたい人向けに記事をまとめました。
(考察から読みたい人←はコチラ)
解釈が難しい作品でもあるので、こういう考え方もできる!などあればコメントお願いします。
(前半はネタバレなしで旧作の復習と本作の見どころ、後半はネタバレありです)
映画『マトリックス4 レザレクションズ』キャスト・作品情報
原題:The Matrix Resurrections
監督:ラナ・ウォシャウスキー
脚本:ラナ・ウォシャウスキー/アレクサンダー・ヘモン/デイヴィッド・ミッチェル
撮影:ジョン・トール
制作:ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
配給:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
ラナ・ウォシャウスキー監督はトランスジェンダーで、性転換手術前はラリーと呼ばれており、弟のアンディとコンビでマトリックス旧三部作を製作しました。
本作は姉のラナが単独で監督を務めます。
ネオ(トーマス・A・アンダーソン)|キアヌ・リーブス
ネオはかつて救世主と呼ばれ、機械と人類の争いを終結させた人物。
現在は過去の記憶が消え、マトリックス内でゲームプログラマーとして過ごしている。
俳優キアヌ・リーブスは、映画『スピード』『ジョン・ウィック』シリーズで有名。
トリニティー|キャリー=アン・モス
トリニティーはかつてネオと共に人類を救った戦士。
現在は過去の記憶が消え、マトリックスでティファニーという名で、夫チャドや息子たちと幸せに暮らしています。
女優キャリー=アンモスは、映画『メメント』や『ショコラ』で有名。
モーフィアス|ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世
モーフィアスは、自我が目覚めたエージェント(機械のプログラム)。ネオの救出を使命とする。
旧三部作では俳優ローレンス・フィッシュバーンがモーフィアスでしたが、同一人物ではなく、意志を継ぐもの的な立ち位置です。
俳優ヤーヤ・アブドゥルは映画『アクアマン』や『キャンディマン』で有名。
バッグス|ジェシカ・ヘンウィック
バッグスは人類の新都市アイオの戦士でありムネモシュネ号の船長。エージェントであるモーフィアスと出会い、ネオ生存の手がかりをつかむ。
名前はワーナーのバックス・バニーから。うさぎの刺青を入れている。
女優ジェシカ・ヘンウィックはドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』ナイメリア役や、『マーベルアイアン・フィスト』コリーン役、Netflix映画『ラブ・アンド・モンスターズ』エイミー役で知られる。
ネタバレなし感想・見どころ・あらすじ
あらすじ:かつて救世主と呼ばれ死亡が噂されたネオは、マトリックスの中でゲームプログラマーとして日々を過ごしていました。現実と妄想の区別がつかず精神科に通い、青いカプセルを飲まされています。ある日ネオはバッグスという戦士たちに発見され、人類の存続を賭けた“選択”を迫られます。
ただし、なんとなく見てしまうと無難なアクションSFで終わってしまいます。
過去3部作のストーリーを踏まえていないと置いてけぼりになるでしょう。時間がある人は、できれば旧作を見返した方が良いです。
『マトリックス』の新作『マトリックス レザレクションズ』が18年ぶりに公開されますが、ぶっちゃけ旧三部作の内容を忘れてしまったという人が多いと思います。 そんな人のために『マトリックス』(1999)、『マトリックスリローデッド』(20[…]
おすすめ度 | 80% |
SF世界観 | 83% |
アクション | 86% |
ストーリー | 85% |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.1(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家68% 一般69% |
※以下、映画『マトリックス レザレクションズ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『マトリックス4 レザレクションズ』ネタバレ感想・評価
考察の項目で詳しく解説しますが、シリーズ1をリピートしただけに見せかけて、まったく逆のコンセプトになっています。メタ構造による新しい仕掛けも意味を考えてみると楽しめました。
ネオがマトリックスという3部作ゲームを仮想現実で作っていた設定や、主体性のない人間にとって現実も仮想世界も変わらないと突きつけるアイロニカルなメッセージが興味深いです。
ただ見方によっては、人間と機械が結局和解しておらず、ネオが再び立ち上がるストーリーは真新しさがない展開・結末でもあり、旧作のファンの意見は分かれそうですね。
ジョン・ウィックシリーズで監督を務めたチャド・スタエルスキが協力していることもあり、アクションシーンは旧作に比べてリアル路線で見応え抜群。
ただこのアクションも従来のマトリックスっぽいかといえばそうでもなく、賛否分かれています。
序盤はメタ的な皮肉構造で、マトリックス4は制作者本人は望んでないのに、親会社のワーナーに強制的に作らされるというのも面白かったです。
ラナ監督の不満と挑戦
ラナ・ウォシャウスキー監督は、現在の映画業界に不満があるのでしょう。
エンドロール後のショートコンテンツで登場キャラにはっきりと「今の映画はストーリーがなくて終わっている。キャットリックス(猫動画)を作った方が売れる」と言わせていましたね!
そういった業界への不満がありつつ、それでも希望を見出して新たなコンセプトを提示したのが本作『レザレクションズ』だと感じました。
次の項目では、レザレクションズのストーリーやメッセージを考察していきます。
考察:メタ的な多重構造ループ/ネオはマトリックスを管理
メタループ構造をイラスト解説
『マトリックス レザレクションズ』では、ネオがマトリックス内で、マトリックスという革命的ストーリーを備えたゲームのクリエーターである設定が画期的でした。
仮想現実の中に、現実+仮想現実が埋め込まれている多重構造になっているのです。
ワーナーへの小言など挟みつつ、ラナ監督は結局行き着く先は現実も仮想現実も一緒だとさらっと嘲笑っているようなコンセプトです。
メタ構造に込められた監督のメッセージ
もちろん多重ループ構造はコンセプトとして素晴らしいのですが、ここに『マトリックス』シリーズ生みの親ラナ・ウォシャウスキー監督による別のメッセージが隠されているようにも感じられます。
ラナ監督はネオたちが目覚めた現実すらも仮想空間という過去3部作の継承のような無限ループオチに、ストーリーの本筋が向かうことを拒否する選択をしたのではないでしょうか。
現実とマトリックス間での和平ですらが無意味となり、過去3部作とはベクトルが全く異なっているようです。
サブのストーリーとして多重構造・ループを示すため、ネオが仮想現実でマトリックスゲームを作っていたという入れ子の作りにして一応説明したように思えます。
そう考えると、巧みで味わい深い演出ですね。
救世主ネオはゲームでマトリックスを管理
ネオがゲームプログラマーの設定はストーリー的に、現実起こった過去の出来事を彼が作ったゲームとして1番近くに置いておけばネオの覚醒を防げるという理由が添えられていました。
考察を含みますが、ネオはマトリックスというゲームの開発やバグ、アップデートに携わることで、マトリックスの安定に寄与していたのではないでしょうか。
アナリストの企みにより、ネオがパソコンで自分が作ったゲームを修正することが、自分の意識が存在する仮想現実世界・マトリックス自体のバグを直したりアップデートしたりに直結しているのかも。
ネオは、救世主属性を活かしたマトリックスのプログラムと化していたわけですね。
すごい皮肉ですが、考察が膨らむ素晴らしい設定でした。
デジャヴ・ループからの脱却
そして、このコンセプトを主軸にしなかったことで、デジャヴからの脱却のテーマが見えてきます。
実際に今私たちが生きるこの世界も仮想現実である可能性はあるわけで、旧三部作と同じように現実か仮想かを追求していたら、黄金長方形のように延々同じことの繰り返しになるのは明らかです。
ラナ・ウォシャウスキー監督はそれを拒否し、現実と仮想空間にかかわらず人間が人間として生きる意味のような哲学性に舵を切ったと感じました。
黒猫デジャヴを登場させ、過去のオマージュ・回想シーンを散りばめたのも、過去作の繰り返しのようで繰り返しではない!デジャヴからの脱却テーマとしての演出でしょう。
過去作を懐かしむ意味でオマージュばかりにしたわけではなく、ループを見せてそこからの脱却を示したのだと思います。
同化でなく対比していたの方が近いでしょう。同窓会と見せかけて、一歩前進したテーマがあります。
ネオとトリニティーのラストの「好きに作り変える!」のメッセージの通り、現実・マトリックスや人間・AIの違いを超越した、新世界を創造するネクストステージに立ったのです。
キリストからアダムとイブへ
©︎ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
ネオだけでなく、トリニティーまで救世主だったとも受け取れるラスト。
もともとネオの救世主プログラムが発動するのにもトリニティとの接触が必要でしたし、彼女も機械(マシン)側になんらかコードを加えられていたのでしょう。
ネオとトリニティーという愛し合う2人の男女がマトリックスを超越して特別な次元へたどり着いた結末は、ちょうど旧約聖書のアダムとイブがエデンの園から追われる描写と重なります。
ヴィランのアナリストが禁断の果実であるリンゴを持ってましたしね。彼は蛇の役割でしょう。
マトリックス旧3部作はネオ=キリスト的な扱いでしたが、今作ではネオとトリニティーでアダムとイブを表現しているようで、画期的だと思いました。
視点を広げると、マトリックスの世界は機械が創造したので神=機械です。旧三部作では救世主キリストであるネオも、人間と機械中間のような位置付けでした。
レザレクションズではネオとトリニティーがアダムとイブになったので、見方によっては神=機械に背き、人間の本当の意味での自立を目指しているように感じられます。
さらに聖書の時系列で考えると、キリスト(新約)の内容からアダムとイブ(創世記)にさかのぼっており、そのもっと前にあるのは、神によって人類が作られる以前の未知の世界です。
Matrixという言葉は本来「何かを生み出すもの」やラテン語で「子宮」という意味。ネオとトリニティーはレザレクションズでもって、仮想世界も現実も聖書すらも関係ない、人類の新たな1ページへ生まれ立ったのでしょう。
繰り返すメタ構造からの脱却でもあり、人類における最も重要な固定観念である聖書の教えからの脱却をも意味しているようです。
ラナ・ウォシャウスキー監督がトランスジェンダーであることもあり、性の多様性を阻むような宗教の教えを根本から否定したいのかもしれませんね。
レザレクションズの新事実や伏線考察
アナリストは黒猫を使ってシリーズ1から監視していた
©︎ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
ネオは『マトリックス』(1999)年でも黒猫のデジャヴを見ます。
レザレクションズのアナリストは、自身の能力を使う際に黒猫を側に置いていました。
ネオが最初に見た黒猫もアナリストの飼い猫ではないでしょうか?
アナリストはずっと以前からネオたちを監視して、能力を手に入れてマトリックスや機械世界を支配してやろうと目論んでいた可能性があります。
DI(Dependency Injection/依存性注入)
今作のモーフィアスは、なんとエージェントが自分の意志を持った存在。
現実世界では、特殊金属の集合体として具現化できます。その技術がDIです。
調べてみるとコンピュータープログラミングにはDIという手法があり、外部からコードに機能を与えることのようです。
そのコンセプトをそのままレザレクションズで応用したんですね。
モーダル(モーダルウィンドウ)
序盤でバッグスが潜入したのがマトリックスにあるモーダルです。モーダルウィンドウとは、ある操作を終えるまで閉じない別枠のこと。
劇中では進化シュミレーションとも呼ばれています。モーフィアス(2代目)はここで同じミッションをさせられていました。
ゲーム会社でプログラムするネオは「モーダルに潜入された」と言っていたので、彼が作ったゲームは実際にマトリックスと連動していて、マシンによる仮想現実を安定させるために役立っているのでしょう。
ネオは人間?機械?
救世主ネオは人間なのか?それとも機械か?
旧三部作の解釈でも曖昧です。
救世主ネオの存在自体はマシン側によってプログラミングされたと思われます。
ただ今作でアナリストはネオを、「直した」でなく、死から「復活させた」と言っていましたし、その回想シーンでもネオの体は機械ではなかったので、一応ベースは人間なんだと思います。
ただ、リローデッドの最後で現実でセンチネルを機能停止させていたので、完全な人間でもないのでしょう。
『マトリックス レザレクションズ』でもネオの正体は微妙でしたが、続編がありそうなのでそこで判明するかも!
↓映画『マトリックス レザレクションズ』のあらすじ・ラスト結末解説は2ページ目へ↓
- 1
- 2