Netflix映画『パープル・ハート』(Purple Hearts)。軍人とリベラルな歌手の恋が美しく描きだされた良作で、とても面白かったです。
作品情報・キャスト・あらすじ・見どころ、ぶっちゃけ感想・評価、考察を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『パープル・ハート』あらすじ,Netflix
©︎Netflix
音楽での成功を目指すキャシーは、ライブバーで働きながらバンドのボーカルとして演奏もしていました。
しかし糖尿病が発覚してインスリンを保険適用外で購入する必要があります。家賃も合わせると完全な赤字でやっていけません。
ある日キャシーはバーでイラク派兵目前の軍人のルークと出会います。
リベラルな信条のキャシーと、保守的な考えを持つルークの第一印象は最悪。
しかしキャシーは軍人と結婚すると支援金をもらえると聞きいて偽装結婚を思いつきました。
ルークもドラッグ売人に借金があり追われている身なので、キャシーとの偽装結婚を了承。
ルークはイラクに派遣され、キャシーは音楽で成功してスターダムを駆け上がっていきますが…。
『パープル・ハート』ネタバレなし感想・見どころ・海外評価
金のために偽装結婚する歌手と軍人。この設定だけでもう面白いです。
愛や友情、家族をかたわらに2人がどんな答えを出すのかが見どころ。
ラブロマンスを楽しみたい人、アメリカの社会問題についてじっくり考えたい人、音楽ライブシーンを楽しみたい人、誰が見ても楽しめます!
海外レビューサイトの評価を見ると批評家の評価は芳しくないですが、一般視聴者は楽しめているようです。
おすすめ度 | 85% |
ストーリー | 80% |
バンド演奏 | 87% |
社会問題 | 89% |
IMDb(海外レビューサイト) | 8.0(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 29% 一般の視聴者 85% |
※以下、ネトフリ『パープル・ハート』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『パープル・ハート』ネタバレ感想・評価
ストーリーとメッセージ性の融合
糖尿病薬のインスリンが買えない駆け出しのロック歌手・キャシーと、元薬物中毒で借金取りに追われている軍人ルークが軍からの支援金目的で結婚する、この時点で面白いしてんこ盛り。
さらに、キャシーの母親は不法移民、ルークの父親はマチズモの象徴的な父親、リベラルと保守派、イラクの軍派遣問題などさらに多種多様な要素が投入されています。
これだけ論点が多いと物語のノイズになりそうですが、非常にうまくまとまっていました。バランス感覚が素晴らしいですね。
それぞれの主張があっても説教臭さはなく、愛と相互理解で幸せを築いていく美しい物語でした。
ライブシーンも最高
加えてライブシーンまで素晴らしいから言うことなし。
主人公キャシーを演じたソフィア・カーソンは著名な歌手で、私は恥ずかしながら初めて彼女の歌声を聞いたのですが、湿り気のあるハスキーボイスに感激。
メロディアスなボーカルとシンプルなバンド演奏のコントラストが素晴らしく、全部で4回ほどあった割と長めのライブシーンも堪能できました。
『パープル・レイン』や『ボヘミアン・ラプソディ』とまではいきませんが、音楽映画としても成功していたと思います。
考察:アメリカ社会に必要なパープル・ハート
壊れたアメリカ社会へ贈る映画
なぜ本作の英題がPurple Heartsと複数形になっているのか?
パープル・ハートは戦場で傷を負った人に与えられる勲章ですが、問題は戦場だけで起きているわけではありません。
軍人が体を張っているのはもちろんですが、彼らにも家族がおり社会に深く関わっています。
軍人が負傷すれば家族の心も傷つきますし、ケアの必要性など社会自体も少なからず影響を受けるでしょう。
アメリカにはそのほかにも人種差別や格差・宗教などありとあらゆる断絶があり、皆それぞれに傷ついています。
体だけでなく心もです。
そんな社会を鑑みて、傷ついたすべての人にパープル・ハートを贈りたいというのが本作のメッセージだと受け取りました。
だからPurple Heartsで複数形なのでしょう。
アメリカ社会は大いに傷ついている。それを修復する愛でできたパープルハートが必要だという前向きで美しい主張だと思いました。
この意味を考えると邦題も複数形にすべきだったかもしれないですね。
アメリカの社会問題
軍人になるのは社会的弱者
映画『パープル・ハート』では、ルークはドラッグディーラーのジョノーに借金をしてしまって金に困っていることもあって入隊しています。
そしてキャシーとルークは軍からの支援金目当てで結婚。
ここに大きな社会の闇が潜んでいます。
白熱教室で有名なマイケル・サンデル教授の著書「これからの「正義」の話をしよう」などを読んでいただけるとわかりますが、愛国心というより金がなくて入隊するアメリカの若者が非常に多いのです。
全員が全員そうではないでしょうけど、国が高い金を出して若者の人生を買っているという構図です。
もっと単純化すれば、貧乏な人を盾に国を守っていることになります。
2003年にイラク戦争を仕掛けたアメリカですが、結局大量破壊兵器はありませんでした。
これに関してはアメリカが国際社会から攻められても仕方ないと思います。
大規模な戦闘は開戦してまもなく終わりましたが、それから19年。
数千人のアメリカ兵が2022年現在もイラクに駐留しており、反体制派から攻撃を受けることもあるようです。
間違った情報で始めた戦争なのですから大義もよくわかりません。
日本から見ていると、ルークのような若者たちが命を賭さなければいけない理由もよくわかりません。
かといって軍隊を無くしたら国際情勢は大混乱してしまうでしょう。
本作はアメリカ軍募集の問題提起を上手にしていたと思います。
超怖い移民問題
キャシーの母親は不法移民です。
しかしキャシーは「母親が一生懸命働いたけど国に搾取されてきた」と主張(メキシコからでしょうか?)。
法に触れている一方、倫理面でキャシーの母親を攻めるのもどうかと思います。
母親の立場からすれば貧困から抜け出すために移民しかなかったのでしょうから。答えが出ません。
移民問題はアメリカと隣接するメキシコの格差。さらに不法移民の人権や、経済へ与える影響など様々な要因が相関しあって大変な状況です。
最近英語圏のニュースで「密入国業者がトラックを放置し、中で数十人の移民が出られず死んでいるのが発見された」という地獄絵図のような事件を聞きました。
アメリカ社会は「移民は違法だけど、移民の命や人権は尊重すべき」という非常に難しいシュチュエーションにあり、映画内でもその矛盾を端的に表していたと思います。
Netflix映画『パープル・ハート』作品情報・キャスト
原題:『Purple Hearts』
ジャンル:ラブロマンス・ヒューマンドラマ・社会派・音楽
監督:エリザベス・アレン・ローゼンバウム
脚本:カイル・ジャロウ/リズ・W・ガルシア
登場人物・キャスト紹介
登場人物 | キャスト |
キャシー(カサンドラ・サラザール) ライブバーで演奏する駆け出しのミュージシャン。糖尿病を患っている。 |
ソフィア・カーソン 米国の有名歌手であり、俳優業は『ディセンダント』のイヴィ役で知られている。 歌唱力抜群でライブシーンもクールでした。 |
ルーク イラク派遣目前の新兵。元ドラッグ中毒者で、父親に見放された過去がある。海軍所属 |
ニコラス・ガリツィン 2021年の映画『シンデレラ』のロバート王子役で有名。 |
フランキー キャシーの幼馴染で軍人。ルークの同僚。 |
チョーズン・ジェイコブス |
ルークの父・ジェイコブ | リンデン・アシュビー |
最後のまとめ
『パープル・ハート』は、Netflixオリジナルにしては珍しく、ストーリー性・メッセージ性・音楽がバランスよく組み合わさった良作となりました。
最近のネトフリ音楽系映画だと『目指せメタルロード』も面白かったので、音楽路線でいくのもありな気がします。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『パープル・ハート』レビュー終わり!
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