映画『アイデンティティー』を久しぶりに観て、筋書きやオチも分かってはいるけど、それでもメチャクチャ面白かった。
このアイデンティティは常人じゃ絶対に考えつかないような設定・オチに加え、それらをしっかりと再現するために細部まで気を配って作られていると改めて感じた!
まだ、アイデンティティ未鑑賞の人は簡単なあらすじや映画の見どころなど、目次の見どころまで!
この映画を深く考察したい・思い出したい・ネタバレOKの人は好きなところから読んでくれ!
映画『アイデンティティー』あらすじ
凄惨な殺人事件を犯した死刑囚マルコムについて「多重人格なのでで罪が問えない」という弁護側の主張により、死刑の前日に関係者が集められ罪の再審議が行われていた。
一方、土砂降りによる川の氾濫で道が閉ざされ、田舎のモーテルに続々と集まる11人の男女。
女優、運転手、売春婦、3人家族、カップル、モーテルの主人、警察と囚人、
それぞれが”かなりのワケあり”
女優が殺されたことをキッカケに、次々と残酷な殺害が起こり始め、運転手のエド(ジョン・キューザック)と警察ロード(レイ・リオッタ)は犯人探しに奮闘する。
果たして真犯人は誰なのか?!
映画『アイデンティティー』作品情報・キャスト
アイデンティティの制作陣や基本情報、キャストを押さえておきましょう!
公開年・製作国 | 2003年・アメリカ |
監督 | ジェームズ・マンゴールド |
主要キャスト | ジョン・キューザック レイ・リオッタ |
脚本 | マイケル・クーニー |
音楽 | アラン・シルヴェストリ |
ジェームズ・マンゴールド監督は『フォード&フェラーリ』や『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023)でも監督を務めました。
この映画でジョン・キューザックが好きになりました。独特の表情とつぶらな瞳?が印象的!
レイ・リオッタは「グッド・フェローズ」から大好きな個性派俳優!
この2人の共演というだけでも観る価値十分!
さらに音楽は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も担当している、アラン・シルヴェストリ!どおりで映画に引き込まれるわけだ!
映画『アイデンティティー』感想・見どころ
100%予測不可能!
アイデア自体が良い意味で突拍子もないので、どんなに感が鋭い人でも絶対に予想できないでしょう。
予想出来なくてさらに面白いという意味では、アイデンディティは1番にくる映画です。
あのサスペンス映画の傑作『ユージュアル・サスペクツ』を予想出来たという友達も、アイデンティティは流石に無理だったと言ってました。
また、オチの内容は伏せますが、アイデンティティにはすごく美味しいオチが2回あります!
お楽しみに!
グロテスクなシーンもありますが、大傑作サスペンスなので絶対観てほしいです。
シナリオが革命的なので、未鑑賞の人はぜひこの機会に!!
※以後ネタバレになりますので、まだ映画を観てない人注意してください!
映画『アイデンティティー』ネタバレ・ラスト結末
モーテルに集まったジョージやアリス、連れ子のティミーなどが次々に謎の殺人鬼に殺されていく。
エドやロードは真犯人を探そうとするが、なぜか死体や血が消えていた。
ついにエド、ロード、パリスの3人になった。
トラックのキーを奪おうとしたロードが怪しげな表情でパリスの方へ向かってくる。
パリスはエドに助けを求めた。
エドはロードと撃ち合う。2人とも死亡した。パリスだけが生き残った。
いっぽう再審議の現場で多重人格者のマルコムにほどこされていた処置が明らかになる。
それは、それぞれの頭の中の人格を集めて、消滅させていくものだった。
モーテルの連続殺人はマルコムのそれぞれの人格が集まった、マルコムの脳内での出来事だったのだ。
最高裁は凶暴な人格の囚人やロードが消滅したと判断。
マルコムは死刑停止となり、措置入院と治療が言い渡された。
(マルコムの移送中)脳内のパリスの人格は田舎の家の庭でモーテルの1号室の鍵を見つける。死んだはずの子供ティミーが現れ、パリスを殺害した。
ティミーこそが殺人者の人格であり、ティミーはモーテルでメンバーを次々に殺害しながら自分の死亡を偽装していたのだった。
現実では移送中のマルコムがティミーの人格に支配され、前の席にいたマリック医師を殺害した。
映画『アイデンティティー』終わり
映画『アイデンティティ』考察(ネタバレ)
それぞれの人格がマルコムの心の傷や願望を表現
モーテルに集まった人物たちが、多重人格者のそれぞれの人格だったという結末が面白い。
モーテルの主人は、売春婦を憎んでいるなど、登場キャラクターの性格はマルコムの生い立ちに関係しています。
ティミーが、両親と仲良くドライブしていたのは、悲惨な幼少期を送ったマルコムの願望の投影でしょう。
凶暴な人格は計3人いる
アイデンディティでモーテルに集まった人格のうち、凶悪な者は、輸送中の囚人、ロード、ティミー(子供)
マルコムの人格の11人中3人が凶悪な人格ってところが救えないですね。
冷凍庫で死んでいたのは?
今回の11人と別になりますが、恐らくティミーの本当の父親でしょう。(マルコムの母親は売春婦なので、現実世界でもパパと実際に会っていないと思いますが。)
死体を冷凍庫に保存しているということは、”憎んでいるが捨て切れない”という実父に対する想いだと考えます。
ティミー自体も2重人格?
完全な僕の仮説です。
ティミーが悲しい顔をしている場面が多々あるので、”普通の子ども”という側面と”殺人鬼”という側面を併せ持っていたと考えることもできると思います。(そうなると、人格の中の人格という複雑な感じになっちゃいますし、ちょっと無理矢理かな?)
ティミーは子どもなのになぜ大人たちを殺せるの?
ティミーは子どもですが、実際はマルコムの人格の一つで、モーテルでの事件も頭の中でのことなので、大きなパワーを持つこと不思議ではありません。
11人にはそれぞれの人生がある
モーテルにいる11人には、過去の記憶があり、未来についてもどうしていきたいか言及しているシーンがあるので、マルコムの頭の中にある世界で、別々の場所でそれぞれの人生を送っていたんだな〜としみじみ考えちゃいます。
11人は全く別の性格のようだが共通項も多い
娼婦のパリスと宿屋の主人のラリーが、終盤に打ち解けていく描写があることから、11人は性格的に共通する部分が多ととれると思います。
映画以外でも、多重人格にスポットを当てる際は、ビリー・ミリガンなどのように、パーソナリティーの違いに目がいきがちですが、別人格は心が傷を負ってできるものらしいので、似ている部分も多くあるのでしょう。
マルコムの目が泳いでいる理由
目がずっと泳いでいるのは、人格が複数あるからでしょう。これが伏線になっています。
最後の護送車の中での視点がブレている描写は、マルコムの中にまだ、売春婦パリスとティミーという2つの人格がいるからでしょう。
伏線:マルコムの幼少期
冒頭で、「マルコムは幼少期、売春婦だったママにモーテルで捨てられた」というシーンがあります。
このシーンがアイデンティティという映画全体の伏線となるのです。
→モーテルはマルコムの心の傷の根幹。映画の舞台がモーテルになっている理由です。
→パリスが売春婦で、ラリー(宿主)に罵られているのも、マルコムが売春婦に捨てられたことが繋がっています。
現実世界の傷が、頭の中の世界の人間関係を表しているって興味深いですよね。
映画『アイデンティティー』の謎
トランクの死体だけ残っている
終盤でみんなの死体が消えているというシーンがあり、
殺されたので、マルコムの頭の中から完全に人格が消えたということなのでしょうが、
その後に、最後にロードたちが乗って来たパトカーのトランクにも死体が入ってる描写があったので、
「この死体は消えねーのかよ!?」と思いませんでした?
ティミーがロードに罪を擦りつけるためにトランクに死体を入れたのでしょうけど、、、
この死体だけ消えなかったということは、マルコムの人格の中で、
ティミーがある程度主導権を持っていると考えることができるかもしれません。
マルコムの表に出ている人格は誰?
現実世界の会議室に引き戻されたシーンではじめてエドはモーテルが現実でないど気づくワケです。
モーテルでドタバタしている11人はここが現実世界でないと気づいていないので、少なくとも医師の人格を集めて争わせるという治療中は1回も目覚めていないわけです。
ということは、現実世界でマルコムを支配している人格が別にいるという可能性があります。
パターンとして、
- マルコム自身の人格は11人とは別に存在
- 11人とは別の人格は存在しない。(頭の中で争っている間は”トリップ状態”なので関係ない)
- 犯人のみ現実世界とリンクしている
この3つが考えられます。
マルコム自身の性格が存在するという線については、ラストの車でマルコムの輸送中、生き残ったパリスの人格で歌っているという描写があるので却下。
犯人(ティミー)が現実世界とリンクしているのであれば、現実の検察側などが見逃さなかったはずなので、この線もなし。
解答は→2の別人格は存在せず、争い中はトリップ状態”となります。
ここまで突っ込む必要はないかもしれないですねw
この辺は脚本上も曖昧だったのだと思います。
映画『アイデンティティー』がサスペンスとして上質な理由を解説
絶対に思い付かない多重人格のシナリオ
多重人格を頭の中で争わせるというシナリオは、普通の人では思いつかないでしょう。
たとえ考えたとしても、現実世界にスポットを当て、人格の切り替わりなどありきたりのことを表現しようとなれば、アイデンティティのような物語は絶対生まれないわけです。
物語の整合性を確かにするディティール
- マルコムが幼少期モーテルで捨てられた
- 各人物の言動がマルコムの心の傷を表している
こういった場面を差し込むことで、頭の中で起きている事件にリアリティと現実との関連性を強調しているのです。
ティミーが殺人鬼の設定
大人にパワーでもスピードでも劣る小さな子どもティミーが殺人鬼!
普通はありえない設定ですが、マルコムの頭の中の話なのでセーフ!
もし、モーテルの話が現実なら、子どもが大人を簡単に殺しまくるという無理な設定に興醒めしてしまいますが、アイデンティティは上手くその辺も計算して作られています!
車の爆発の後にみんなの死体が消えている
ティミーとジニー(女性が)裏手の車に乗り込んだ瞬間爆発というシーンのすぐ後に、
死体がない→今まで死んだ全員の死体が消えている!という流れなので、
ティミーがどこかに隠れているという選択肢が、観ている人の頭の中から完全に消えます。
よりラストを予想しにくくするために、計算してそうしたでしょう。アッパレ!
頭の中の出来事だった!というのがオチだと勘違いさせる
劇中でエド(ジョン・キューザック)が、弁護側と検察側に囲まれた現実で目覚める可哀想なシーンがあるが、視聴者はこれがオチだと思い、ラストにさらにびっくりするような構成になっていると思います。
まさに”オチの2度漬け”
モーテルの凄惨な出来事が実際の世界にも影響を与える
ティミーの人格が生きていて、パリスの人格を殺害。
現実世界では、マルコムが医師と運転手をを車の中で殺害します。
つまり、モーテルの出来事は現実に影響を及ぼす→モーテルでの出来事は限りなく現実に近いというリアリティを観ている人の頭に刷り込んでいるのです。
最後に感想まとめ
最後にアイデンティティのポスターをよく見てください。手のひらの4本の指が、人の形をしていることに気づいたでしょうか?
映画アイデンティティは、アイデアと細部まで徹底的にこだわった実現力がとても素晴らしい映画だとお分かりいただけましたでしょうか?
この映画について、僕の意見よりさらに深い考察とか、新しい意見をくれたらとても嬉しいです。
ぜひコメントしてください!
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