Netflix実写ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』は斎藤工演じる突然妊娠した男性が、パートナーや家族との問題、キャリアでの葛藤を乗り越えていく見応え抜群の作品!シーズン1は全8話です。
坂井恵理さんの同名原作マンガの実写化です(原作とドラマは内容が全然違います)。
ヒューマンドラマ・社会派として非常に完成度の高い、たくさんの人々に見てほしいドラマです。
押し付けがましい極端なフェミニズムや多様性ポルノになっていないバランス感覚も素晴らしい。
キャスト・作品情報・見どころ、ネタバレ感想・評価、男性妊婦からの多様性への問題提起と答え考察、シーズン1全10話ネタバレあらすじ解説を知りたい人向けに作品をわかりやすくレビュー・まとめています。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。好きな項目からどうぞ)
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Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』作品情報・キャストと演技の印象
英題:『He’s Expecting』
ジャンル:ヒューマンドラマ・社会派
監督:箱田優子/菊地健雄
脚本:山田能龍/岨手由貴子/天野千尋
原作:坂井恵理 漫画「ヒヤマケンタロウの妊娠」
配給:Netflix
原作漫画はオムニバス形式ですが、男性が妊娠する設定や桧山健太郎の名前など一部を除いてドラマ版では完全オリジナルストーリーが展開されます。
桧山健太郎|cast 斎藤工
©︎Netflix
桧山健太郎は、広告代理店に勤めるエリート。突然妊娠してしまい、キャリアの危機に葛藤すると共に、つわりで苦しむ。
斎藤工さんの演技は、男性妊婦として差別されてもそれほど動じないなど、激しい感情吐露をせず、自然体の演技が良かったです。
役作りのためにアーノルド・シュワルツェネッガーの映画『ジュニア』を観たそうですが、シュワちゃんみたいに大袈裟な演技ではないです。
その他の登場キャラ・キャスト
瀬戸亜季(健太郎のパートナー)|cast 上野樹里
智子(健太郎の母)|cast 筒井真理子
宮地(男性妊婦)|cast 宇野祥平
のりこ(宮地の妻)|cast 山田真歩
大杉部長(健太郎の上司)|cast 岩松了
田辺(健太郎の部下)|cast 細川岳
病院の先生|cast 高橋和也
Netflix『ヒヤマケンタロウの妊娠』ネタバレなし感想・あらすじ・見どころ・海外評価
©︎Netflix
あらすじ:広告代理店のエース・桧山健太郎は、パートナーの亜季と性行為をしたことで突然妊娠してしまう。男性妊婦はまだまだ少なく、会社や社会の目線は冷たい。健太郎は出産しようかどうしようか悩むが…。
内容ゼロの『金魚妻』のあとに本作のような男女平等の問題など社会的なメッセージがありつつ、笑って泣ける素晴らしいNetflix日本ドラマが出てきて安心しました。
日本のドラマに不足しがちな社会問題テーマが嫌味なく提示されているのも素晴らしい。見る価値ありです!
気持ち悪いシーンやエロシーンもなく、家族で視聴OK。
各話25分×全8話なので一気見できますよ。
宗教的にデリケートな話題でもあるせいか、ドラマの完成度に比較して海外の評価は異様に低いです…。
おすすめ度 | 85% |
社会的なメッセージ性 | 90% |
ストーリー | 82% |
IMDb(海外レビューサイト) | 2.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 一般視聴者 22% |
※以下、Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『ヒヤマケンタロウの妊娠』ネタバレ感想・評価
男性が自然妊娠するというフィクションを軸に、日本や世界が抱える多様性についての様々な問題が展開され、“自分らしさ”という普遍的なテーマに帰結する素敵な作品でした。
ストーリーに解決感があり、問題提起だけでなくひとつの答えを提示している点も素晴らしいです。
シリアスなだけではなく、ところどころコメディテイストで、問題解決の山場もあり、ドラマのストーリー自体が面白いのも高ポイント!
考察:男性妊婦という多様性の究極形(ネタバレ)
今作の素晴らしかったところは、問題提起が男性妊婦だけではなかったところ。
ある意味で多様性の究極形ともいえる男性妊婦の葛藤を描くことで、それ以外のさまざまな社会問題をもう1段深い場所から見つめることができたのが画期的でした。
男女の決定的な違いである出産能力も中立にし、社会の前提をひっくり返っています。観ているこちら側の色眼鏡が外されたようで、よくある男女差別などについても違った視点が得られるのです。
男性妊婦というテーマを通して、妊娠とキャリア、性差別、シングルマザー、マチズモ(男性らしさ)、ダメ親父、車中泊のノマド民など、男女差別だけでなく、あらゆる問題を描き、見つめ直すことができるドラマでした。
多様性を押し付けないリアリティ
リアリティのある結論
ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』に引き込まれた理由は、多様性の押し売りになっていない点も大きいです。
多様性を認めろという議論では、“多様性を認めないことも認めなくてはならない”という二律背反が起こります。
言葉遊びみたいですが、価値観が人それぞれだという意味では本質を突いています。
よく映画やドラマであるのが、「多様性を認めないのは悪」「差別はなくすべき」「個性・多様性は素晴らしい」という浅い結論で終わるパターンです。
現実に置き換えられず、学びがありません。
ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』ではそういった多様性の無理強いがなく、「それぞれのペースで、少しずつ気づいていけばいい」とストーリーを通して教えてくれるのです。
パートナーである亜季が仕事でシンガポールと日本を行き来しながら、健太郎と協力しあって子育てする“誰も犠牲にならない生き方”が明示されました。
誰もが差別をする側でもある
健太郎が亜季に母親らしさを求めるなど、男性妊婦として差別される側でありながら、固定観念を持ってある種の差別する側でもあると伝えている点もリアルです。
また『ヒヤマケンタの妊娠』では男性妊婦を差別する亜季の両親などを明らかな“悪者”として描いていません。
亜季やのり子(男性妊婦・宮地の妻)も、逆差別的な発言を普通にします。
価値観の違いがあれば誰でも差別する側になるという大事な前提があるのです。差別する側 VS される側という単純な二項対立になってはいません。
「多様性は大事だ!」というのはもちろん正論ですが、実際は“社会がどの程度理解するか”という前提があります。
差別の問題提起がマジョリティの許容のうえに成り立っている事実が忘れられがちです。
今顕在化している黒人差別やLGBTQ問題だけを理解しようとすると、社会に隠れている様々な差別に気づけず、見逃します。
大規模な社会運動も大事かもしれませんが、自分が差別する側でもあり、だからこそ違う価値観を認めようと考えることも同じように大事です。
『ヒヤマケンタロウの妊娠』からは大切なメッセージを教わりました。
米倉涼子主演で話題になったネトフリ版『新聞記者』よりも、テーマ性・メッセージ性ともに価値がある作品だったと思います。
↓Netflix『ヒヤマケンタロウ』のストーリーあらすじ・最終回の結末解説は2ページ目へ↓
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