Netflix実写ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』は斎藤工演じる突然妊娠した男性が、パートナーや家族との問題、キャリアでの葛藤を乗り越えていく見応え抜群の作品!シーズン1は全8話です。
坂井恵理さんの同名原作マンガの実写化です(原作とドラマは内容が全然違います)。
ヒューマンドラマ・社会派として非常に完成度の高い、たくさんの人々に見てほしいドラマです。
押し付けがましい極端なフェミニズムや多様性ポルノになっていないバランス感覚も素晴らしい。
キャスト・作品情報・見どころ、ネタバレ感想・評価、男性妊婦からの多様性への問題提起と答え考察、シーズン1全10話ネタバレあらすじ解説を知りたい人向けに作品をわかりやすくレビュー・まとめています。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。好きな項目からどうぞ)
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Netflix『ヒヤマケンタロウの妊娠』ネタバレなし感想・あらすじ・見どころ・海外評価
©︎Netflix
あらすじ:広告代理店のエース・桧山健太郎は、パートナーの亜季と性行為をしたことで突然妊娠してしまう。男性妊婦はまだまだ少なく、会社や社会の目線は冷たい。健太郎は出産しようかどうしようか悩むが…。
内容ゼロの『金魚妻』のあとに本作のような男女平等の問題など社会的なメッセージがありつつ、笑って泣ける素晴らしいNetflix日本ドラマが出てきて安心しました。
日本のドラマに不足しがちな社会問題テーマが嫌味なく提示されているのも素晴らしい。見る価値ありです!
気持ち悪いシーンやエロシーンもなく、家族で視聴OK。
各話25分×全8話なので一気見できますよ。
宗教的にデリケートな話題でもあるせいか、ドラマの完成度に比較して海外の評価は異様に低いです…。
おすすめ度 | 85% |
社会的なメッセージ性 | 90% |
ストーリー | 82% |
IMDb(海外レビューサイト) | 2.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 一般視聴者 22% |
※以下、Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』のストーリーネタバレありなので注意してください!
『ヒヤマケンタロウの妊娠』ネタバレ感想・評価
男性が自然妊娠するというフィクションを軸に、日本や世界が抱える多様性についての様々な問題が展開され、“自分らしさ”という普遍的なテーマに帰結する素敵な作品でした。
ストーリーに解決感があり、問題提起だけでなくひとつの答えを提示している点も素晴らしいです。
シリアスなだけではなく、ところどころコメディテイストで、問題解決の山場もあり、ドラマのストーリー自体が面白いのも高ポイント!
考察:男性妊婦という多様性の究極形(ネタバレ)
今作の素晴らしかったところは、問題提起が男性妊婦だけではなかったところ。
ある意味で多様性の究極形ともいえる男性妊婦の葛藤を描くことで、それ以外のさまざまな社会問題をもう1段深い場所から見つめることができたのが画期的でした。
男女の決定的な違いである出産能力も中立にし、社会の前提をひっくり返っています。観ているこちら側の色眼鏡が外されたようで、よくある男女差別などについても違った視点が得られるのです。
男性妊婦というテーマを通して、妊娠とキャリア、性差別、シングルマザー、マチズモ(男性らしさ)、ダメ親父、車中泊のノマド民など、男女差別だけでなく、あらゆる問題を描き、見つめ直すことができるドラマでした。
多様性を押し付けないリアリティ
リアリティのある結論
ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』に引き込まれた理由は、多様性の押し売りになっていない点も大きいです。
多様性を認めろという議論では、“多様性を認めないことも認めなくてはならない”という二律背反が起こります。
言葉遊びみたいですが、価値観が人それぞれだという意味では本質を突いています。
よく映画やドラマであるのが、「多様性を認めないのは悪」「差別はなくすべき」「個性・多様性は素晴らしい」という浅い結論で終わるパターンです。
現実に置き換えられず、学びがありません。
ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』ではそういった多様性の無理強いがなく、「それぞれのペースで、少しずつ気づいていけばいい」とストーリーを通して教えてくれるのです。
パートナーである亜季が仕事でシンガポールと日本を行き来しながら、健太郎と協力しあって子育てする“誰も犠牲にならない生き方”が明示されました。
誰もが差別をする側でもある
健太郎が亜季に母親らしさを求めるなど、男性妊婦として差別される側でありながら、固定観念を持ってある種の差別する側でもあると伝えている点もリアルです。
また『ヒヤマケンタの妊娠』では男性妊婦を差別する亜季の両親などを明らかな“悪者”として描いていません。
亜季やのり子(男性妊婦・宮地の妻)も、逆差別的な発言を普通にします。
価値観の違いがあれば誰でも差別する側になるという大事な前提があるのです。差別する側 VS される側という単純な二項対立になってはいません。
「多様性は大事だ!」というのはもちろん正論ですが、実際は“社会がどの程度理解するか”という前提があります。
差別の問題提起がマジョリティの許容のうえに成り立っている事実が忘れられがちです。
今顕在化している黒人差別やLGBTQ問題だけを理解しようとすると、社会に隠れている様々な差別に気づけず、見逃します。
大規模な社会運動も大事かもしれませんが、自分が差別する側でもあり、だからこそ違う価値観を認めようと考えることも同じように大事です。
『ヒヤマケンタロウの妊娠』からは大切なメッセージを教わりました。
米倉涼子主演で話題になったネトフリ版『新聞記者』よりも、テーマ性・メッセージ性ともに価値がある作品だったと思います。
ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』全8話ネタバレあらすじ解説
第1話「エリート社員健太郎が男性妊婦に」
広告代理店のエリート・桧山健太郎は、女性アスリートの美ボディをさらけ出したCMで案件を勝ち取った。
夜は体の関係のあるたくさんの女性の一人の瀬戸亜季といつものように性行為をする。
後日、健太郎は体の障害やセクシャルマイノリティ向けに多様性のコンセプトを打ち出したプレゼンで、大手企業UNIVEの契約を勝ち取った。
そんな中、吐き気がすごいので病院へ行くと、まれにある男性妊娠だと言われ、妊娠9〜10週目だと診断されてパニックに。
第1話 終わり
第2話「つわりでキャリアの危機」
会議中に射乳反射で乳首が濡れてしまう健太郎。つわりで甘いものしか食べられなくなる。
健太郎はキャリアのために胎児を堕そうと考える。亜季が少し考えたいと言うと「傷ついてリスクを負うのは俺」と怒鳴り返した。
会社にいてもつわりで仕事にならず、健太郎のプロジェクトは後輩の田辺に譲られることに。健太郎は雑用ばかりさせられる。
第2話 終わり
第3話「健太郎の決意」
ホルモンバランスが崩れ、ヒゲが濃くなる健太郎。病院で同じく男性妊婦の宮地と出会う。
宮地の家庭は1度目は妻のりこが、妊娠し出産。健太郎は宮地の存在に勇気をもらい、彼の息子を見て心が揺れる。
会議で、田辺の企画が大手企業UNIVEからダメ出しを喰らう。
健太郎は立ち上がり、男性妊婦として多様性を打ち出すための広告塔になると宣言した。
第3話 終わり
第4話「男性妊婦ブーム」
男性妊婦・健太郎はSNSでバズり、連日トップニュースに。宮地と男性妊婦向けのオンラインサロンを立ち上げる。しかし、遊び相手の女性・リナから「お母さんは恋愛対象じゃない」と言われ、男性妊婦差別を実感。
シングルマザーとして健太郎を女でひとつで育ててくれたタクシー運転手の母・智子も、健太郎が男性妊婦ということで世間体を気にしているようだ。
健太郎はサロンのオフ会でたくさんの男性妊婦と出会い、たくさんのことを学んだ。胎動を経験し、喜ぶ健太郎。
そんな中、宮地が流産し、健太郎は言葉をかけられなかった。
さらに、子育ては一緒にするが結婚はしないという亜季と価値観の違いで喧嘩になる。
第4話 終わり
第5話「宮地の悲劇」
健太郎は出産後も密着取材したいという会社の勝手な企画に激怒。しかし、部長や社長にほだされ、涙を流してみんなに感謝する。
亜季は妹の結婚式の後、両親にパートナーが男性妊婦だと告白すると、「まともではない」と返され、怒って東京へ帰る。
健太郎は亜季と電話で仲直りし、彼女を迎えに行く。しかし亜季からまた「子育ては一緒にするけど、結婚はしない」と言われる。
結婚の形も多様性の時代ですね。
第5話 終わり
第6話「死んだはずの父も男性妊婦!」
連日ニュースで取り上げられている健太郎を見て、父・栄一(リリー・フランキー)がマンションにやってくる。
連絡を受けた智子がやってきて、栄一をぶん殴った。
実は、栄一も元男性妊婦で健太郎を出産していたことが発覚!
栄一はしばらくは母・智子と一緒に仕事や子育てを頑張っていたが、当時は世間からの男性妊婦差別がひどく逃げ出してしまったという。
そんな中、亜季はライターとしてシンガポールで芸術祭を取材する大仕事を依頼されるが、向こうで2年暮らさなければならないため、育児ができないと悩む。
栄一は男性用の吸水パンツを提案し、健太郎も新規事業に乗り気になる。しかし栄一はサロンの仲間から金を集めてトンズラした。
第6話 終わり
第7話「“らしさ”とは何か?」
父・栄一の詐欺について、健太郎はサロンメンバーに謝罪。その事件を知り、世間の矛先は広告塔だった健太郎にも向かった。
亜季はライターとしてシンガポールへ行くことを決断し、健太郎もそれを支持。
流産のショックから立ち直った宮地が、乳漏れパッドを届けにやってきた。
健太郎はパチンコ屋の廃墟で車中生活をしている栄一を発見し、問い詰めた。金を返し、悲しそうに当時受けた差別を話す栄一を見た健太郎は、彼も犠牲者だと理解する。
健太郎は、父・栄一の詐欺事件の釈明記者会見を行う。記者から男性妊婦らしさというワードが出てきて「思いがけない何かが起こったとき、どう対処するかがその人らしさだ」と語気を強めた。
健太郎は、容体が悪化して会見上で倒れる。
テレビで会見を見ていた亜季は、飛行機に乗らず、病院へ向かう。
第7話 終わり
シーズン1最終回 第8話「新しい形」
栄一は智子と病院へ向かう。亜季もやってきた。
健太郎に帝王切開が行われ、早産だが新しい命が生まれた。男の子だ。名前を幸(こう)と名付けた。
健太郎は会社で育休を取得。育児で自分も成長できるので、育休は決してキャリアの下方修正ではないと気づく。
はつらつとする健太郎を見て、田辺が圧倒されている。
数ヶ月は2人で子育てを頑張り、亜季はシンガポール行きをやめようかと言う。健太郎は「誰も犠牲にならなくていい」と答えた。
健太郎は電車でつらそうな男性妊婦に席を譲る女子高生を見つけた。
社会が少しずつ変わり始めた芽吹き!ラストも美しいです!
Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』シーズン1最終回 第8話終わり
Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』作品情報・キャストと演技の印象
英題:『He’s Expecting』
ジャンル:ヒューマンドラマ・社会派
監督:箱田優子/菊地健雄
脚本:山田能龍/岨手由貴子/天野千尋
原作:坂井恵理 漫画「ヒヤマケンタロウの妊娠」
配給:Netflix
原作漫画はオムニバス形式ですが、男性が妊娠する設定や桧山健太郎の名前など一部を除いてドラマ版では完全オリジナルストーリーが展開されます。
桧山健太郎|cast 斎藤工
©︎Netflix
桧山健太郎は、広告代理店に勤めるエリート。突然妊娠してしまい、キャリアの危機に葛藤すると共に、つわりで苦しむ。
斎藤工さんの演技は、男性妊婦として差別されてもそれほど動じないなど、激しい感情吐露をせず、自然体の演技が良かったです。
役作りのためにアーノルド・シュワルツェネッガーの映画『ジュニア』を観たそうですが、シュワちゃんみたいに大袈裟な演技ではないです。
その他の登場キャラ・キャスト
瀬戸亜季(健太郎のパートナー)|cast 上野樹里
智子(健太郎の母)|cast 筒井真理子
宮地(男性妊婦)|cast 宇野祥平
のりこ(宮地の妻)|cast 山田真歩
大杉部長(健太郎の上司)|cast 岩松了
田辺(健太郎の部下)|cast 細川岳
病院の先生|cast 高橋和也
最後のまとめ
斎藤工主演のドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』は、男性妊婦の奮闘を描くことでさまざまな社会問題にスポットを当てることに成功した傑作!
日本のNetflix作品として世界に配信されるにふさわしい完成度・メッセージ性の高い作品でした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『ヒヤマケンタロウの妊娠』レビュー終わり!
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