映画『DROP/ドロップ』ネタバレ考察ラストの意味,男の支配から抜け出せ!2025ブラムハウス

  • 2025年7月11日

サスペンス映画『DROP/ドロップ』(2025)

サスペンス映画『DROP/ドロップ』(2025)を鑑賞。

ホラー・サスペンス映画界隈ではお馴染みの制作会社ブラムハウス(『ゲット・アウト』『M3GAN ミーガン』)が制作。

『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ『ハッピー・デス・デイ』シリーズ
『ザ・スイッチ』などのホラー作品を手がけたクリストファー・B・ランドンが監督を務める。

映画『DROP/ドロップ(2025)』あらすじ

数年前、心理カウンセラーのヴァイオレットは夫のブレイクからひどいDVを受けていた。夫のブレイクから殴られ、床に叩きつけられ、最後には銃を向けられる。

気がおかしくなったブレイクは、ヴァイオレットに銃を渡し「これで俺を撃て」と言う。ヴァイオレットは引き金を引こうとするが…。

それから数年後の現在。

ヴァイオレットは夫・ブレイクから離れ、息子のトビーと共に平穏に暮らしていた。

ヴァイオレットは心理カウンセラーで、今では実体験をもとに、DV被害を受けた女性を助ける仕事をしている。

ヴァイオレットはマッチングアプリで、ヘンリーという写真家と知り合う。今日はヘンリーとビルの高層階にあるレストラン・パレートで初デートの約束をしていた。

ヴァイオレットは息子のトビーを妹のジェンに任せてレストランに向かう。

ヴァイオレットはレストランに先に入り、バーテンのカーラや、自分と同じように今日が初めてのブラインドデートだと言う初老の男性・リチャードとおしゃべりした。

ヴァイオレットはヘンリーと会い、挨拶をかわす。2人は食事を注文をしようとする。

ヴァイオレットの携帯が鳴る。DigiDrop(デジドロップ)という機能(周囲にいる人間と情報を共有できるAirdropのような機能)で「ヴァイオレットを拷問する?他人を拷問する?」とメッセージが送られてきた。

ヘンリーは「ドロップを使った悪戯だ。ドロップは半径15mだから、このレストランの中にいる犯人を探そう」という。

しかし、ヴァイオレットの携帯には「指示に従わないと息子を殺す。ヘンリーや他の人にこのことを相談しても息子を殺す」と書かれていた。

ヴァイオレットが自宅にある監視カメラの映像をスマホで確認してみる。

自宅に覆面をかぶった男がいた。指示に従わなければ本当に息子が殺されるかもしれない。

ドロップには“ヘンリーのカメラからSDカードを奪って破棄しろ”という命令文が載せられていた。

ヴァイオレットは指示に従いながらも、このレストラン半径15メートル内にいる犯人が誰なのかを突き止めようとする。

ネタバレなしの感想

半径15m以内に犯人がいるほぼワンシチュエーション映画。スマホのドロップ機能を古典スリラーに組み込んだプロットが面白い

ただ、ワクワクの犯人探しが始まると思いきや、主人公・ヴァイオレットはレストラン内にいる犯人に監視されているため、何かしようとするとすぐにバレる。

謎解きはほとんどなく、ヴァイオレットがどうにか時間稼ぎをする描写が主なため、そこが好みの別れ目だろう。

個人的には若干の物足りなさがあった。

トラウマを解消しようとするサスペンススリラー王道のテーマは巧く描かれていた。

映画『DROP/ドロップ』(2025)ネタバレ・ラスト結末解説

「息子の命は犯人たちの手中にある…」

ヴァイオレットはヘンリーが席を外した際に彼らのカバンにあったカメラを確認。
市長が横領している書類の証拠写真が残されていた。

ヴァイオレットはSDカードを抜き、トイレで粉々に砕いて破棄する。

ヘンリーは挙動不審なヴァイオレットを見て子供が心配なのかと考え「デートを諦めて帰ろう」と提案。

“計画を遂行できなければ息子を殺す”と脅されているヴァイオレットはヘンリーにキスをして彼を引きとめた。

ヴァイオレットにさらなる命令が送られてくる。“トイレに隠されていた薬をヘンリーに飲ませ、彼を殺せ”というのだ。

ヴァイオレットは仕掛けられた盗聴器を利用して犯人に「そんなことはできない」と言うが、自宅の監視カメラの映像を見ると妹のジェンが覆面の男に殴られている。妹と息子の命が危ない。

ヴァイオレットはチップに自宅の住所を書いてピアノを弾いている男性に渡す。しかし男性は倒れて死亡した(犯人に毒をもられた)。

ヴァイオレットは仕方なくヘンリーのテキーラに薬を入れる。

ヴァイオレットはウェイターから、常連の女性がいつもと違う席に座っていること、常連の女性がいつも座っている席にリチャードが座っていること。リチャードは女性とデートしているにもかかわらずずっとヴァイオレットを見つめ、スマホをいじっていたことを聞かされた。

バーで最初に会った男性・リチャードこそが犯人だった

ヴァイオレットはヘンリーが席を立っているときにリチャードのところまで行き、なぜこんなことをするのか尋ねた。

リチャードは市長からの依頼で、不正の証拠をつかんだヘンリーをヴァイオレットに殺させるつもりだった

リチャードは君は前に夫を殺している。ヘンリーが死んだらみんな君のせいだと考える」と笑う。ヴァイオレットは「夫のブレイクは自殺だった」と話す

サスペンス映画『DROP/ドロップ』(2025)犯人のリチャード

©︎ブラムハウス

ヴァイオレットは仕方なくリチャードの前でヘンリーに毒入りのテキーラを飲ませた。

しかし、ヴァイオレットはテキーラに毒を入れたふりをしてリチャードのパンナコッタに毒を入れていた。

リチャードは苦しそうな表情でヴァイオレットを撃とうとする。ヘンリーがヴァイオレットをかばって撃たれた。

リチャードはヴァイオレットの自宅にいる覆面の男に電話をかけ「息子のトビーを殺せ」と命令。

ヴァイオレットはレストランの窓を割り、リチャードは外に墜落して死亡する。

ヴァイオレットは急いで自宅に帰る。息子のトビーは覆面の男から逃げていた。ジェンは男を倒そうとして撃たれ、気絶している。

男は覆面を脱いだ。ヴァイオレットは銃で男を撃ち、彼を倒した

その後、ヘンリーは病院に入院。ヴァイオレットがお見舞いをして、二人は二回目のデートの約束をした。

映画『DROP/ドロップ』(2025)考察

最後に自宅にいた犯人が覆面を脱ぐ。そこでヴァイオレットはハッとなる。

ヴァイオレットは夫・ブレイクが息子・トビーに銃を向けたときに何もできなかった過去がある。そのトラウマを思い出したのだとわかった。

覆面男を撃ち殺すシーンは、ヴァイオレットの過去のトラウマ払拭の意味合いがある

ヴァイオレットは自ら動いて息子のトビーの命を救ったのだ。

ヴァイオレットは犯人(リチャード)からずっと命令されていたが、これは男性に命令されて動く受動的な女性を表現している。

映画『DROP/ドロップ』は男性による支配からの脱却を描いた作品だと感じた。

また、数年前に夫のブレイクは最終的に自殺だったにもかかわらず銃に指紋があったためヴァイオレットが夫を殺したと世間から疑われていた。

これは客観的な意見がどうしても乏しくなるDVトラブルの問題を提示した設定だと感じた。

NYタイムズに夫を殺したが正当防衛が認められず終身刑を受けた女性アニタ・フォードの記事がある

アメリカでは3人に1人がなんらかのDV被害を受けているとも言われている。だからこそ、被害を受けた側の女性が身を守るために相手を攻撃し、問題になるケースも多いのだろう。そんな社会問題が提起されていた。

映画『DROP/ドロップ』(2025)感想と評価

設定が巧みな部分とそうでもない部分が混在する微妙なタイプの作品だった。

ドロップを使って犯人が脅迫文を送ってくる→レストランの半径15メートル以内に犯人がいる!という設定は面白いんだけども。。

犯人がすぐそばで監視していることもあり、さらには盗聴器も仕掛けられているので主人公のバイオレットができることが非常に限られていた。個人的にそこにストレスを感じてしまった

チップの紙幣に危機的な状況書いてピアニストに渡した以外は、“ヘンリーを殺せ”という命令をただ先延ばしにすることに終始していた

犯人がブラインドデートをしていたはずの初老の男性・リチャードだと分かった推理過程についてもあっさりしすぎ。

常連客がいつも座っているはずの席をリチャードがあえて予約していることから、監視しやすい席を選んだ彼が犯人だとわかるシンプルな展開。

さらにウェイターによるとリチャードがバイオレットをジロジロ見ながらずっとスマホをいじっていたことまで分かる。実質は席の予約うんぬんの推理部分ではなくリチャードの不審な行動から彼が犯人だと見抜けたはずである

もちろんバイオレットがずっと変な真似をするなとAirDropのメッセージで脅されていたので何もできなかったのは分かるし、リチャードには相手の女性がいるのでハナから疑わなかったのはわかる。

それでも、もう少し早く犯人を探せたのでは?と思ってしまった。

また、ヘンリーはヴァイオレットがDropで変なメールが送られてきたのをわかっているのに、Dropでの脅迫に気がつかないのも少し不自然。 その点が1番気になった。

個人的にはバイオレットとヘンリーが協力して犯人の正体を推理するみたいな展開を期待していた。

ミスリード要員の行動も表面的で、こいつが犯人では!?とワクワクしながら疑う要素がなかった。スマホをずっといじっている男は明らかにミスリード要員だし、クセのあるウェイターはただうざいだけで明らかに違いそうだし、常連客の女性は会話に一切登場しないので犯人じゃなさそう…ピアニストも途中退場。そう考えるとヘンリーとリチャードの二択になる。

女性とデートをしていたお茶目な初老男性・リチャードが犯人だったという部分は確かに驚きだが、他の登場人物の動向で不審な部分をもっと多く入れたほうがサスペンス的なカタルシスが増したように思える。シンプルに他のキャラクターに特に思い入れがない。

あとは個人的には高級レストランなのに主人公のバイオレットが料理を食べる描写がほとんどなかったのが残念だった。せっかくだから豪華な料理をもっと目で見て楽しみたかった。

まとめると、映画『Dropドロップ』は楽しめなかったわけじゃないけど個人的にはどこかカタルシスにかける作品だった。

主人公のバイオレットがもう少し主体的に動けたらもっとよかったと思う。ただ、ヴァイオレットが男性に命令されて動く受動的な存在から抜け出す過程が描かれたテーマから考えると、この展開しかなかったのかとも思う。

結構文句を書いてしまったが、映画の完成度としては悪くはないと思った。

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