映画『ボーは恐れている』のあらすじネタバレ解説と正直な感想レビュー!
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映画『ボーは恐れている』作品情報
制作国:アメリカ
上映時間:2時間59分
原題:『Beau Is Afraid』
ジャンル:ホラー、コメディ、不条理サスペンス
年齢制限:R15+(15歳以上)
監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
撮影:パヴェウ・ポゴジェルスキ
音楽:ボビー・クーリック
制作:A24|スクエア・ペグ
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キャスト
ボー|castホアキン・フェニックス
ボーの母・モナ|cast パティ・ルポーン
心理カウンセラー|cast スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン
グレース|cast エイミー・ライアン
ロジャー|cast ネイサン・レイン
トニ|cast カイリー・ロジャース
ジーヴス|cast ドゥニ・メノーシェ
映画『ボーは恐れている』あらすじ
道端に死体が転がっている治安の悪い地域で1人暮らしをする中年男性・ボー(ホアキン・フェニックス)。
ボーは母との関係にトラウマがあり、毎週月曜日はカウンセラーのところへ通っている。カウンセラーは新しい薬を処方した。
明日は父の命日なので、母・モナがいる実家に向かわなければならない。
しかし夜中に隣人から怒鳴られ、「音楽を消せ」というメモを何度もドアの下から入れられ(ボーは音楽をかけていない)、なかなか眠れなかった。
ボーは寝過ごしてしまい、急いで空港へ向かおうとする。しかし部屋の鍵を何者かに盗まれてパニックになった。
母に電話して「飛行機に乗れない」というと電話を切られた。
ボーは新しい薬を飲むが、アパートが断水で水がない。ネットで検索すると、水なしでこの薬を飲むと死んでしまうらしい。
ボーはアパートを出て近所の店へ急ぎ、水を飲んだ。
しかしボーが店にいる間に、ボーの部屋に近隣をうろつく危険な人々が上がり込んでしまう。その人たちはボーの部屋で好き勝手し出した。ボーは建物補修の足場から自分の部屋を眺める。
翌日、ボーは恐る恐る部屋に戻ってみる。部屋のドアのまえで全身イレズミの男性が死んでいた。
ボーは母・モナに電話する。男性が出て、「あなたの母・モナらしき女性が落ちたシャンデリアに頭をはさまれて死んでいる」と聞かされる。
ボーは悲しみでパニックになるが、落ち着いて風呂に入る。風呂に浸かりながら上を見ると、変な男性が壁にしがみついていた。
男性がバスタブに落ちてきた。ボーと男性はびしょ濡れでもみ合いになる。
ボーは裸で外へ飛び出し、車に轢かれてしまった。
ボーが目を覚ますと、グレースという女性の家だった。彼女がボーを轢いてしまったらしい。夫のロジャーが外科医だからあなたを治療したと言う。
ボーは「母の葬式があるから実家へ送ってくれ」と言う。グレースは「この家は監視されている」と耳打ちするのだった。
※以下、映画『ボーは恐れている』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『ボーは恐れている』ネタバレあらすじ解説
グレース家での悪夢
グレースと夫で医者のロジャーは、ボーを異様に献身的に看病してくれた。夫妻の長男・ネイサンは軍人だったが戦争で死亡したようだ。
長女のトニは、自分の部屋のベッドに寝ているボーをいまわしく思った。
グレースの家にはジーヴスという軍人も住んでいた。ジーヴスはネイサンと同じ舞台の英雄だが、神経をやられてしまったのだ。
ボーは母・モナの弁護士に電話。すると「あなたが来るまで葬式は延期されている」と聞かされて、パニックになる。
ボーはロジャーに「実家まで送ってほしい」と頼むが、ロジャーに「手術があるから明日以降」と言われる。
ボーは夢で少年期の回想をする。母と豪華客船に乗り、エレインという少女に出会って恋をしたが、お互いの親に引き離された。
トニとその友だちがボー送っていくと言って車に乗せ、マリファナを吸わせる。トニが運転する車は結局家に戻ってきた。ボーはからかわれていただけだった。
グレースは「78チャンネルを付けてみろ」とボーに耳打ちする。テレビにボーの監視映像が映った。ボーは監視されていたのだ。
トニはボーの滞在に耐えられなくなって怒り狂い、ボーを死んだ兄の部屋に連れてきて「壁にペンキを塗りたくれ」と言う。そしてボーが止めるのも聞かず、トニはペンキをがぶ飲みして死亡した。
トニが死んだのを見たグレースはボーのせいだと思い、ジーヴスに「ボーを八つ裂きにしろ」と命令。
ボーは屋敷から脱出し、森の中を走り、木の枝にぶつかって気絶した。
森の孤児たち
ボーが目を覚ますと、森で妊婦に出会う。彼女は森の孤児だちという集団に所属しているらしい。
森の孤児たちが劇をはじめる。主人公が両親の墓のまえで泣き、旅立ちを決意した。
ボーは自分のことが語られていると思い、脳内で劇に入り込んで妄想を繰り広げる。
劇の主人公となったボーは冒険の末に最愛の妻を見つけ、3人の息子が生まれる。
しかしその後、嵐と大洪水にあい、ボーは家族と引き離された。
ボーは生涯をかけて家族を探し、年老いて死ぬ直前にやっと3人の息子を見つけて抱き合う。
しかし(母親に言われた)あなたの父の家系は代々性行為をした直後に死ぬという話を思い出した。自分は妻と性行為をしていないはずだ。どうやって息子を作ったのか…。
ボーはそこで正気にかえった。
変わった男性が「以前、君が小さい頃に世話をしていた」と話しかけ、去っていった。ボーは彼がパパだと思い込んだ。
そこへボーを追ってきたジーヴスが到着し、マシンガンで人々を殺しまくる。
ボーは逃げた。
ラスト結末:母の狂気
ボーはなんとか実家にたどり着く。葬式はすでに終わっていた。シャンデリアに頭を潰された母の首なし死体の前でボーは泣く。
エレインという中年女性が夜に葬式に来た。ボーが少年の頃に船で出会った最愛の女性だ。
ボーとエレインは母の寝室で性行為をする。ボーは果てた瞬間に死ぬと思ったが、生きていた。
しかし代わりにエレインが腹上死。
母・モナが出てきた。彼女は生きていたのだ。
モナはボーに向かって、母の葬式の直後に他の女と性行為をしたことを責めた。
ボーが実家に戻ってこないことに怒ったモナは、家政婦・マーサを殺して自分の死を偽装し、ボーを苦しめようと計画したのだ。
ボーは「父さんについて真実を知りたい」と言う。モナは屋根裏に上がれと言った。
ボーはそこで、老人となった自分の父を見る、彼は突然巨大な男性器に変化した。
ボーを追ってきたジーブスが巨大な男性器に襲いかかる。しかしジーヴスは男性器の触覚に頭を割られて死亡した。
ボーは階下へ逃げ、母の首を締めた。母は倒れる。
ボーは晴れ晴れとした気分で海にあるボートに乗り、エンジンをかける。しかし沖に出たところでエンジンは空回りし、巨大なドームと観客席に囲まれた。
ボーの母親と検察が証言台に現れ、ボーが幼い頃に母親にしでかした小さな罪を並べ、責めたてた。
ボーは反論するが有罪になる。ボートは転覆し、ボーは沈んで溺れ死んだ。
母親が息子を断罪して子宮に沈めるような心理的にグロい結末に脱帽!
ドームの観客たちが帰っていく。
映画『ボーは恐れている』終わり
映画『ボーは恐れている』ネタバレ感想と評価レビュー
すべてがホアキン・フェニックス演じる主人公・ボーの妄想のようなストーリーの中に、過去の回想や劇中劇まで入ってくる複雑な構造です。
映画として割と画期的だという点は評価できますし、ぶっ飛んだシーンの数々も面白かったので個人的には割と好きでした。
ただ不満点もけっこうあります。そこも正直に語っていきます。
ひどいと言われる理由、グロさの質
ホラーでも不条理サスペンスでも、普通の映画の場合はなんらかのカタルシスがあります。
本作でカタルシスの代わりとなっているのは不安感です。
グロテスクな表現や不快な表現がなんらかの気持ちよさに昇華されるのではなく、そのまま不快さを受け入れさせられるという…。
また、さまざまなアングルからの暗喩がふくまれていたせいで、詰め込み感がすごかったです。
しっかり意味が込められているシーンもあれば、アリ・アスター監督のコメディセンスとノリでやっているような部分もあり、その2つが混在している印象を受けました。
特に近年の日本ではわかりやすい映画が多いこともあり、そんな中で『ボーは恐れている』が受け入れられるかは微妙でしょう。製作費60億円弱と比較して世界での興行収入は20億円強と惨敗しています。
本作は『未来世紀ブラジル』や『アンダー・ザ・シルバーレイク』のように完全に不条理な作品と、抽象的に考えればメッセージが浮かんでくる系との中間のような立ち位置だったと思います。
不条理だけど意味があるという部分について、デヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』や『ツインピークス』などに近いですが、決定的な違いもあります。
『マルホランド・ドライブ』などが「意味がわからなくてグロいけどなんか高揚感があって気持ちいい!」のに対し、『ボーは恐れている』はその逆…「意味がわからなくてグロくて、なんか不安で気持ち悪い!」です。
やはりそこには「カタルシス」が勝るか、「不安」が勝るかの違いがあると思います。
失敗したのではなく、アリ・アスター監督は意図して不安感が勝る映画を作り上げたのであり、その辺がやはり奇才です。
個人的な意見としては『ミッドサマー』や『ヘレディタリー継承』くらいならまだしも、今回はアリ・アスター、少しやり過ぎたな…というのが正直なところ。
アリ・アスター監督の中では一貫性があるのだと思いますが、監督の独特の感性は一般人とはかなりの乖離があると思います。
アリ・アスター監督はユダヤ系であり、ユダヤの家庭から見た息子と母の関係や、ユダヤ人の苦難の歴史を描いている面もあるとのことですが、ユダヤ人については身近でないのでピンときませんでした。
3時間は長い…
あとは、この内容で3時間は長いと思いました。
劇場公開するならせめて2時間ちょっとにおさめるべきだったのでは?最初からディレクターズカット版みたいな映画ですよね。
ともかくアリ・アスター監督の独特な感性が爆発したような作品でした。
たぶん製作側は、『ヘレディタリー継承』も『ミッドサマー』も成功したからアリ・アスター監督にもっと好き放題やらせてみよう!とGoサインを出しちゃったのでしょう。
そしてできちゃったのが本作…。
シュールすぎて全部理解するのは一生かかっても無理そう。
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