1972年に起こったウルグアイ空軍機571便遭難事故の実話をもとにしたNetflix映画『雪山の絆』!
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
Netflix映画『雪山の絆』作品情報
制作国:スペイン
上映時間:145分
原題:『La sociedad de la nieve』、英題:『Society of the Snow』
ジャンル:サバイバル,ヒューマンドラマ,実話がもとの作品
年齢制限:16歳以上
監督:J・A・バヨナ(フアン・アントニオ・バヨナ)
脚本:J・A・バヨナ|ベルナ・ビラプラーナ|ハイメ・マルケス=オレアラガ|ニコラス・カサリエゴ
原作:パブロ・ヴィエルチ「La Sociedad de la Nieve」
撮影:ペドロ・ルケ
キャスト:エンゾ・ヴォグリンシク
アグスティン・パルデッラ
エステバン・ビリャルディ
マティアス・レカルト
ウルグアイ空軍機571便遭難事故は『アンデス地獄の彷徨』(1976)や、イーサン・ホーク主演の『生きてこそ』(1993)など何度か映画化され、ドキュメンタリーも多いです。
監督のJ・A・バヨナは『永遠のこどもたち』『インポッシブル』『怪物はささやく』などで高い評価を得た人物。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の監督や、Amazon Primeのドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の製作総指揮も務めています。
映画『雪山の絆』あらすじ
実際に起こった1972年のウルグアイ空軍機571便遭難事故を描いた物語。
ヌマやロベルト、ナンドら大学のラグビーチームのメンバーは空軍機をチャーターしてチリに遠征へ行くことになった。
メンバーと関係者たちが乗り込み、飛行機はそれぞれの家族に見守られながら飛び立った。
メンバーは飛行機の中でも楽しくはしゃいで過ごす。
しかしアンデス山脈に差しかかったところで乱気流が発生。
悪天候によりパイロットは現在地を正確に読めていなかった。
571便は雪山の峰に激突してしまう。
両翼はもげ、尾部は切断され、仲間たちが投げ出された。
飛行機は胴体だけになり、雪山に突っ込んでからやっと停止した。
ヌマたちは仲間の死体やケガ人を見てパニックになる。
墜落直後に生き残っていたのは28名だった。
夜になり、恐ろしい寒さが生き残ったメンバーを襲う。
ケガ人は泣き叫ぶ。ケガと寒さのために死人がでた。
日が出ると、ヌマやロベルトたちは即死したメンバーを外へ運んで雪に埋めた。
食料や使えるものを探し、機内で数日を耐え忍ぶ。
しかし、墜落から1週間ほどで最後の食糧が尽きた。
機体は白かったため上空からの発見が難しく、捜査は墜落から8日後に打ち切られてしまった。
生き残ったヌマたちはラジオで捜査打ち切りの情報を聞いて絶望し、涙を流し、神に祈った。
彼らは生きるために死んだ仲間の肉=人肉を食べる決意をする。
しかし、ヌマは神が許さないと人肉を食べることを拒み続けた。
果たして28人の生存者は生き残ることができるのか。
※以下、ネットフリックス映画『雪山の絆』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『雪山の絆』ネタバレ感想・評価
(一応点数つけてますけど、実話が基ということもあって数値で測るのが適切でない気もします)
飛行機の墜落、標高約4000mの極寒の雪山、生きるために人肉を食べる選択、嵐と2度の雪崩。
壮絶です。これが実話だと思うと胸が苦しくなります。
即死した乗客も多数。生き残ったメンバーも弱り、どんどん死んでいきます。
メンバーがキリスト教を信仰していることもあって、聖書の苦難を読んでいるような感覚でした。
「尾部を探しに行こう!」「斜面を上ってみよう!」「無線を直そう!」などなど、メンバーは困難に立ち向かっていきますが、その都度結果に裏切られ、絶望を味わいます。
絶望を舐め尽くすという言葉がぴったりです。
神が人間に試練を与えているかの如くですが、人肉を食べる選択をせざるを得なかったことにより、宗教倫理の枠をはみ出してもっと普遍的な「生きること」を問い直した映画でした。
人肉を食べたことの是非はそこまで大きな問題として描かれていなかったと思います。
1972年当時、世界ではラグビーチームが人肉を食べたことが賛否両論の大きな話題になったようですが、そもそも「一般的に人肉を食べてはいけない」問題と、「非常時に人肉を食べてでも生き延びるべきか?」という問題には大きな隔たりがあります。
後者の問題には答えは出ません。当時は前者と後者の問題がごっちゃになったために議論が起こったのでしょう。
本作では「非常時に人肉を食べてでも生き延びるべきか?には明確な答えがない」と、そこに重点を置かなかったのが素晴らしいです。
「人間は生きる意味を持つのではなく、生きなければならないのだ!」という問いの転換がありました。
ラグビーチームのメンバーが苦悩や葛藤に打ちのめされているところにフォーカスするのではなく、生きることへ全力へ向かっていく姿をそのまま映したような作品です。
ラストでロベルトとナンドが下山に成功し、ヘリコプターで救助にくるシーンには消えかかった命の炎が再び燃えあがるような感動がありました。
乗客45名中29人が死亡しましたが、16名が雪山で72日間生存し続けた奇跡が確かにそこにあります。
サバイバル系のスペイン映画では『ノーウェア 漂流』(2023)も海洋での絶望と信仰とサバイバルを描いた良作でしたが、本作は実話をもとにしたぶん、より身につまされる物語でした。
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映画として客観的に述べるなら、メンバーの中で最後に死亡したヌマ・トゥルカッティを物語の主人公にすえる選択は良かったと思います。
『サンセット大通り』や『アメリカン・ビューティー』的な手法ですね。
「感情移入していた主人公が死亡してしまった」→生き残った側だけでなく、死んだ側の人間の視点を視聴者に提示したコンセプトが素晴らしいです。
また、混沌とする2024年現在に今作を公開する意義も大きいと思います。
コロナは収束しつつありますが、ウクライナへのロシア侵攻には終わりが見えません。イスラエルとパレスチナも戦争状態です。
日本では1月1日に能登半島地震が起こり、何百名もの命が奪われ、現在も復興の作業が続いています。
極限の状況下では、生きる意味を考えている暇はなく、生きなければなりません。
テレビやパソコンの前など安全地帯で本作を鑑賞した私たちは、極限下で生きることについてをわずかでも汲み取り、その視点で社会に目を向ける義務があると思いました。
IMDb(海外レビューサイト) | 7.9(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 89% 一般の視聴者 87% |
メタスコア(Metacritic) | 71点(100点中) |
実話:生存者たちのその後
ナンドとロベルトが9日間かけて雪山を下山。ふもとにいたチリ人男性と会いました。
救助隊がヘリで生存者たちを救出。45名のうち生き残ったのは16名。
救助隊やガイドから情報を受けたメディアが人肉を食べて生き延びていたことを報道し、世界中で賛否をうむ論争となりました。
自力で下山をした2人のうちの1人、ナンド・パラードは生還後に母や妹、親友を失ったことで苦しみましたが、その後はレーシングドライバーとなり、レーサーを引退してからウルグアイでスポーツ番組などを手掛ける司会兼プロデューサーになりました。
もう1人のロベルト・カネッサ1994年度ウルグアイ大統領選挙に出馬しています(結果は落選)。
最後のまとめ
雪山で起こった墜落事故と、それに付随する悲惨な出来事が展開されていきましたが、全体を通じて生きることへのエネルギーに満ち溢れていました。
個人的には「見てよかった!」とかそういう言葉で片付けられる作品ではなく、現代社会の枠組みを超えた雪山の社会を通じて「生きる」それ自体を反芻するような映画でした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。映画『雪山の絆』レビュー終わり!
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