デヴィッド・リンチ監督作の映画『ストレイトストーリー』(英題:The Straight Story)を視聴。
数百キロ離れた兄の家に、時速8kmの芝刈り機で向かう老人のロードムービー。叙情的なシーンの数々が堪能できる名作だった。
この記事では、
- あらすじネタバレ
- どんな映画か、テーマは何か?
- マルホランド・ドライブとの関係性
解説・考察!
デヴィッド・リンチ監督なので変な映画かと思ったらめちゃ感動できる名作だった。情景の切り取り方や表現は独特な面もあるものの、誰もが感動できる作品。
映画『ストレイトストーリー』ネタバレ考察
幼い頃の心に戻る、死への旅路
ある村での少女殺人事件の謎を追うツイン・ピークス、妻が惨殺されまったく別の人間に変身する男性ロスト・ハイウェイ、記憶喪失の女性の秘密を巡る『マルホランド・ドライブ』など、生と死の境界線をテーマにしてきたデヴィッド・リンチ監督の作風から考えると、『ストレイトストーリー』も、老人アルヴィン・ストレイトの死への旅路を表現していたとしても不思議はない。
旅の展開についても、最初に少女と出会い、次に自転車青年グループ、鹿を轢き殺した女性、中年夫婦、バーで一緒に飲んだ老人の順序だったので、人生の流れを客観的に眺めたと取れる。
自身の走馬灯を、他の人間を使って、戻るように辿っていったのだ。
そして最後は昔のように兄弟で満天の星空を眺める。きっと二人の心は幼い頃に戻っていたのだろう。
死んでいたのか?でもそこは重要じゃない
アルヴィンも死んでいて、兄・ライル(ハリー・ディーン・スタントン)も死んでいたと考えることもできる。
字幕ではライルは倒れたとしか書いてなかったが、音声を聞くと「Stroke(脳卒中)」と言っているので、アルヴィンが到着した1ヶ月半後にあんな回復しているのも、家の外観が人がいる感じでなかったのも不自然といえばそうだ。
ただ、リンチ監督の作風から考えると、生きているか死んでいるかの二元論は本質的なテーマから逸れると思う。
テーマ:ピュアなハートに戻るには困難な道を選べ
じゃあ、映画『ストレイトストーリー』のテーマやメッセージは何なの?となるが、結論をいうと、ピュアなハートに戻るには、困難な道を選べ。これが本作のテーマだと考える。
兄弟で星を眺めた頃の心に戻るには、自分のプライドや兄への憎しみを捨て、ゆっくり時間をかけて進めという感じだろう。
例えば、アルヴィンがトラクターでなく誰かに車で乗せてもらって兄の家に着いていたら、ライルは感動せず兄弟は仲直りできていなかったかもしれない。
ただし、デヴィッド・リンチ監督の映像作品は見る人それぞれが自分なりのメッセージを発見できる構造なので、テーマを決めつけるのはこれまた本質から逸れる。
最後はぜひあなた自身が答えを見つけてほしい。
実話をもとにした映画『ストレイトストーリー』
『ストレイトストーリー』は実話がもとになっていて、実際にアルヴィン・ストレイトという男性がトラクターで旅をしたらしい。
本作はリンチ作品では珍しく、脚本は別の人が担当。ジョン・ローチとメアリー・スウィーニーという人物で、メアリーは実際にアルヴィンが旅した行程を辿って脚本を書いたという。道理でリアリティがあるはずだ。
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