『ノマドランド』の監督クロエ・ジャオが実話を基にして作った『ザ・ライダー』(2017)。ロデオの事故でトラウマを抱えた本人をキャストに起用し、 サウスダコタ州の極上の 雄大な自然に心情を語らせた傑作だった。
この記事では映画のあらすじネタバレや、ぶっちゃけ感想・評価を解説。本人キャストについての考察をしています!
映画『ザ・ライダー』ネタバレぶっちゃけ感想・評価
とても見応えがあり興味深いストーリーだった。実話をもとにしていると言うのも驚きだ。
人間のトラウマをとことんリアルに描き、終始緊張感が漂っている。
僕個人のトラウマとしては格闘技で骨折した。原付で何回も事故ったなど、とりわけ深刻なものはないけど、そのときの恐怖がよみがえってくるような印象だった。
少しでも怖い思いをして、それをどうにか克服したことがある人なら主人公ブレディに深く感情移入してしまうだろう。
トラウマを克服するのか?それとも諦めるのか?
だれの人生にも通じるテーマが深掘りされていた。
『ザ・ライダー』ブレイディやレインの本人キャスト大成功
本人キャストの映画は、 クリント・イーストウッド監督の『15時17分、パリ行き』などが頭に浮かぶが、それと比較しても『ザ・ライダー』は大成功していたと思う。
実際にロデオで事故にあったブレイディ・ヤンドロウが主人公ブレイディを演じていた。俳優でないはずなのに、迫真的な演技だった。
現実でその恐怖を経験していたかれにとって、表情や仕草はすべて、演技でなくリアルだったのかもしれない。
元名ロデオで落馬事故で半身不随になったレインも本人を起用しており、ブレイディとレインの友情も、嘘偽りなく映像化がなされている。
映像に語らせるクロエ・ジャオ監督
サウスダコタの地平線が美しい、流れる雲と大地、そのはざまを歩く主人公。壮大な映像がこれでもかというくらい主人公・ブレディの心情を語っていた。
また、馬などを映すときに下からのショットを多用することで、大きさや荒々しさが画面越しにビビってしまうくらい伝わってきた。主人公ブレディの顔と馬の目を映すことで、お互いにどんな感情を抱いているのか見入ってしまう。
『シャイニング』のジャック・ニコルソンを下から映すア イデアに似ている。
こんなふうに、『ザ・ライダー』は映像が雄弁に語っていた映画だといえる。
中国人女性監督クロエ・ジャオの才能に圧倒された。
名作『ノスタルジア』を作った映像の詩人 アンドレイ・タルコフスキー監督とまでかはわからないが、ジャオ監督による映像が持つ詩的な表現に感動した。
クロエ・ジャオ監督の次作『ノマドランド』は2021年度の アカデミー賞作品賞にノミネートされ『ミナリ』などと争って、監督賞と作品賞、主演女優賞の3冠獲得!
映画『ザ・ライダー』あらすじネタバレ解説
ブレディ・ ブラックバーンはロデオで落馬し、その時に馬に頭を踏まれて頭蓋骨骨折。手術と入院を経て自宅に戻るが、トラウマで右手のこわばりや吐き気などの症状が出ていた。
少し知的発育の遅い変わった妹リリーは、「もうロデオはやめて」と言う。
仲間たちはまたロデオをやれと励ます。ブレディ自身もロデオへの道を諦めきれず、スーパーでアルバイトをしながら体を回復させ、調教師の仕事に復帰。
かつてのブルロデオのヒーローで、ブレディの兄貴分・レインは、落馬事故で半身不随になっていた。しゃべれない状態ながらも、施設でリハビリを続けている。
アポロという馬を気に入ると、カウボーイの父が他の馬を売って手に入れてくれた。
ブレディはアポロを調教して草原を走っていた。しかし、右手のこわばりが起こり、馬を降りて吐いて気絶。医者から「もうロデオは諦めろ」と言われる。父も「叶う夢ばかりじゃない」と言った。
アポロが柵から脱走し、足に重傷を負っていた。ブレディは自分で 安楽死させることができず、父が リボルバーでアポロを殺す。
それでもブレディは、父の反対を押し切ってロデオの会場に行く。フェンスの外で心配そうに見つめる父と妹・リリーの姿を見つけた。ブレディは馬に乗るのを止めた。
レインの見舞いに行くと、彼は指で「夢を諦めるな」と書いた。
ブレディは馬で草原を走る。
映画『ザ・ライダー』終わり
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