Netflix映画『パレード』。藤井道人監督×長澤まさみ×リリー・フランキー、現実に未練を残した死後の人間たちの交流が意味していたこととは!?
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Netflix映画『パレード』ネタバレあらすじ解説
美奈子の死
美奈子(長澤まさみ)は大津波にのまれ、浜辺に打ち上げられます。
意識を取り戻した美奈子は避難所で息子・りょうを探しますが見つかりません。
会社の先輩・神田に話しかけますが、神田には美奈子のことが見えていないようです。
美奈子は津波に巻き込まれてすでに死んでいます。
避難所にいた神田の娘・裕子だけが美奈子を見つめていました。
途方に暮れた美奈子は、アキラに連れられてテーマパークの廃墟に連れて行かれます。
そこには下記のメンバーがいました。
- アキラ(小説家/坂口健太郎)
- 勝利(元ヤクザ/横浜流星)
- マイケル(元映画プロデューサー/リリー・フランキー)
- かおり(元スナックのママ/寺島しのぶ)
- 田中さん(元銀行員/田中哲司)
「死んでいるけど未練があるからここにいる」とみんな明るく話します。
メンバーは何年も死者の世界で過ごしているようで、お互いに家族のような存在です。
美奈子は自分が死んでいると気づき、ショックを受けました。
月に1度、大勢の死者たちが集まるパレードがあり、死者同士で会いたい人を探します。
美奈子は死者同士で再会した家族を見て、息子・りょうを絶対探し出すと決意しました。
ある日、ナナ(森七菜)がテーマパークにやってきました。彼女の手首には深いリストカットの傷があります。彼女はいじめを苦に自殺したようです。
勝利とみずき
勝利(しょうり/横浜流星)は元ヤクザ。数年前の抗争で相手の組に撃ち殺されて死んでしまいました。
勝利は自分の命日(七回忌)に墓に行きます。組長である勝利の父が墓の前で「組をたたもうと思う。すまん」とつぶやいていました。
勝利は墓参りに来たみずき(勝利が生きていた頃の彼女)を目撃。みずきは墓の前には来ずに、急に引き返していきました。
勝利のなかで、みずきの存在がずっと心残りでした。みずきのアパートへ行くと、彼女は勝利との思い出の写真を見て泣いていました。
しかし今のみずきには新たな彼氏がおり、結婚の約束もしているそうです。
勝利は安心し、ベランダにいるみずきに言葉をかけて(彼女に聞こえてはいない)去っていきました。
テーマパークに帰った勝利は、「彼女が元気で暮らしていた」とみんなに報告します。
未練がなくなった勝利は、その先の世界へと旅立ちました。
ナナと親友
ナナは自分が通っていた高校へ行きます。今度はナナの親友・靖子がイジメのターゲットになっていました。
靖子は絶望して屋上へ行き、「なんで死んだの?」とナナに向けた言葉をつぶやいて膝から崩れ落ちます。
ナナは靖子を抱きしめて一緒に泣きました。
アキラと父
アキラは美奈子の息子探しを手伝いつつ、彼女を自分の実家に連れていきました。
アキラの父(でんでん)は酪農家で、アキラが子供の頃は厳しい父でした。
アキラは過去に小説を書いていましたが若くして病気で余命宣告を受け、自宅で療養。そのときに自分の運命を呪い、両親にあたり散らしたそうです。
アキラの死後、父がアキラのことについての小説を書きはじめました。それから何年も経ちますが、アキラの父はずっと小説を書き続けています。
アキラは父との関係が心残りでその先の世界へ行けないのでした。
かおりと家族
かおりには4人の子供たちがおり、時々家に見に行っています。
かおりは死後に子供たちの生活が心配で、生と死の間の世界に残ったのでした。
妊娠した長女が笑顔で超音波検査を受けているのを見て、かおりはもう悔いはないと思いました。
美奈子と息子・りょう
月に1度、死者たちが協力して探し人を見つけるパレードの日。マイケルが「避難所に美奈子の息子がいる」という情報を得ます。
美奈子はその避難所へ走りました。息子・りょうはベッドで熱を出していました。
美奈子がりょうに謝ります。
りょうは「そこにいるの?」と美奈子に声をかけました。りょうには美奈子が見えているようです。
美奈子はりょうと話をし、抱きしめました。
息子・りょうが見つかりこの世に未練のなくなった美奈子ですが、その先の世界に行く前にマイケルの映画制作を手伝おうと思いました。
マイケルと映画
マイケル(リリー・フランキー)は50年前に本土から沖縄へ渡って学生運動に参加していました。
沖縄で麻衣子という女性に出会い、恋に落ちました。しかし学生運動に挫折し、麻衣子を置いて本土に帰った過去がありました。
その後、さまざまな商売を経て映画プロデューサーになったのです。
マイケルは「学生運動の映画を完成させたい」と言います。
美奈子やアキラ、ナナなどみんなが協力し、映画が完成しました(学生運動に敗れた人物が、50年後に沖縄へ行き、元恋人の墓参りでその孫娘に会う話)。
たくさんの死者たちを集めて星砂座でマイケルの映画の上映会が行われます。
その後、マイケルはまだ生きている本物の麻衣子の家へいきました。一緒に学生運動をやった佐々木(舘ひろし)がいました。彼もすでに死んで妻の麻衣子を見守っているようです。
老人になった麻衣子は部屋で映画を見ていました。マイケルは彼女を抱きしめます。
マイケルのモチーフになったのは本作『パレード』の企画・プロデュースを務めた河村光庸さん(惜しくも2022年に亡くなりました)。
河村光庸さんは実際に沖縄で学生運動を経験。
「俺が星の砂を広めた」「俺がヨガを広めた」「俺がエリマキトカゲを広めた」など劇中で語られた眉唾話もすべて河村光庸さんの実話です。
ラスト結末:ナナ
美奈子、マイケル、かおりの4人は未練を解消し、その先の世界へ行くことに。
アキラもう少しここにとどまり、この世界のことを小説に書き続けるそうです。
実は田中さんはその先の世界への案内人でした。
ナナが病院で目覚めます。彼女は意識不明の状態だっただけで死んではいなかったのです。
数年後
映画監督になったナナは、美奈子やマイケルと過ごした世界のことを描いた『パレード』という映画を制作し、上映会を開催。
かおりの孫娘・しほがナナに向かって「グーサイン」をしました。
成長したりょう(美奈子の息子)がナナの映画を見て感動しました。
Netflix映画『パレード』考察(ネタバレ)
映画と現実の境界線を溶かす
映画『パレード』は死者の世界と現実の世界の交流を描きつつ、映画と現実の境界線を溶かしたような作品でした。
マイケル(リリー・フランキー)がみんなと作り上げた劇中映画の制作風景が多く、この劇中映画自体が死後の世界と同列のような扱いです。
そしてナナ(森七菜)が昏睡状態から目を覚まして生還→数年後に映画『パレード』を現実で作り上げる結末でした。
- 死者の世界 VS 現実の対比がある
- 死者の世界と劇中映画がイコールのような関係
- 劇中映画 VS 現実の対比が浮かび、映画も1つの現実となるメッセージが生まれる
このように三段論法がキレイに成り立ちます。
ナナが上映したことで死後の映画が現実に具現化されたわけです。
「死者が生きている人間に影響を与えるように、映画も現実に影響を与える!」ということ。
映画をフィクションとして現実と区切り、弔うのではありません。映画と現実の間にある境界線を溶かしています。
海と空の境界線が溶けていくような美しいメッセージですね。
さらに映画と現実の融解を裏付けるように、藤井道人監督の過去作やキャストの名前自体が映画の内容とリンクしています。次はその点を考察&解説していきます。
森七菜とナナの関係
ナナには7番目のメンバーという意味が込められているのでしょう。
- 美奈子(長澤まさみ)
- アキラ(坂口健太郎)
- 勝利(横浜流星)
- マイケル(リリー・フランキー)
- かおり(寺島しのぶ)
- 田中さん(田中哲司)
- ナナ(森七菜)
そしてさらに、ナナは芸名の森七菜と重なります。現実から持ってこられた名前なのです。(ちなみに田中さんも)
ナナは自殺して死後の世界にやってきたと見せかけて、ラストで病院で目を覚ました生と死の境目にいる人物です。
先程の考察と重ねると、生と死の境にいる=現実と映画(フィクション)の境にいる人物、となります。
だからこそ、死後の世界で経験したことを映画として現実で再現する役割を与えられたのでしょう。
長澤まさみと奥平大兼
奥平大兼さんが成長した美奈子の息子・りょう役でラストで登場。
なぜこの配役にしたのでしょうか?
『パレード』と『Mother マザー』をリンクさせることで、映画は現実であるというメッセージを強めているのでしょう。
映画同士が現実のキャストを媒介に繋がることで、映画と現実がリンクしている印象を強めたわけです。
藤井道人監督の集大成『余命10年』,『ヤクザと家族』
本作には藤井道人監督作品のオマージュもたくさんありますし、過去作品のキャストが勢揃いしています。
『パレード』の中でアキラは余命宣告されて病気で死にました。
アキラ役の坂口健太郎さんは藤井道人監督の映画『余命10年』(2022)に出演しています。このリンクも偶然ではないでしょう。
映画『ヴィレッジ』(2023)で主演を務めた横浜流星さんが元ヤクザ役なのも、良い意味で藤井監督の過去作をごちゃ混ぜにした感があります。
マーベル(MCU)のように、映画『パレード』は藤井道人監督作品の登場人物のパラレルワールドなのかもしれません。
マイケル=河村光庸さん
リリー・フランキー演じる映画プロデューサー・マイケルのシーンがやたら長いと感じた人もいるでしょう。
それには理由があります。マイケルの自伝は実話なのです。
マイケルは2022年に亡くなった名プロデューサー・河村光庸さん(『ヤクザと家族 The Family』『ヴィレッジ』『Mother マザー』などのプロデュースを担当)の姿を映画に残したキャラクターです。
マイケルは俺が作った作品として『ヤクザと家族 The Family』をみんなに見せていました。その作品も河村光庸がプロデュースしています。
マイケルは沖縄で学生運動をやっていました。河村光庸さんも若かりし頃に学生運動で沖縄へ行ったそうです。
なんと、星の砂を商品化したのもウーパールーパーを広めたのも河村さんの実話です。(参考記事)
藤井道人監督は、『新聞記者』などで何度もタッグを組んできた河村光庸さんへのリスペクトとしてマイケルの話を濃密に描いたのでしょう。
藤井監督が河村さんの意志を映像に残した。そう考えると感慨深いですね。
Netflix映画『パレード』物語の考察(ネタバレ)
裕子ちゃんは死んでいる
冒頭で、避難所にいた裕子ちゃんが死者である美奈子をじっと見つめて涙ぐんでいました。
なぜ裕子ちゃんには死者の美奈子が見えたのでしょうか!?
その後、神田(北村有起哉)がテーブルにある裕子ちゃんの写真を触って涙ぐんでいるシーンから推測ができます。
みんな成仏した?
アキラと水先案内人の田中さん以外は、みんな「その先の世界」へ行きました。
アキラが原稿用紙に「みんないなくなった」と書いているので、美奈子、マイケル、かおり はその先の世界へ進んだと考えてよいでしょう。
アキラと田中さん以外はみんな成仏しました。
ナナは昏睡状態だっただけらしく(リストカットの自殺未遂で入院していた)、現実へ帰還して数年後に監督になり、映画『パレード』を制作しました。
アキラと父の関係
アキラは病死した自分についての小説を描き続ける父(でんでん)が心残りで、その先の世界へ行けません。
死んだ息子の代わりに小説を書く父。このシーンが1番感動しました。
推測になりますが、アキラの父は小説を完成させずに、なるべく長い期間書き続けると思います。息子・アキラの思い出とお別れしたくないからです。
その先の世界とは?蝶の意味
美奈子やマイケルら未練を解消した人たちが行く「その先の世界」とは、一体どんなところでしょうか?
天国なのでしょうけど、具体的にどんな場所かは描かれていませんでした。
ただ美奈子が海岸からその先へ行ったあと、黒に青みが入った蝶が廃墟になった映画館など色々な場所を舞っていました。
仏教において、蝶は体から抜け出た魂を極楽浄土まで運ぶと言われており、輪廻転生の意味も持ちます。
美奈子やマイケルの魂はどこかへ運ばれ、そこで他の存在に生まれ変わるのかもしれませんね。これが「グー!」の伏線につながります。
ラストの「グー!」の衝撃の意味!
映画のラストで、かおりの孫娘・しほがナナに向かって「グー!」(親指立て)をします。
「グー!」はマイケルがよくやっていたことです。
先ほどの蝶の考察も加味すると、マイケルがしほに生まれ変わったのかもしれませんね。
もしくは天国にいるマイケルがしほを使ってナナに「グー!」とメッセージを送っているのかも?
まとめ
藤井道人監督の映画『パレード』の考察をネタバレありで詳細にやってきました。
最後にこれまでの考察をまとめて並べてみましょう。
- 映画というフィクションに意図的に現実を織り交ぜることで現実と虚構の世界を融解
- 映画や死者の世界をフィクションとして片付けない
- 死者の世界が現実に影響を与えているかも!
死者が生きている人間をたずねる作品として、これ以上ない構造だとわかります。計算し尽くされていますね。
以上。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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