Netflix映画『シルバートン・シージ』(Silverton Siege)は、アパルトヘイトさなかの南アフリカで、黒人解放運動の革命家たちが追い詰められ、銀行で人質を取って立て篭もる社会派サスペンスアクション。
作品情報・キャスト・見どころ、ネタバレ感想・評価、考察衝撃のラスト考察、様々な形の差別問題を知りたい人向けに映画をわかりやすくレビュー・まとめています。
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)
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映画『シルバートン・シージ』作品情報・キャスト
原題:『Silverton Siege』
ジャンル:社会派ヒューマンドラマ・サスペンスアクション
監督:マンドラ・デューベ
脚本:サベロ・マギディ
実話「シルバートン・トリオの事件」がモチーフになっています。
アパルトヘイトが終わって黒人差別のない初めての選挙が行われた1994年4月27日は、南アフリカで「自由の日」と祝日となっており、28年後の同じ日付に本作が配信されました。
ちなみにSilverton/シルバートンは南アフリカの首都プレトリアの郊外地域、
Siege/シージは日本語で“包囲”という意味です。
『シルバートン・シージ』登場キャラ・キャスト
- カルビン・クマロ|cast ターボ・ラメッツィ
- テラ|cast ノクソロ・ドラミニ
- アルド|cast ステファン・イラスマス
- ランガーマン警部|cast アーノルド・ヴォスルー(『ハムナプトラ』シリーズのイムホテップ役で有名)
- クリスティーン|cast エラニ・デッカー
『シルバートン・シージ』ネタバレなし感想・あらすじ・見どころ・海外評価
©︎Netflix
あらすじ:アパルトヘイトを撤廃するため、政権を転覆させるためのテロ行為を行おうとしていたカルビンたちは、仲間の裏切りにあって追い詰められ、銀行に立て籠りますが…。
ストーリーに意外性・エンタメ性・斬新さのある作品ではありません。サスペンスアクションとして見ると伏線(警官の名前を知っていた人物)や展開などが凡庸です。
自由を求める黒人たちの戦いの行き着く末がシリアスに描かれており、そこに価値のある作品です。
おすすめ度 | 75% |
アフリカの社会問題提起 | 90% |
ストーリー | 72% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.5(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家75% 一般61% |
※以下、Netflix映画『シルバートン・シージ』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『シルバートン・シージ』ネタバレ感想・評価
アパルトヘイト(1948〜1994までの人種隔離政策)さなかの南アフリカで、「黒人が虐げられる社会を変えるには暴力しかない」という冒頭のモノローグが印象的。
舞台となる1980年代の南アフリカには黒人議員すら廃止され、黒人に選挙権はありません。つまり社会変革の民主的な手段は完全に断たれています。
非合法なデモ活動か、暴力による革命しか手段がないのです。
暴力による解決はもちろん避けるべきでしょう。
しかし、人権すら与えられず、命の危険もある酷すぎる差別を受け、他に手段がないとしたらどうするでしょうか?
今立ち上がらないと、家族や子孫が犠牲になるかもしれません。
映画『シルバートン・シージ』を観て、そんな答えのないジレンマについて深く考えさせられました。
他に道がなく生きるか死ぬかの状況で、自由とネルソン・マンデラ(のちの南アフリカ初の黒人大統領)の解放を叫ぶ活動家の決意や、それに賛同する市民たちの行動が、心に何かを訴えかけてきました。
衝撃のラスト考察(ネタバレ)
映画『シルバートン・シージ』のラストは、
- 黒人を擁護する白人女性クリスティーンがスナイパーのミスで射殺される
- 主人公が人質を全員解放
- 機動隊が突入して銃撃戦の末に死亡
という結末。
主人公のカルビン・クマロや、ランガーマン警部が口にしていた「自由の代償は全てだ」というセリフが心に残りました。
カルビンたちは自由な生活を求めるために活動しているのではなく、命と引き換えに自由を残そうとしているからです。
平和な今の日本ではあまりない考え方でしょう。しかしそんな日本にも、かつては忠義や誇りなど命より尊いものがありました。
南アフリカの当時の活動家にとっても同じで命より権利を優先し、その先にある自由を夢見ていたのですね。たとえその未来に自分がいなくても。
劇中ではネルソン・マンデラの「どんなことも、実現するまでは不可能に思える」という名言の引用もありましたが、アパルトヘイトとの戦いの裏にとんでもない犠牲と覚悟があったことがわかります。
白人が黒人を差別するだけじゃない
映画『シルバートン・シージ』は、多種多様な黒人差別について問題提起しています。
主人公カルビン・クマロたちの敵は白人だけではありません。白人の言いなり、手下になっている黒人とも対立があります。
同じ黒人同士でもいがみ合わなければならない最悪な社会です。
さらに黒人ですが先天的に肌が白く生まれた(アルビノ)女性も登場します。
彼女は黒人社会で差別され白人家族に養子に貰われましたが、カツラを被らされて白人として生きることを余儀なくされました。
ありのままの姿でいられない、いびつな社会にゾッとしますね。
ちなみにアフリカ諸国では現在でもアルビノが迫害され、呪術用に体を切り落とされて売買されるなど、信じられない状況があります。
黒人同士の対立構造の一方で、本作にはクリスティーンやランガーマン警部など、白人であっても黒人の権利について真剣に考えている人もいます。
黒人の敵もいれば、白人の仲間もいるわけです。
『シルバートン・シージ』では、主人公カルビンらは自由の代償として犠牲になりつつも、差別撤廃の思想が広がる瞬間が映像を通して描かれています。
2022年現在でも世界から差別が撤廃されたという状況には至っていませんが、彼らの屍が土となり、少しずつ芽吹いているはずです。
最後のまとめ
映画『シルバートン・シージ』は、アパルトヘイトさなかに黒人解放運動の革命家が銀行に立て篭もり、差別問題の実態と解決への方向性を示してくれました。
ウクライナへのロシアによる侵攻戦争、アフリカや中東での終わらない紛争という現実を突きつけられた2022年のグローバル社会において見る価値がある作品だといえるでしょう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。Netflix『シルバートン・シージ』レビュー終わり!
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