Netflix映画『彷徨い』(さまよい:The Strays)。イギリスの高級住宅街に暮らす主婦が過去のトラウマにさいなまれていくサスペンス!
作品情報・キャスト
ネタバレなしの感想
視聴してのぶっちゃけ感想・評価(ネタバレあり)
ストーリーラスト考察・解説
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
これから観る方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
Netflix映画『彷徨い』作品情報・予告・キャスト
制作国:イギリス
上映時間:97分
原題:『The Strays』
ジャンル:サスペンス、人種差別問題
年齢制限:16+(暴力的な描写あり)
監督・脚本:ナサニエル・マーテル=ホワイト
キャスト:アシュリー・マデクウェ、ジョーデン・マイリー、ブッキー・バックレイ
Netflix映画『彷徨い』あらすじ
イギリスの高級住宅街に住む黒人のニーヴは白人のように振る舞い、私立学校の副校長として社会的な地位を得ていた。
保険会社を営む夫のイアン、息子のセバス、娘のメアリーと何ひとつ不自由のない幸せな家庭を築いている。
ニーヴは黒人青年を見かけるようになり、過去の幻覚に怯えるようになった。
ニーヴは近所の人たちを集めて貧困支援のチャリティパーティーを自宅で開催。
そこに黒人の兄妹カールとディオンが現れた。ニーヴは彼らを見て発狂したように叫び出す。
そして18年前の過去の秘密が明らかになるのだった…。
ネタバレなし感想・海外評価
社会問題をどう映像で表現しているか考えながら見る分には楽しいです。人間の愚かさがヒシヒシと伝わってきます。
しかしいっぽうで純粋にサスペンスとしての面白さを求める人には不向きだと思います。
ラストの結末は個人的には好きでしたが、賛否はわかれるでしょう。
おすすめ度 | 60% |
アイデア | 85% |
ストーリー | 80% |
IMDb(海外レビューサイト) | 5.8(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 80% 一般の視聴者 % |
※以下、ネットフリックス映画『彷徨い』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『彷徨い』ネタバレ感想・評価
黒人差別の微妙な問題
©︎Netflix
サスペンスとしては中盤でニーヴがかつて子供を捨てていたと発覚するところがピークで、全体的にすごくおもしろいかと言われると正直微妙ですが、いろいろ考えさせられる作品でした。
黒人差別の問題としては、白人が黒人を差別するステレオタイプの構図ではありません。
黒人の家庭を捨て、白人のコミニティで生きる主人公・ニーヴが黒人を差別する黒人VS黒人の構図です。
近年わりと流行っているテーマで、Netflix作品では『Passing 白い黒人』がこの問題をあつかっていました。ジョーダン・ピール監督の『Us/アス』にも通底するメッセージがあるように思えます。
本作でも、黒人による黒人差別が鋭く突きつけられていました。
イギリスのハイクラスでやっていくためには自分が黒人であるという誇りを捨て、白人の文化になじまなくてはなりません。
ニーヴは子供たちにも黒人文化にふれさせないように育てており、アイデンティティを捨てた最低の母親にみえます。
しかし彼女が捨てた息子・カールが受け継いでいたのは、やはり暴力やドラッグなどの不良文化。子供たちに良い影響を与えるかは疑問です。
黒人カルチャーには、いわゆるギャングスタ(ストリートのギャング)文化があります。
これは黒人に貧困層が多いので仕方がない背景があるのですが、そこから抜け出そうと頑張っている黒人の足かせになるのも事実です。(黒人の少年が勉強していると仲間外れにされやすいという話を何かの本で読んだ記憶があります)
つまり、ニーヴが黒人文化を遠ざけようとするのにはそれなりの理由があります。
黒人自身がステレオタイプな黒人文化を否定したのが本作なのです。(ステレオタイプが悪いわけではありません)
日本にいるとわかりにくい問題ですが、人種によって階級がわかれている社会では、上にいくためにアイデンティティを手放さなくてはならないことがあるのでしょう。
そんな無慈悲なトレードオフがリアリティたっぷりに突きつけられていました。
ラストがシュールすぎ…
中盤で発覚した事実は、完璧な人生を歩んできたと思われた主人公ニーヴが18年前に2人の子供を捨てて逃げ出し、そのあとで新しい裕福な家庭を築いてきたというもの。
終盤は主人公ニーヴに18年前に捨てられた子供たち、カールとディオンが家に乗り込んできて武器で脅し、夫・イアンを殺してしまいます。
ラストはどうなるのかな?と思ったら、ニーヴは自分ひとりだけウーバーイーツの配達人と一緒に逃げてしまい、子供たち4人が残されてポカンとするシュールすぎる結末。
「え?これで終わり?」みたいな終わりかたでした。
ニーヴは人生で2度も子供を捨てて逃亡してしまいました。(さらに本名はシェリルで名前まで捨てていたことも判明します)
ストーリーを広い視点でとらえると、「ニーヴは自分も黒人でありながら黒人文化を遠ざけてきた事実から、また逃げ出した」となり、人種による微妙な問題をうまく表現しています。
ニーヴの母親として許されない選択により、問題解決のむつかしさが浮き彫りになっているわけです。
子供を捨ててまでも、自分が黒人のアイデンティティを排除した事実から目をそむけたいと言い換えることもできます。けっこう高度な表現です。
しかしいっぽうで、物語を表面的にみると、なんか笑えてくるというか、乗り込んできて暴れたカールとディオン含めた子供たち4人が残されてどうしていいかわからない結末はシュールすぎます。
社会問題とか面倒なことを考えずに純粋にサスペンスとして楽しんでいた人は拍子抜けするのではないでしょうか?
ブラックユーモア大好きなイギリスならこれくらいヒネリの効いた結末が喜ばれるのかもしれませんが、日本だと賛否両論でしょう。
最後のまとめ
映画『彷徨い』は、黒人差別における微妙な問題を映像でうまく表現し、シュールなラストを付け加えた佳作でした。
面白いか面白くないかはおいておいて、Netflixの中ではオリジナリティがある作品だったと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。『彷徨い』(さまよい The Strays)レビュー終わり!
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