2024年4月5日の日本公開初日に映画『パストライブス/再会』を鑑賞!
初恋と再会を描くヴィヴィッドかつリアルな作品で、海外の評判にたがわず非常にクオリティが高かったです。
物語ネタバレあらすじ・ラスト結末の解説
ストーリーの美しいテーマを徹底考察
正直な感想・評価レビュー(ネタバレあり)
これらの情報を知りたい人向けにわかりやすくレビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
映画『パストライブス/再会』作品情報・キャスト
制作国:韓国・アメリカ
上映時間:1時間46分
原題:『Past Lives』
ジャンル:ラブロマンス・ヒューマンドラマ
監督:セリーヌ・ソン(『ホイール・オブ・タイム』脚本)
脚本:セリーヌ・ソン
撮影:シャビエル・キーシュナー
音楽:クリストファー・ベア/ダニエル・ローセン
配給:A24
キャスト↓
グレタ・リー
ユ・テオ(Netflix韓ドラ『その恋、断固お断りします』)
ジョン・マガロ
映画『パストライブス/再会』あらすじネタバレ/ラスト結末の解説
24年前:韓国
12歳のソヨンとヘソンは、お互い両思いだった。しかし、ソヨンは映画監督の父の影響でアメリカへ移住することになる。
ソヨンの母は最後の思い出にと、ソヨンとヘソンをデートさせた。
学校からの帰り道、ヘソンはソヨンにさよならを言う。ソヨンは家族とアメリカへ旅立った。
ソヨンはノラというアメリカ名になる。
12年前
ノラ(ソヨン)はニューヨークで作家として活動していた。ある日、ヘソンからSNSで連絡が入る。
兵役を終えて今大学生のヘソンは、「やっとの思いでノラを見つけた」とビデオ通話で話した。
その後、何度もビデオ通話をするが、お互いに忙しくて韓国やニューヨークに会いに行くことはできない。
※以下、ネタバレありなので注意してください!
- 映画『パストライブス/再会』ネタバレ・ラスト結末を表示する
- ノラは作家としてのキャリアを築くために苦渋の思いで「もう連絡を取り合うのはやめよう」とヘソンに伝えた。ヘソンは涙を流す。
その後、ノラはアーティストの集まりでアーサーという作家と出会い、恋に落ちた。
ヘソンは留学先の中国で恋人を作る。
2024年:ニューヨーク
ノラはアーサーと結婚し、幸せに暮らしていた。
ヘソンがノラに会いにニューヨークへやってくる。ノラは久しぶりに会ったヘソンを抱きしめた。ヘソンはアメリカと韓国の文化の違いに動揺する。
ノラとヘソンはメリーゴーランドがある海沿いの道を歩いた。
ヘソンは「今の恋人と結婚を視野に入れているが、自分の収入が平凡で決断できない」と語る。ノラはその考え方を不思議に思った。
ノラはメリーゴーランドの前で、「12歳の少女・ソヨンはあのとき韓国に置いてきた」と語る。
翌日、ヘソンとノラは船に乗り、自由の女神を満喫した。
夜、ヘソンはノラの夫・アーサーと会う。3人はパスタを食べたあとでバーへ。
ノラはイニョン(人の縁を指す韓国の言葉)についてヘソンに語り、「2人は前世で何か関係があったかもしれないが、現世では結ばれない運命だった」と話す。
ノラはヘソンをタクシーまで送る。
ヘソンは「もし現世も前世(パストライブス)になるとしたら、来世で結ばれるか?」と言った。ノラは「わからない」と答えた。
ヘソンはタクシーで去っていった。
ノラは家の前で涙を流す。アーサーがノラを抱きしめた。
映画『パストライブス』おわり
映画『パストライブス/再会』考察:美しい対比
ヘソンとの別れと、韓国との別れ
ノラは、ラストでヘソンと別れたあとに涙を流していました。
思うに12歳の頃の韓国人少女・ソヨンは、ノラの心の中にずっといたのです。
ラストはノラの中のソヨンが、初恋の相手・ヘソンと韓国に本当の意味で別れを告げたのでしょう。
そして、自分の中にいる少女・ソヨンにも別れを告げたのです。心が張り裂けそうだったに違いありません。
セリーヌ・ソン監督の自伝?
少女・ヘソンはアメリカへ移住してノラになりましたが、これはセリーヌ・ソン監督自身の境遇と一緒です。
セリーヌ・ソン監督も韓国で生まれたあとに移住。アメリカ・オンタリオ州やカナダで暮らしたそうです。
主人公・ノラにはセリーヌ・ソン監督自身の経験が重ねられていたと言って間違いないでしょう。
だからこそ、みずみずしくリアルな作品になったのだと思います。
主演のグレタ・リーも俳優兼作家であり、演じたノラの役柄に近い人物です。それもリアリティにひと役買っていたのでしょう。
パストライブスの本当の意味
パストライブス(Past lives)は、日本語で前世の意味です。
タイトルの意味としては、ヘソンが最後に語ったように「この人生自体が前世だったなら」というもの。
今の人生が前世になり、来世でノラと結ばれることができたなら。という、韓国人・ヘソンの願いが込められたようなタイトルです。
しかし、アメリカで育ったノラはやや合理的なのか「その願いは叶うかわからない」と考えていたようで、それがまた味わい深かったです。
もしかしたら来世では縁(イニョン)がないかもしれませんからね。
今の人生も前世になると考えて希望を持つ男性・ヘソン。最愛の夫との暮らしのために来世への期待も断ち切ろうとするノラ。
2人の対比がとても美しく、感動的でした。
イニョンとメリーゴーランド
本作のメインテーマはイニョン。日本語で縁を指す言葉で、8000層の要素から成り立っているようです。
イニョンはさまざまなシーンで表現されていました。
小学校の頃の坂道での別れは、イニョンが離れたことの比喩でしょう。
ノラとヘソンの再会で登場したメリーゴーランドは、イニョンや輪廻転生を表現していたと思います。
ラストの青いシャッターは、2人のイニョンが完全に断ち切られたことを示しているのかもしれません。
イニョンの解釈が映像でしっかりとなされている点も素晴らしかったです。
映画『パストライブス/再会』ネタバレ感想・評価
登場人物は、ノラ、ヘソン、アーサーの3人。
私は30代男ですけど、ヘソンはもちろんノラにもアーサーにも感情移入しました。
ノラとヘソンの初恋の話なのに、アーサーにもガッツリ共感させる作りだったのがベリーグッドです。
アーサーもめちゃくちゃいい奴で、ノラのことを愛しているからこそノラとヘソンの会話を見守っている感じがヒシヒシと伝わってきました。
よくいるチンケな引き立て役ではありません。自分はアーサーのキャラクターが大好きでした。
韓国人の話でしたが、世界中だれもがこの3人に感情移入できたのではないでしょうか?
また劇中では過去の恋の忘却がテーマの『エターナルサンシャイン』が引き合いに出されていましたが、個人的にはイーサン・ホークの『ビフォア・サンライズ』が近いとも感じました。
『ビフォア・サンライズ』へのアンサーソングといえる内容だったと思います(気になる人はぜひ『ビフォア・サンセット』と『ビフォア・サンライズ』も視聴してみてください)。
映像も美しかった。何気ないどのシーンも絵になるんですよね。絵画的な色合いや構図が多かったと感じました。
メリーゴーランドの前でのノラとヘソンの会話、夜の青いシャッターの前での最後の会話のシーンなど、美しすぎて見とれてしまいました。
テーマについても初恋と移民を掛け合わせることで唯一無二のメッセージ性を持った印象です。
初恋が叶わないことと、祖国との別れが重ねられていて、なんとも言えない切なさがかもしだされていました。
セリーヌ・ソン監督の次回作にも期待したいです!
(本作についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓)
IMDb(海外レビューサイト) | 7.9(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 95% 一般の視聴者 84% |
メタスコア(Metacritic) | 94(100点中 |
最後のまとめ
海外での評価が非常に高いのもうなづけます。
アメリカへ移住した韓国系移民というパーソナルな話のはずが、日本にいる私の心にまでズシンと響くような普遍的な内容になっていたのが素晴らしいと思いました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。レビュー終わり!