映画『MEN 同じ顔の男たち』はトラウマを抱えた女性が田舎の古い屋敷で同じ顔の男性に囲まれてパニックになるサイコホラー!
あらすじ、ぶっちゃけ感想・評価、物語・ラストの意味をネタバレありで徹底考察!、ストーリー結末ネタバレ解説を知りたい人向けに徹底レビューしていきます!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目から読んでください)
作品についての視聴者・口コミアンケートも投票お願いします↓
映画『MEN 同じ顔の男たち』作品情報・キャスト
原題:『MEN』
ジャンル:サイコホラー・サスペンス
年齢制限:R15+(15歳以上)
監督・脚本:アレックス・ガーランド(『エクス・マキナ』)
撮影:ジェイク・ロバーツ
制作会社:A24
音楽:
キャスト:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン
あらすじ・予告
イギリス・ロンドンに住む心に大きな傷を負った女性・ハーパー(ジェシー・バックリー)は、車で4時間ほどの田舎町にある古い屋敷を借り、そこでリフレッシュ休暇をすることに。
屋敷につくと管理人のジェフリー(ロリー・キニア)が迎え入れてくれた。
ハーパーは屋敷を気にいるが、付近の廃トンネルを散歩していたところ裸の男性に追いかけられる。
裸の男性は屋敷までやってきた。ハーパーが通報してその男性は逮捕される。
教会の牧師、少年、警官がみんな管理人のジェフリーと同じ顔をしているのだった…。
※以下、映画『MEN 同じ顔の男たち』のストーリーネタバレありなので注意してください!
映画『MEN 同じ顔の男たち』ネタバレ感想・評価
引き込まれる映像美はありつつ、物語は一から十まで全部狂ってました。
アレックス・ガーランド監督はアニメの進撃の巨人から本作の着想を得たようですが、それだけでは納得いかないほどには頭のおかしな作品です。
トラウマを抱えた主人公が田舎で衝撃的な出来事に遭遇する流れはアリ・アスター監督の『ミッドサマー』のような雰囲気ですが、狂ってる度合いでいったら本作がぜんぜん勝っています(笑)。
同じくA24制作でロバート・エガース監督の『ライト・ハウス』と並ぶかそれ以上に意味不明です。
森から素っ裸の男性が現れ、主人公ハーパーを窓からのぞきます。これがやりたかったのか?と思うくらいインパクト抜群のシーンでした。
映像・構図・演出の完成度が高いのはわかりますが、理解不能・意味不明な部分もおおく、普通の映画のように感想や評価を語るのはむつかしい…。
それでも潜在意識や根源的な恐怖を具現化したかのような奇怪な映像に圧倒されっぱなしで、不思議と満足感は高かったです。
面白いか面白くないではなく、アート作品を鑑賞したと言ったほうが近いかもしれません。
それぞれの場面がメタファーになっているいっぽう、果たして真面目に語ってよいものか疑問を抱いてしまう…そんな特異な作品でした。
表面上は男性が女性を虐げる社会への警鐘や、女性の苦悩などのテーマはありつつ、そんな正論でくくれる映画でもない気がします。
海外では批評家からあるていど評価されていますが、一般視聴者は酷評しています(ふつうの映画が見たい人からしたら絶対楽しめない作品でしょう)。
CineMagの評価 | 84点 |
世界観 | 95% |
ストーリー | 判定不能 |
IMDb(海外レビューサイト) | 6.1(10点中) |
Rotten Tomatoes(海外レビューサイト) | 批評家 68% 一般の視聴者 39% |
メタスコア(Metacritic) | 65(100点中) |
『MEN 同じ顔の男たち』考察(ネタバレ)
考察は非常にむつかしいですが、個人的な解釈をいくつか提示します。
(※こんな考察もできるぜ!とかあったらぜひコメントくださいませ)
物語の意味・ラスト解釈
©︎A24
多層的な解釈ができる作品を言葉で語るのはむつかしいですが、表面的なストーリーはなんとか読み解けます(それでも正解と断定はできませんが)。
あくまで表面的にはですが、主人公ハーパーは男性を拒絶する心理で全員が同じ顔に見てしまい、精神が錯乱してジェフリーを殺害したという流れが考えられるでしょう。
ハーパーは夫・ジェームズの飛び降り自殺でトラウマを抱えています。
過去のフラッシュバックで夫・ジェームズは、離婚したいと言ったハーパーに対して「自殺して罪の意識を植え付けてやる」とハッキリ口にしていました。
ジェームズの死はつらかったでしょう。
しかし単に悲しいだけでなく一生消えない罪の意識を植え付けた夫への恨みがハーパーの脳裏に焼きついているのではないでしょうか。
そこから男性嫌悪の感情が芽生えたのだと思います。
すべてハーパーのひとり相撲(妄想)だという解釈もできます。しかしそれだとラストで親友・ライリーがハーパーを目撃した場面が説明つきません。
ライリーはドレスを血で汚したハーパーや、家まで続く血のあとを見ています。よって家の中で誰かが死んでいるのは確かです。
ジェフリーがハーパーに明確な敵意を持っており、彼女を襲ってきたところを逆に殺したのか?それはわかりません。
とにかくハーパーは男性嫌悪の感情をジェフリーに対して爆発させたのではないでしょうか。
よって物語の意味としてはトラウマの解消というよりはむしろ男性に対する復讐・訣別(けつべつ)だと思いました。
(ラストでニヤッと笑っているハーパーはいかにも「男どもを葬ってやったぜ」という感じです)
リンゴと原罪、出産
冒頭でハーパーが屋敷の庭のリンゴを食べ、ジェフリーが冗談で大罪だ!と言っていました。
キリスト教のモチーフが多少なりとも隠されていると考えられます。
旧約聖書ではイブが蛇にそそのかされて禁断の果実・リンゴを食べて神の怒りをかい、アダムも一緒に楽園から追放されました。
ざっくりいうとこの罪が原罪で、以後人類はこのイブとアダムが犯した罪を背負っており、苦しみの世界で生きなければならないとされています。
そして全裸の汚い男、少年、牧師、警官がみな同じ顔で主人公・ハーパーを追ってくる狂気の展開…。
明らかに男性を揶揄(やゆ)していますがリンゴと原罪を考慮すると、一連の描写は男たちがハーパーを「原罪を背負うきっかけをつくった女」として”追いつめているようでした。
その男たちが最後に迎えた結末が“出産”です。(気持ち悪すぎでしたね…)
聖書では原罪によって女性には出産の苦しみがあるとされています。
その苦しみを、女性を責めたてる男性=同じ顔のジェフリーたちが経験するのです。
これもさまざまな解釈ができますが、ハーパーからすれば「原罪なんか知らねーよ!おまえらも産みの苦しみを味わえ」と突きつけているようでした。
つまり女性に原罪の責任をせまる男性たちへの皮肉です。
深読みすれば女性が痛みをともなう出産=原罪を拒否し、男に突き返したようにも見えます。
男と女の世界の完全なる訣別(けつべつ)です。
ラストに出てくる親友のライリーが妊娠しているのも、女性だけの世界を作れるという暗示ではないでしょうか。
本作はキリスト教で重厚なモチーフを入れたと思いきや、それを使って皮肉を突きつけるような特殊な作品だと思いました。
だから物語の根底に異様なまでの気色悪さが漂っているのだと思います。
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