映画『ラストマイル』巨大物流センターの荷物に1ダースの爆弾が仕掛けられた!センター長や物流のみんなはどう解決するのか?真犯人の動機は!?
徹底考察:ロッカーに書かれた文字「2.7m/s→0、70kg」は映画のテーマ?
最後の孔や五十嵐の表情の意味、爆弾はもう1個ある? 犯行動機は?
犯人が爆弾を仕掛けた方法をわかりやすく解説
これらの情報を知りたい人向けにレビュー!
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです。お好きな項目からどうぞ)
これから視聴する方の参考になるよう、作品についての視聴者口コミ・アンケートも投票お願いします↓
※以下、『ラストマイル』のストーリーネタバレありなので注意してください!
ラストマイル考察
ロッカーの「2.7m/s→0、70kg」は暗号?
山﨑(中村倫也)がロッカーに書き残した文字の意味はなんだったのか?ネット上ではネガティブな考察が多いが、映画全体として捉えると前向きなメッセージも含んでいると感じた。
まず劇中で説明があったように「2.7m/s」はベルトコンベアの速度、「70kg」はベルトコンベアの耐荷重。
山﨑はわざわざテーブルを使って飛んで飛距離を出したので、ベルトコンベア、ひいては巨大な物流システムを止めたかった表面的な意図はわかる。0は速度0のことだろう。
山﨑の意図を映画全体のテーマにからめて考える必要があると感じた。
70kgは日本人男性の平均体重くらいである。1人いれば物理的にベルトコンベアを止めることができる。1人でも何かできることはあるのだ。
今回の事件は山﨑の飛び降りから始まり、5年後の爆発事故を受けてエレナがベルトコンベアを止め、少しだが下請けの労働条件を変えることができた。
山﨑1人の行動によって巨大企業というベルトコンベアが止まったのだ。
よってロッカーの文字「2.7m/s→0、70kg」は、広い視点では1人の人間が巨大企業を変えられる証明の数字だと考える。
もし山﨑が暗号の意味を込めたとすれば、「あなた1人でもベルトコンベアを止める選択はできるぞ、あなたはできるか?やってくれるか?」と伝えていたのだと思う。山﨑のように飛び降りなくても止める方法はある。1人の行動が顧客中心主義の欺瞞を崩すことができる。
1人の人間がベルトコンベアに突っ込んだ事件が、5年後に下請け配送スタッフたちを救うことに繋がった。
山﨑が飛び降りたそのときにはベルトコンベアは止まらなかった絶望の意味もあるだろうが、5年後には何かが変わった希望もある。
(飛び降りや爆破テロはもちろん良くないが)社会の歯車になっている一人一人に、自分は無力な存在だと思わないで欲しいという力強いメッセージが込められていたと感じた。
孔(岡田将生)のラストの表情
最後に孔がロッカーの前でうなだれた。何かを変えた山﨑の決死のメッセージを目の前にして、「俺も社会を変えたい。変えられるかもしれない。でも死ぬほど大変だし重すぎる…」との重圧や葛藤があったのだろう。
山﨑がこのメッセージを残した5年前から、センター長が何人も変わった。みんな何も変えられずに体調不良で辞めていった(エレナ以外)。俺はどうすればいいんだ…。
エレナからバトンを渡された孔のような人間が今後どう動くのかで日本の未来が変わっていくのかもしれない。
五十嵐(ディーン・フジオカ)のラストの表情
五十嵐は最後に関東物流に左遷された。最後は山﨑が飛び降りた場所から階下をながめ、パニックになっていた。
理由は、山﨑が飛び降りた理由がベルトコンベアと暴走する会社を止めたかったからだ…とロッカーのメッセージの意味に気づいたこと。
偶然ベルトコンベアに落ちたのではなく、狙ってやったのだと理解したのだろう。
そして、五十嵐本人も当時・山﨑の飛び降りを目撃して決して平気だったわけではなく、ずっと心のどこかにパニックを抱えていた。現場に戻って感情が抑えきれなくなった表現でもある。
五十嵐はすべてを黙認した加害者でありながら、巨大システムに巻き込まれた被害者でもあるのだ。
下請けとは立場がまったく違う五十嵐や、もっと上にいるサラもまたデイリーファーストが成長するための歯車でしかない。ベルトコンベアを稼働させるためのパーツでしかないという点に怖さがある。
爆弾はもう1個ある?
12個が見つかったあとで、エレナは爆弾はもう1個ある!と言っていた。
これは、エレナ自身が爆発しそうなくらい限界だということ。さらに孔や五十嵐が爆弾になる可能性を示唆している。心の爆弾は起爆される寸前なのだ。
視点を広げ、DAILY FAST(Amazon)が作る非人間的な巨大システムに巻き込まれた世界中の誰も(私たち鑑賞者を含め)が爆弾を抱えている意味もあると考える。
どうやって爆弾を紛れ込ませた?解説
まず、5年前に飛び降りた山﨑の婚約者・筧まりか(仁村紗和)がどうやって爆弾を紛れ込ませたのか?
彼女は配送代行のシステム(自分が持っている商品をDAILY FASTに代わりに配送させる)を利用した。
- ブラックフライデー前にセールになる商品をチェックして購入(セール品は絶対売れるから)
- そして自分で購入した12個の商品に爆弾を仕掛ける
- 配送代行システムにその商品の配送を依頼し、センター内に持ち込ませる
- 物流スタッフとして配送代行のラベルを剥がして、DAILY FASTのサイトで購入された同一商品とすり替える
- 爆弾が入った商品が配送される
という流れ。
一旦商品を買って爆弾を仕掛け、配送代行システムでDAILY FASTにまぎれこませて、通常受注分とすり替えた。
DAILY FASTのサイトで購入されたが、どこで爆弾を仕掛けたのかわからないように見せかけたというわけ。
犯人の動機・なぜ爆弾は12個?
真犯人・筧まりかが爆弾入りの12個の荷物を出荷した理由は何なのか?
表面上はDAILY FASTを中心とした機械的なシステムを止めたかったから。巨大な物流センターで何百人もの派遣社員が働く映像からは、人間がシステムを使うのではなく、システムに巻き込まれてしまっている悲劇が見える。
顧客中心主義を装って巨大企業がすべてを吸い取っていく非人間的なシステムを山﨑は止めたかった。だから飛び降りたのだ…と筧まりかは考え、爆弾テロでシステム上の懸念点を暴露したかったのだろう。
また、やや飛躍するがDAILY FASTの本社がキリスト教圏のアメリカなので、12個の爆弾には、聖書の12人の使徒のような意味が込められているのかもしれない。
贖罪のように身を投げた山﨑をキリスト(死んではないが)のように考え、彼のメッセージを本国アメリカへより効率的に広めるために爆弾を12個にした可能性も捨てきれない。
ストーリーの復習はコチラ↓
物流センターに爆弾?連続爆破テロ
世界的なショッピングサイトDAILY FASTの関東物流センターに新しいセンター長として赴任した舟渡エレナ(ふなど えれな/満島ひかり)、そしてマネージャーの梨本 孔(なしもとこう/岡田将生)。
都内で物流センターから届いた荷物の爆発事件が起こり、里中という男性が死亡。
エレナは里中の自宅に届いた新発売のスマホ端末が原因だと考え、その商品の配送を止め、検査する。しかし他のスマホ(同じ商品)には爆弾は仕掛けられていなかった。
都内数カ所で爆破事件が連続。やはりDAILY FASTの関東物流センターから出荷されたものだった。爆弾調査班は、爆発物はニトロメタンで箱を開けると液体同士が混ざって起爆するつくりだと突き止める。
事態を重くみた警察の刈谷貴教(かりや たかのり/酒向芳)や毛利忠治(もうり ただはる/大倉孝二)はセンターに乗り込んで全ての物流をストップしろと言う。
エレナは事前にアメリカから注文していたX線探知計器で警察に荷物を全部チェックさせ、物流を止めないで済ますことに成功。DAILY FASTの日本支社の本部長・五十嵐 道元(いがらし どうげん/ディーン・フジオカ)は、それを自分の手柄としてアメリカ本社に報告。
エレナはDAILY FASTの商品の配送下請けをしている羊急便の八木 竜平(やぎ りゅうへい/ 阿部サダヲ)にX線探知計器を送り、荷物を検査させる。
しかし羊急便はさらに下請け配送ドライバー・佐野昭(さの あきら/火野正平)たちの管理をFAXで行っており、現場は大混乱した。
その結果、通常の商品だけでなくメディカル便(医療現場で使われる薬など)でも配送の遅れが発生し、DAILY FAST社に数多のクレームが入る。DAILY FASTはそれを羊急便のせいにしてTVで報道させた。
山﨑という5年前の手がかり・真犯人は?
エレナと孔は偽スペルのDAILY FA“U”STのネットCMを発見。CMのタグから「ブラックフライデー、1ダース(12個の)の爆弾」と書かれたSNS上のメッセージを発見。
警察の刈谷たちはCMの受注会社から、発注者が山﨑という人物だと知る。
伊吹藍( MIU404綾野剛)、志摩 一未(星野源)が山﨑の自宅へ行くが誰もいない。女性の香りがした。監視カメラに女性がうつっているのを発見する。
センターのデータベースにはなぜか山﨑のデータがなかったが、山﨑(中村倫也)は5年前に物流センターで働いており、3階から飛び降りて現在は意識不明で病院にいる人物だと判明。
前職はホワイトハッカーだった孔は山﨑のデータを消去したのがエレナだと気づき、爆弾を仕掛けた真犯人では?と疑う。本社の五十嵐もエレナがどこから配属されたのかわからなかった。
エレナはアメリカ本部からきたと孔に話す。アメリカのDAILY FASTで働いて管理職に就き、そのときに山﨑の飛び降りを告発しにきた婚約者の女性から話を聞いたが、自分には関係ないと思った。3年目にメンタルに支障をきたしカウンセリングを受けたが3カ月休職し、復帰現場として関東に来たと涙ながらに話す。
警察は山﨑の婚約者が筧まりか(仁村紗和)という名前だと知る。CM会社の社員で、自分でCMを発注して作っていた。土日はDAILY FASTの物流センターでで派遣社員として働いていたようだ。
爆弾の注文を受けた業者が逮捕される。
ラスト結末:佐野ドライバーの活躍とストライキ
エレナは真犯人が山﨑の婚約者で、配送代行のシステムを使って爆弾を紛れ込ませたと確信した。警察の爆弾処理班を使って、筧まりかが事前に購入して通常配送に紛れ込ませた商品を探して処理していく。
その後、不自然死究明研究所(UDIラボ)の三澄ミコト(みすみ みこと/石原さとみ/アンナチュラル)たちの解剖で、爆発で最初に死んだ里中は女性だと判明。
最初に爆発したスマホはブラックフライデーセールの前に購入しておくことはできない。筧まりはホームレスの里中の戸籍を買い、自宅で爆発をおこし、配送された商品が原因だと見せかける形で自らの命を断ったのだ。
爆弾が入った12個目の商品が見つからない。すでにセールの初日に発送済みで、不在のため再配達されたものだと判明。シングルマザー・松本 里帆(まつもと りほ/安藤玉恵)の子供が注文したものだ。
連絡を受けた配送ドライバーの佐野亘(さの わたる/宇野祥平)が家に入り、爆弾の入った荷物を洗濯機に放り込む。洗濯機が壊れるだけでなんとか無事だった。
その後、エレナの扇動で下請けドライバーや羊急便がストライキしてDAILY FAST本社と取引、荷物1個につき20円の単価アップをさせた。
エレナは本社のサラに、事前に爆弾予告に気づいていたはずだが対処しなかったと非難した。エレナに山﨑のデータを消させたのもサラだった。
エレナはDAILY FASTを辞めることにする。五十嵐はコストアップの責任を取らされ、関東センターに飛ばされてきた。
孔が新しいセンター長になる。そして山﨑のロッカーをあけて彼が残した「2.7m/s→0、70kg」の文字を見てうなだれた。
映画『ラストマイル』作品情報
制作国:日本
上映時間:2時間8分
ジャンル:サスペンス・ミステリー・社会派ヒューマンドラマ
監督:塚原あゆ子
脚本:野木亜紀子
音楽:得田真裕
撮影:関毅
主題歌:米津玄師「がらくた」
2024年公開の邦画・ドラマレビュー
映画『きみの色』。山田尚子監督の最新アニメ映画! シネマグ 動と静でいうと完全に静の物語。最後のトツ子の色の本当の意味など徹底考察していきます! 物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説 ストーリー考察:トツ[…]
Netflixドラマ『地面師たち』(じめんしたち/Tokyo Swindlers)。 CineMag 豪華キャストが不動産詐欺師=地面師にふんする超期待のドラマ!完璧な準備で一流企業を騙すカタルシスが最高! 作[…]
Jホラー映画『サユリ』。夢のマイホームに引っ越してきた一家に迫る少女の霊! シネマグ まさか後半あんな展開になるとは!!ぶっ飛びすぎ〜! 物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説 ストーリー考察・原作マンガと[…]
Netflix『恋愛バトルロワイヤル』 CineMag 女子高生が金を得るために他人の恋愛情報を握って脅迫。かなり韓ドラに寄せてきた感じのドラマ。 作品情報・キャスト 全8話ネタバレあらすじ・最終回ラスト[…]
2024年邦画レビュー
映画『きみの色』。山田尚子監督の最新アニメ映画! シネマグ 動と静でいうと完全に静の物語。最後のトツ子の色の本当の意味など徹底考察していきます! 物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説 ストーリー考察:トツ[…]
Netflixドラマ『地面師たち』(じめんしたち/Tokyo Swindlers)。 CineMag 豪華キャストが不動産詐欺師=地面師にふんする超期待のドラマ!完璧な準備で一流企業を騙すカタルシスが最高! 作[…]
Jホラー映画『サユリ』。夢のマイホームに引っ越してきた一家に迫る少女の霊! シネマグ まさか後半あんな展開になるとは!!ぶっ飛びすぎ〜! 物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説 ストーリー考察・原作マンガと[…]
Netflix『恋愛バトルロワイヤル』 CineMag 女子高生が金を得るために他人の恋愛情報を握って脅迫。かなり韓ドラに寄せてきた感じのドラマ。 作品情報・キャスト 全8話ネタバレあらすじ・最終回ラスト[…]
『もしも徳川家康が 総理大臣になったら』を公開初日の2024年7月26日鑑賞! シネマグ もっとハチャメチャやるかと思ったら、偉人たちが物分かり良すぎ…。 物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説 視聴しての[…]
映画『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』フジテレビのバラエティ逃走中の20周年企画は無事にアイドルのプロモーションビデオとなりました! シネマグ アイドル映画とはいえ、いくらなんでもストーリー・脚本がダ[…]
ホラー映画『あのコはだぁれ?』(あの子はだあれ?) シネマグ ラストの意味、エンドロール、ミンナのウタのとしおの謎について徹底考察していきますよ! 物語ネタバレあらすじ・ラスト結末解説 考察:よく考えると[…]
邦画『ミッシング』6歳の娘がある日とつぜん行方不明に…世間にバッシングされても決してあきらめない母親の物語。 シネマグ 石原さとみが娘を誘拐されて精神がボロボロになる母親を体当たりで演じる。ストーリーラスト結末や、正直な感想[…]