映画『怪物』3人の視点でネタバレあらすじ・結末の解説,ストーリー最後まで詳しく

  • 2024年3月13日

「怪物だーれだ」でお馴染み、是枝映画『怪物』のストーリーについて①母・沙織、②担任の保利先生、③湊と依里の3つの視点からあらすじネタバレ解説の記事です。

シネマグ
それぞれの場面が何を意味しているのかも解説。なるべくわかりやすくまとめました!
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映画『怪物』2023
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是枝裕和監督の映画『怪物』

映画『怪物』ネタバレあらすじ:3つの視点で全伏線の解説・考察

①母・早織の視点

早織は亡き夫の命日に、仏壇にケーキをのせろうそくを立てます。

早織は「父さんに近況報告しな」と言いますが、湊ははずかしがってしゃべり出しません。早織は湊がしゃべりやすいようにその場を離れました。

シネマグ
このとき湊は、男の子が好きな自分という事実に向き合い、「なんで生まれてきたの」と苦悩を語っていました。

ある日、湊が家に帰ってこないので同級生に連絡。湊を線路やトンネルの廃墟で見たと聞き、その場所へ向かいました。

突然、暗いトンネルの中から湊が現れます。

早織は湊を車にのせ、家までの帰り道で「あんたの父さんと、湊が普通に結婚して幸せになるまでは頑張る」と話します。すると湊が突然車のドアを開け外に飛び出して転げ落ちました。車は路肩につっこみます。

シネマグ
ラガーマンである父のような男らしい存在にはなれないという絶望があったとのちに発覚します。早織に「男女の区別を疑わない」怪物が出現したのです。
感想を語る犬
この時、湊は前日に依里と秘密基地で性的な雰囲気になり、学校では絵の具の件で依里ともみ合いになってしまい、その後の電話だったのですぐに出なければと思ったけど、母に依里を好きなことがバレるのが嫌で一旦車から降りようとしたようです。

湊は軽傷でしたが念のためMRIで脳に異常がないか調べてもらいました。何も異常はなし。湊は不思議がりました。

湊は次第に塞ぎ込むようになり、「僕は豚の脳なんだ」と言います。

湊は鼻や耳にケガをして帰ってきました。早織がどうしたのと聞くと、湊は「保利先生に豚の脳と言われた。いじめられている」と答えます。

早織は学校に問い合わせ、校長や教頭と面談。担任の保利が入ってきて「誤解があった」と言います。早織は、アメ玉をなめる保利に怒りをつのらせました。

感想を語る犬
アメ玉は保利が彼女からもらった大切なときに食べるものなのですが、この状況でそれをなめてしまうことから、保利も普通の大人と違うタイプの人間だとわかります。

早織はスーパーで校長を見かけました。校長は走り回っている子供にこっそり足を引っかけて転ばせていました。

シネマグ
早織の視点では意地悪な行為。しかし校長視点では、自分がひき殺してしまった孫のような運命をその子たちにたどってほしくなかったのかもしれません。

後日、早織はまた学校にやってきました。保利先生が裏庭で女子生徒に手を引かれているのを見て不適切な関係ではないかと不信に思います。

校長は「保利が外出してる」とウソをつきました。

早織は激怒して物に当たり、校長の机の上にあった孫の写真が落ちました。

早織は保利を見つけてつかみかかります。保利は「あなたの息子は依里くんをいじめている。凶器も持っていて、動物を虐待している」と答えました。早織は驚きます。

事実を確認するため早織は依里の家にいきます。シングルファザーの家庭で依里は1人でした。腕にヤケドのあとがあるのを見て、もしかして本当に湊がいじめているのではないかと考えました。

依里は湊が具合が悪いと思い、手紙を書くと言います。ところどころ鏡文字でした。

ある日台風の朝、早織は湊がいなくなっていることに気づいてあわてます。土砂降りの中、外から保利先生が湊を呼ぶ声が聞こえました。

②担任・保利の視点

保利はビルの火事を彼女の広奈と一緒に駅前で眺めていました。大翔ら男子生徒たちに動画を撮られます。

シネマグ
そしてキャバクラ通いでキャバ嬢と歩いていることにされたかわいそうな保利…。

広奈は家で迫ってくる保利に「男の大丈夫と、女のまた今度は信用しちゃダメ」と笑いながら言います。

保利は教室で暴れている湊を取り押さえるときに肘が鼻にぶつかってしまい、湊が鼻血を出してしまいました。

その後、保利に早織から「息子をいじめているだろ!?」とクレームが入ります。

教頭は「とりあえず謝れ」とゴリ押しし、保利は不本意ながら頭を下げました。

感想を語る犬
だから謝罪が棒読みだったんですね。

後日、保利はクラスの女子・木田美青に裏庭で手を引かれ、湊が猫をいじめていたと聞きました。

シネマグ
木田美青が嘘をついたというより、湊が猫のそばにいるのを美青が目撃して保利に報告→保利は湊が猫に何かしたと勘違いした…コレのようです。

保利はトイレの個室に閉じ込められている依里を見つけ、近くに湊がいるのを見ます。

保利は問題を解決するために依里の家へいきます。酔っ払った父親(中村獅童)が帰ってきて、「あの子はダメです。豚の脳だから治してやらないと」と言っているのを聞き、驚愕(きょうがく)。

早織が教育委員会に訴えたことで、保利は保護者たちのまえで不本意ながら「湊を殴ってしまいました…」とウソの謝罪をします。

結果、保利は学校を辞めさせられ、家にはメディアが取材に来ました。

彼女の広奈は「また今度ね」と言って部屋から出ていきました。

シネマグ
まさか「また今度ね」が伏線だったとは…。このセリフはキレイに決まりましたね。広奈はもう戻ってこないのでしょう。

納得できない保利は後日学校へ行き、湊になぜウソをついたのか迫ります。湊は逃げて階段から落ちてしまいました。

保利は屋上がから飛び降りようとしますが、音楽室から管楽器の不気味な音を聞き、思いとどまります。

感想を語る犬
小説を読むと、湊はトロンボーンに保利への謝罪の気持ちを込めていたことがわかります。それだけでなく依里への想い、アイデンティティを肯定する決意など、色んなものが込められている気がしますね。

アパートに戻って荷物を整理していた保利は、依里の作文を見つけます。行の頭を横に読むと、依里と湊の名前になっていると気づきました。湊は依里をいじめていたわけではなかったのです

③湊と依里の視点

湊は依里が大翔ら他の男子生徒にいじめられているのを見ても何もできませんでした。

湊は依里と係で2人きりになり、彼に髪をなでられて驚きます。湊は家に帰って長かった髪を切り落としました。

シネマグ
湊は自分が依里に触れられてドキッとしたことを認めたくないのもあり、葛藤の意味で髪を切ったんですね。

依里はいつも靴のかかとを踏んで歩いていました。大翔たちに靴を隠され、片足で帰ります。湊が靴を片方貸してあげました。

感想を語る犬
依里がかかとを踏んでいるのは、大きい靴を買ってもらえない父からの虐待のしるしでしょう。

湊は依里から線路とトンネルの廃墟の奥に連れて行かれます。そこには使われていない電車の車両があり、2人の秘密基地になりました。

湊と依里はその電車でよく遊ぶようになります。

依里は湊に学校の裏庭で死んでいる猫を見せます。2人は廃線路の電車のそばにその猫を埋めて枯葉をのせ、依里が持っていたロングノズルのライターで火をつけました。

湊は、ガールズバーがあるビルに火をつけたのが依里だと本人から聞いて驚きました。父親が通っているガールズバーが不健康だったから燃やしたかったようです。湊は依里からライターを取り上げます。

依里が学校でいじめられていることに耐えられなかった湊は、みんなの荷物を投げて暴れ、保利先生に取り押さえられました

シネマグ
いじめについて話すと湊と依里の関係までバレる可能性があります。それが怖くて言えなかったのでしょう。

湊は秘密基地(電車の車両)のなかで依里と体が近づき、下半身が反応してしまいました。依里は「自分もときどきそうなる」と言います。しかしパニックになった湊は依里を突き飛ばしてしまいました。

湊は依里が机に絵の具をぶちまけられているのを見つけます。依里は雑巾でふこうとしますが大翔が雑巾を取り上げてみんなに回しました。湊は雑巾を依里に渡しますが、「ラブラブ」と言われてしまったので依里から雑巾を取り上げようとして取っ組み合いになり、耳を切ってしまいました。

湊は依里を秘密基地の前のトンネルで待っていました。しかし来たのは母・早織でした。依里はこっそり帰ります。

湊は車のなかで母が考える普通の幸せを聞いたあとで、依里からの電話を取りたくて外に飛び出てしまいます。

その後の病院での検査で異常ないと言われたことが不思議でした。

後日、湊は解雇された保利に追いかけられて逃げました。そして音楽室で校長と会います。湊は「好きな子がいるけど正直に言えない」と言いました。校長は「私もウソをついている」と返します。2人はトロンボーンとホルンを吹きました。

感想を語る犬
この管楽器の不協和音は怪物の声を表現していると思いました。この“怪物の声”を聞いて保利が自殺を思いとどまるのも、すばらしい演出ですよね。

校長は湊に「誰かでないと手に入らないものではなく、誰にでも手に入るものが幸せだ」と教えます。

何かを悟った湊は明け方に依里の家へ行き、中に入ります。依里は風呂場で虐待を受けたようでグッタリしていました。

2人は台風の中、廃線路の電車へ向かいます。

ラスト結末!

早織と保利先生は湊を探すため、嵐の中、湊と依里の秘密基地である電車の場所へ。

電車は横転しており、泥だらけの窓を開けます。

感想を語る犬
泥がたまった窓ガラスを雨がたたき、小さな光の粒が現れるシーンは芸術的でした。

中には湊が着ていたカッパしかありません。

いっぽう湊と依里は狭い通路を抜け、晴れた草むらを笑いながら走っていました。橋の上の線路の柵がなくなっています。2人はその方向へ向かいました。

シネマグ
「生まれ変わったとかはないと思う」と言っていたので、2人は同性愛者だということを受け入れ、その事実を受け入れてくれる未来に向かって走り出したのだと思いました。(死んだかどうか以上の大切な意味がある)

映画『怪物』終わり!